手造り真空管アンプの店




元のページに戻る


店主コラム 2009年4月分〜6月分





2009年6月21日

<ノイズ測定T>

 このところプリ(ライン)アンプの製作が続いている。今回も5年前に造ったラインアンプを改造してほしいとの依頼があり、今私が追求しているゲイン可変型の反転アンプのラインアンプに改造した。これまでこのタイプは2モデル設計し、ノイズレベルをこれまでのラインアンプに比べかなり下げたが、しかしまだノイズの理論値と実際の測定値に差がありまだ満足していなかった。今回はこのノイズの測定をもっと厳密に行い、ノイズの理論値と測定値の差がどこから起きているのかを追求した。

 ノイズと一言で言ってもいろいろな種類があるのでこれらを区別して抑えていかないと何を測定しているのか分からず、適切な設計はできない。真空管アンプの場合おおよそ次のようなノイズが考えられる。

 1、ヒーターを熱する交流電源からくるノイズ。
 2、アンプ電源からくるノイズ。通常リップルというきちんと整流されない交流成分がノイズになる。これはリップル電圧の大きさも問題になるが、配線などで電流が悪さをする場合もある。さらに微小になると電源から発するホワイトノイズや電源の揺れのフリッカーノイズも問題になる。
 3、100Vの交流電源からくる誘導ハム。
 4、真空管そのもののノイズ。ホワイトノイズやフリッカーノイズなど。
 
5、抵抗から発生するホワイトノイズ(熱雑音)。カーボン抵抗などはフリッカーノイズもあるらしい。
 6、その他発振などのノイズ。

今回私が追及したいノイズはもちろん4番の真空管から発生するノイズの実力を確かめたいことにある。そこで今回はかなり厳密な測定をしようと残りの項目のノイズ取りを最初に行い、ノイズ測定の精度を上げていった。

 今回どのような対策を施してアンプのノイズ測定の精度を上げたかというと

 1、
ヒーター電源はこれまでも直流点火をしていたが、さらに厳密にするため定電圧電源を採用しヒーター電源のリップルを問題ないレベルに下げた。
 2、電源回路に半導体によるリップルフィルターを追加。電源のリップル電圧を減少させた。更に定電圧電源に使用しているツエナーダイオードをローノイズタイプに変更し、ホワイトノイズの削減にも努めた。ダイオードに流す電流もノイズに有利な電流値に変更した。電源の揺れについてはそのまま。配線も変更しリップル電流の影響もゼロにした。
 3、測定時に机からの誘導ハムの影響を無くすためシールド板を敷き、その上にアンプを置き測定した。また真空管にもシールドケースを被せて測定した。微小レベルの測定では以外とこれらの影響が大きい。
 4、真空管は以前使用した6DJ8と同等管の6R−HH2を採用。ピンコンパチでGmもほぼ同等。アンプのノイズレベルを下げるため、カスコードアンプに使用しているツエナーダイオードを廃止して、これの影響を無くした。
 5、抵抗定数は変更せず。抵抗も普通のカーボンを使用。
 6、発振は確認して測定。

などなどいろいろ外乱を減らしてからアンプのノイズ測定を行った。

続く。


アンプ内部写真。
左側黄色い基板がアンプ部。残りは全て電源その他。電源回路で小型ヒートシンクを4つ使用している。アンプのノイズ性能を正確に測るには回りから固めていかなければならない。






2009年6月11日

<才能>
 ちょっと難しい題になってしまった。
 一昨日からのニュースで盲目の辻井さんという方が米バン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝したことが大きく報じられている。もうこれには賞賛する以外何ものでもない。特に盲目というハンデキャップを負いながらの受賞はすばらしい。ご本人の努力はたいへんなものであるのは想像できる。ただ私のような一般人からみるとその天賦の才能に恵まれた人だなあとも思える。暗譜は音を聴いて覚えてしまうなど普通の人では考えられない才能のように思う。神様は何故こんな才能を持った人を作ってしまったのだろうと正直思う。陰の努力は置いといて才能の部分だけみると何故と思ってしまう。

 野球のイチロー選手なども同じだが、運動・芸術などの才能に恵まれた人は20歳くらいでもうその能力を発揮してしまう。科学分野でのノーベル賞受賞者の受賞対象は若いときの業績が多いそうだ。自分が20歳そこらの頃を思い出してみると何もしていなかった。何も残していなかった。これをやり遂げようという目標も何もなかった。このことを思うと若いうちに自分の才能を見出しそれに打ち込んでいる人は天才のように思う。
 私の場合、最初はアナログ、次にソフト、そしてデジタルと少しずつゆっくり技術を覚えた感じで、それが30数年経ってもそれほど進歩していない。人間の能力というのは無限の格差があるなあと感じてしまう記事であった。

私のような趣味性の強い商品を扱っていると、人間の秀でた能力 創造性をいくらか刺激するらしい。アンプを造りたいので弟子入りさせてほしいとか、ご自分でキットのスピーカーボックスを組み立てた方が現れた。人の造ったモノを使うだけではなく自分でモノを造って楽しみたいという欲求だ。これは人間の創造力という特別な能力を刺激した結果だと思う。今の世の中、電器製品で自作できるものはあるのだろうか。あまりにも複雑になりすぎプロしか手の出せないものばかりになっている。その点オーディオというのは特に真空管アンプやスピーカーボックスなどはアマチュアでも手が出せる範囲だ。これには才能などは必要ない。ある程度情熱と感性でも対応できる。好きであれば十分楽しめる分野であると思う。普通、楽器演奏を人様の前ではなかなかうまく演奏できないが、自作アンプは誰でも人様の前でも十分自慢できる。こんな違いがある。
 このほどほどの才能で何とかやっていける真空管オーディオ(他で頑張っているには失礼な言い方になっているが)がやはり自分には合っているように思える。






2009年6月1日

<アダージョのその後>
 4月でアダージョとメヌエットの販売を終了した。これで特にお客さまからの反響がある訳ではないし、私の商売上では前と何も変わらない。ただ私の気持ちのなかではひとつの区切りが出来たような気がする。それは商売上これからは全てオーダーメイドのアンプにするという宣言ができ、気持ちの整理が出来たからだ。私のような小規模な個人企業では大手と同じことをしていても勝負にならない。真空管を選んだもの大手他社が参入しないということがあったから始めたことだし、それなら商売も量産品を売らないで全てオーダーメイド品にすればこれもまた他社との差別化ができるからだ。それに今までのご注文はすべてオーダーメイドでのご注文であったので、ある特定モデルを作る意味もなかった。また私の性格から同じものを造り続けるのは性格に合わない。直ぐにバージョンアップしたくなってしまう性格なのだ。ここを直せばもっと性能・音が良くなると思うとそのまま古い回路でお客さまにお渡しするのは気が引ける。逆にそれでは量産品としての意味が無くなってしまうのであるが。
 新しい回路を作るというのは私のリスクが増える。すでに実績のある回路にすれば故障なども少ないだろうし、音もそこそこに出る。新しい回路にすれば当然リスクが伴うが、そこには新たな世界がある可能性が高くこれまでの真空管アンプとは違った音が楽しめるようになる。これは私の設計するアンプは故障が多いと言っている訳ではない。新規の回路を作ることは私のリスクが増えると言っているのである。だから私の仕事は効率が悪くなる。いつも新しい回路についていろいろ確認しなければならないことが多くなる。でも私は自分の存在感はこのオーダーメイドアンプに賭けてみようと決心したのである。

 さて今回のコラムの主題は<アダージョのその後>はどうなったかである。アダージョは表舞台(表に立ったことはなかったが)から引退したら直ぐに実験機になった。直ぐに改造が入ったのである。もう体裁を整えている必要はなくなったので改造した。どこを改造したかと言えば出力インピーダンスを下げることをしてみた。以前恐らく真空管アンプでは世界最高と思っているD.F=43をオーダーメイド品で設計したが、これにアダージョも近づけようと試みたのだが、何とD.FがそれぞれL=86、R=43と簡単に記録更新してしまった。左右の値の差がどこからくるのかはまだ調べていない。どこかに動作のばらつきがあるからだが、それが何処かからは確認していない。ただまだD・Fを上げることができることが分かった。アダージョが一線を退いたら自由になり記録を更新してくれた。また新しい音の世界に引き連れてくれた。こういうことがあるから私にはオーダーメイドのアンプが良いのだと思ってしまう。まったく設計者の気まぐれでお客様には迷惑をお掛けしてしまうこともあるだろうが、バージョンアップをしていけば結局お客さまにもお得になると思っている。(私だけかなあ。)数ヶ月前に納入したプリアンプももうバージョンアップの話をしている。こんな気まぐれな設計者に誰が付いて来てくれるのだろうか。






2009年5月21日

<町内会>
 私はこの4月に町内会の地区理事という役員の任期が切れ退任した。今はちょっとほっとした気分だ。我が町の町内会は600余世帯の会員からなり、それらはいくつかの地区に分かれており、我が地区は75世帯からなっていて、地区理事は町内会活動においてこの地区の代表の役割を担っている。さらに地区の下には班があり、我が地区は6班からなり、それぞれの班には班長さんがおられる。私の仕事は町内会の活動を円滑に実施するために行事の準備をしたり、情報・活動内容を班長さんにお伝えし、班長さんは各住民にそれを伝えることにある。逆に住民からの意見も班・地区でまとめ、それをさらに町内会に伝える役目もある。要は町内会と住民との橋渡しの役目を担っている。
 町内会活動というのはいろいろある。県、市、区、町内からの回覧物の配布、夏祭り・餅つき大会・バスツアーなどのレクリエーション実施、防犯パトロール、防災訓練、公園整備、敬老祝品配布などいろいろある。これらの地域活動が円滑に運営されるように町内会役員はさまざまな準備・手配を行う。もちろんボランタリの活動である。
 私の場合、昨年の5月に地区理事という役を仰せつかり、この4月で無事その任務が終了した。最初は何をしてよいのかまったく分からず、戸惑いもあったが次第に人に慣れ、経験を積むことにより慣れていった。

 今この仕事を1年してみて町内会活動というのは難しい面があることを感じている。それは町内会活動というのがすべてボランティアからなりたっていることからくることである。町内会組織というのは会社の組織とはまったく異なる。たとえば会議にしてもアジェンダや議事録というものが発行されないのは最初戸惑った。理事会では資料なしにいきなり本題に入るものだから必死にメモをとる。そうしないと班長・住民へ連絡を間違えてしまうこともあるからだ。実際議長(会長)が言った言わないでもめたこともあった。なら資料をつくる書記を用意すれば良いとの意見もあるかもしれないが、これを引き受けていただける人を探すのが大変なのだ。会社であれば上司の命令ひとつで改善できることもボランタリという行為で成り立っている組織はそうはいかない。すべて役を引き受けてくれる人の好意にかかっている。だから会議などで人に負担をかけることを言い出すのは非常に難しい。ここが会社とは大きく異なるところであり、幾分ストレスを感じる運営ではあるが仕方が無いと思っている。

 だから町内会で何が難しいかという問題は人事である。今回会長が交代したのだがこの人選にも少々時間がかかったようだ。また我が地区でも新しい理事を選任するのにちょっと苦労したがこれには面白い話がある。この新理事の推薦は私の仕事となっていたのである。まず回覧で新理事を引き受けていただける方を募集したが期日までに応募者はいなかった。そこで直接お受けしていただけないかとあるご家庭を尋ねようとしたら、偶然私の次に地区理事を引き受けていただける方と道でお会いした。説明をしたら一緒に話に行きましょうということになり、ある家にご説明に行った。そこではご都合でお断りされてしまったのだが、別の方をご紹介してくれた。そうしたらその方が偶然外に出ていらして、そこで道端会議が始まった。実はこれらの方は全て主婦の方で学校とか犬の散歩なので普段からお付き合いがあるらしく、非常にフランクに話が進み最後は「あなたこの役引き受けなさいよ」のようなノリで最後は新理事の仕事を引き受けていただけた。この間5分程の話である。
 私はこの主婦達の連帯感とパワーに非常に感心してしまった。話はストレートだが嫌味はないし、男と違って変なプライドも見せないし、それにパワーがある。(前向きである。)先にも書いた町内会の人事というのは難しいと感じていたときに、主婦のパワーを見せつけられて会社組織それもどちらかと言うと男社会しか知らない私にとっては新感覚であった。
 今回の町内会の仕事で何が良かったかと言えば近所の主婦の方々と知り合えたことである。だが主婦は恐るべしである。








2009年5月11日

<プリアンプ>
 ここ数日新しいプリ(ライン)アンプの回路を設計している。設計しているといっても回路図を書いているだけでまだ製作はしていない。前回このコラムでお伝えしたように秋に地元のコーヒー店<アステカ>でのMYプロダクツのアンプ試聴会を控え、今使っている自宅のプリ(ライン)アンプの性能・音をもう一段上げたくて新しく設計してみたいと思ったからだ。お客さま用に6DJ8を使った真空管ラインアンプを設計して、これまでの真空管ラインアンプよりローノイズのアンプに出来たと思っているが、それでもまだ6DJ8の持つ理論ノイズレベルまで下がってなく、まだ不満を抱えているからだ。もっとノイズが下がるはずだから、回路の一部見直しをしている。面白いのは理論的には抵抗1kΩより6DJ8のノイズの方がノイズレベルが低いという事実だ。だから真空管を使ってでもより回路をローインピーダンスの回路にすれば更にノイズが下がるのではないかと思っている。また電源回路の見直しもしている。私のアンプは半導体の定電圧電源が使われているが、この基準電圧にツエナーダイオードを使用しているが、これを別な方法で基準電圧を作り電源のノイズも下げる試みをしている。アンプ回路も電源回路もまだ机上のものだからどれだけノイズが下がるか分からないが、より理論値に近いところまでもっていければと願っている。

 こんなことを考えていた最中、MYプロダクツ製6DJ8ゲイン可変型ラインアンプをお持ちのお客様からプリアンプの比較試聴会をしませんかというお誘いを受けた。もちろん参加した。正直言えばこのラインアンプを少し手直ししたいところがあっていつか直そうと思っていた矢先なので、試聴会のついでにラインアンプを少し改良したいと思っていたからだ。比較試聴したもう一つのプリアンプはメーカー製の半導体プリアンプである。
 試聴した印象の結果が面白かった。3人全員の試聴結果が真空管プリの音はノイズが少なくワイドレンジでまるで半導体アンプのような音で、半導体プリの方は少しノイズが多くまたマイルドな響きをしておりまるで真空管アンプのようなサウンドをしていた。もしブラインド試聴だったらアンプと音の印象が逆になってしまうだろうという意見になった。これには私もまったく予想していなかった。どちらの音が良いかどうかは好みの問題もあるので何とも言えないが、私にとっての収穫は真空管プリでも上手く作れば半導体アンプに負けないノイズレベルまで下がることが実証されたことだ。ノイズレベルの違いによる音の印象の違いというのは、実際私も自宅で経験していてそれで如何に真空管アンプでもノイズが下げられるかを実験しているのだが、改めてノイズレベルの違いで音の印象が変わるのを別な装置でも感じられたのは収穫だった。

 アンプのノイズを下げるというのは面白い。ノイズそのものは当然物理現象だから、ただ理論的に下げる努力をすればよい。そしてその努力が音に現れるからだ。歪は下げても音の結果に表れにくいがノイズは音に表れ易い。それはノイズは信号と相関がないので耳につき易いからだと思っている。だから今設計しているプリのノイズがもっと下がったときどんな音を出してくれるのか楽しみにしている。







2009年5月1日

<MYプロダクツから>
 MYプロダクツからのお知らせです。
 まだ大分先のことですが、今年の秋10月17日(土)午後8時から地元能見台のコーヒーの店<アステカ>にて、MYプロダクツ製真空管アンプを使用してのCDコンサートを開くことが決まりました。真空管アンプで音楽を聴くことと、私のオーディオの話を交えて、集まっていただいたお客さまと楽しい時間を過ごす計画をたてています。<アステカ>ではこれまでライブ演奏での催し物はしておりますが、今度はCD鑑賞会という少しばかりこれまでと違った音楽の楽しみ方を味わっていただきたいと思っております。まだ真空管アンプを聴いたことがない方とか、アステカでの新しい催しに参加してみたい方は是非<アステカ>までご連絡下さい。この計画が持ち上がったため今新しいラインアンプを設計し始めました。これまでご紹介したゲイン可変型のラインアンプのS/Nを更に良くしたものです。ゲイン可変型は同じですがアンプ回路も新しくして、定電圧電源回路もローノイズにする予定です。どんな音になるか楽しみです。

 次のお知らせはこれまでこのホームページで紹介してありました「アダージョ」「メヌエット」の発売を終了させていただきました。理由は発表してすでに3年以上経ち内容が少し古くなってきたからです。私のアンプは常に進化していて、その技術を常に新しい設計に活かし、またこれまで造られたお客様にはバージョンアップを図ってきました。「アダージョ」「メヌエット」にしてもモデルチェンジが必要になり、この機会に発売を終了させていただきました。これまでもほとんどのお客さまがオーダーメイドでの設計でしたので、今後もこのモデルもお客さまのご希望に合わせたオーダーメイドモデルとして造ることにしました。その方が仕様も技術もいくつかの選択肢の中から選ぶことができ、お客様にとってもメリットがあると考えたからです。モデル名は無くなりますが、アンプは残りますので、今後も引き続きご支援お願いいたします。

 次からは余談です。私はただの真空管アンプを造る人間なのですが、特にタイトルというものがありません。敢えて言うなら<MYプロダクツ店主>くらいでしょうか。このタイトルだと職人らしい響きがなく、あまり面白いタイトルでは無いなあといつも考えておりました。ところが先日面白いタイトルを持つ職人さんがいることを知り、私もそれにあやかって、自称<独立アンプ師>というタイトルにしようと思っています。
 この名前の由来は<独立時計師>という言葉から来ています。時計の世界ではどこのメーカーにも所属せず、ムーブメントからデザインまで全て一人で作ってしまう時計職人がいます。これらの職人がつくる時計はもちろん手造り、全て機械式時計で1台数百万円もする時計です。職人がこだわりを持ち考えられる最高の時計を手造りで作っているわけです。今この<独立時計師>と呼ばれる職人は世界で24人(独立時計師協会所属)と言われているようです。ここまで私の技術の価値があるかどうかは別にして、この生き方には大いに目標に値するものなので自称<独立アンプ師>とした次第です。今後もこの名前に負けないように、手造り・音にこだわってユニークなアンプを作っていきたいと思っています。


アステカの連絡先:045−785−1491





2009年4月21日

<歯磨きは三文の得>
 歳を取ると歯が弱ってくる。ここ数年歯医者にお世話になっている。一昨年はブリッジしていた奥歯がだめになり、昔ならば入れ歯になるところ最近の歯科医療の発達でインプラントの歯を入れた。テレビなどではインプラント治療が上手くいかない方もおられるようだが、私の場合はまったく問題なかった。さらにこんどは別の歯も歯周病治療の手術を昨年受けた。歯が抜けるほどではなかったがこのままではいつかは歯が抜けるということで、早めの治療を行った。ただ問題なのはこれらの治療は保険が利かないということで、ちょっとの出費になった。先生はアメリカで勉強してきたという女医さんで、腕もよさそうだから今回の治療で歯の心配がなくなり、今も定期的に歯の検診・歯垢取りの治療を受けている。
 しかしこの検診でいつも歯の磨き方が悪いと言われている。まだ良く磨いていると言われたことがない。私の場合これらの手術を受ける前でも毎食後(3回)は必ず歯磨きはしていたのであるが、それでも歯は弱っていた。だから今も注意を受けている。人には歯磨きの癖があるそうで、歯を丁寧に磨かず上手く磨かれていない歯があるようだ。だから治療の度に歯磨きを注意されている訳だ。それで今は4種類の歯ブラシとデンタルフロスを使用することになってしまった。
 まずは普通の市販の歯ブラシで磨く。毛先が細くて柔らかいものを使う。硬い毛は歯茎を傷めるらしい。昔はごしごしと磨いていたが、今はやさしくバイブレーションのような磨き方にしている。更にもっと毛先の小さい奥歯と歯の裏が良く磨けるブラシで磨く。それが終わると2種類の歯間ブラシを使う。このあと今度はデンタルフロス(糸)で歯の間の歯垢を取る。これだけの歯磨きをすると、歯磨きの時間が長くなる。面倒と思うのだが歯が無くなることを思えば少しは我慢する。特に夕食後の歯磨きは風呂の中でゆっくり磨く。湯につかり体を温めながら歯を磨く。こうすると焦らないで丁寧に歯を磨ける。
 今度の検診でまたどんな評価を受けるか分からない。でもこの丁寧な歯磨きを通して得られたことがある。ひとつは当然ながら歯の状態が良くなることである。これは当然として2番目のメリットとして、面倒な歯磨きをすると間食をしなくなることである。歯磨きに時間がかかると歯磨きの後、食べ物を口にしなくなる。特に夜は歯を磨くともう水分以外は何も口にしない。実はこの間食をしないことがダイエットに役立っているのではないかと思っている。食事は普通に食べているが、最近は体重が増えない。これは歯磨きのお陰かなと思っている。3番目のメリットとして今年経験したことだが、口をきれいにすると風邪をひかない。これはテレビで知ったのだが、口の中の菌は咽喉の粘膜を破壊し、それが原因で咽喉が腫れ、風邪に至るらしい。これはある老人ホームで実際行われていて、歯磨きが風邪の感染を防ぐことが検証されているらしい。私もこの冬は初めて咽喉が腫れることがなく、とうとう風邪をひかずに過ごせた。毎年咽喉を腫らして寝込むのだが今年は丁寧な歯磨きの効果か咽喉はやられなかった。

 かように丁寧な歯磨きが3つの効果が得られたのではないかと思っている。皆さんも保険の利かない治療を受けないため、ダイエットのため、風邪をひかないために丁寧な歯磨きをしたほうが良いですよ。



★コラムで紹介したゲイン可変型6DJ8ラインアンプの特性を載せました。<商品とサービス>のページを参照して下さい。





2009年4月11日

<お詫びと訂正>
 4月1日のコラム<イコライザー、ヘッドアンプ考>と3月21日のコラム<ノイズ(雑音)の考察>において、ノイズの計算に間違いがありました。ここで改めて訂正いたします。
 ことの発端は別の角度からノイズの計算をしていた際、どうも値がおかしいのではないかと再度計算をし直したら間違いがみつかったという次第。訂正は下記のとおり

<ノイズ(雑音)の考察>では
 「このラインアンプで測定し、また計算で求めたIEC−651A特性の帯域で制限された時の1KΩ抵抗のノイズはe1K≒1*10−6V=-120dBVとなる。」に計算間違いがありました。
 正しい計算結果は
 「計算で求めたIEC−651A特性の帯域で制限された時の1KΩ抵抗のノイズはe1K≒4.35*10−7V=-127.2dBVとなる。」が正しい計算結果でした。
 よって6DJ8の等価雑音抵抗(625Ω)がIEC−651A特性の帯域制限された後のノイズレベルは、抵抗値の√に比例するから
 6DJ84.35*10−7*√(625/1000)=3.44*10−7V=-129.3dBVとなります。
 この値をみると以前ラインアンプの測定で求めた6DJ8の入力換算ノイズレベルは-121.3dBVであったので、値は一致せず約8dB近い差があることが分かった。
 真の原因は分からないが、入力換算ノイズとはアンプ全体のノイズをもし入力に入力されるノイズに置き換えたらという定義になっているので、入力段だけでなくその後のアンプ回路のノイズや電源から注入されるノイズも考えられるので、この部分の原因の考察が必要と考えられる。よって3月21日のコラムに書かれた結論「ノイズの計算に一致を見た」という表現は訂正します。「計算結果は一致をみず、まだ原因考察が必要だ」が今の結論です。

<イコライザー、ヘッドアンプ考>では
 こちらも訂正します。6DJ8の持つノイズ特性は理想的には−129.3dBVになる可能性があるので、<イコライザー、ヘッドアンプ考>で計算したイコライザー(EQ)やヘッドアンプ(HA)のノイズレベルは更に下がる可能性があることが分かる。ただしこれは前述した実際のアンプでのノイズが悪化した原因がはっきりしないと何ともいえないが、6DJ8の持つ可能性からすれば、EQやHAでのノイズは更によくなると期待が持てる。

単純な計算間違いで恥ずかしいことをしてしまった。これでご迷惑をお掛けしたようなことはないとは思っているが、これからは慎重に計算してからコラムに載せるように気をつけます。









2009年4月1日

<イコライザー、ヘッドアンプ考>
 また前回に続きノイズの話。私の性格からかひとつのことをしつこく考える性質で、ラインアンプで使った6DJ8という球(真空管)をイコライザー(EQ)やヘッドアンプ(HA:MCカートリッジ用のアンプ)に使ったらどうなるかを考えてみた。あくまで机上での大まかな推測だから実際につくるといろいろ理屈どおりいかないかも知れないが、最初にいろいろ見通しをたてて設計するのは楽しい。

 これまで真空管で発生すノイズは真空管のgのルートに反比例することが分かった。現在入手し易くてgの大きな球は6DJ8と思われるから、この球でEQやHAを設計したらどんな性能(ノイズ)のアンプが出来るかを考えてみる。

 回路で発生するノイズというのは初段で発生するノイズが優勢になる。だからまず6DJ8を初段に使うことを前提に考えると、EQやHAをローノイズアンプに設計する方法というのは初段のgを出来る限り大きくすることである。
 前回ラインアンプで測定した6DJ8のgは約4m/Ωと算出されたが、この値はもっと上げられる。真空管のハンドブックを見ると6DJ8のgの最大値は12.5m/Ω(I=15mA時)となっている。私の設計したラインアンプでの6DJ8は4m/Ω(I=5mA)であり、この真空管の電流Iを増やせばもっとgが増えることが分かる。例えばI=10mAにすればgはおおよそ倍のg=8m/Ω位が得られることが予想される。さらに真空管をパラ(並列)に接続してアンプを構成すれば更に倍の16m/Ωのgが得られそうだ。それではこの時のノイズはどの程度になるかを考えてみよう。
 前回で分かった6DJ8のIEC−651A特性の帯域制限された後での入力換算ノイズレベルは−122dBVとなっている。よって電流を多く流してgを倍にすると3dB改善され−125dBVになり、更にパラに接続することにより更に3dB改善され−128dBV程度までノイズレベルが下がる。真空管のEQとしてはかなりのローノイズのアンプになる。MMカートリッジの出力レベルが5mV(−46dBV)程度と考えると、SN比は82dB近くになる。これは高級なFMチューナーほどのSN比の実力になる。ここまでいけばノイズは問題にはならないだろう。(パラにしなくても十分な性能であるが、上を狙うならパラにする。)

 ではHA(ヘッドアンプ)はどうだろうか。MCカートリッジの出力はMMカートリッジの出力の1/10程度まで下がるから、理想的にはノイズも1/10(−20dB)も下がれば良いのだが、そこまで下げるのは容易ではない。製作可能な範囲で考えてみて、例えば真空管8パラを考えてみる。6DJ8は2つの3極管がひとつのガラス管に入った双3極管と呼ばれるもので、8パラのとき実際真空管は4本使うことになる。先ほど2パラで−128dBVだから4パラで−131dBV、8パラで−134dBVとなる。0.5mVの出力時でのSN比は68dBとなり、使えるノイズレベルにはある。(SN比は中級FMチューナーレベル)
 次にこれを実現する電源構成を考えてみると、電流は初段だけで片チャネル10mA*8本=80mA必要で、更に次段も同様なローノイズを考えると片チャネルで約100mA、両チャネルで200mAの電源が必要となる。これはもうパワーアンプ並の電源トランスが必要になる。しかも電源のリップルは最小限にしなければならないからここにシリーズ型の定電圧電源をもってくると、この定電圧電源にはヒートシンクが必要になる。またヒーター電源も8本分でも3A近くの電流が必要になってくる。ここも直流点火が必要だから定電圧電源にするとちょっと規模が大きくなる。もし作るとすればパワーアンプ並の電源トランスとヒートシンク付き定電圧電源回路はアンプ回路とは別シャーシーに組み、アンプ部だけ離した構成にするのが良いかもしれない。

以上お話した構成はあくまでノイズを中心に考えてみたEQ、HAであるからこれで上手くいくかどうかは分からない。実際にはカソード抵抗の影響もありこれほどノイズは下がらない。でも真空管を使ってEQやHAを考える時にはこのような考察が必要だ。EQなどは比較的簡単にしかも性能の良いアンプが期待できそうだ。HAは面白いが規模といい、コストといい現実的でないかもしれない。
 アンプを設計する時、最初にどの程度の性能を持つアンプを作るかを決め、こんな見通しを考えている。このようなことを考えているのがエンジニアにとっては楽しいひと時だ。







元のページに戻る