オーダーメイド手造り真空管アンプの店






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 <能囃子>
 2013年3月21日 

能と言うと普段あまりなじみのない芸術ではないでしょうか。僕も最近になって初めて能舞台を観たくらいでこれまでほとんど馴染みのないものだった。ここにきて少し馴染みになった理由は女房が能管を習い始めたことによる。能で演奏する笛である。その能管の初披露が先週東京・表参道で行われた。女房の初舞台である。亭主である僕はどう影響されるかはそれぞれの家庭事情によるだろうが、我が家では大いに影響されている。まずは初舞台を聴きにいかなければないないし、練習でもコメントを求められ無視はできないから、常に練習曲を聴いていなければならない。また今回は聴きに来て下さった知人にお土産を用意しなければならず、当日上野まで行ってお土産を買ってこなければならなかった。素人の演奏会というのはこのようにお客様に大いに気を使うものなのである。

能の演奏とはどういうものかを知らない方も多いであろう。能における音楽(囃子)とは、謡(うたい)という声楽、笛、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)というオーケストラで構成されている。謡は主演のシテと複数からなる地謡(じうたい)とで構成される。楽器は一人ずつの演奏者になっている。今回の発表会は笛の部分でそこが全員素人で残りの出演者は全員プロという構成だった。現代の能の芸能の世界は面白い。まったくの素人の演奏にプロの皆さんが出演してくださるのである。クラシックで言えば素人のフルートの発表会にN響が出演してくれるようなものである。だから笛以外は非常に演奏が当然うまく演奏を楽しむことができた。素人の発表会だから入場料はないし、笛以外は素晴らしい演奏が聴けるのでどうもプロの卵たちもこの演奏を聴きにたくさん来ていたようだ。素人演奏関係者も義理で聴きに来るものだから、客席は満席に近く大盛況だった。我々家族関係者も6名も大挙して女房の演奏をひやひやしながら聴いたしだいである。初めて能の演奏を聴く者ばかりなのでその演奏に驚いたようだった。
 僕の印象は大鼓と地謡の迫力がよかった。大鼓の音はコーンという甲高い音を出しこの音は脳に響く。太鼓類は曲のベースとなる部分だからこれが安定していると聴いていて安心感がでる。少々笛の音が出なくてもリズムがきちっとしているから曲として乱れない。さすがプロの演奏である。また地謡はコーラスのようなもので、この声楽が素晴らしい。腹のそこから出てくる音は曲に厚みを増してくれた。地謡は3名で彼らの音程はぴったりあってこちらも乱れず気持ちが良い。
 女房の演奏はどうも途中リピートを抜かしてしまって間違えたようだが、それ程気にならず無事終えた。他の演奏者には音が出ない方もいらしたらしい。

 能は600年前に作られ、武士が好んだ芸術だけあって、舞台は簡素なものだ。舞台では拍手はなく、静かに始まり静かに終わる。歌舞伎のような見栄も張らない。
 舞台進行は静だが、演奏は動で力強い。その対比が面白い。



 
 <東京の自然史>
 2013年3月11日 

僕は<タモリクラブ>という番組が好きである。金曜の夜遅い時間に始まるので、眠い時には見られないから時々見る。タモリの坂好き、線路好きが面白いし、結構くだらないテーマを面白く仕立ててあるのが好きだ。さらに以前NHKの<ブラタモリ>も面白く見ていた。最近はネタが少なくなったのか新しいシリーズの始まっていない。この番組ではタモリの坂好きが高じて昔の地形などをCGなどで再現してくれていたので非常に面白いと思っていた。結構巷でも人気のある番組だったようだ。
 半年くらい前にタモリクラブで断層を見るというテーマで番組が構成されていて、その中である本が紹介されていた。それが今回のテーマである<東京の自然史>という本である。タモリに言わせるとこれはバイブルということであるから、購入して読んでみた。著者は<貝塚爽平>という方で大学の教養課程での講義案を元に生まれたものらしい。それが一昨年文庫化されたらしい。専門書ではないが、簡単に理解できるという内容でもない。僕もすべてを理解できたわけではないが、部分的にそういうことがあったんだという程度の理解で楽しんで読んだ。
 東京の地形というのはもともといろいろな自然現象により地形が作られてきたというのは間違いないところだが、実際今我々が見ることができる地形というのはほとんどが人工的に作られた土地を見ているだけで、自然が作った土地というのを見ることができないらしい。これは徳川家が東京に都を作った時から始まり、戦後の都市開発がさらに拍車をかけている。たとえばこの本によれば徳川家康が入国前の江戸では今の日比谷は日比谷入江といって海だったし新橋あたりも海である。だから今の東京湾の海岸線の地形はほとんど人工的に作られたものばかりである。一方山の手も今は人工的に作られた地形にはなっているが、大きく見ると山の手地域より西側というのは青梅を頂点とするなだらかな武蔵野台地というのになっているらしい。そして今では小さな川としか認識されていないが、神田川、渋谷川、目黒川が長い年月をかけ台地を削り、渋谷の谷も渋谷川が地形を作ったそうだ。今渋谷川は暗渠(あんきょ)となっていて見ることができないが、確かかつては春の小川のモデルとなった位だから小川なのだが、さらにその昔はきっと台地を削るような川であったのだろう。目黒の谷も目白の谷も目黒川、神田川が削った痕とは今では到底考えられないが、長い年月をかけ今のあの地形が作られたらしい。海岸線も時間を延ばして見れば、氷河期(2万年位前)には海面はもっと下(100m位)にあり、今の東京湾も陸地だったようだ。

こういう話はロマンがあっていい。昔を想像しているだけで楽しい。タモリの坂好きも良く理解できる。
 最近のスマホのアプリにはGPS(位置情報)と明治初期の地図がリンクされていて現在いる場所が昔どういう場所だったのかがすぐに分かるアプリもあるそうだ。


 
 <ノイズ帯域幅の計算>
 2013年3月1日 

MCヘッドアンプを設計していて、特にノイズについて主に検討をしていたが、その中でまだEQが出来ていないにも関わらず、ノイズの測定はRIAA特性とIHF-Aフィルタを通した値が必要から、一部計算によってノイズの値を算出している。だからまだ最終的な値にはなっていない。最近ちょっとした興味からこの計算に使われた(RIAA)+(IHF-A)のノイズ帯域幅値(3.48KHz)がどうしてこんな値になるかを確認するために、計算によって特性を求めてみた。値そのものを疑っているわけではなく、自分で内容を納得するためにである。

このノイズ帯域幅を計算する作業をきちんと説明するにはこの紙面では足りないので簡単に方法だけを説明しよう。
 まずはRIAA特性を計算してみた。LPレコードに使われるRIAA特性は3つの時定数(コーナー角周波数)が決められているので、計算でその特性を求めるのは簡単だ。昔習った制御理論を思い出しながら計算方法を考えてみると、RIAA特性はボード線図上で3つの折れ線の合成と考えられるから、伝達関数はそれぞれの3つの折れ線の伝達関数をかけたものになる。特性を求めるには伝達関数から絶対値を求め、さらに対数計算させることになる。これはExcelを使って計算させればよい。
 RIAA特性は比較的簡単に求められたが、IHF-Aの特性を求めるのは難しい。その伝達関数が分からないからである。サイトで調べてみたら一つだけこの関数が示されていたサイトがあった。そこでこのサイトですでに計算してあったIHF-Aフィルタの計算結果を利用することにした。最終的には(RIAA)+(IHF-A)の合成特性が分かれば良いのだが、対数計算の場合それぞれ計算値を足せば合成値になる。これで合成特性が求められる。次にこの合成特性から等価ノイズ帯域幅を計算することになるが、それにはノイズ帯域幅の理論から求めることになる。

 Δf=∫|A(f)|2df/A2

A(f)は上で求めた周波数特性のリニア値。積分はコンピュータ積分により求める。すなわち周波数を細分してその時の面積を台形公式により求め、それを有限周波数まで合計した。Aは1KHzのゲイン。ここでは1になっている。これもExcelで計算した。計算精度は周波数分割の細かさと有効桁の精度で決まるが、今回はラフな計算で実行した。特に周波数分割の細かさはこの計算に使われたIHF-A特性の計算で使われた周波数分割の細かさで決められており、それ以上の精度を上げた計算は今回出来なかった。
 その結果僕の計算による(RIAA)+(IHF-A)の等価ノイズ帯域幅は3.22KHzと計算結果が出た。これは理論値3.48KHzより少ない数値であるが近い値が出たのでこれで今回は良しとした。この計算精度を上げるにはもっと細かい周波数特性を求める必要があるが、それにはExcelでも数万回の計算が必要とされる。これを計算するにはおそらくVBAというプログラミング技術を必要とされそうだから今回は止めた。
 今回の計算は正確な値を求めることが目的でなく、どのようにしてこのノイズ帯域幅値が出てきたのかという手順を確認する意味で行った。大分昔に習った制御理論を思い出しながら計算した。結果は近い値が出て、ノイズ帯域幅とその求め方は理解できた。
 本来はEQ設計なのだが、自分の好奇心のため大分寄り道をしてしまった。また回路設計に戻ろう。




リニアゲイン:RIAA+IHF-Aの合成された特性(1kHzでのゲインを1としてある)
パワーゲイン:リニアゲインを2乗したもの
ノイズ帯域幅:パワーゲインの積分値と同じ面積を持つノイズ帯域(Δfはこの周波数帯域を示す)


 
 <表現>
 2013年2月21日 

コラムを書くようになってから、文章で何かを伝えるのは難しいなあといつも感じている。なかなかうまい、あるいは適切な表現、言葉というのが見つからない。もともと国語が苦手であったため、文章を書くのがうまくないし、一番の問題は上で述べた日本語の表現を良く知らないから、うまく言い表せない。今回は私の表現の問題ではなく、ちょっと面白いと感じた表現があるので書いてみたい。

私が住む横浜・能見台にはここ数年に出来た店の名前が日本語でなくて、いつまで経っても名前が覚えられないでいる。いくつかの例をあげてみると
La Rillasa」、「LA FICA」、「Le Sucre」、「Salut」、「Chef-d’oeuvre

などである。店の名前だがそれぞれ「ラ・リラッサ」、「ラ・フィカ」、「ル・シュクル」、「サリュー」、「シェ・ド―ヴル」となり、最初の二つがイタリアンレストラン、3,4番目がケーキ屋さん、最後がパン屋さんである。意味は分からず、これらすべてまだ覚えられていない。「ラ・リラッサ」は美味しいイタリアンで昨年オープンした。この店はもともと町の電気屋さんだったが、その息子さんが電気店の一部を改装して開いた店なので、今でも「○○電気」のイタリアンと呼んでいる。これらのお店の名前は外国語で、それも英語でなくて看板も横文字で表記されているので、いつもどうやって読むだっけと僕にはなかなかハードルの高い名前となっている。もっと分かりやすい名前であれば憶えられると思うが、という僕の店の名前も英語名だからあまり文句を言える立場ではないか。

もう一つの話題。最近LINEという無料電話、無料通話がはやっているそうだが、ここでたくさんの絵文字に人気があると聞いた。LINEのサイトを見ても面白い表現がされていた。「オリジナルスタンプと絵文字で、文字だけでは伝わらない気持ちを相手に伝える」と書いてあった。女房が言うにはこれは「象形文字の時代に戻ったのかしら」と言っていた。これはすごい指摘だなあと思った。人類は最初絵文字で名詞や動詞を表していたのが、文字という大発明があったから人間の文化が進歩したと思っていたら、今はまた絵文字の時代に戻っているようだ。本当に絵の方が言葉よりうまく伝わるのだろうか。
 正確さから言ったら絶対文字(文章)のほうが正しく伝わると思うが。

 町の店の名前にしても、メールの絵文字にしても今は正確に何かを伝える必要はないかもしれない。あいまいな表現の方が問題は起きなくてよいのかもしれない。正確に意味が分からなくても、気分が伝わればよいのかもしれない。
 僕はエンジニアだからどうしても正確な論理でレポートを書くことが正しいと思ってしまうが、世の中そんな堅苦しいことは必要ないと言われてしまいそうだ。
 オーディオの世界でも論理的でないことがときどき言われているが、趣味の世界だったらそれでも良いのかな。

 
 MCヘッドアンプU>
 2013年2月11日 

前々回のコラムにMCヘッドアンプの制作をしていることについて書き、そこではまだノイズの問題が解決していないことを述べた。今回このノイズ問題のその後について書いてみたいと思う。結論から先に言うとノイズ特性は大分改善され問題は解決できた。
 今の状況では入力換算のノイズレベルはー141dBv位である。(注:(IHF-A+RIAARIAAは計算値)特別に優れた値ではないが、MCヘッドアンプとして使えるレベルにまでにはなった。最初回路が組みあがったときにはー128dBv位であったからかなりの改善ができたことになる。この改善のうち電源リップルの改善は3dB位で後はすべてホワイトノイズレベルの改善である。アンプにおけるホワイトノイズ(単にノイズとする)の発生を改善するにはそれなりの理論というものを理解しないと何をしてよいか分からなくなる。ノイズの場合オシロスコープで見てもただランダムな波形が見えるだけで何が起きているのかが分かりにくい。ハムやリップルなどはすぐに分かるのだがホワイトノイズをどのように減らすかというのは少しわかり難い。
 オーディオアンプにおけるノイズの発生についてこれを理解するにはいくつかの理論を理解しなければならない。

 1、ノイズの性質       ノイズの加算、ノイズと周波数帯域
 2、ノイズ源         抵抗のノイズ、トランジスタのノイズ、真空管のノイズ
 3、アンプにおけるノイズ   入力換算ノイズ、多段アンプのノイズ
 4、負帰還アンプにおけるノイズ   負帰還アンプのノイズ計算
 5、外部からのノイズ混入

 ちょっと考えただけでも、これらのノイズの性質をある程度理解しないとノイズを減らすことは出来ない。
 今回のノイズ改善方法についての細かい技術説明は長くなってしまうのでこの紙面では省略させてもらう。ただ上にあげた5つの理論をすべて使って改善した。今は初段に使っているトランジスタ(2SC2240)の理論値の限界近くではないかと推測しており、別のローノイズトランジスタがもし入手できればさらにノイズデータが改善できるのではと思っている。
 この位のノイズレベルでのアンプ設計はいろいろな小さなノイズ源を考慮しないと値は良くならない。一つの要素だけ改善しても下がらない。今回も思いもかけないところでも悪さがあり最初はちょっと考慮が足りない設計であった。

前前回のコラムで、このノイズ問題を正面から向かわなければならないと書いたが、それはできたと思う。うまくいかない時の方が良く考え得られることが多い。

 もしうまくまとめられればこのノイズ改善をレポートにしたいのだが、うまく説明できるかなあ。



 
 <ケガ>
2013年2月1日  

先週テニスをしていて左ふくらはぎの肉離れを起こしてしまった。僕は毎週土曜日の午前はテニススクールでテニスをしている。もう20年以上になる。腕はまったく上達せずクラスの中でも下手なほうだ。でも健康のために通い続けている。そのお蔭でメタボにもならず、毎年の人間ドッグでも健康上大きな問題は出ていない。昨年若いコーチに変わり、「安井さんもっと足を使った方が良いですよ」とアドバイスされているものだから年甲斐もなく張り切ってしまったのかもしれない。レシーブをかえそうとしたその瞬間、左ふくらはぎに後ろからボールが当たったと思った。その後ボールを探しに視線を下におろしたが何もなく、その後すぐに筋肉の違和感を覚えた。すぐに痛みが出てきたという感じでなかったが、いざ左足に力を入れたら痛くて力が入らなかった。僕の様子がおかしいので、直ぐにコーチが飛んできて「肉離れでしょう」ということで、氷の入ったビニール袋を用意してくれた。この処置が良かったのかもしれない。内出血に至らず足の膨れもさほどひどくならなかった。
 普段は女房もテニスを一緒にしているのだが、この時女房は外出中で、僕一人の参加だったからその後の処置も一人で済ませねばならなかった。ケガが左足だったので、車の運転は影響なく、直ぐに家に帰り、テニス仲間に教えてもらった整形外科をネットで確認し、その後この整形外科で治療を受けた。治療といっても冷やして固定するだけで、特に何もない。ただ安静にしていてくださいということだった。

 ところがこの日、このテニス仲間との新年会の日だった。僕が会場の手配をしていたので休むわけにもいかず、タクシーで会場に駆け付けた。医者には酒は飲んではダメですと言われ、この日はノンアルコールで済ませた。アルコールが入ると血液の循環が良くなり痛みがひどくなる場合があるようだ。入浴も同様でシャワーで済ませるように言われ、散々な日になってしまった。ありがたいことにテニスの友人からは帰宅時には車で送ってもらえて、痛い足を引きずって帰らなくて済んだ。ありがたいことだった。

 次の日は我が家での味噌造りの日であったため、台所に椅子を用意して大豆を煮たり、大豆をすり鉢ですったりした。足は少々不便だったが、手は動くので僕の作業は出来た。麹、塩、大豆を混ぜる作業は女房に任せ、僕は力仕事の方だった。毎年恒例の作業で材料の購入に合わせて仕込みをする。時期的には今頃が仕込み時期で、すでに大豆の水の浸しに入っていたから、止めるわけにもいかず予定どおり作業を続行した。

地元の喫茶店<アステカ>のマスターも1月の大雪の日に自宅前で転び、肋骨を2本も折ってしまったようだ。僕の肉離れの痛みとは比べられない痛さのようだ。歳も近くお互い体は若くないねと今更ながら知らされることになった。
 今後重い真空管アンプを持つときには気をつけないとどこか痛めてしまいそうだ。


 
 <バランス型MCヘッドアンプ>
 2013年1月21日 

前回のコラムで書いたヒラリー・ハーン問題(?)は解決した。と言うより作業を終えた。ラインアンプの改善を試みて配線と回路定数を変更し、その効果を音で確かめてみたのだが、改善前に比べより音が明確になってきた。例えで言えば少し汚れたガラスを通して見ていた景色がガラスの汚れが取れ細部までよく見えるようになった。そのためこれまで聴いていた音楽も違って聴こえてきた。それがヒラリー・ハーンの音楽を聴いたとき、これまであったベールが取れ音楽の表現がより明確に聴こえるようになっている。それが彼女の音の違いとして印象が異なってきた。他のCDもいろいろ聴いてみたら、すべての音の印象は良くなって低音も明確になり、響きなども改善されたと判断できたのでこれで良しとした次第である。
 これまで自宅のラインアンプの低音の出方にちょっと不満があったが、今回の改善で大分良くなってきた。柔らかい音はそのままにそこに音の余韻が良く聴こえてきたので音楽もより楽しくなってきた。これですべて完成とは思わないがまた何か疑問が湧いたらまた作業をすることにして、今回の改善はひとまず終わることにした。どこまでがゴールか見えない作業だから気長にやることにする。

今次の作業としてEQに使うバランス型MCヘッドアンプを作っている。回路は片CHだけ制作し動作を確かめている。ここは真空管ではなくトランジスタで設計した。自分用だから好きな回路規模で作れるから少し凝った回路にしている。バランス増幅型のDCアンプ構成で、DCサーボ回路も搭載している。真空管ではヘッドアンプに対応できるノイズレベルのアンプが設計できないから、トランジスタ回路で設計した理由だ。ところがこのノイズの特性を測定してみると、そのレベルが当初狙った値が出てなく今困っている最中である。周波数特性、歪などは問題ないがノイズ特性が十分でない。ノイズと言ってもここではホワイトノイズレベルの話でハムなどの話ではない。ここも例えで言えばこのアンプはラインアンプで使うのであればまったく問題がないが、ヘッドアンプとしては落第という状態である。
 これは設計でどこかに勘違いがあるのかもしれないし、あるいは電源などからの影響があるのかもしれないし、今はまだどのようにこれから検討しようか考えている最中である。僕はこれまでの設計でも最初からすべてうまくいく事は少ない。初めて作る回路はどうしてもどこかに見落としがある。動作点が設計通りでないこともあるし、今回のように性能が出ないこともあるし、特に安定性にかかわる位相補正などは実験でしか定数は決まらない。だから今回も何とか対応しなければならない。こういう時に重要なことは、うまくいかなくてもそこから逃げずに正面から取り組むことが大事であると思っている。今回は自分用で納期の心配がないからこちらも時間をかけてもこのノイズの原因を調べたいと思っている。

アナログはやはり難しい。原因を探すのに時間がかかる。だから楽しいのだが。


 
 <初仕事>
 2013年1月11日 

2013年が始まった。年末、年始は家の用事や世間も休みモードになるから僕の仕事もこの間は一時お休みの状態になる。個人事業でもこの間は冬休み状態になっていた。ここにきて世間様と同様仕事始めとなった。
今年は年初の誓いでも述べたように自分用のEQアンプを作る計画をしているが、今はその前に普段使っているラインアンプのバージョンアップを試みている。と言ってもただ実験をしているに過ぎないのだが。昨年聴いたインターナショナルオーディオショウでの音や僕の設計した新しいKT88バランスパワーアンプのお客様宅での音の印象がすこぶる良く、我が家の音ももっと改善できないかたと考えていた。昨年末にあるアイデアが浮かび、新年明けにでも実験してみたいと思っていた。そして新年明けに早速回路と配線を少々変更した。特性に異常がないことを確認してから音を聴いているのだが、まだ確定とまでいっていない。音の向上は認められるのだが、これでいいのだろうかという具合である。

 最近の好みの音楽はヒラリー・ハーンで、昨年初めて生の演奏も聴いた。その印象は演奏が正確で、繊細な音を表現してくれた。細い音ということではなく、音に芯があり素晴らしい余韻も響かせてくれ凛とした音という印象だった。こんな印象で生の演奏を聴いたのだが、今CDで彼女の演奏を聴くと、それとは少々異なる印象となっている。曲はバッハのバイオリン協奏曲なのだが、ここでの演奏はかなり力強い音を出している。弓が力強く弾かれ、激しい音を奏でている。実はこの音が正しい音なのが今の悩みなのである。昨年アンコールで聴いた同じバッハの無伴奏バイオリンの印象とはかなり離れていて、このCDでは時にはうるさく感じられるのである。アンプは音の立ち上がりスピードが以前より上がり、伸びも向上している。しかし本当にこれが正しい再生音なのか、それともアンプがまだ悪さをしているのか。以前誰かに聞いたか本で読んだか忘れたが、ホールで聴いているときはマイルドに聞こえる音も演奏者の近くで聴くとかなりうるさい音であると聞いた(読んだ)ことがある。確かに一流の演奏者の音はダイナミックレンジが広い。ポリーニの演奏もかなり大きな音を出していた。それも簡単に出しているように感じられた。今聴いているヒラリー・ハーンの音も録音環境により、このように聞こえるのか。まだこの答えは出ていない。

 音楽はそれぞれ好みがあり、オーディオの音もさまざまだろう。今の僕はヒラリー・ハーンがより楽しく聴けないかとアンプをいじっている。今年またヒラリー・ハーンが来日することが決まり、その演奏会の券もすでに購入した。また楽しみが待っている。

オーディオ再生は生演奏ではない。再生音を楽しむものだと僕は思っている。いつも生の演奏が聴けないから代わりにCDで演奏を楽しむものと思っている。


 
 <’13明けましておめでとうございます>
 2013年1月1日 
  明けましておめでとうございます。
昨年はこのサイトを読んでいただいてありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。


昨年の新年のコラムを読むと「今年こそEQアンプを作るぞ」と2年越しの新年の誓いを立てているがまだできていない。
再び「今年こそEQアンプを作るぞ」と誓いを立てた。それもバランス型で。・・・・3年目の誓いで、怪しい誓いになりそうだが!

今年もこのコラムよろしくお願いいたします。
右は珍しいオスの招き猫です。

名前は「三毛雄」。三毛猫のオスは大変珍しく希少なため、昔から幸を招く猫として珍重されています。

と、説明書に書いてありました。










 
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