オーダーメイド手造り真空管アンプの店




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 <2013年を振り返って>
 2013年12月21日 

今年のトピックはやっとバランス型EQアンプができたことだろう。数年前からイコライザーを作るぞと宣言してやっとできた。この間レコードプレーヤーやMMカートリッジを頂いたりして、オーディオ仲間にも助けられた。
 本格的バランス型EQアンプとしての完成度は自分なりに良く出来たアンプに仕上がっていると思っている。性能、音質ともに高いレベルで収まっていて、それ程直すところがない。独りよがりの評価だからあてにならないかもしれないが。
 最初はクラシックのLPレコードをだくさんいただいたことからこのプロジェクトは始まったが、今完成してLPレコードを聴いてみるとジャズをLPで聴いてみると非常に楽しい。また音質的にもCDよりLPの方が良い場合があり、さらに楽しいのだ。あの細い針の振動だけでたくさんの音を拾ってくれる。余韻まで拾ってくれる。単純な動作原理だが、そこから出てくる音は素晴らしいと感ずる。これは僕のEQを褒めている訳ではなく、LPシステムを褒めているのだ。LPレコード、カートリッジなどそこに詰まっている技術は改めて素晴らしいと感ずる。昔の技術者も素晴らしい。

今年このバランス型EQアンプを作ってみて、今後我が家のシステム全部をバランス伝送、バランス増幅にしてみたくなっている。これまでの経験から低域の出方が違うように思えるからだ。バランス型のアンプの設計はすでに経験があるのでそれ程難しい話ではないが、また別の新しい実験も兼ねてこれらのアンプを設計してみたいと思っている。またDACも作ってみたくなってきた。

また来年もよろしくお願いいたします。


 
 <レポート完成>
 2013年12月11日 

先週やっとのことで<バランス型EQアンプの設計>レポートをHPにアップした。これまで下書き用文章、測定グラフ、写真、説明図、回路図などを少しずつ準備してきた。もう12月になったし、今年中にはこのレポートを完成させなくてはとは思ってきたが、最近以前より集中力がなくなってきてなかなかアップできないでいた。先週この重い腰をやっと上げ完成した次第である。
 ただこれらの材料を簡単にHPにコピーできるかといえば、少しは工夫がいって簡単ではない。今回は新たな問題も持ち上がり少し手間取った。今回の問題は回路図とグラフのコピーだった。その大きな原因は昨年コンピュータをあたらしくWindows8に変えたため機能が変わり以前のような手順ではコピーできなくなってしまった。例えば回路図は回路図データをビットマップに変換し、それを必要な部分だけトリミングで切り取り、それをHP上にコピーしているが、今回Windows8の機能でビットマップデータをトリミングする機能が無くなってしまっていた。そこで無料ペイントソフトをダウンロードしてその機能を復活させてようやく予定の画像を貼り付けることができるようになった。何事も環境が変わると作業内容が変わるものだと改めて知らされた。それにしても最近のコンピュータは複雑で手が付けられない。
 それはともかく、やっと<バランス型EQアンプの設計>レポートができたので気持ちがやっと晴れた。正直内容は丁寧な説明になっていない。自分の記憶残しのために書いているのでかなり独自な構成になっていて、たぶんわかり難い文章構成になっていると思う。レポートの出来不出来で私の収入が変わる訳ではないので、その点不親切な文章になっていると思われる。文章を書いていったらノイズ中心の話になってしまい、ここに興味のない方にはつまらないレポートかもしれない。こんなことを考えながら設計しているんだと大雑把に理解していただければと思います。

 また今回のレポートでは初めて全回路図を公開した。このアンプは自分用だから誰にも迷惑をかけることがないからオープンにした。参考になるかどうかは分からない。

レポートはコラム欄のE.R <バランス型EQアンプの設計>をクリックして下さい。

これでバランス型EQアンプの設計作業はすべて終了した。また何かアイデアが出たらまた小さな実験のために変更を入れる程度だ。今回の設計作業はかなり労力を要した。しかし得られるものも多く十分に楽しめた。
 これからはまた自分用のラインアンプ、パワーアンプ、CDプレーヤーも順次バランス化していく予定だ。


 
 <DAC>
 2013年12月1日 

前回CDの音質が必ずしもLPより良いとは限らないと書いた。これはかなりCD録音の差によるものが多いと推察されるが、一方僕のCDプレーヤーも疑われる余地がないわけではない。そんな思いでいたら、CDプレーヤーのバランス化を考えてみたくなった。これまでは今のCDプレーヤーが壊れたらSA-CD、バランス出力付きの新しいものにすれば良いと思っていたが、良く考えるとそれまで待つのも時間がもったいないし、またお金もかかるしそれなら自分でバランス出力付きのDACを設計してみれば良いのではと思い始めた。サイトで自作DACを調べてみたら、世の中多くの方が自作DACを作られているようだ。LSIも簡単に安価で入手できるし、さらに基板まで用意されていて僕が思っていたよりも簡単に作れることが分かってきた。これまでこの部分には興味を持たなかったので調べもしなかったが、世の中は僕よりずっと進んでいる。特別な測定器も必要なし、複雑なアナログフィルターも必要なし、2つのLSIをつなげて、後はOPアンプをつなげれば立派なDACができる。もともとDAC LSIの出力はバランス出力で出ているので、この出力の後にバッファーを設ければバランス出力は簡単にできる。むしろ一般的にはバランス出力をわざわざアンバランス出力に変換してRACピンに出力している。これではバランス信号の良さをなくしているようなものだ。
 大体DACの音の違いというのは当然LSIによりDA変換の違いなどもあるが、多くがアナログ部のアンプの違いで音質の差を与えているようだ。僕も設計するならこのアナログ部で差をつけることになることになるだろう。まだここに真空管を使用するかどうかまでは考えていない。バッファー段にわざわざ真空管を使う必要があるかどうかを手間も含めて考えてみなければならない。ただ電源だけは自分で設計した電源回路を搭載するのは必須になる。

ちょっとDACを調べてみたらそれ程難しい問題ではなかったので、来年くらいには作ってみようかという気持ちになってきた。しかしその前にラインアンプ、パワーアンプもバランス化をしなければならないのでまだ直ぐには始められない。まあ回路図位は描いてみるかという感じである。

バランス型EQを作るぞと言ってから2年以上も経って出来上がったことからすると、CDのバランス化もどのくらい時間がかかるか分からない。今でもこのバランス型EQアンプのレポートもなかなか完成していない。原稿みたいなものは出来てきたが、なかなかサイト上への編集までには至っていない。今はお客様のアンプのバージョンアップの作業をしていて、さらに遅れそうだ。
 作業の遅さはともかくDACについては先が見えてきたので、また楽しみが増えてきた。


 
 <訂正>
 2013年11月21日 

HP作成用にバランス型EQアンプのデータを取っていて、再度電源インピーダンスの測定をしたら、電源回路の不具合を発見しそれを訂正した。これは今回のタイトル<訂正>とは関係ない。アンプ部を変更したのに(電流が増えていたのに)電源回路の確認を怠っていたので電源の特性が出ていなかった。電源を改善したら俄然音質が向上し、これでやっとバランス型EQアンプも一段落となった。
 
そんな中、また友人を誘ってこのバランス型EQアンプの評価をお願いした。今回は同じ演奏をLPCDで聴き比べるというものだ。主にジャズとポップスによる比較だったが、これが面白い結果になってしまった。LPの方が評価が高かったのである。アナログ派の方からみれば当然の結果と言われるかもしれない。実は僕も今回の試聴ではLPの方に軍配を上げた。LPの方が立体的に聴こえる。奥行があるとでも言えるだろうか。CDの方が平面的で音楽がつまらない。
 これまで僕はCDLPに比べ性能の差はあるものだから、盲目的にCDの方が音が良いものという先入観があった。ところが実際は違うようだ。
 この違いは二つの原因が考えられる。
 1、CD製作の時にLPに比べ音質的な考慮が足りないCDになっている。
 2、僕が使っているCDPの音が今回のバランス型EQアンプより音質が悪い。

1は考えられなくもない。大体LPCD両方ある演奏は先にLPが作られ、のちにCDが作られるケースだろうから、CD制作時のマスター音源は何を使っているかは分からない。今回のCDでも明らかにLPよりノイズの多い盤があった。普通CDはノイズレベルが低いというのが普通と思われるのだが、今回はまったく逆という現象も現れた。だからCDだから音が良い録音とは限らないということだ。
 2もこれも疑わなければならない。僕のバランス型EQアンプはノイズレベルの低いし、強力電源を搭載しているし、かつバランス増幅だから電源からの外乱には強い回路になっていて、LP盤の信号を細部に渡って再生してくれている。CDPも改造出来ないかなあとも思っている。

今回のタイトルに戻ると<訂正>とは、僕がこれまで盲目的に「CDの方がLPに比べて音が良いと思っていた」ことを訂正しますということです。アナログ派の方には今更と言われそう。LPでも楽器の余韻やホールの響きが聴こえ、LPもすごいなと思っている。あの細い溝にこれだけの音を詰め込み、それを細い針の振動で音を拾って感動させるのだからすごいと言わざるを得ない。

しみじみ昔のエンジニアはすごいなと思っている。


 
 <垂直磁気記録>
 2013年11月11日 

先日文化勲章授与式がテレビのニュースで流されていた。今年は高倉健サンが授与されたというニュースが話題で他の授与者などは気にもしていなかった。その中に岩崎俊一氏という名前が流れた。僕は「聞いたことのある名前だな。」と思いながらも直ぐには思い出せなかった。そうするうちに氏の経歴が画面に流された。磁気記録で功績があったというナレーションと一緒に磁気記録の再生波形と氏の今より若い時の姿がビデオに流されたのである。
 僕はこの時まさに「あっ」という驚きと同時に氏が誰だったかを瞬時に思い出すことができた。氏は垂直磁気記録の発明者の岩崎俊一氏だったのである。なぜ驚いたかというと、垂直磁気記録という技術が今評価されて文化勲章まで登りつめたものになっているという事実を知ったからである。

今から30年ほど前僕はこの垂直磁気記録の実用化の検討を少ししていた時期があった。基礎研究は別の研究所で行っていて、僕はその応用を考えていたのである。その時にこの垂直磁気記録の発明者である岩崎先生の論文を多く読んでいたから当然ながら名前は知っていた次第である。ところがこの垂直磁気記録というのは原理は素晴らしいが、実用化となると大変難しい技術だった。当時記録媒体はCo-Cr(コバルト・クロム)という磁性体で、FDDでの応用を考えていたがいろんな面で実用化には大きな壁が立ちはだかっていた。垂直磁気記録は原理的には素晴らしく実際良い条件だと素晴らし特性を示していたが、なかなか安定した波形が得られないでいた。我々は当時冗談で「Write Only Memory」などと言っていたものだった。そんな難しさから僕はこの開発を断念してその後は別のプロジェクトに移っていった。

それから30年経ってこの垂直磁気記録に日の目があたるとは想像していなかった。その後この技術は大きな話題になっていなかったし、サラリーマンを辞めてからはまったく頭にも残っていなかった。そして一週間前に文化勲章のニュースを聞き、垂直磁気記録をネットで調べてみた。そうしたら面白い事実が分かってきた。なんとこの技術の実用化は2005年になって初めてなされたという事実だった。岩崎先生の発表が1977年だから何と30年近くなって初めて実用化されたということだった。この話は「垂直磁気記録 30年の苦闘」というサイトに詳しく書いてある。
 僕らは今小さくて大容量のHDDを安く手に入れることができる。どうも今のHDDは垂直磁気記録らしい。人間の知恵・努力というのはいつも素晴らしいと思う。最初は将来どうなるかが見えない技術でも時間が経つと大きな産業として発展している。数年先しか見えないあるいは見ない経営者・研究者ではこのような技術は育たない。
 今回の文化勲章のニュースは僕にとってはちょっと面白い話題となった。技術開発も将来何が起こるか分からない。


 
 <マレイ・ぺライア演奏会>
 2013年11月1日 

1024日、サントリーホールでのマレイ・ぺライアの演奏会に行ってきた。僕はピアニストではマレイ・ぺライアが好きでCDを良く聴いている。大御所とは言えないけれども彼のピアノの音色が好きなのだ。きれいで、明るくて、優しい音がする。
 
ぺライアの音楽を聴き始めたのは、20年位前真空管アンプを作り始めたころだと思う。クラシックに興味を持ち始め、ホロビッツの調律師だった人が書いた本を読んでいたら、ぺライアのことが書いてありどんなピアニストかなあとCDを買ってみたらすぐに虜になってしまった。ピアノ曲ってこんなに綺麗で楽しい音楽なのかとその時に知らしめてくれた演奏家だった。それ以来ぺライアのファンで聴いている。一時右手の故障で演奏を中断していた時期もあったようだが、今年久しぶりに生の演奏を聴く機会が得られて、至福の時間を過ごすことができた。
 ぺライアの演奏を聴くのは2度目で、最初は10数年前に鎌倉芸術館での演奏であった。この時面白いエピソードが残っている。
 エピソード1:
 僕らの後ろの席には母娘づれがいた。ぺライアが壇上に出てきた時、娘の言葉「マレイ・ぺライアって男だったんだ・・・」。最初の演奏が終わった時また娘の言葉「以外とうまいね・・・」。
 エピソード2:
 女房が演奏会の休憩時間に知り合いの女性に会った。その時一緒に外人の女性がいたそうだ。友達がその女性を紹介してくれた。「この人マレイの奥さんです」。女房はその時「マレイで誰だっけ」と一瞬思ったらしく、直ぐに反応できなかったそうだ。

今回の演奏はバッハ「フランス組曲」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第23番熱情」、シューマン「ウイーンの謝肉祭の道化」、ショパン「即興曲第2番」「スケルツォ第2番」が演奏された。またアンコールでもシューベルト「即興曲(何番かは分からなかった)」ショパン「練習曲」などが披露され、もう満腹の演奏会でした。特にアンコールでのシューベルト、ショパンだけでも十分な内容で、楽しい演奏会だった。マレイの奥様は今年もいて、僕の7列前の席にいました。

 なぜぺライアの音が好きなのかは説明が難しい。音色が優しく、明るい。また間の取り方も僕の好みなのかもしれない。最近、音楽評論家だった吉田秀和の評論をまとめた本を買った。それにはぺライアのことがちょっと書いてあり、彼もぺライアの音を「この人はいかにも無理のないやわらかい演奏をやるんですね。きいていて心が休まる。あたたかくなるような気持ちになる、そんな演奏です」。と評している。
 僕の気持ちをそのまま代弁してくれているようで、その通りと思ってしまった。
 来年も「セントマーティン」を引き連れて来日してくれそうだから、また行こうと思っている。


 
 <レポート作成中>
 2013年10月21日 

今バランス型EQアンプのレポート作成中だ。こちらも本体設計と同じくなかなか進まない。あまり丁寧な説明になっていないが何とか考え方だけでも整理して記述している。このレポートの特徴はアンプの設計では珍しくアンプのノイズの計算法について書いている。ノイズで計算できるのはホワイトノイズだけだが、アンプ組み立て前に少なくともどの位のノイズレベルのアンプが出来るのかを分かって設計しないと、目標の性能のアンプが出来ない。どのオーディオ雑誌を読んでも予め計算でノイズレベルをきちんと計算してから設計している例は皆無だから少しは参考になると思う。それは半導体で設計したヘッドアンプ部と真空管で設計したEQ部両方ともノイズレベルを計算で求めている。

 僕の場合、設計前にこのノイズレベルを計算して部品の選択や動作点を決めて回路定数が決まっていくのだが、この手計算を不要となった回路図の裏紙に書くものだから、後でそれをどこに置いたのかとか、紙面のどの部分がどの計算なのかが分からなくなってしまい、後でまた検証しないと話がまとまらなくなってしまっている。1年も前の裏紙に書いたメモ計算が、どの計算をした結果なのかなど今分かるはずもない。メモを探し、どの計算かを探しようやく内容が理解できる。自分で書いているのに他人が書いているような有様なのである。計算してひと月位だったらまだ内容を覚えているが、1年も経てばもう忘れている。
 そんな状況のなかで僅かずつ思い出しながらレポートを書いている。計算はあくまである仮定を元に進めるものだから、当然実際の測定値とは異なってくる。実際は計算より悪い値になる。シミュレーターを使えばより精度の高い計算が可能だが、自分の理解度と言う点からは手計算の方が優れている。今回のノイズ計算で言えば、実際と近い値が得られているから実用にはなると思う。手計算による一番の利点はたとえばどこの部品がノイズに優勢に働いているかがすぐに理解できることである。どこの部品を変えれば良いかとか、この動作点は適正だったかがすぐに分かる。それは部品ひとつずつ計算するのでどこが多いか少ないかがすぐに分かるからである。
 回路というのはノイズだけで設計するものでなく、安定性など他のバランスも考慮する必要があり、こういう時に計算で内容が分かっていれば、無用な変更をしないで済む。ちょっと神経質に考えすぎと言われるかもしれないが、アナログ回路の面白さというのは、こういうどこまでバランスを考慮して設計できるかというものである。

 今回のEQ設計は時間がかかったが、内容的には面白いものだった。ちょっと苦しい時期もあったが、出来てしまえばこちらのもので挑戦してみて良かった。ここまでする必要があるのかなあとも思いながらも、これは僕の性格だから仕方がないか。


 
 <カートリッジ>
 2013年10月11日 

バランス型EQアンプが完成して、知り合いのお客様に聴いていただいた。このお客様はレコードプレーヤーを僕に提供してくれた方だ。オーディオ歴も長くオーディオも音楽も実に詳しい。以前に聞いたうわさではこの人の前ではクラシックの話をするなと言われていたとかいないとか。
 その方が数本のレコードカートリッジを携えて我が家に音を聴きにきてくれた。カートリッジの聴き比べをしようという魂胆だ。僕にとっては初めての経験だ。これまでアンプやスピーカーの聴き比べがしたことはあるが、カートリッジの聴き比べは珍しい。僕などはLPレコードを聴くのも30年ぶりだったから、この今に幾つかのカートリッジを聴き比べできるとは考えていなかった。この日5本のカートリッジを持って訪れてくれた。今お持ちのカートリッジのリストを見せていただいたら、ざっと数えても30本以上あった。その内の5本を持ってきてくれたのだ。
 この内アームのウエイト調整範囲の関係で3本しか試聴できなかったが、これがまた音の違いがかなりあって興味深い試聴になった。試聴したのは「ELAC STS222」「GRADO ModelFT」「Ortofon MC20mkⅡ」。前者の2つは音の傾向は似ているが3番目はまったく違う。音楽が別の演奏に聴こえる程だ。聴いていて一番心地よいのがELAC。音が太くて芯がある。これはCDでは得られない音だ。Ortfonの音色はきれいだが線の細い音に聴こえ、ELACとは楽器が違うのではと思うくらい違う音がする。どうもMCよりMMの方が太くて力強い音がする傾向があるようだ。この線の太い音とはどういうものかと考えてみると、音の倍音成分が違うと感じられるものだし、余韻も違うとも感じるものだ。まったく僕の憶測だけでの話だが、この音色の違いは針の振動そのものに違いがあるのではないかと感じられるものだ。針はレコード溝に沿って振動していて、その振動成分が電気信号に変換されてアンプに入力される。MMの方が太い音がすると感じられるのはMCに比べて質量があり、針の振動の減衰特性に違いがあるのではないかと推測した。少し余分な振動があった方が音的には心地よく感じられるのではないかと。
 この心地良いMMカートリッジの音はCDでは味わえない。またアンプなどの電気回路でそんな音は作れない。カートリッジ独特の個性が多数存在する。これがアナログオーディオの魅力ではないか。僕は昔CDよりLPの方が良い音がすると言われたことに理解ができなかったが、今回の試聴でその意味が良く理解できた。音の良し悪しではなく、好みが合わないということのように思われる。どちらが原音に近いかというより、どちらが聴いていて心地良いかという話のようにも思える。

アナログオーディオを再開してひと月しか経っていないが、アナログの楽しみも感じてきた。LPレコードでジャズを聴くのは楽しいのだ。それもMMカートリッジで。
 今回EQを開発してみて、アナログ派も少し理解できて、オーディオの範囲が広まったように感ずる。
ところでEQの音の評判はどうだったか。今回は珍しく褒めていただけた。バランス型の効果が出たかなあ。



 
 <原鉄道模型博物館>
 2013年10月1日 

先日中古LPレコードを買うついでに、前から是非訪ねてみたかった<原鉄道模型博物館>に行ってきた。横浜駅から徒歩5分くらいのところにある。
 僕は小さい頃には鉄道模型が好きで、いつも「子供の科学」を見ては夢を膨らませていた少年だった。だがお小遣いが少なかったから(というより無かったかもしれない)妄想だけの趣味だった。小学生の時、秋葉原にあった「交通博物館」に初めて連れて行ってもらった時はもう夢中で見学したものだった。その博物館のお土産コーナーには鉄道模型の部品が売っていて、その時初めて模型電車の金属の台車を見た時、嬉しくて買おうか買うまいか迷った思い出がある。結局買わなかったのだが、たぶんお小遣いが少なくて買えなかったのだと思う。

 その後中学生になってからはラジオに興味が少しずつ移っていったから、高校生・大学生になると「交通博物館」ではなく、隣町の電気街にいくようになっていった。今もそれは続いている。

そんな思いでの鉄道模型だが基本的には好きで、この「原鉄道模型博物館」はいつか見たいとずっと思っていたら、この博物館が作られて1年あまりが過ぎてようやく念願の鉄道模型に対面できた。
 平日だったのでゆっくり見られた。感想は?と聞かれてもそれは素晴らしいと答えるしかない。ぼくには夢のような世界だからだ。個人でこれだけの鉄道模型を作り上げるのはほとんど神業に近い。まあすごい。僕のような妄想で育った鉄道模型人間にとっては、まったくアンプを設計するよりずっとすごい技を持った人間としか映らない。
 こだわりもすごい。
 ・レールは鉄製で作られている。鉄でないと本物に近い車輪の音が出ないそうだ。
 ・動力用電源は架線から取っている。でも電車はレールからも電気が取れるように切り替えスイッチが付いていた。
 ・動力を伝えるギアにはウオームギアが使われていない。動力車も惰性で動くように作られていて、そのためモーターもコアレスモーターを作ったそうだ。
 ・客車内部のディテールも素晴らしい。

やはり世界最大級のジオラマの景色は素晴らしい。目線を車両の高さにして走ってくる電車をながめていると、昔の妄想が蘇ってくる。何時間でもいたくなる場所だ。
 今度は少し時間を取って、ゆっくり見学したいと思っている。


 
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