手造り真空管アンプの店




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店主コラム 2010年1月分〜3月分





2010年3月21日

<電源インピーダンスの測定>
 今電源回路の見直しをするため、電源インピーダンスの測定に挑戦している。挑戦などと大げさに聞こえるかもしれないが、これがなかなかどうして直ぐには上手く測定出来ない。その大きな理由は真空管アンプの電源というのは200V〜500V位までの電圧があり、この高電圧が測定に支障をきたしている。電源インピーダンスを測定する時この高圧の直流電圧に重畳されている微小な交流電圧(1mV以下まで)を測定しなければならない。このような微小電圧を測定する時増幅器(アンプ)が必要となるが、このアンプの入力に500Vもの直流電圧をかけたらアンプがすぐに壊れてしまう。だから測定には高圧の直流電圧と微小な交流電圧を分離して測定しなければならない。これが上手くいかないのである。それにこのインピーダンス測定では周波数はオーディオ帯域で測定したいため20Hzから100KHz位まで測定したいが、耐圧が高く100KHz位までの微小電圧を測定できるものを探さなければならない。これはコンデンサーで直流をカットすると低域で影響が出、抵抗分圧して測定するとプローブ容量の影響で高域で周波数特性が問題になってくる。

 電子式電圧計で測定出来ないかを検討してみたが普通の電圧計でも耐圧は150V位だし、特殊で高価な測定機でも350V程度のようである。オシロスコープでも耐圧は400V程度で、何とか波形を目視で測ることはできるが正確ではない。
 まあこんな具合にまだ正確に電源インピーダンスを測定できてはいないが、まずは測定してみようということで測定治具は作成してトライしている。治具回路はあるサイトで見つけたものを改良して作ってみた。これも正確に測定できる治具回路ではないが何とか使えるものだ。測定はオシロスコープによる目視測定にした。直ぐに測定するのに一番耐圧が高いアンプ回路を持っているのがオシロスコープだからだ。目視による測定だから20%位の測定誤差はあるがそれでもおおよその性能は見ることができる。

 測定回路はメヌエットの定電圧電源回路を測定した。その結果これまでもっと性能が良いと勝手に思っていた定電圧電源の性能が予想より良くなかった。それで実験的に回路を改良して更にインピーダンスを1/20程度に下げた。そして音を聴いてみた。それが断然良くなった。より音が滑らかになるし周波数特性がよりフラットに聴こえるようになった。これが大変化だった。これまで電源インピーダンスを測定していなかったがそれが間違いだった。測定が難しいので後回しにしていた。自分では性能が出ていると思っていたが、実際には高耐圧トランジスターを使用していて、それが以外と電流増幅率が低いようであった。ダーリントン接続にしたり定電流負荷にしたりしてゲインを上げ電源回路の負帰還量を増やして電源インピーダンスを下げてみたのである。これが音に大きな変化をもたらした。しかしこれはメヌエットのように増幅段がカソード接地回路なので電源の影響を受け易い回路を取っているのも原因があるかもしれない。MYプロダクツのプッシュプルアンプは差動増幅回路を使用しているのでここまでドラスティックに変わらないかもしれないが、今後の改良が楽しみでもある。
 メヌエットで聴くオーケストラは4Wのアンプとは思えない音になった。チャイコフスキー第6番<悲愴>を聴く。第3楽章でも破綻しないし第4楽章も優雅に鳴ってくれた。小出力シングルアンプでもオーケストラが十分楽しめる音になった。
 話はもどるがまだこの電源インピーダンスの測定方法は見つかっていない。アイソレーションOPアンプや高耐圧OPアンプなども調べてみたが、それでも直ぐには上手くいかないようである。

 今年はこの電源回路の見直しでまた何か得られるかもしれない。







2010年3月11日

<ホームパーティー>
 先月ある知人に誘われてパーティーに参加した。それは北鎌倉にあるその知人のお宅で開かれ、我々夫婦も誘われた。そのパーティーは知人(ホスト)の知り合いをお招きした会で、私などはホスト以外全員知らない方ばかりであった。来られたお客さまもお互い初めてお会いする方もいるようで、挨拶をしながら歓談している。このようなパーティーは面白い。通常日本のパーティーというと仕事上のパーティーではお互い知らない方と席を同じくすることはあるが、どうしても仕事つながりになり個人的に興味が湧いたり、新しい付き合いをするようなことはない。また個人的なパーティーや飲み会となるとこれは知り合いばかりということが多く、まったく新しい方と話をするようなことはあまりないものである。
 ホストをされた方は昔有名雑誌の編集長を務められた方で、今も雑誌関係の仕事をされている。普段はテニスとか会食でお付き合いをさせてもらっているが、やはり元編集長だけあって文化人である。書斎などを見せていただくと、その部屋の素晴らしさや読んでいる本などにも知性を感じさせられる。お宅自体もご主人の好みが多く反映されていて素晴らしい古民家風の味を出している。以前建築雑誌にも載った位だからその完成度は素晴らしい。
 そのようなホストが開催するパーティーだから中身も素晴らしかった。お客さまも出版関係、カメラマン、アナウンサーなど多彩な方であった。

パーティーにはお酒と料理が付き物だが、まずお酒は宝酒造の方がこのパーティーのために<松竹梅・白壁蔵>というお酒を用意してくれた。また料理は有名イタリアンレストラン<アルポルト>の片岡シェフがみずからそこでイタリアン料理を用意してくれた。こんなパーティーは夢みたいなものだ。お酒は美味しかった。宝酒造の方がいろいろ宣伝しながら注いでくれる。私はあまりお酒は強くないが、少し大目に飲んだが悪酔いしない。すっきり飲める酒だ。また料理は文句の言い様がない。出てくる料理は楽しみだし、美味しい。一番の良さは普通の家で一流料理をいただくのは気分がリラックスしていて、レストランでいただくより美味しく感じることだ。お酒も料理も会話も十分楽しんだ。

私がこのパーティーで一番の期待は料理であった。実際台所で調理しているところを見せてもらったり、料理の説明をしていただいた。片岡シェフはTVなどにも時々見かける有名シェフなのだがいつもニコニコした気さくな方だった。イカ墨スパゲティーを調理しているところを説明していただいが、それほど特別なことをしていないように思うのだが、出てきた料理はすごくおいしい。これがプロなのだろう。料理も一通り終わったあとで片岡シェフと話す機会があった。私が普段料理をしていると話をしたら「もし良かったら料理教室に参加されたらどうですか」と誘われた。それはイタリア料理だけでなくフランス料理や中華料理などもあり、特に魅力的なのがそれらの講師が一流シェフなのだ。もちろん片岡シェフもその一人である。それに生徒は男だけというのも惹かれた。一流シェフと男生徒の料理教室なんてこんな面白そうなことはない。 
 早速問い合わせたらすでに次回は予約で一杯とのこと。その後の教室に参加しようと思っている。どうせ料理を習うなら一流シェフから習いたい。家庭料理では面白くない。
 女房もこの企画に大賛成している。それは当然だ。私が習えば彼女は家でおいしい料理が食べられるからだ。

パーティーもたまには良い。今回のように新しい出会いがあるのはもっと楽しい。

いつかオーディオ仲間にも美味しい料理を振舞えるかもしれない。


追記
 私のお客さまがご自身のサイトでMYプロダクツ製アンプの長期使用の感想を載せています。そちらもどうぞ。
リンクページの<ぽこあぽこ>さんです。







2010年3月1日

<クレージーケンバンド>
 先日久しぶりにTV(NHK)でクレージーケンバンドの演奏を観た(聴いた)。クレージーケンバンドには楽しい思い出がある。9年ほど前にクレージーケンバンドの生演奏を聴いた楽しい思い出があったのだ。
 まだサラリーマンをしていたころ私はあるセミナーに参加していた。いろいろな分野の方をゲストスピーカーに迎え、その分野での専門の話を聞くセミナーだった。その時のセミナー参加者の中にある有名ファッションブランドの女性副社長さんと知り合うことが出来た。セミナーが始まる前の雑談でその女性副社長が「クレージーケンバンド知ってる?」と言う話題になった。回りの人達はほとんどこのバンド名は知らなかったが、我々夫婦はそのバンドのことを少し知っていて、ヒット曲も知っていた。それはその少し前FM横浜では地元のバンドとしてクレージーケンバンドの「せぷてんばー」という曲をよく流していた。それを我々は車の中で聴く機会があって、またその曲も「いい曲だなあ」と思っていたので記憶にあったのだ。そうしたらこの副社長は「今度このバンドの演奏会がある。誘うから一緒に行こう」という話になった。我々は喜んで返事をしたが、回りにいたファッション関係の他の社の社長さん達もこれに巻き込まれて一緒に見に行くことになった。
 演奏会の場所は鶯谷のキャバレーだった。1階に比較的大きなステージと観客席があり、2階にも観客席がある大きな場所だった。もちろんお酒も食べ物もある。初めて見る雰囲気の場所だったが、何故かある有名な作家さんも来ていた。この当時まだクレージーケンバンドは当然メジャーではなく、リーダーの横山剣もまだ横浜税関職員をしながらバンド活動をしていた時と思う。そんなバンドなのだが観客は多くほぼ満席状態だった。
 この演奏が実に楽しい演奏だった。楽しいというよりおかしいという表現がピッタリだった。ほとんどの演奏中我々の仲間は笑い通しだった。何がおかしいかといえば歌詞がおかしいし、本人は真面目に演奏していて、また演奏は実に上手いのだが何か垢抜けてなく、スマートではないのである。途中「なぎさようこ」女史が出てきたときなどは本当に笑い転げていた。誘ってくれた女性副社長以下、誘われた別の会社の社長さん達も普段の仕事と年齢を忘れて笑い転げて鑑賞していたのであった。これはCDを聴いただけではまったく分からず、ライブを見なければその面白さが分からないものだった。
 そんな思い出があるクレージーケンバンドを久しぶりにTVでみた。剣さんは少し太ったが歌は上手くなった。演奏は昔から上手かったしこれは変わらなかった。

最近TVのインタビューなどで歌の思い出や印象を街中で聞くと、「その歌に癒された」「その歌に勇気と夢をもらった」などという人が多い。私など歌で勇気や夢をもらった経験はまったくない。歌を聴いて強く感情を揺すぶられ、感ずるのは涙だけである。泣くと言うより潤むという感じだ。歌が非常に上手かったり、歌手がその場を支配してしまうときなど、こちらも歌手に引き込まれ潤んでしまうことがある。生演奏では鳥肌が立つことは多い。だから私の場合歌に感激した時は涙になるのだが、唯一違った経験をしたのがクレージーケンバンドだった。何せ1時間半くらいのコンサートほとんど笑い続けていた。笑うコンサートなどはこれしか経験したことがない。クラシックコンサートと対極のコンサートだった。

クレージーケンバンドもメジャーになり、コマーシャルを歌ったり、TVに出るようになったのはうれしいが、昔の弾けたパフォーマンスがなくなってしまったのも何か寂しい。先日のTVではあの有名台詞の「いいね!」が一度も聞けなかったのである。






2010年2月21日

<電源検討に思うこと>
 前回電源の予備実験のことについて述べた。オーディオなんてただの増幅器なので簡単だろうと思われる方もおられるだろう。しかし事は簡単ではない。だから今でもオーディオ市場というものが存在しているのだろう。でも一時のデジタル技術のような革新的なものという訳ではなく、どちらかというと重箱の隅を突付くような技術が多いようにも思える。前回のアンプの電源回路の実験と言っても何も革新的なものではないのだが、私には音と回路の関係を考えてみると、それなりに奥が深いし面白いのである。
 真空管アンプを何台か設計してみると音に影響する要素技術というものが見えてくる。これは設計者によりその捕らえ方が異なると思うのだが私にも見えてくる。これはスポーツにおける運動理論の捕らえ方が人様々であるのと似ている。例えば野球のバッティング理論というのが選手により異なるのと似ている。

私の場合真空管アンプに於ける音に影響する要素というのは回路(アンプ部と電源部)・配線・部品・その他の順となる。その他というのは例えば配置とか振動とかまだ私が実験・経験していない要素技術で関係しているかもしれないと思うものである。
 回路が音に影響するというのは理解され易いと思う。回路により特性が大きく変わる。歪・ノイズ・出力インピーダンスなど大きく変わるので当然音も大きく変化する。しかし真空管アンプの世界には何故か「シンプル イズ ベスト」と言って複雑な回路は良くないという風潮も一部にはあるようで、回路の重要性を理解していない方もおられるようだ。
 今私が検討している電源回路もそのなかの要素の一つで、これまで一般に使われてきた回路方式でそれで良いのかを見極めてみたいためである。
 次に2番目に挙げた配線の要素が音に影響するというのはすぐには理解されないかもしれないが、これは非常に大きく音に影響する。ポイントはグランドラインの処理にある。ここは今の測定法にはその差が表れないが音には表れる世界だ。このところはE.G.W(Exclusive Ground Wiring)と付けた方法で配線をしている。これはMYプロダクツのノウハウである。
 部品で音が変わるというのは良く言われるが、実は私は正確に比較したことがない。真空管アンプでは大きく音に影響しそうな部品はやはり出力トランスと考えられる。実使用では負荷が大きく変動していて、電流は想定の2倍近くの変動があり、これらの条件でインダクタンスの変動がどの位変わるかというには低域の再生に大きく影響する。電流の変動という観点からも電源トランスの容量というのも大きく影響するだろう。部品を替えたとき特性が変われば音も変わるのだろうが、例えば真空管を替えて特性が変わらないとすれば、そこで音質の差を聞き分けるのは非常に難しい。雑誌などで真空管を挿し替えて音質評価をしているのを読むと私には神業のように思える。

 音が変わる要素は沢山あってそれがアナログ技術の面白いところである。

 ところで電源回路を検討しているなかで、電源のインピーダンスを測ろうと思っていたらこれが結構難しい。一番大変なのは電圧が400Vの直流電圧があるところが難しい。高圧なので直接測定器などを繋げることができないし、コンデンサで直流をカットするとコンデンサのインピーダンスが問題になる。ネットで調べていたらすでに測定例がのっていた。世の中いろいろ考えている人がいるものだ。これを参考に考えてみたい。

 こんな細かいことをして何になるかと言われそうだが、自己満足と音が良くなりお客さまに喜んでいただきたいからやっている。だからオーディオは面白い。







2010年2月11日

<電源>
 前回のコラムで書いた<テイオクイチニョ>の漢字が間違っていました。正しくは<庭屋一如>でした。TVに出たテロップの文字を間違えて覚えていたのが原因です。改めて訂正いたします。これなら読み方に納得できます。

さて今回は電源について。以前書いたコラム<今年のテーマ>で今年は電源回路を検討してみたいと書いたが、今回電源の検討を始める前に予備実験をしたのでその事について。
 その前に電源の評価はどのようにしたら良いのだろうか。電源回路を変更したときアンプとしてどのような評価をしたら良いのかということだ。例えば電源インピーダンスが下がったとする。それがアンプの測定でどう評価・改善されるのだろうか。「音を聴いてそれが良ければ良い」ではそれで正しい判断になるのだろうか。オーディオアンプではその評価法(測定法)が難しいことが多い。測定ではその違いが分からないけれど音は違うことは良くある。その原因は現在の測定法が音質全てを表わしていないからだと思っているが、今回の電源改良にしてもアンプとしての評価をどのようにしたら良いかは大変重要な問題となる。原理的に電源のインピーダンスを下げることは良いことは分かるが、それがアンプ評価にどう表れるか、またその評価が音質の評価と一致しているかということだ。
 今回その為の予備実験をした。実験に使われたアンプは6BQ5シングル(4W)通称メヌエットだ。今は私がFM放送を聴く装置として使われている。このアンプの電源回路を変更しその特性変化を調べた。このアンプのメイン電源(整流回路)はチョークトランスを使用せず、半導体によるリップルフィルターを使用している。このリップルフィルターを改良してアンプの変化あるいは音の変化を確認することにした。まず現リップルフィルターの動作を観察してみると、入力信号が1kHzでこのアンプが動作している時、メイン電源の優勢なインピーダンスはリップルフィルター側にあり、リップルフィルター出力に繋がれているコンデンサーが優勢ではなかった。周波数が高くなると音楽信号はコンデンサーに流れるが、数kHz以下の信号はリップルフィルターに流れていた。すなわちこの電源回路のインピーダンスは音楽信号に対してはほとんどリップルフィルターのインピーダンスが優勢であった。そこでリップルフィルターのインピーダンスを下げることにした。その方法としてフィルター回路のトランジスターをダーリントン接続にしてインピーダンスを下げた。この電源回路の実際のインピーダンスの評価はしていない。

 ではこの改善されたと思われるアンプの評価はどうしたらよいのだろうか。音質特に低音に大きく影響するD.F(ダンピングファクター)をON/OFF法で調べたが変化がなかった。(D.F=21)別の評価法で実験した。それは私が以前作った8−4法という別のD.Fの評価法だ。これはON/OFF法では最近のスピーカーに合った評価法とは言えず、最近のスピーカーの特徴である低域で公称インピーダンスより下がる傾向に合わせた評価方法で、これはアンプのスピーカードライブの実力がより正確に分かる測定方法だ。その方法は8Ω負荷でのレベルを基準として、その負荷を4Ωに下げた時のレベルの変化を読み、出力インピーダンスに換算する方法だ。今回この8−4法によるD.Fの変化を調べた。そうしたら0.1dB(0.5が0.4dBに改善)の改善が認められた。たがが0.1dBかも知れないが変化が認められたことは非常に大きい事実だ。8−4法によるD.Fの変化は16から21に改善したことになる。(ON/OFF法とは値が異なる)この改善はたとえばB&W805のような低域で4Ω(公称8Ω)にインピーダンスが下がるスピーカーには効果がある。電圧で0.1dBの改善はパワーで0.2dBの改善だから低域の音量に関係してくるし、同時に過渡現象も改善されるので低域の音質も変わる可能性も考えられる。

次に実際の音はどうだったのか。手前味噌になってしまうが、低域の音の改善が認められた。造った本人の評価ほどあてにならないかもしれないが、女房も変化を認めているし、このところは今はすなおに認めてもらいたい。今回シングルアンプで実験したから特に電源の改善効果が出ているのかもしれないが、やはり理論的にも電源のインピーダンスを下げれば、信号出力の負荷変動による影響は少なくなることは分かった。それが実際8−4法という測定法で確認され、さらに音質評価でも認められた。

 今回は電源改良の予備実験での結論だからこれが全ての結論ではない。しかし今回の予備実験の結果アンプの電源インピーダンスの改善法は一般に言われているようにコンデンサーを多量に使う方法でなくとも低域の改善に効果があることが確かめられた。またアンプの評価法もヒントが得られた。
 今後もさらに検討してみたい。








2010年2月1日

<庭屋一如>
 <テイオクイチニョ>と読むらしい。今年のお正月のTV番組でこの言葉を初めて知り、この言葉が気に入ってしまった。その意味は庭と住居が一体化した状態のことを言うらしい。
 京都・南禅寺の近くに別荘群がある。その住居にTVが初めて入り中を紹介していた。この辺りの別荘は明治時代に造られ、所有者は一部変わっているところもあるが、今でも建物は残っている。以前この辺りを散歩していた時大きなお屋敷があるなあと思っていたが、それがこの別荘群であった。私邸であるからこれまでTVで紹介されていなかったが、今年のお正月番組で紹介された。その番組のなかで<庭屋一如>という言葉があった。家と庭が一体化され自然を楽しむ様を表わす言葉のようだ。紹介された家も庭もそれは素晴らしいものだった。
 何故この言葉に響いたのか自分でも分からない。ただ最近、近所では動物を飼っている方が多い。私も動物は嫌いではないが世話をする自信がないから飼っていない。その代わり庭の花木を愛でようと思っていたら、この言葉が入ってきて庭と家と一体化した生活というのも面白いと思ったからだ。

話は飛ぶが、昔オーディオといえば家庭での音楽鑑賞は部屋を占拠するものだった。音は家を占拠するものであり<音屋一如(オンオクイチニョ)>であった。ところが最近は若者の音楽はヘッドフォーンで楽しむものになっている。今ではウオークマンも知らない若者もいて、携帯電話、ipodで音楽を楽しむのが主流になっているようだ。
 これは住居環境にも関係してくるかもしれない。近所で音やにおいなどでクレームされることも多くなっていることも考えられる。我が家に来られるお客さまも皆さん大きな音で音楽は聴けないと言われる。だから私の設計では小音量でもきれいな音楽が聴けるように設計している。こんなヘッドフォーンで音楽を聴くスタイルは今後も続くのだろうか。スピーカーで聴く音楽の方は立体感があって長く聴いても疲れないと思うのだが、今の若者はそれ程音質の良くない圧縮方式でも特に不満なくヘッドフォーンで聴いて満足している。今後も部屋でオーディオを楽しむことはしないのだろうか。
 昔は庭と家まで一体化した生活を楽しんでいたのが、部屋単位の楽しみになり、さらに個人だけで楽しむ生活に変化してきた。次第に規模が小さくなっていて楽しみのスケールが変わってしまった。そんな現代生活に対して<庭屋一如>という言葉が新鮮に聞こえたのかもしれない。

今年も梅の咲く季節になった。5年くらい前に植木屋さんに戴いた盆栽の梅も今年も立派に咲いてくれた。植木屋さんには素人では盆栽は普通数輪しか咲かないと言われた。花木も愛でれば応えてくれる。音楽と一緒に梅も楽しむ。これは<庭音一如>というのかもしれない。


スピーカーの脇に梅の盆栽を置いてみた。音と箱庭(盆栽)を楽しめる。梅の香りを楽しみながら音楽を楽しむ。これを<庭音一如>と呼んでみた。


訂正
テイオクイチニョと言う言葉を調べてみましたら、漢字は<庭居一如>でなく<庭屋一如>でした。TVでフリップを瞬間的に見た時、<庭居>だったと勘違いしていました。これなら読めますね。たいへん失礼いたしました。







2010年1月21日

<コーヒー>
 私は毎朝コーヒーをいれる。半年前くらい前までは毎日カプチーノを飲んでいたが、今は普通のコーヒーとカプチーノと半々位になった。朝のコーヒーは無くてはならないものだ。これがないと落ち着かない。だから旅行などで朝コーヒーが飲めないとつらい思いがする。それも美味しいコーヒーにありつければ良いのだが、そうでないことが多い。
 さて今回は私のコーヒー論。といってもプロではないので自己流のこだわりについて。

カプチーノ:カプチーノはエスプレッソに泡立てたミルクをいれたコーヒー。今はイタリア製サエコのエスプレッソマシーンを使っている。コーヒーは地元<アステカ>の一番煎りの深いイタリアンローストをエスプレッソ用に挽いてもらっている。自宅にエスプレッソ用ミルがないため<アステカ>で挽いてもらう。今はネスプレッソのようなカートリッジ付きのエスプレッソ豆が主流で、なかなか煎りの深いエスプレッソ用の豆を量り売りで入手できるお店は少ない。これをサエコのマシーンでカプチーノを作るのだが、このマシーンが以外と良いものが少ない。蒸気の圧力やミルクの泡立てなどがその性能を維持できない。サエコのマシーンも初期不良で購入時に2回も取り替えたが最近は蒸気の切り替えが上手くいかず、圧力が弱くなってきてしまった。約1年半毎日使ったらおかしくなってきた。業務用のマシーンは数百万円するらしいから、数万円のマシーンでは所詮ダメか。圧力がなくなるとコーヒーの香りも減ってくるように感ずる。マシーンでコーヒーを淹れるのにそれほどテクニックはいらないが、マシーンの癖みたいなものがあるし、我が家では熱いカプチーノが飲みたいから工夫はしている。安くて良いエスプレッソマシーン知りませんか。

普通のコーヒー:豆はやはり<アステカ>で買う。豆の種類はいろいろ。あまりひとつにこだわらないが、時に苦め、時に酸味のあるもの、あるいはマスターのブレンドなど気分で変える。淹れ方はペーパーフィルター方式。ミルは昨年手動のミルを買った。それまでカッター式の電動ミルを使っていたが、これだと挽き豆の大きさがコントロールできず、1秒違うと豆の大きさが違ってくる。だから今度は手動のグラインド式のミルにして、常に豆の大きさを揃えている。豆の大きさは味に大きく影響する。細かすぎると抽出時間が長くなりその為苦味が強くなり、酸味が特徴の豆を飲む時その特長が出ない。また大きすぎると抽出時間が短すぎてこれもコーヒーの旨みが出てこない。挽く大きさはアステカのマスターにサンプルを貰いそれに合わせてミルを調整して使っている。
 コーヒーの淹れ方はマスターの講座に参加し基本は教わった。その後は自分で工夫しているが、それでもなかなか味は一定しない。豆は軽量スプーンで正確に測る。抽出前に20秒の蒸らし時間を設ける。お湯の注ぎは2回か3回で済ませ、長く時間をかけない。また最後まで絞り切らない様にして(少しお湯が残っている状態で)抽出を止める。これは豆の雑味を出さないため。コーヒーから抽出される旨みと雑味とは抽出時間が異なるらしい(TVによると)。旨みが先に出るらしいから、時間をかけずにサッと旨みだけを出すのがコツらしいのだがこれが一定しないから、味がばらつく。
 それでも時にはパリの高級ホテルで飲むコーヒーより美味しい時がある。
だからコーヒーを淹れるのが面白い。

 普段2人前しかコーヒーを淹れないから2人前の感覚はできているのだが、お客さまが来て3人前になるともうお手上げになってしまう。まったく味が違ってしまう。いまだかつて3人前で上手く作れた試しがない。だからまた面白い。

たかがコーヒーなのだが、このようにして楽しんでいます。皆さんはどうですか。









2010年1月11日

<リチウムイオン電池>
 お正月のTV番組や新聞での今年の話題の技術のなかに車のEV(Electric Vehicle)元年というものがあった。家電では3DTV元年だそうだ。EVとは電気自動車のことは皆さんも知っていることと思う。そのEVの電源に使う電池はリチウムイオン電池である。今回はリチウムイオン電池について。

 私はサラリーマンを辞める前の8年間はリチウムイオン電池の仕事をしていた。主にパソコン・携帯電話・ムービー用のリチウムイオン電池だ。OEMビジネス(相手先ブランド)だからいろいろお客さまの要望を聞きながらお客さまの製品に合う電池パックを作っていく仕事だ。久しぶりに今新聞・TV・サイトなのでリチウムイオン電池の記事を読むとアレッ?と感じることがある。この世界、記事で書かれているほど簡単な世界ではないのである。いくつか面白いと思ったことを書いてみよう。

 TVの番組で日本初めて発売されるEVの生産が上がらないという内容だったが、その時の車製造担当者のコメントがアレッ?だった。自動車の生産が上がらないのは電池の生産が上がらないからだという。それも1日僅か数台しか電池が生産出来ないとコメントしていた。これは大変なことを発言している。電池の生産性すなわち歩留まりは電池メーカーの技術力を表わす。これを簡単にそれもかなり少ない数値を言ってしまって。技術力が足りないことを公表しているようなものなのだが、後で問題にならなかったのか心配した。電池(セル)のような設備産業は最初から簡単に歩留まりが上がることはなく、量産では小さな改良を積み上げていき次第に安定していくものなのだ。そうして数千万・数億個を生産する電池メーカーになるのであって、その製造ノウハウが技術そのものなのだ。

 新聞ではテスラ・モーターのEVが出ていた。シャーシーはロータス・エリーゼにリチウムイオン電池とモーターをのせ1000万円近くで売り出しすでに700台以上売れているという話。このリチウムイオン電池がすごい。6831個のパソコン用リチウムイオン電池を搭載している。ネットで調べると99直列x69並列らしい。これを車に使っている。恐らく彼らは既存の電池でビジネスをしたいからだと思うがこの発想に驚くのとアレッ?がつきまとう。リチウムイオン電池というのは充電にかなりの制限がある電池だ。だからセル(電池そのもの)だけで使用されず必ず回路を付けて使用している。私はこの回路の方の仕事をしていた。(といっても私が実務で設計していたわけではないが)リチウムイオン電池の充電はかなりシビアーな充電電圧の制御と充電電流の制御が必要で、その他にも過放電の制御、その他では電池の容量計算用の回路やプログラムが必要とされる。充電だけでいえば定電圧定電流充電が必要となる。だからこのEV用電池の充電には厳密に言えば6831個の電池に対してそれぞれ定電圧定電流になる回路が必要になる。どの程度の回路にしているのかが?なのである。この制御回路が電池の安全性に関係してくる大切な要素なのである。推論で話を進めるのは良くないのでここで話を止めるが、どんな制御方法をとっているかが興味あるところである。

 私がこの電池ビジネスをしていた時、回路屋さんで製品本体は設計したがるが電池回路を積極的に挑んでみたいという者は少なかったと思う。電池だけでは音は出ないし絵も出ない。黙ってパワーを供給しているだけだ。また電池はリチウムイオン電池の様にエネルギー密度が上がれば上がる程、安全性の点で難しくなってくるからだ。それに電気製品の設計では電池の仕様は最後に決まるものが多く、狭い場所に高容量電池を要求してくる。電池が無いと動かないにもかかわらずだ。また製品をお買いあげたお客さまからはまったく見えないし評価されない。「良い電池使ってますね」と言われたことなどない。だから電池屋さんは日の当たらない部署と感じていた。

 今年の記事ではリチウムイオン電池の話題で持ちきりだ。電池の材料の炭酸リチウムの争奪戦も激しいらしいし、国内の電池フォーラムでも過去最大の出席者だったそうだ。
 技術屋から見ると電池についてもっと日が当たるようになってもらいたいと思う。
 新聞の見出しではリチウムイオン電池のことを<性能を決める「心臓」>と出ている。私としては電池のセル屋さんと回路屋さんがもっと評価されるのを一人願っている。








2010年1月1日

<謹賀新年>
 明けましておめでとうございます。
昨年はこのサイトを読んでいただきありがとうございました。
今年も宜しくお願いいたします。

 さて今年は何をしようかなと思っているが、まだ何も決めていない。真空管アンプに関してはまた何か新しいテーマを見つけて研究しようと思っている。もちろん商売を繁盛させることが一番大切なことであるが、それだけでは私はつまらないし満足しない。他人がそんなことが出来るんだとかそんな音がするんだとか、何か人を惹き付ける物を造ってみたい。来年の今頃自分がどんなことを言っているかが楽しみだ。
 個人的なことでは写真をもっと多く撮ってみようと思っている。折角一眼レフカメラを購入したので少し写真を楽しんでみようと思う。たくさん撮れば何かが見えてくるだろう。
 更に写真を整理するのに新しいコンピューターが欲しくなってきた。今は
macbookを検討中だ。何故今更macと思うかもしれないが、女房のiphoneをいじってみるとapple製品のヒューマンインターフェースが際立って良い。これでも昔はappleappleUとかclassicUというコンピューターを使っていた人間だからまったくappleは嫌いではない。だから検討しているのだが、問題はWindowsソフトをどう走らせるだけだ。最近のインテルmacなら仮想Windowsレイヤー上でWindowsソフトが走るらしいのだが、私の今のシステムでは費用がかなりかかってしまう。このホームページもmac上で作ってみたいのだが。

新年早々たわいもない話をしてしまったが、今年もまたこのコラム宜しくお願いいたします。








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