オーダーメイド手造り真空管アンプの店






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 <バランス出力DAC>
 2014年6月21日 

今使っているCDプレーヤーにバランス出力がないので、自作でバランス出力付きのDACを設計してみようと考えている。自分のシステムをすべてバランスアンプに変更してみたくなったので今回の検討はその計画の一部だ。バランスアンプはまだEQアンプしか実現していないが、これからゆっくりすべてのアンプをバランス化しようと計画していて、その第2弾としてDACを検討している訳だ。
 先週あたりから回路図を書き始めた。DAC入力は同軸とトスリンクの2種類、そのインターフェースはCS8416DACPCM1794I/V変換・フィルタはオペアンプICで組むことを考えている。アナログ部を真空管で作ることも考えたが、ちょっと規模が大きすぎて実用ではない。半導体のディスクリートで設計することも考えたがそれも大変そうなのでやめた。オペアンプも最近音の良いのが出てきたのでまあ何とかなるかなと楽観している。ただ電源特にアナログ電源(定電圧電源)だけはきちんと設計しようと思う。もちろんMOS-FET電源にするつもりだ。またDACL/RLSIを使用して(MONO使用して)少しは性能を上げる工夫をするつもりだが、わずかなS/Nとセパレーションの改善になるかもしれない。しかしどうもいくつかの製作記事などを拾い読みすると、このデジアナ混載回路はやはりノイズが問題になるようだ。短い配線、グランド領域の確保などのノイズ対策や、アナログフィルターの性能なども重要のようだ。だから今回はデジタルフィルターがすでにLSI内に内蔵されているが、更に2次のローパスフィルタを追加する予定だ。初めての設計だからいろいろ実験してみたい。

DACの回路図を描くにもこれらのLSIの回路図ライブラリーも作らなければならず、また半導体にしても秋葉原で入手できるものを考えるとそれなりに制約が生じていろいろ調べながらの作業になっている。またこの回路図を描いていたら、DACとラインアンプを一緒のケースに入れてしまおうかとの考えも浮かんできて、もう今はちょっと混乱している。このラインアンプももちろんバランス型のラインアンプであるが、どうせ作るならEQのように電源部を別のシャーシーに組んでノイズを出来る限り抑えたいと思っていて、それならDACと一緒にならないかとか想像だけはいろいろ浮かぶ。

EQと同様いつ完成するか分からないバランス化だが、まずはDACの回路図が始まった。このどんな回路にしようかと考えているときが楽しい。だが無用な心配もたくさんある。こんなことをしたら音が悪くなりはしないかとか、比較的ネガティブな考えを持つことが多いが、いろんなことを考えた末にこれしかないと自分に言い聞かせたところでやっと製作作業に進める。僕は結構心配性なのです。


 
 <MOS-FET定電圧電源インピーダンスの測定>
 2014年6月11日 

すでにお気づきのことと思うがこのページのE.Rに<MOS-FET定電圧電源インピーダンスの測定>というレポートを書いた。昨年設計したバランス型EQアンプに初めて搭載したMOS-FET定電圧電源のインピーダンス特性が良かったため、パワーアンプでも試してみたくなり実験した。実験の目的はレポートに書いてあるとおり、パワーアンプに使われる増幅段の定電圧電源としてのインピーダンスの測定と音質への影響を調べるためである。
 MYプロダクツの真空管アンプの増幅段の電源はすべて半導体のよる定電圧電源が載せてある。これまでの経験からこの電源の性能が大きく音質に影響していることは確認している。すなわちこの定電圧電源のインピーダンス特性が良ければ音質も良くなるという法則だ。僕の印象だと電源インピーダンスが低くなると音質の変化としてまず低域の歯切れが良くなり、次により小さい音が良く聴こえてくる。聴感上のノイズレベルが下がり、音の過渡特性も向上する。そのためそれまで隠れていた小さな音が聴こえてくるとい具合だ。その小さな音というのは楽器の分離が良くなることや、音の余韻、響きや更には演奏者の息遣いなども良く聴こえてくる場合がある。また時には録音時のホールの余韻も分かる場合がありこの時はマイクの位置までも推測できる。こうなるとアンプがCDなどの情報を余すところなく再生している感じとなり、アンプの再生能力がアップしていると確信する。アンプ回路は変更なく電源回路だけを変更したにも拘らず音質は変化する。
 このような経験から新しい定電圧電源回路を設計した時は電源インピーダンスの測定を行っている。今回の結果はレポートにも書いてあるとおり低域でのインピーダンスの改善が見られ、それが音質の貢献していた。音楽のエネルギーは低・中域にほとんど集まっていると考えられるのでその帯域での特性の改良が音質に影響していると考えている。高域の改善もまだ可能であり今後また実験してみたい。

アンプというのは音質を客観的に測定するのは難しい。だから自分の経験からだが音質の与える特性、例えば今回の電源インピーダンス、アンプのノイズ、アンプの出力インピーダンスなどいくつかのおさえなければならない特性を重点的に測定してアンプ全体を仕上げている。設計者それぞれのやり方でアンプを評価していると思うが、音質だけで評価していてはなかなかいつも一定した音質を得ることは難しい。


 
 <コーヒー>
 2014年6月1日 

今回はコーヒーについて話題を2つ。

 一つ目は高級豆の話。コーヒー豆を買っているコーヒー店「アステカ」のマスターから<コピルアック>という豆を入手した。マスターの話によるとこの豆は高級コーヒー豆らしく、何人かの購入希望者を募集してから発注したもので、マスター自身も飲んでみたかったものらしい。僕はマスターからこの話を聞きそれに乗った形だ。マスターによるとこの豆はジャコウネコが食べて体内で豆が発酵し、その後体内から出てきた豆をきれいに洗って処理したコーヒー豆らしい。通常コーヒー豆というのは発酵させる処理工程が必要なので、それが猫の腸内で行われていると考えればよい。この豆が昔から美味なコーヒーとして珍重されていて、今でも高価な豆として流通しているようだ。
 さて、味はどうだったか。豆はマスターが焙煎してくれ、豆挽きと抽出は自分で行った。豆を挽いている時はそれ程香りが強く出ない。抽出中も強い香りが出てはこない。むしろ普段飲んでいるパナマの方が香りが強い。ところがこのコーヒーを口に含めた途端、これまで味わったことのない、マイルドでバランスの良いコーヒーの風味が口の中に広がる。マスターの焙煎も良かったから苦味も少なく、酸味とのバランスも丁度良い味わいだった。この口に含んだ時のマイルドさは美味しい日本酒を口に含んだ時と同じ感触だった。酒は強くないが、美味しい日本酒はまるで美味しい水のような感じがする。それと同じようにこのコーヒーも美味しい酒を飲んでいるように口の中で風味がサーと広がる。香りより風味が楽しめる、今まで味わったことのないコーヒーだった。

 2つ目の話題はコーヒードリッパーの話。コピルアックを注文する前後にマスターに話してハリオのコーヒードリッパーV60を入手してもらっていた。これまでよく使われるカリタのペーパードリッパーを使っていたが、雑誌でハリオのペーパードリッパーのことを知り試してみたくなった。これは円錐形の形をしており、カリタとは形が少し異なる。
 この結果もどうだったか。このハリオのV60は僕には良かった。これでコーヒーを淹れると味が立ってくる。見た目にも豆とお湯との絡みが均一になっているように思われる。
 当然コピルアックでも試したわけで、我が家ではこれまででは一番の美味しいコーヒーが味わえている。

 最初嫌がっていた女房も最初の一口で虜になり、コピルアックを楽しんでいる。

 わずか100gの購入だから後1回分しか残りがない。明日の朝食のコーヒーは十分に味わいながら最後のコピルアックを楽しみたいと思う。


 
 <メジロの巣>
 2014年5月21日 

4月末の連休が始まる頃、我が家のもみじの木にメジロの巣があるのを見つけた。たまたま庭の木を眺めていた時、メジロが小さな木の枝を加えているのを発見して巣作りをしているのではないかと思い、そのメジロが止まっていたところを下から覗いてみると想像通り巣があるのを発見した。この巣があるもみじの木は葉が生い茂っていて、まったく巣を外からみることができないようになっていた。また不思議なことに巣は一番家に近く、高さも180センチくらいにあってこんな人間の気配が多いところで大丈夫なのかと思うところにあった。その後この巣を良く観察してみるとつがいでメジロが巣に入っているのが分かってきた。一羽のメジロが隣りのキンモクセイに止まり、何か鳴き声を発すると、そのホンのコンマ何秒間の素早さで巣にいる相手のメジロと交代している。これが時々見られることから、卵でも抱いているのかと想像された。こうなるとかれらの行動はかわいいし、まるで我が家の一員となり愛くるしい子供ができたようでなるべく邪魔をしないように眺めていた。

ところが自然界は厳しい。ぼくらは邪魔しないようにしているが邪魔をするやつがいる。一度このもみじの木にカラスが近づいているのを発見したことがあった。何故こんなところに巣があるのかが分かるのかと思うほど彼らの本能もすごい。この時は僕がカラスを追い返したが、これではメジロが可愛そうだと思い少しでもカラス撃退ができないかと、猫を撃退する超音波発生器を、もみじに面した2階のベランダに置き少しは対策を考えていた。でもこの考えは甘かった。2週間位続いたメジロの巣ウオッチングについに終焉が来てしまった。5月8日ころからメジロが完全に巣に来なくなってしまったのだ。この日の朝に何が起こったのかは定かではない。想像だがこの日の朝たぶんカラスに巣を襲われたのだろうと想像している。猫を庭で見ることはめったにないし、前にカラスが巣に近づいていたのから想像すると可能性が高い。今はもっとカラス対策をしっかりやっておけばよかったと後悔している。巣の近くの枝にロープを張りメジロは止まれても、カラスは止まれない細工は出来たように思えた。自然に任せようという気持ちと、我が家のメジロはことによると元気に子供が育つだろうという、理由のない甘い考えが残念な結果になってしまった。ネットで調べてみるとメジロの子育ての成功率は⒛パセントくらいらしいから、仕方がないとは思うが、新しい家族が出来たと思っていた矢先に2週間位で終わってしまったのは非常に残念であった。
 


実は我が家(庭)でのメジロの巣作りは2度目である。1度目は気付かないうちに巣だけが後から発見された。今回は抱卵らしい行為がみられたのに。
 来年以降また巣作りが見られたら、今度はカラス対策をしっかりしてみたい。


 
 <バランスアンプとCSPP>
 2014年5月11日 

昨年バランス型EQアンプを設計して以来、次はバランス型ラインアンプをどうしようかと時々というか気が向いた時どんな回路にしようかと考えている。バランスアンプの回路はそれ程多くのバリエーションがある訳ではないが、これまでちょっと引っかかっているところがある。それはバランス型ラインアンプ(フラットアンプ)の出力段である。バランス型EQの場合の出力段はカソードフォロアーで出力している。これはこれで大きな問題になっているのではないが、ただ出力段がホット・コールドとも片側だけの出力で両方を合成したプッシュプル出力でなく、せっかくホット・コールド2つの入力があるのにそれが活かされず、出力段だけがグランド基準の増幅になっていて完全なホット・コールド間の増幅になっていないところが気になっていた。このEQの前に設計した出力トランスを使用したバランス型ラインアンプはホット・コールド間のプッシュプルになっているからこの形がいいのだが、一方トランスを使わなくてはならない点が気になり、このトランスを省いて何とかホット・コールド出力をプッシュプルで出力したいとずっと考えてきた。
 そして最近CSPP(Cross Shunt Push Pull)という文献資料を読んでいたら、あっさり僕が気になっていた問題がこれで解決できそうだと思い立った。すなわちバランス型ラインアンプの出力段をCSPPにすればプッシュプルで出力されるから回路が全段プッシュプル増幅回路になる。ただし出力はちょっと工夫が必要で、プッシュプル負荷の中点をAC的にグランドに落としてやる必要がある。こうすれば位相が反転したホット・コールドの出力が得られる。

CSPPという回路はサイトなどで内容を読んではいたがそれほど理解してはいない。一番理解できなかったのがCross Shuntという言葉で、何を意味するのかが分からなかった。最近別の資料を読んでやっと理解できた。ただ納得はしていないが。これは名が体を表してなく、回路図上の絵がCross Shuntしているとしか思えず、どうも回路の性質を表してなくてそれでずーっと理解できなかったようだ。まあ名前はどうでも回路の性質が理解できれば問題ない。
 このCSPPがバランスアンプとの相性が良さそうだというのが今の僕の印象だ。ホット・コールド間の増幅回路としてどうもうまくマッチしそうなのだ。まだ頭のなかだけの回路で、細かな定数を決めてないし、実際どんな特性を示してくれるか分からないが、回路候補として一番のように思える。
 いつこの回路の実験をするかは未定だが、これまでちょっと悩んでいた部分に明かりが見えてきてまた楽しい回路検討ができそうだ。


 
 <真空管交換>
 2014年5月1日 

自宅用として愛用している6550ppアンプの出力管を交換することにした。理由は長年使ってきて真空管の性能が落ちてきているように思えたからだ。この655010年以上使用している。実験機でもあるため試聴でも使うことも多く、使用時間はかなり長い。
 どうして交換する気になったかと言えば、前にも書いたMOS-FET電源の検討をしていた時、アンプの片チャネルのゲインが低くなっているのが見つかった。いろいろ調べてみるとどうも出力管のゲインが落ちているのではないかということだった。この時はゲインの落ちていないチャネルの負帰還抵抗を下げて、両チャネルをそろえてしばらく使用していた。ところがこのアンプを使用していてよくよく出力管を見てみると、出力管の上部に付いているゲッターが減っているのが見つかった。新しい時ゲッターは真空管上部全体にかかるように付着していたが、今では一部が薄くなり内部のヒーターが良く見える状態になっていて、ゲッターがかなり減少しているのが分かった。このゲッターというのは内部の真空度を上げるための物質で、使用頻度が上がってくると減少するらしい。以前特性がおかしくなった真空管のゲッターがかなり減っていたという経験もあり、これはそろそろ交換時期かなということになった。
 真空管の寿命の定義は昔の真空管マニュアルによればgmの減少で判断するようで、出力管ではだいたい5千時間位と書かれていた。まあ十年以上も使用したからほぼ変え時であるのは間違いない。ところで新しい真空管に交換してゲインの減少は直ったかと言えばそれは直った。やはり出力管の交換は正解だった。

今時の電化製品で電気部品を交換して修理することなどほとんどない。先日もNTTの光ルーターが突然故障し電話もネットも使えない状態になってしまったが、当然ながらこの時は製品交換になった。またソフトの再設定作業が必要でただ交換すれば済むものではなかった。それに比べ真空管交換は簡単な作業ですんで(バイアス調整が必要であったが)いかにもアナログ的なものだ。

今はエージングを兼ねて音楽を流している。以前と大きく音質が変わっているとは感じていない。真空管の初期不良の検出とバイアスの安定化を見るためしばらくこのアンプを使用している。


 
 <生命力>
 2014年4月21日 

今年2月の2回にわたる大雪特に2回目の大雪での農産物や家屋への被害が大きかったことは記憶に新しい。僕のお客様でも家屋で少し被害に合われた方がいらしたが、我が家でも雨どいが曲がってしまい今では雨の排水がうまくいっていない。もっと被害が大きかったのが庭の木である。重くて大雪だったため枝が折れてしまう被害にあい、もみじ、チンチョウゲ、サツキなどに被害があった。これらの被害はほとんど枝が折れる被害でこれまで元気で育っていた枝が雪の重みで折れてしまった。
 一番被害が大きかったのがもみじの木で直径45センチの枝が根本からポキリと折れてしまったり、あるところは枝の根本から折れているがまだ皮の部分で何とかつながっていた。チンチョウゲも枝の分かれ目のところで裂けてしまっていて何とかつながっているところがあった。これまで可愛がってきたこれらの植物がこんな状態でケガ(?)してしまうのも忍びなく、大雪の後すぐに大急処置であったけれどこれらの枝の裂けた部分を処置した。それは裂けた部分は枝を元通りの形に戻し、そこをガムテープであたかも包帯を巻くようにグルグル巻きにして固定した。それだけでは十分な固定とはならないのでさらに梱包用のプラスチック紐で二重に巻き付け、更に枝がこれ以上裂けないように枝別れした部分を紐で固定し、風などでまた裂けてしまわないようにした。
 この時チンチョウゲはすでに花のつぼみが出来ていて、こんな応急処置で被害にあった枝のついた花は咲いてくれるのだろうかと心配していた。今年は寒かったせいかチンチョウゲの開花は大分遅れたけれど、これら被害にあった3か所の枝についた花は全部枯れることなく花が咲いた。これには本当に驚いた。今年のチンチョウゲは一株の木におそらく200以上の花が咲いてくれた。今も元気で青々とした葉っぱを咲かせている。処置したところはテープも紐もそのままにしてある。きっと枝内部では再生が起こっているかもしれない。そしてもみじについてはどうかと言えばこちらも今は元気に若葉をつけて生い茂っている。被害にあった時、枝は折れぶらぶらの状態でたれ下がっていたのを、ガムテープとプラスチック紐でくっつけただけなのに花も若葉もつけている。(もみじにも赤い小さな花が咲くのです。)さらに完全に折れた枝のところからは新しい小枝が今では生えてきている。この生命力には驚かされてしまった。木々が何とか生きようとしていることを初めて実感として知ることになった。人間も小さな傷や骨折などは自然治癒で治ってしまうが、こんな大けがでは再生しない。
 僕は動物を飼っていないが、その代わり庭の草木を愛でている。今回の事故で更に草木が可愛くなってしまった。

 必死に生きる姿は人間も動物も植物も感動ものです。



 
 <実験ノート>
 2014年4月11日 
僕は自宅のパワーアンプは主に実験機でもある6550ppアンプを使用している。このアンプはタムラのトランスを使用し長く愛用している。ただこのアンプは実験機でもあるので常に回路、配線などが変わり一定ではない。だからもう回路図も存在しない。数年前に変更した内容などは忘れてしまい、今どのバージョンのアンプになっているかは分からず、内部を覗いてみて初めてどんな回路のアンプになっているかが分かるような状態だ。今回はこの対応の仕方が裏目に出た。きっかけはドライバー電源をMOS-FET電源に変更しようとしたときに起きた。電源をMOS-FETに変更しインピーダンス特性を測り、音質を確認した。予想どおり(この考え方はいけない考え方だが)低域の音質が良くなっていることは確認できた。だがしかし聴いていてまだひっかかるところがある。この前に行ったお客様のバージョンアップで感じた低域の伸びが足りないし、前から気になっていた低域、高域のバランスがまだ治っていない。せっかく性能の良い電源に変更して張り切っていたのに、思い描いていた結果になっていない。この電源は万能ではないのだろうか、何かアンプとの相性でもあるのだろうかとかまた悩んでしまった。
 しばらく聴きながらいろいろ考えていた。そして内部を再点検していたらこのアンプは出力段にカソードNFBがかかっていた。数年前に高ダンピングファクターアンプの実験をしていたとき、このアンプは出力段に出力トランスからカソードNFBをかけて出力インピーダンスを下げる実験をしていたのだ。オーバーオールのNFBだけでなく、ローカルNFBの特性を確認する目的でカソードNFBをかけていた。このアンプはその後そのままになっており僕自身もそれを忘れていた。
 今回低域の伸びの足りなさをずっと考えていて、悪さはこのカソードNFBの影響があるのではないかという疑念が持ち上がった。出力トランスによるカソードNFBで出力インピーダンスが下がるといえども、トランス巻き線には抵抗が存在し、それが電流NFBとなって音質に悪影響があるのではないかと。トランスはタムラのF-2021でカソードNFB巻き線の直流抵抗を測定してみると約1.5Ωあった。出力段のカソード抵抗による電流負帰還の悪影響は十分認知していたので、これだと閃きすぐにこのカソードNFBをとりはずした。
 試聴の結果案の定低域の伸びが改善され、僕がイメージしていた音になってきた。これまでこのアンプの悩みの種の原因はカソードNFBにあったことがやっと判明した。なんとこれまで無駄な時間を費やしてきたことか。ちょっと時間が勿体なかった。

この原因は僕が実験ノート(?)をきちんと書いてなく、回路図もなく検討しているからこんなことになったのだ。今巷で騒がれている論文の真偽も実験ノートが問題の一部になっている。
 こんなことで時間を無駄にしたことを僕も今悔いている。


 
 <京都一人旅>
 2014年4月1日 

先週、京都に一人で行ってきた。JRの宣伝「そうだ、京都、行こう」の気分で桜を見るかと出かけてみた。この時期を選んだのはちょっとした家庭の都合で時間が取れたためで、お気楽な一人旅であった。残念ながら桜の開花にはまだ時期が早すぎたようで、ほとんどの木々がつぼみの状態で、その意味では当初の目的の桜という点では期待はずれの旅になってしまった。東京地方では桜は今満開で先週でもたぶん多くの場所でも桜を見られたと思うが、京都ではまだ開花が始まっていなかった。これは気温の差もあるだろうが、桜の品種の差もあるらしい。今回の旅で唯一桜の開花を楽しめたのが醍醐寺の枝垂れ桜だけだったが、平安神宮内の枝垂れはまだつぼみのようでここで案内の方に聞いてみたら、品種の差があり平安神宮の桜は遅いとのことであった。哲学の道でもまだほとんどの桜が咲いてなく、そのため人通りもまだ少なく、さらにこちらは男の一人旅であるからはたからみると侘しい旅に見えたかもしれない。
 桜の楽しみは出来なかったけれど食の楽しみは出来た。昨日NHKのプロフェッショナルという番組で京都の日本料理の店「なかひがし」のご主人が紹介されていたが、実は先週この店で食事をいただいてきた。僕にとってはタイムリーなTV番組であった。「なかひがし」は主に野菜中心に食べさせてくれる店で、今は予約がなかなか取りにくい人気店である。ミシュランも二つ星を取るくらいだから美味しいのは保証付なのだが、ここの料理はちょっと変わっている。食材は地元の京野菜を使うとしても、ここのご主人が毎日大原の山に出かけて野草を取ってきてそれを食材として料理してくれる。これが大変おいしいのだ。言い方は悪いが高級食材を使わないで美味しい野菜料理を出してくれるところが、他の高級レストランと違うところだ。フォアグラ、キャビア、明石の鯛ではなくこの時期では土筆や菜の花で美味しい料理を作る。また最後には土鍋のようなもので炊いた美味しいご飯をいただける。それも一匹のメザシ付きでだ。いかにも普通の家庭料理のようなメニューなのだがこれの味が違う。素材そのものの味が出ているのだろうか、味が優しく、後味が非常に良い。出汁の味が一通りではないのでいろいろな風味が楽しめる。

京都には見るべきところがたくさんある。お寺、庭、仏像、絵画、料理これらはすべて人間が作ってきたもの。もちろん自然が加わってコケや木々が成長して今の景色を作っている部分もあるが、人間あるいは職人の技がそこに生きているものが多い。それが文化というものだ。ぼくは一流の職人になりたいから、こうした職人の作る作品を見たり、味わったりすることが好きだ。料理は食べることも好きだが、それ以外にその職人(料理人)の技(味)を感ずること、そして職人がどんな思い、感覚、表現でこんなものができるのだろうと想像することが好きだ。僕自身も家庭料理を作っているから、一流料理人の味の創造力には感心するばかりだ。

アンプも高級部品を使用していると謳っているようではまだ一流の職人とは言えないかもしれない。

  

左:建仁寺 風神雷神図屏風(高精細デジタル複製画だそうです)
中:賀茂川(左)と高野川(右)の合流地点。これより下流は鴨川と呼ばれるようです。
右:今回唯一見られた醍醐寺の枝垂れ桜。大きいです。


 
 
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