オーダーメイド手造り真空管アンプの店

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 <アンプ納入>
 2012年9月21日 

KT88(UL)ppバランスパワーアンプを納入した。アンプの納入はいつも緊張する。すでに知っているお客さまでも始めてお会いするお客さまでもほぼ同じだ。まったく見ても聴いてもいない製品をそこで初めて披露する訳だから、お客さまがどんな印象を持たれるのだろうかということを心配する。特に音というその人の好みを知ることの難しい感覚を満足させることができるかというのをいつも心配する。
 自宅で何度も試聴し、時には友人も呼んで聴いてもらったりして、出来上がったアンプの評価を客観的に判断しようとするが、それでも心配になる。今回も友人に試聴してもらい、僕の印象と同じであることを確認して納入した。

今回のアンプはバイアンプの中高音用として使用される。スピーカーはB&W802D、低音用はアキュフェーズのパワーアンプ。中高音といっても350Hz以上だからほとんどの音楽信号を受け持つことになる。だから音質の大部分はこの真空管アンプの音の印象がほとんどではないかと推測される。オーディオ装置が高級で、要求されるその音質レベルも高いと感じられるので音を聴く前の緊張感は高いものになった。
 最初のCDをかけてもらった。その印象は悪くない。ただ普段聴きなれているCDではないので、細かなニュアンスは分からない。しばらくしてこちらが持参したCDをかけてもらう。今回はヒラリー・ハーンのシベリウス バイオリン協奏曲を持っていった。最初の音で安心した。普段聴き慣れている音よりもっと良い。当然だが我が家は古いノーチラス805だが、ここは802Dだからずっと音場が広く、低域の出方がまるで違う。低音用アンプとの繋がりも良さそうだ。音楽が楽しめるし、これという欠点が見つからなかったから、後はお客さまの好みとの相性となる。
 その後お客さまからの感想では満足していただけたようだ。これまでスピーカーが十分に動いてなかったが、今回は良く動いてくれる印象のようだ。お客さまの予想を上回る音の良さらしい。

バランス型パワーアンプは僕の印象でもスピーカーを良くドライブしてくれる。音が前に出てくる。柔らかい音が前に出てくる。これはこれまで設計したどのアンプとも異なる。この音の性質は友人・お客さまの印象も同じなので何か特質があるのかもしれない。測定データからあるいは理論から屁理屈的な推測はできるが、まだはっきりした理由はつかめていない。でも音は断然出てくる。
 今回は仕上げるのにこれまで以上に苦労したが、出来てみたら良いアンプに仕上がり、またお客さまにも喜んでいただけた。今は肩の荷が下りてやっとゆっくりした気分でこのコラムを書いている。
 緊張の後の満足感が心地よい。


 
 <アナログ半導体>
 2012年9月11日 

今回は半導体の話。真空管アンプの製作をしていても半導体のお世話になっている。真空管アンプ回路でも半導体を一部採用している。それは主に電源回路で使用しているが、他にも実験用回路などでも半導体が必要となってくる。
 最近はこの半導体の入手が真空管アンプ部品と同様に困難になっている。先日実験回路で使用するAnalog Device社のSSM2142を求めて秋葉原を歩き回ることになってしまった。このICはバランス用のラインドライバーといわれるもので、以前若松通商で入手したが、今回更に必要となりまた若松通商に出向いたが、今は店に在庫がなく品切れと言われてしまった。そこで秋葉原内で探すことになった。秋月電子、千石電商、マルツなど数軒の部品屋さんで聞いたがどこにも在庫がなく、暑い中秋葉原を探し回ったお陰で疲れてしまった。取り寄せには時間がかかると言われ、それでは僕の商売の都合上間に合わないので、別のOPアンプで同様な回路を作ろうと考え方を変えた。次の日、ネットでこのICを調べていたら、何とアマゾンでこのICが検索でき、入手できることが分かった。秋葉原で見つからなかった半導体部品がアマゾンで買えるとはまったく想像外の出来事だった。当然直ぐに注文しアンプの進捗に間に合って入手できた。秋葉原も部品屋さんも少なくなってきているし、ましてアナログ部品となると更に少なくなる。僕のような小さな商売では大量に部品を使うことがないので、部品商社などに発注することもできず入手が困難になっている。

バランスパワーアンプがほぼ完成したので、今は自分用のイコライザーアンプの検討を少し始めた。ヘッドアンプ部は半導体で作ろうと計画しているが、ここに使う半導体もなかなか良い部品が見つからない。ジャンクションFETなどは2,3種しか見当たらず選択しようがないほどである。今イコライザーなどはオーディオメーカーが作らないので、それ用の高GmのFETなどはないのだろう。そういえばルネサスも売却されるらしいし、日本の半導体も非常にきびしい状況にはある。オーディオメーカーなどはどうしているのだろう。ICを使用しているのかしら。
 まあ、よそ様の心配はせずに自分のことだけを考えればいいのだが、アナログ半導体もなかなか入手が難しい時代になっていて、真空管より難しいかもしれない。真空管はまだ中国、ロシア、東欧で作られているが、オーディオ用半導体は日本が作らなければどこにもないだろう。

 今やオーディオ熱もおじさんくらいで、若者はヘッドフォンで十分でディスクリートのオーディオアンプなど興味がなく、音さえ出ていればまあいいかという時代である。
 そのうちにアナログ半導体アンプも真空管アンプと同様、貴重な産物になってくるかもしれない。


 
 <KT88pp(UL)バランスパワーアンプU>
2012年9月1日  

やっとKT88pp(UL)バランスパワーアンプが完成した。後は体裁面の仕上げと写真撮りまでとなった。MYプロダクツとしては最初の非反転型バランスパワーアンプの完成ということになる。このアンプは仕上げるのに通常より時間を費やした。非反転型のバランスアンプ構成でバランス入力、アンバランス入力両方対応させていて、結局両方の入力での安定度、性能を確認することになり、新しい回路での確認作業量が通常の倍かかり多くの時間を費やしてしまった。ただ動作させるだけならそれほど問題にならないが、性能を上げていくとなると時間はかかってしまう。一つの定数変更でも両方の入力での確認が必要になってくるからだ。最終的にはこのアンプは主にバランスで使われる予定だから、バランスでの性能を優先させた。
 さて皆さんはこのアンプがどんな音を出してくるのか興味が湧くことだろう。今もCDを聴きながらこのコラムを書いている。どんな音か。

 一口に言ってCDに記録されている音をすべてさらけ出してくれるアンプだ。たくさんの音を出してくれていて、オーケストラもピアノもボーカルもこれまでより音源が大きく感ずる。これまで経験したことのない音の出方だ。最初の音出しのときピリスが演奏するシューベルト「4つの即興曲」を聴いたとき驚いた。以前より演奏が近くに聞こえ、演奏テクニックが良く分かる。平面的でない音で繊細なタッチが良く分かる。女房と二人で改めて「ピリスは演奏うまいね。」とこれまで感じなかった演奏のうまさを認識できたほどだった。この感じはバランス入力の時の方がよい。音が出すぎるから二アフィールドより大きな部屋での再生音の方が楽しいかもしれない。

本格的なバランス型パワーアンプは新しい音を出してくれた。技術的に考えてもグランドラインの影響を受けないアンプ回路というのは正しい方向に向かっていると考えている。これまでアンバランス回路でのグランド配線はEGW法を採用して音の向上を図ってきたが、ここで電源・グランド配線の影響が少ないバランス回路になりさらに一段とグレードアップが図られたのではないかと思っている。MYプロダクツのこのバランスアンプはこれまで設計してきた差動2段アンプの延長上にあるので、大きな変更は必要なくこれまでのノウハウが使えるところも強みである。

女房は我が家のアンプは直ぐにバランスアンプにしてほしいとほざいている。イコライザーアンプも考えなくてはならないし、僕にはやることがいろいろあるのだ。

9月中にこのアンプの内容を紹介します。


 
 <オーディオ仲間>
2012年8月21日  

以前からレコードプレーヤーをいただける話がありそれが実現した。僕のアンプのお客さまでもあるが、大先輩でもあり大きな会社の社長・会長まで務めておられた方からわざわざ届けていただけた。300Bのアンプをお貸しくださるお客さまがいたり、最近少しは信用していただけていると感じている。この時も折角WE300Bのアンプがあるのでそれを聴いていただいた。このように商売を細く長くしていると少しは信頼いただき、いろいろ皆様の善意で楽しませていただけて大変ありがたく感じている。僕自身も商売ではあるが、あまりかりかりした商売をするつもりではなく、できれば量より質を重んじて新しい真空管アンプを設計することを目標としているので、半分趣味みたいなところもある。だからこのようにお客さまからご提案いただけたことを一緒に楽しんでいる。でも今は実際別のアンプの設計に忙しく、まだそのお返しができていないところである。

いただいたプレーヤーはDENON製でターンテーブルがDP−101、アームがDA−305という組み合わせでりっぱなウッドケースに取り付けられている。ここ数年イコライザーアンプの製作がなかなかできず、懸案となっていたのだがこのプレーヤーを見たとたん直ぐに作らねばという思いに駆られた。どうせ造るのなら人の真似はいやだからバランス型のヘッドアンプ・イコライザーアンプにしようと計画している。ヘッドアンプ部はノイズの点で有利な半導体バランスアンプにし、イコライザーは真空管バランスアンプにしようと思っている。僕に提供してくれたお客さまと話をしていたら、たくさんのカートリッジもお持ちだから、イコライザーアンプができたら聞き比べをしようということになった。お客さまのご意見では昔のMM型カートリッジは良い音がするということなのでそれも聴いてみたい。その前にそんなカートリッジに負けない高音質のイコライザーアンプを造らねばならないが。

僕にとってアンプは電気回路そのものでそこには情緒が入り込むところはないが、音楽を聴くとかオーディオとなると楽しみの世界になる。この区別は少し難しいがこの二つの要因があるところが、オーディオを長く楽しめている理由かもしれない。これからもなるべく長くお客さま方と一緒にオーディオを楽しめるようにしたい。


 
 <KT88pp(UL)バランスパワーアンプ>
 2012年8月11日 

今設計中のアンプがこのKT88pp(UL)バランスパワーアンプだ。非反転型バランスアンプで、パワーアンプでは初めての設計となる。KT88も初めて使う球だし、回路も初めての回路でどんな音を出してくれるか楽しみなアンプだ。
 このアンプはバイアンプの高音用に使われる予定で、そのため低音用のアンプとゲイン、入力インピーダンスを揃えて設計してある。またプリアンプにバランス出力があるためにパワーもバランス入力で受け、そのためアンプ全体もバランスアンプにした。バランスアンプはこれまで反転型プリメインアンプ、非反転型ラインアンプと設計も変化してきて、ここにきて非反転型のパワーアンプの設計となった。このサイトでも紹介した非反転型のバランスラインアンプと同じような構成のパワーアンプなのだが、ラインアンプと異なり、パワーが大きい分だけ性能や安定性にかなりの検討が必要である上に、更に入力段をカスコード接続した新型回路であるため、実際今回のアンプの検討には多くの時間を要した。

 新しい回路を検討する上で性能を上げることと同時に安定性を上げることが重要だ。性能を上げるために最適な動作点の選択、バラツキの吸収、更に安定性の確保などを同時に満たさなければならない。今回は真空管の不良なども重なったが、やっとここにきて最終定数が決まった。決まったのは回路定数だけでなく配線方法も決まった。配線がアンプの安定性や音に大きく影響することは経験から十分理解していると思ったが、今回さらにこの配線方法にも考慮が必要であることが分かってきた。バランスアンプは4入力と2出力となっているが、どれも当然シングルエンドではないため、通常のアンバランスアンプより考慮が必要となる。電源はグランド基準だが、アンプ入出力はグランド基準になっていないので、グランドの影響を受けにくいが、しかし安定性は難しくなる。この矛盾する性能を共に高めるために時間を要したと考えてもよい。

KT88pp(UL)バランスパワーアンプはMYプロダクツにとって新しい扉を開けてくれる製品になるかもしれない。性能も確保でき、楽しみなアンプが仕上がってきた。


 
 <真夏の仕事>
 2012年8月1日 

今日から8月。暑い日が続く。ここ横浜も暑い。最高気温は32度位だが家での仕事は大変だ。一日中冷房をかけていれば問題ないのだろうが、経費を考えるとそうはいかず、扇風機を使って仕事をしている。ただサラリーマンとは違いTシャツ、短パンで仕事ができるのがありがたい。
 今新しいアンプを設計している。こんな暑い中では順調に仕事がはかどれば暑さも我慢できるが、人生そうは簡単にいかず、暑い日のなかで悪戦苦闘している。現在取り組んでいるのが、非反転型のバランスパワーアンプである。これは技術的に初物アンプだからいろいろ検討項目が多く暑いなか頑張っている。このアンプはバイアンプの高域用アンプとなるもので、低域用アンプとゲイン、入力などの仕様を合わせて設計しているが、ちょっと欲張ってバランス型としていて、また性能を上げるために新しい回路を取り入れたため、その検討に時間がかかっている。僕は欲張りだから、アンプの性能も良くなければ満足しないし、もちろん音も良くなければならない。ここは適当な性能で「まあいいや」とはいかなので、性能を上げていく。歪、f特、DF、ノイズ、安定性これらの性能を上げるのだが、新しい回路というのは簡単にはいかない。そんな検討をしているなか、今回は不運が重なった。まず出力管の不良があった。アンプを組み立て動作をさせてみたら一つだけバイアスがかからない。回路を何度も見直し、何回も試みるもうまくいかなかった。そして出力管をよく眺めてみたらグリッドとフィラメントが内部で接触していた。グリッドがフィラメントを通してグランドに流れていてバイアスがかからない状態だったのである。よくよく他の出力管も見たら同じような傾向があり、このロットはグリッドとフィラメントがかなり近い。当然交換してもらったが、そうしたら今度は交換した球の内部にガラスの破片が入っていて、球を振ると内部で音がしている。これもまた交換した。今は増幅用の球の一つがどうもGm不足で極端にゲインが低い。これもまた交換予定だ。こんなトラブルを直していたら、今度はハンダゴテが切れてしまい、しばらく作業が中断してしまったし、特性を測ろうとしたら、両対数のグラフ用紙が無くなっていた。これも一時測定中止状態。そうしたら、今度は夏風邪で体調不良になってしまった。

 今日から8月。7月はツキがなかったが今月は良くなるだろう。回路のチューンナップも出来てきたし、また新しいバランスアンプが誕生するだろう。
 今も気温は高いし、僕の頭もさらにヒートアップしていて、良い状態ではない。気温はコントロールできないが、せめて自分の体調だけは静かにさせて仕事に対応したいものだ。


 
 <秋葉原の昼>
 2012年7月21日 

秋葉原は最近フィギアやAKB48などを目的として若者が集まってくるようだが、その目的の違いはあれ昔も今も若者(おたく)が集まる街だ。だからこういう街の食べどころは若者向けで安い・早いを旨としているところが多い。それでも昔は地元のラーメン屋さんや「やっちゃば」があったので地元の味を楽しむことができたのだが、最近の店はほとんど牛丼やラーメンなどチェーン店が多く地元の味を楽しむことが少ない。僕のような年寄りがこのような店で昼食をゆっくり味わうことができず、お昼は店を探すこととなる。
 秋葉原の隣は神田なのだが、こちらは昔からのお店がまだ営業を続けているので、僕はいつもちょっと足を伸ばして昔からの地元の店に入ることにしている。これから紹介するお店は一人でもゆっくり食べられ、中には昔情緒たっぷりのお店もある。少しお昼の予算と時間がある方は試してみるのも良いかと思う。

 今一番のお勧めは「いせ源」の昼食
 「いせ源」はあんこう鍋のお店で、夏は期間限定でランチメニューがある。お魚料理が中心で1000円程度で食べられる。この前は「鮎の塩焼き定食」が1200円で食べられ絶品だった。またここは昔ながらの店構えだから、畳部屋で古いお膳で食事をいただくことになる。雰囲気も最高です。

 ・「中よし」の焼き魚定食
 「中よし」は「いせ源」の前で、ここはふぐ割烹料理店。ランチだけ焼き魚定食を出してくれる。950円で食べられる。近所のサラリーマンでいつもいっぱいだ。

 「尾張屋」の蕎麦
 神田で蕎麦といえば「やぶそば」「まつや」が有名だが、最近別の蕎麦屋も見つけた。うなぎの「きくかわ」の直ぐそばにある大正12年から営業しているお店。最初天ぷら蕎麦を食べたら天ぷらがおいしかった。もちろん蕎麦もおいしい。700円位から食べられる。

 「きくかわ」の鰻
 ちょっと贅沢したいときはここの鰻を食べる。しかし年に一度か二度。特に今年は値が上がっている。お昼の鰻はちょっと贅沢だが、たまには豪華な昼食も良い。ここは年配の方のお客が多い。

 ちょっと最近のお昼の食事処を挙げてみました。すべて和食です。年齢とともにこのような好みになってしまうのでしょうか。
 場所は<神田 お店の名前>で検索して確かめてみて下さい。


 
<バージョンアップ> 
2012年7月11日  

MYプロダクツの製品はバージョンアップができることが特長になっている。ソフトウエアの世界では当たり前だが、ハードウエアではこのような製品は少ない。MYプロダクツの製品はすべてがオーダーメイドだから、それぞれの製品はすべて異なっていて一品一品内容が違うが、ある程度技術が向上して、内容がグレードアップできそうな製品には喜んで性能アップ、音質アップをさせてもらっている。アンプも何台か設計しているうちにいろいろノウハウも得られ、あのアンプもこうしておけば良かったと思うことがあり、それをお客さまにお伝えして改良をさせてもらっている。僕も技術的な満足が得られるし、お客さまも大金を払わなくても音質向上が計られ一石二鳥ではないかと思っている。

前回の<凛とした音>でも書いた「6DJ8ゲイン可変型ラインアンプ」のバージョンアップについてお客さまからご意見が届いた。今回のテーマは低域の改善だったのだが良い結果が得られたようだ。お客さまからのご意見を一部紹介したい。
 「マーラー交響曲第6番 インバル指揮フランクフルト放送饗
 6番のアンダンテとフィナーレを聴いたのですが、ラインアンプのグレードアップ後は低音から高音まで透明感が上がって、空気がビリビリするというか振動みたいなものがよく伝わってきました。金管群の音もいいですが、いろいろ顔を出す打楽器の響きがはっきり聞き分けられて、改め6番のユニークさが理解できました。・・・・・・・」
 「ドボルザーク交響曲第9番 カラヤン ベルリンフィル77年盤/ノイマン チェコフィル81年盤
 30年以上前の録音ですが、アンプ側が余裕を持ってスピーカーをドライブしているせいか、どちらもティンパニの轟音と切れがすごい迫力です。これだけいい音と演奏なら、新しい録音のCDを買う気が失せてしまいますね。」

これは一部の紹介だが、たいへん評判が良かった。ちなみにパワーアンプも当社製DF=43の低出力インピーダンスのパワーアンプをお使いいただいている。

僕にとってお客さまに喜んでいただけるのが最高の喜びだ。オーディオの再生ではやはりオーケストラの再生が一番難しい。なかには良いCDがないからだというご意見も見受けられるが、そんなことはなくアンプが良くなると、昔の演奏でもすばらしい音を再現させてくれる。まあその良い音の定義が人それ様々でいろいろご意見もあると思うが、少なくても良いアンプであれば、それぞれの楽器の演奏がきれいに聞こえ、バランス良く曲として再生される。それぞれの楽器の音が汚れずに響きを持って再生される。
 今回クラシック好きのお客さまにご評価していただいたのは非常に良かった。アンプの実力を測る上での良い評価が得られた。

でもいつまでやっても到達点に至らない。

 
 <凛とした音>
 2012年7月1日 

前に横浜みなとみらいホールでのヒラリー・ハーンの演奏を聴きに行ってきたとこのコラムで書いた。僕の音楽・テニスの友達がこの演奏の評が日経新聞に載っていたのでその記事をメールで送ってきた。曰く

前半はヒラリー・ハーンのソロによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。これはハーンの進境の著しさを示す凄まじい演奏だった。彼女らしい研ぎ澄まされた、精緻で凛とした音楽。完璧な技術のもと、情緒に堕することなく、様式を尊重しながら的確に決めていく。その結果、この上なく美しくロマンティックな世界が広がる」
 アンコールも「絶品と呼ぶべき水準だった。」と大絶賛だった

さすがにこの記事の言葉の選び方は上手で、僕にはこのようには表現できなかったけれど、まさに同じように感じていた。精緻で凛とした音というのはぴったりで研ぎ澄まされた音という感じだった。
 考えてみたら僕は一流バイオリニストの演奏を聴くのは初めてのことで、比較のしようがなく、ただ唖然と神業を聴いている状態だった。プロレベルでの演奏の評価に自信がもてなかったのだが、この評を見るにやはりすごい演奏を体験できたんだと客観的な評価を知ることとなった。
 家に帰りまたハーンのCDを聴いたのだが、このCDでのバッハ・シャコンヌの演奏について彼女自身は「どれひとつとしてバッハは誤魔化しがききません。逆に全部をうまくこなせれば、この上なくすばらしい音楽を歌い始める。」と17才の時に書いてあり、今回のアンコールでのバッハは「この上もなくすばらしい音楽」を聴かせてくれた。僕には曖昧な音がなかったと感じていたが、やはり誤魔化しがきかないという彼女自身のコメントからも頷ける演奏だった。

 この記事を送ってくれた友人のラインアンプのバージョンアップを現在行っている。
 2009年に設計した「6DJ8ゲイン可変型ラインアンプ」で、これはすばらしいノイズ特性を示しているのだが、3年も経つといろいろと技術アップがあったのでバージョンアップを実施した。今回のテーマは低域の改善だ。その改善はアンプ部をいじらずに、電源回路と配線の改善だけだ。アンプ部そのものの変更はなしに低域を改善するという、みなさんには理解できないかもしれないが、僕のノウハウの中にはこういう引き出しもある。今のところ結果は良好だ。低域の伸びがぐっと良くなった。クラシックがさらに楽しく聴けるようになった。
 この友人からのメールには今回のバージョンアップされたラインアンプで「精緻で凛とした音楽、この上なく美しいロマンティックな音色を奏でてくれるといいのですが。」と書いてきた。
 さて、この期待に応えられるか。



 
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