手造り真空管アンプの店




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店主コラム 2009年10月分〜12月分



2009年12月21日

<09今年を振り返って>
 もう今年最後のコラムになってしまった。昨年の年末のコラムは<今年を振り返って>というタイトルで書いている。だから今年も書いてみる。
 昨年はパワーアンプで高D.F(ダンピングファクター)アンプが出来たことで技術的な進歩があったと書いてあった。またゲイン可変型プリアンプを設計中でそれがどのようになるかを案じているコラムになっていた。自分で書いていながら一年も経つとその時の考えなどは忘れてしまっているが、このようにコラムに書くと私には日記のようになり、今文章を読み返してみるとその時の気分を思い出させてくれる。一年過ぎてこのゲイン可変プリアンプはその性能の優秀さを示してくれて、これが今年最大の技術進歩となった。昨年の今頃はどうなるかと心配していたが、今はそのアンプの優秀さが証明でき満足していて、ホッとした気分になっている。
 それにしても最近は年月の経つのが早い。一瞬のうちに一年が過ぎた感じがして、自分が何をしたのか直ぐには思い出せなかったが、何とかこのコラムを書くために思い出してみると次のようになった。 

一番の成果はやはりゲイン可変型反転アンプの開発である。今年お客さま用に設計・製作しながら、さらにノイズに関してその理論をレポートしたのが大きな成果であった。これまでこのようなプリアンプを解説した文章はないと思うからなお更満足している。一年のうちこれが大半の時間を割いていた。

地元のコーヒー店<アステカ>でのCDコンサートの開催。これはMYプロダクツの真空管アンプを聴いていただく良い機会を与えていただいた。これからも楽しい企画をして出来る限り永く続けられるようにしたい。

夏にスイス・フランスを旅行したこと。今回は晴天に恵まれ楽しい旅になった。スイス・グリンデルワルドでも晴天に恵まれ素晴らしい自然に接することができた。(すでに行ったことのある人からは晴天なのはかなりラッキーだと言われた)フランスの田舎を旅し、パリも一人でのんびりと美術館を見ることができた。こんな経験は今後はもうないであろうと感じた。仕事も大切だが時には見聞を拡げるのも人生には必要だ。

4月に町内会の地区理事の仕事が無事終わったこと。これはこれまで地元の人達との接点が無かったが、町内会の仕事を引き受けたことにより地元での人脈が増えた。顔を知っていただきまた貴重な経験をさせてもらった。

 仕事と私事と混じっているが、今年はこんなことが経験できたのかと思う。生きていく上で毎年振り返る必要はないのだが、コラムへの記述も日記のように使え、その時の心情が書かれて後で読み返すと面白いから書いてみた。

 今年は喪中の連絡を近年になく多くいただいた。そんな年齢になっているのだろう。来年は何をするのか自分でも分からない。ただ真空管アンプの音が良くなり、商売がより繁盛すればそれでよい。もちろん家族が皆健康であることが当然前提であるが。女房から仕入れた情報では来年は私の星座は運勢が良いらしいのでそれを信じて頑張ってみたいと思っている。

 今年もサイト、コラムへのアクセスありがとうございました。また来年も宜しくお願いいたします。








2009年12月11日

<弱者の戦略>
 先週サッカーWカップの組み合わせが決まったとの記事を読んでいたら、日本が対戦するグループの他チームは全て体力スピードがあり、日本が一番苦手とするチーム対戦だというような内容の記事が書かれていた。日本人の体力が世界に比べ劣っていること位スポーツの世界ではあたり前のことで、今更言われる必要のないことだ。
 野球でもテニスでもオリンピックでも体力で勝負したら敵わないがそれでもアスリートは工夫して勝負している。そんな現実をサッカーだけに言い訳をさせてはいけないように思うのだが。選手や関係者はそのように思っていないかもしれないが、メディアだけが書いているだけかもしれない。例えばWBCで組み合わせが決まっても日本人の体力が劣っているから劣勢だという記事などは無かったように思うがどうだろう。実際今年のWBCではホームランの数は少ないのにも拘らず世界一を勝ち取った。松井がいなくても優勝できた。
 「メジャーリーグのNYヤンキースは松井がいなければ世界一になれなかったが、WBCの日本は松井がいなくても世界一になれた」のである。ベースボールではなく日本の野球を貫いた結果だという意見もあった。テニスでは引退した杉山愛さんなどはシングルスではトップ10には入れないがダブルスでは優勝するし、まだ記憶にあたらしい北京オリンピックでの男子400mリレーの銅メダルなどは工夫が生んだ勝利のような気がする。運も味方したという意見もあるが、運があれば勝てる実力があったということで、体力だけで勝負していないところがすばらしい。
 野球の野村元監督は弱者の戦略みたいなことをよく言う。自分はいつも弱い球団を歩いてきたので、如何にそこで強者を倒すかを常に考えてきたという。今年の楽天の快進撃もその結果なのだろう。才能だけで勝負したら負けてしまう。だから相手を徹底的に調べる。打者、投手の心理、癖を読みそれに対応した勝負をする。彼は頭を使えと言っている。だから野球で大切なのはキャッチャーだというのが彼の持論だ。大型選手を集めることではない。日本人のスポーツにはそのような駆け引きを楽しむ面白さもあるように思えるのだが、単に体力が劣っているから劣勢だけではつまらない。

 スポーツにそれほど興味を持たない私が何故こんなことを書くのかと言えば、私の商売も弱者の理論みたいなものを考えているからである。数あるオーディオメーカーの中でどの様にしたら勝てるのかをこれでも考えている。小さなMYプロダクツをどうしたら勝てるのかと考えている。他社とは視点を変えて特長ある製品造りを目指しているのだが。

ところで私にとって何を勝負しているのだろう。売り上げ、利益、会社規模どれも違う。

 さて私にとって勝負とは何なのだろう?






2009年12月1日

 <次のテーマ>
 先週<ゲイン可変型反転アンプのノイズ解析>のレポート(E.R)が書き終わり今は少しホッとした気分でいる。別にレポート提出の義務はないのだが、ある開発の結果をまとめなければという何か脅迫観念のようなものがあって、いつか書かなければという思いがありそれが終わり一安心した次第である。これはどうもサラリーマン時代の習性からか、何か新しいことをした後は忘れないようにするためとか内容を整理するためとかでレポートにまとめておきたくなる。
 今回のレポートは自分なりには面白いレポートになったと思っているが、はたして何人の方が面白いと読んでいただけるかは疑問のところもある。私が面白いと思うのは反転アンプのノイズ特性がオーディオのプリアンプに使用するという方法に相性が良く合っているということだ。通常プリアンプはボリュームを絞って使用する。この使い方がゲイン可変型反転アンプの特性に良く合っているということだ。だからこのような使い方をすればかなりのローノイズのプリアンプになることを証明できた。これまでこういうことを述べた方は恐らくおられないと思うので、今回それを初めて書いたレポートが面白いという訳である。誰も面白いと言ってくださらないので自分で言っているのだが。

 さてこのプリアンプのノイズに関しては一休みにしたい。この1年くらいはこのノイズについていつも頭から離れなかったのだが、やっとスッキリさせてくれた。だからしばらくはノイズについてはお休みにしたい。
 そうやっていたが今度は電源について疑問が湧いてきて次のテーマは電源にしようかなとまたエンジニア魂が持ち上がってきている。最近の私の設計するパワーアンプにはチョークコイルを使用せず、半導体によるリップルフィルター回路を使用している。何故かといえばこちらの方が低インピーダンスの電源になるからだが、この回路もいろいろ制約がありまだ性能を上げる必要があるが、最近ちょっとしたアイデアが出てもっと性能が上がるのではないかという考えが持ち上がってきた。まだアイデア段階だからどうなるかは分からないが面白そうな回路ができそうだ。

 物を造るのは楽しいが、さらにそこに新しい考えが入り他人と違った良い物が出来ればもっと楽しい。今は少し休憩してアイデアを暖めてまた何かに挑戦してみたいと思っている。
 先週からドフトエススキーの「罪と罰」を読み始めた。去年「カラマーゾフの兄弟」だったので今度が「罪と罰」になった。何でこれを読むかの理由はない。しばらくは研究テーマを離れて本を読みたくなった。







2009年11月21日

<レポート提出>
 今、ゲイン可変型反転アンプの
E.R(Engineering Report)を書いている。このプリアンプのノイズ解析のレポートだ。なかなか進まないため、このコラムの執筆も遅れてしまった。数日でレポートをまとめる予定。
 考えてみればこのゲイン可変型反転アンプの開発は2年以上かかっている。これだけ時間がかかったのは途中パワーアンプの設計などもしながらこのプリアンプを解析していたからだが、昔のこのコラムを読んでみるとこのプリアンプの変遷が分かる。

●2007年4月:アキュフェーズのプリアンプからヒントを得て自分の真空管DCプリを改造して初めてゲイン可変型反転アンプを作る。

 「減衰型プリアンプとゲイン可変型プリアンプのS/N比の比較」レポート発行

●2007年10月:反転アンプの回路解析を行う。この回路で生ずる残留出力について解析し、その解決方法を示す。また真空管で作る場合のゲイン可変型反転アンプの問題点と解決方法も示す。

 「ゲイン可変反転アンプの回路解析」レポート発行

 ●2009年1月:初のゲイン可変型反転アンプのプリアンプを発売する。

「アンプのノイズ測定方法」レポート発行

2009年11月
 「ゲイン可変型反転アンプのノイズ解析」レポート発行予定

今回のレポートはこのアンプのノイズ特性についてレポートした。アンプノイズについて理論解析、ローノイズ真空管アンプの設計法、測定結果などこのプリアンプの開発で得られた技術を公開してみた。私には結構良く出来たレポートと思っている。なかなかノイズに関するレポートはなく、特に真空管アンプでは皆無に近い。それに真空管プリアンプでもその中にも技術が一杯詰まっておりその性能が高級プリアンプに負けないことを示したかった。

ここまでこのアンプの基本を検討しておけばあとは回路を変更してもその応用で狙った性能が出せるようになる。一応これでこのプリアンプのレポートは最後かな?

あと数日でレポートを発行します。
(11月24日に発行しました。E.R<ゲイン可変型反転アンプのノイズ解析>をご覧下さい。)






2009年11月11日

<日本の原風景>
 先月長野の温泉に行ってきた。女房のお母さんを連れての温泉旅行だった。場所は長野県の高山温泉というところ。長野市、須坂、小布施にほど近い山の中の温泉である。ここは今回で4度目の宿泊となる馴染みのところだ。何故行くかといえば旅館の食事やサービスが良いので横浜からはちょっと遠いが温泉でおいしい物を食べるには裏切らない旅館だからだ。過去3回の訪問は全て夏であったが今回は初めて秋に訪れてみたのだがそれが良かった。これはあとで説明する。
 旅の目的は特にないが、いつもここにくると戸隠に行き蕎麦を食べる。これはいつも同じ。戸隠そばは有名なのでいくつかの蕎麦屋さんを食べ歩きしている。今回は少し足を延ばして鬼無里(きなさ)に行き「おやき」も食べようということにした。それにこの戸隠から鬼無里に抜ける道の途中に大望峠という非常に景色の良いところがあり、これを是非お母さんに見せてあげたいと思っていた。まあ山の景色を見て、おいしい物を食べ、温泉に浸かるという当たり前の温泉旅行をして、親孝行をしようという訳だ。

 今回紅葉も狙って秋の長野を楽しもうと計画したがこれが大正解だった。何故かその一番は蕎麦が非常に上手かったからだ。この時期「新そば」が出回っている。最近は地元の人に教えていただいた小さなお蕎麦屋さんに食べに行くのだが、ここはまったく有名店ではないのだが、この時期どの蕎麦屋さんも混んでいた。1日目の昼は地元(須坂)の蕎麦屋に入ったが最初の一口で蕎麦が上手いと感じた。以前にもその店には入っていてそんなに感動しなかったのだが、今回は蕎麦が上手い。やはり新蕎麦だからなのか。お客様で店も混んでいる。この時期蕎麦を食べに来る人が多いようだ。それに非常に安い。隣の人を見ていたら、東京の5倍くらいの大盛りが850円と書いてあった。この味この量この価格満点だ。来年はそれを注文したい。2番目はまた食事だがこの季節のきのこ、りんごなどの野菜・果物も大変美味い。旅館での長野牛やマツタケで食事も堪能した。

 そうだ今回のテーマは日本の原風景だ。これは内緒にしておきたい場所だが旅の目的のところで書いた戸隠から鬼無里に抜ける道の途中にある大望峠にすばらしい景色を見せてくれる所がある。ここから見る風景は何故かおとぎ話に出てくる風景をイメージさせてくれる絶景なのだ。3種類の山の風景を一望できる。右手には戸隠の岩山、手前は鬼無里の里山の風景、奥は北アルプスの山岳風景とまるで絵に描いた風景がそこにある。今回は時期的に北アルプスの山々が雪の頂きを見せていなかったので、ちょっと色合いが寂しい感じがしたが、新緑の頃になると本当に絶景となる。ここは私にはとっては<日本の原風景>と勝手に思っていたところ、家に帰ってきて数日したころ朝日新聞に<これが日本の原風景だ>という見出しで記事が出ていた。内容は唱歌「故郷」が生まれた場所についての記事だった。その生まれたところすなわち原風景と言われるところが、実は小布施の隣の中野市だった。「故郷」を作詞した高野辰之は中野市の生まれだったようである。そこが「兎追ひしかの山、かの川」なのである。私の好きな大望峠からもそんなに遠くないところが日本の原風景であると記事になっているその偶然に少々驚きもしたが、私の感覚も間違いではないなという多少のうれしさも感じた。

 秋の長野は素晴らしい。食べ物は美味しいし、景色も素晴らしい。実りの秋に出かけるのが山はやはり良いようだ。そしてそこには日本の原風景がある。
 この絶景ポイントあまり人には教えたくないので他言無用にして下さい。



大望峠からの景色
手前が鬼無里の里山、遠くの山が北アルプス。時間は昼近くだったので少しモヤが出てしまいました。朝早く来れば良かったと思っています。
初夏の景色も素晴らしい。









2009年11月1日

<ゲイン可変型反転アンプのノイズ特性>
 最近このHPの見出しのページの内容を少し変えた。以前は高D.Fのパワーアンプを紹介していたが、今回プリアンプの紹介も加えた。手前味噌だが世界最高と思われる特性をもつパワーとプリアンプが、MYプロダクツの製品にあることを紹介したかったからだ。特にプリアンプについては何も説明なしにいきなり見出しに載せてしまったので、何の事だか分からない方もいらっしゃると思うので今回少し説明をしてみようと思っている。

 以前このコラムに書いたようにゲイン可変型反転アンプについて特にボリュームを絞った時、すなわちゲインが−∞の時のノイズ特性について考察を書いた。文献によれば(理論によれば)反転アンプで帰還抵抗がゼロの時出力に表れるノイズはアンプの入力換算のノイズ(ここでは初段の真空管のノイズ)と一致し、反転アンプに必要な入力抵抗(初段の真空管のグリッドに繋がれる直列抵抗)のノイズは現れないことになっている。このノイズを測るには直接アンプの出力を測定器に繋げれば測れそうであるが、実際にはここに現れるノイズレベルは測定器の測定限界以下となってしまい、そのためには測定治具が必要であることを説明し、その治具アンプの設計についても解説した。(ボリュームを上げていくと次第に入力抵抗の影響が現れ、VolMaxで入力抵抗の熱雑音はゲイン倍され出力に現れる。)
 今回その治具も完成しゲイン可変型反転アンプの真空管アンプを測定したところ、やはり理論どおりゲインを絞った時アンプ出力には入力抵抗のノイズは現れず、初段真空管のノイズのみが出力に現れることが確認できた。ただし今回の測定ではまだ外乱の影響例えば非常に小さいがハム成分とフリッカーの影響が取りきれず完全なホワイトノイズだけの測定値にならず完全に理論値までに至っていない。しかしながら測定値のレベルから見て理論が正しいことが今回確認できたので、今回の見出しの紹介となった次第である。

 もう少し説明を加えると、今回設計したゲイン可変型反転アンプでボリュームを絞った時、出力に現れる(入力ではない)ノイズレベルは−120dBV(IHF-A)程度になっていた。−120dBVというのは1μVのことで、EQアンプの入力換算ノイズレベルくらいの値になっている。またこれは通常音楽を聴くボリュームの位置たとえば9時くらいの位置でも大きく変わらずやはり−120dBV近辺の値を示していた。
 世の中にある高級プリアンプのスペックをみるとSN比が105〜110dB(@1V出力)だからプリアンプ出力でのノイズレベルは−105〜−110dBV(IHF-A)くらいと思われる。更に真空管アンプに至っては−93〜−98dBV(IHF-A)くらいに更に悪化している。従来のプリアンプではこの値はボリュームを絞った時でもその値(ノイズレベル)は変わらないから、スピーカーからはこのレベルのノイズを聴いていることになる。それに比べ今回開発したゲイン可変型反転アンプはボリュームを絞った時にノイズも下がり、通常聴いているボリュームの位置例えば9時近辺でもノイズ出力レベルが−120dBV近い値なので、従来のアンプに比べ−10〜−27dBも改善されていることが分かる。
これは半導体高級アンプより10dBも改善されており、真空管アンプの比較ではライバルとは言えない位である。

 アンプの音というのはノイズレベルだけでは決まらないかもしれないが、ここまで下げると再生音の雰囲気が大きく変わってくる。静粛な空間から楽器の音、響きなどが正確に伝わり新しい次元の音になってくる。

 MYプロダクツが開発したゲイン可変型反転アンプはオーディオの世界では余り見かけないし、ノイズの理論を説明してくれた製品も無いように思える。初段に高gmの6DJ8を用いてローノイズ化し、更にゲイン可変型反転アンプにより実用状態(ボリュームを半分以下に絞って聴いている時)のノイズを下げ、これまでにない最高レベルのローノイズ真空管プリアンプを設計した。だから私は今回新しいプリアンプの提案としてこのH.Pに紹介を載せてみた次第である。








2009年10月21日

<初めてのCDコンサート>
 前回のコラムでも紹介した<真空管アンプで聴くCDコンサート>が10月17日に開かれた。会場に機材を持ち出してお客様に聴いてもらうデモは初めてのことだったので、事前に選曲や話の内容をいろいろ吟味し当日に臨んだ。
 午後6時に機材の搬入を始めた。当日はオーディオ仲間のTさんが手伝ってくれ、機材輸送用の車も出してくれた。それまでに我が家のスピーカー(B&W ノーチラス805)とその台、ゲイン可変型プリアンプ、6CA7パワーアンプそれにCDプレーヤー(SONY CDP−XA50ES)などはエアークッションで養生を済ませておいた。会場は地元カレーとコーヒーの店<アステカ>さん。最初に予定していた場所にとりあえずセッティングしてみる。スピーカーの後ろは開かない大きなガラス窓になっていて、音響的には全反射の壁になる。カーテンもないから反響が少し大きいかなと思ったが、我が家より大きな部屋ではむしろこの位の方が音が前に出てくるだろうと予想した。セッティングが終わりまず音を出してみた。アンプは10Wしかないので音量が一番心配されたが、以外と大きな音で聞こえる。音が前に出てこないと音楽はつまらないから音量の心配は無いようだ。スピーカーの位置を幾分変えながら音を聴く。やはり後ろの壁(ガラス窓)の影響もあり少し低音の切れが我が家より悪い。我が家では後ろの壁は下に抜けているし、またスピーカーにスパイクを履かせているが今回スパイクは使わなかった。アステカさんの床を傷つけたくないからだ。そのためか少し低音の歯切れが幾分落ちる。しかし低音の量は十分でているし、SN感も悪くない。いつも聴いているCDも大きくその音質がずれていない。これでOKだ。

 準備もひととおり終わり開始時間を待っていると数人のお客さまが入ってこられた。さあこれからやるぞと意気込んでいると、時間の8時になっても5人しかお客はこない。そうしているうちにアステカのマスターが「では始めましょう」とスタートすることになった。それまで意気込んでいた気持ちが少し萎んでしまったが、時間通りにスタートすることになった。演奏順序は予定していた曲目を順番どおりにかけていく。3曲目くらいになると途中からお客様が入られ合計9名になった。アンプも順調だ。音も悪くない。私はお客様と対峙して座っていたのでお客様の反応をみることができたのだが、皆さん目をつぶって集中して音楽を聴いている。あくびすることなどなく真剣に聴いている。一曲の長さは長くて5分程度にして、クラシック、ジャズの弦楽器、ピアノ、ボーカルなどの曲目を私なりの説明を付けて聴いていただいた。途中約10分のコーヒーブレイクを入れてCDコンサートは進められた。予定の曲のうち1曲だけをキャンセルしたが私が持ち込んだCD9曲とお客様持ち込んだ曲3曲を予定時間の5分延長の1時間35分で無事プログラムが終了した。

 実際お客さまの感想は分からない。ただ皆さんは真剣に聴いていただけたのは事実だった。途中このコンサートを知らないお客様が入ってこられたが、皆さんが真剣に音楽を聴いているので入るのを止めてしまったようだ。

 こんな風に初めての<真空管で聴くCDコンサート>は終わった。予定の半分の人数しかお客様が集まらなかったのが少し残念だったが、私としてはMYプロダクツの音を聴いていただく機会を与えていただき、無事に終了することができたことで十分満足している。多分音もそれ程悪い印象を持たれることも無かったように思う。ノーチラス805が朗々と鳴っていて、MYプロダクツの真空管アンプの音を十分アピールできたと思っている。アステカのマスターもまた次回を開きましょうと言って下さるので、次回はもっと宣伝に努め、集客にもっと力を入れようと思っている。


  
2つのポールのところが  機材類         私
スピーカーの位置








2009年10月11日

<イベントの季節>
 この時期はキンモクセイの香りが漂い外での散歩は心地よい。この匂いが漂うとオーディオのイベントが始まる。先週インターナショナルオーディオフェアに行ってきた。毎年オーディオの友人と有楽町に出かけて高級オーディオで音楽を聴き耳の肥やしにしている。今年の印象は特に目新しい(耳新しい?)ものは無かったように思える。新しい技術で注目を引くような製品は見当たらず、また音も大分聴き慣れたためか驚くような印象をもったものはなかった。各ブースを回っていてその時に良いサウンドの試聴に当たれば良いのだが、時間が限られた見学なので常にベストな試聴ではない。そんな条件からか今回は特に目(耳)を引く製品というものは無かったように思う。最近の超インフレ価格の製品を見て(聴いて)いても、もう欲しいという感情は生まれない。何か試作品を聴いているような感じになる。あまりにも価格が高く自分の欲求対象外の物になってしまっている。
 今回は音を聴くのと同時にデモの仕方も気になった。それは今度MYプロダクツでも私が造った真空管アンプを使用してアンプのデモをするからだ。選曲、製品の説明、曲の説明、演奏者の説明など、これまであまり気になっていなかったところを注目してみた。さすが名の売れた評論家は説明が上手い。メーカーの人の説明より注目を集めるのが上手い。さすがそれが商売だからなのだが。この点はちょっと参考になった。

 10月17日(土)夜8時より地元能見台の<アステカ>で初のCDコンサートを開く。もちろんMYプロダクツの真空管アンプを使ってだ。パワーアンプはアダージョの改良版でD.Fが43以上のものを使う。これは真空管アンプでは多分世界最高のD.Fのアンプだ。さらにプリアンプはゲイン可変型プリを使う。これは今測定し直ししているところだが、ボリュームを絞った時にプリアンプの出力ノイズレベルが−120dBV以下となる、これも真空管アンプでは世界最高のノイズレベルを持つプリアンプだ。プリ出力でこのレベルのプリアンプは聞いたことがない。半導体アンプでも聞いたことがない。プリアンプ出力でのノイズレベルがEQアンプの入力のノイズレベルと同じ位のレベルだ。だれもこんな性能のパワー、プリの真空管アンプの音は聴いたことがないだろう。

 選曲と説明のストーリーはだいたい決まった。どのようなお客様が参加されるか分からないが、最初は私の好みでやらせていただくことにした。いろいろ考えても仕方が無い。アンプも音の改良を行っている。プリアンプの改良も実施しほぼ満足できる音になったので後はコンサートの準備とお客さまが何人集まっていただけるかだ。アステカのマスターが宣伝してくれているので、もう何人かの予約は入っているようだ。ご興味がある方はどうぞアステカでの真空管アンプで聴くCDコンサートにお出で下さい。


「真空管アンプで聴くCDコンサート」

日時:2009年 10月17日(土) 20時〜21時30分

会費:500円(ドリンク代)

会場:アステカ店内(能見台駅そば)

定員:20名


問い合わせ:アステカ 045−785−1491








2009年10月1日

<ロマネコンティ>
 この夏フランス、スイスと旅してきた。その中でフランスはブルゴーニュ地方を訪れた。ブルゴーニュと言えばボルドーと並び世界的なワインの産地として知られているところだ。私は特にワイン好きというわけではない。フランスの田舎を旅したくてブルゴーニュ地方を訪れただけ。ムルソー、ポマール、ニュイサンジョルジュ、ヴォーヌロマネなどワインの産地として有名な村を回ってきたのだが、と言ってもただ一面ブドウ畑だけで、その田舎の景色を見たくて訪れ、のんびりしたその景色を楽しんできた。
 そのなかでロマネコンティの畑を見てきたのが今回の話。特にワインに興味がない私にもロマネコンティの名前くらいは知っている。ワイン一本100万円とか言う最高級のワインを生み出すワインのブランドくらいは知っていた。その畑を見てきた。
 その畑の広さは野球場ほどの広さではないだろうか。低いレンガの塀に囲まれていて、広大な畑ではない。だがこの畑から産出されるワインが最高級ワインとなり、狭い道を隔てた隣の畑ではもうブランド名が異なり値段も安くなってしまうそうだ。この畑だけから作られるワインが超特級のワインとなり隣の畑はランクが落ちると言う。理由は畑の斜面が微妙に異なっており、土壌の栄養、水分などが微妙に異なりロマネコンティが非常に良い条件を満たした畑であると言うらしい。

 本当にそうだろうか。世の中には昔から続いている有名ブランドは沢山ある。多くは形の美しさや性能の良さを誰にも負けない形で提供しており、それを長い間綿々と続けている。ではワインの場合畑の条件が良いからだけでブランドは保てるものだろうか。ワインの場合勝負は中身すなわち味ひとつである。ボトルのデザインを変えても評価はしてくれない。他のブランド商品ではデザインだけ変えて勝負することはできるかもしれないが、ワインはそれでは勝負できない。味だけである。またこの味というのは造り手が手を抜くと直ぐに分かってしまう。味だけで毎年良い評価を得るのは大変なことだ。ミシュランガイドで三ツ星を得たレストランが長い間その名声を保つのは大変なことと同じで、ワインの評価を保つのは大変なことと思う。まして同じような条件の隣の畑と勝負しなければならないのは厳しい。自然を相手にブドウの生育・味をコントロールできるのだろうか。

 味を毎年保つために努力をしているのは大変なことと思うが、何故ワイン一本に200万円以上の値が付けられるのだろうか。車が一台買える値段がワイン一本に付けられているようだ。それもビンテージの一本だけの値段でなくある年に作られたワインすべてにそんな値段が付けられているのだろう。農業もやり方次第ですごい宝の山を築くことになる。年間の生産数が5000本位らしいから、あの小さな畑から100億くらいのお金が市場の末端では動くことになる。

 実際畑を見ると世界的な有名ワイン畑が以外と小さい。ここからこういう超高値の商売の方法もあるのだなと感心した。農業分野で少ない生産から逆手に取って価値を高めている。すごいビジネスだ。

 MYプロダクツの場合、供給は多くできないが需要も多くないため価格が高くならない。もっと需要が増せば楽になるのだが。
 どうすればよいのだろうか。


    

左:ロマネコンティのブドウ畑正面。低い塀に囲まれた奥の一部分がその畑。
中:十字架の下にはRomanee Contiの名前が。
右:小さくて見えにくいが写真中央奥には二人がブドウの生育をチェックしている。









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