6BM8ppバランスアンプがほぼ完成した。アンプの構成は差動2段にUL接続ppの出力段である。この構成は私が設計するほとんどのppアンプの定番であり目新しい回路ではない。ただ今回はバランスアンプということでバランス入力、バランス出力としなければならない点がこれまでと異なる。大きく異なるところは入力段の差動アンプを2入力とし、出力トランスの2次側はそのまま2出力とするが負帰還のかけ方を変え、+出力から−入力と−出力から+入力へと2つの負帰還をかけている。出力からの負帰還をたすき掛けにして入力に戻している形だ。アンプ増幅回路は同じでも負帰還のやり方が変わって性能・安定性・音などがどうなるかが今回の検討項目になる。
配線はお弟子さんがしてくれたがその後が大変だった。配線がまずいからではない。新しい回路のこのアンプの性能を上げるのにひと苦労した。私のアンプ設計では配線後の作業に時間がかかる。性能のチューンナップに時間を費やすからだが、歪・f特・D.Fなどの諸性能を上げていきながら、同時に安定性もチェックしてアンプの品質を上げていく。新しい回路だったためこの作業にかなり時間を費やしてしまった。また測定でもバランス対応をしなければならなかった。測定器(歪率計)の入力はバランス対応してあったが、測定信号出力はバランス対応されておらず、アンバランスからバランス信号への変換回路も作成しなければならず、この点でも時間が必要となった。
検討結果では性能はほぼ通常アンプと同等の性能が得られた。安定性については回路を少し変更し満足させた。当初出力トランスの2次側すなわちバランス出力をフローティングと考えていたが、最終的には2出力端とも抵抗でグランドに接地させることにした。こうすることによりアンプはノイズに強くなり安定した動作が可能となった。
音については新しいサウンドを聞かせてくれている。改良電源の影響もあるが楽器の分離がすばらしく細かなニュアンスもすべてさらけ出してくれるアンプになった。まだ聴き始めたばかりで十分な比較はできていないが、最初の試聴の印象はすこぶる良い。今後も楽しみなアンプになっている。
私としては初めてのバランスアンプの設計となったが良い製品が出来上がった。反転アンプ形式のアンプでも性能は出ることが分かったし、安定性も問題ないし、バランス増幅の音は細部の表現に優位性があるように感じられた。
真空管式バランスパワーアンプは面白い。まだ良くなる可能性が残っている。
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