僕がクラシック音楽を良く聴くようになったのは20年くらい前からだ。そのきっかけは高校生の時に作った真空管アンプを再設計してみようと思いたち、新しいアンプができてからいろいろと音楽を聴く機会が増え、それがきっかけで次第にクラシックを聴くようになっていった。また女房がクラシック音楽好きだったことも影響しているかもしれない。ただクラシック音楽というのは最初ちょっととっつきにくい。それは演奏時間が長いし、どれを聴いてよいが分からないし、一番いけないのはオーディオ装置が悪いと聴き疲れしてしまうことである。こんな理由でスムーズにクラシック音楽に入り込むのを躊躇してしまう方も多くおられると想像する。僕の場合手前味噌だが、自作の真空管アンプにしたら、長時間音を聴いても疲れなくなり、それでクラシックを聴くようになっていった。そして残ったのがどの曲をどの演奏者のCDを聴くのが良いのかという問題が残ったのだが、それは音楽雑誌の助けを借りることにした。その本のタイトルがレコード芸術編<名曲名盤300>というわけだ。
この本は数年ごとに改変されて、何人かの音楽評論家がそのときの気に入った演奏(CD)を投票により順位をつけるものである。名曲300曲の中の名演奏が分かるから、素人からみれば最初にクラシックを聴くには大変参考になる。だから最初この本を頼りにCDを買っていった。今でも参考にしているが、それでももう15年前の評論を参考にしても意味がないと思い、最近最新版を買ってみた。今と15年前と演奏の評価は変わるかといえば、それは様々である。今も昔も評価がまったく変わらない演奏もあるが、反対に昔は上位の演奏だったのが、今ではノミネートさえしない演奏もある。こういう演奏は評価が大きく変わったということでなく、もともと僅差の勝敗だったり、新しい演奏が出てきて評価価値が変わってきているからだったりしている。例えばシューベルトの<アルペジオーネ・ソナタ>などは15年前と変わらず圧倒的にマイスキー・アルゲリッチ盤が強いし、同じシューベルト<即興曲集>では15年前はルプー盤が一番だったのが、今は96年に出たピリス盤が圧倒的に強い。(僕もピリス盤が好きなのだが)
同じ曲を聴くなら当然名演奏の方が楽しい。また良い装置で聴く方がこちらもずっと楽しくなる。音のきれいさ、音楽のダイナミックさ、迫力など演奏者、オーディオ装置によりその印象は大分変わってくる。それがオーディオの楽しさに結びつく。
僕は試聴のとき良く言われる音の良い録音といわれる盤を使用しない。むしろ名演奏盤を好む。名演奏はCDに入っている音の質が高くまた情報量が多く、音を評価するには十分な盤と考えるからである。
もしこれからクラシック音楽を聴き始める方がいらしたら、この本はたいへん参考になると思います。
|