オーダーメイド手造り真空管アンプの店




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 <ノイズのデジタル処理>
 2014年9月21日 

また寄り道した話題になってしまった。ちょっと話題が他になかったからすみません。
 寄り道した話題とは前々回から続いているLPのデジタル化での音楽編集ソフト<Audacity>のこと。これにLPレコードのノイズを取る編集ソフトがある。これが結構面白いので、どんな仕組みでノイズを取っているのかを調べてみた。
 一般にデジタル録音されたものはノイズが少なくSNの高い音源が得られるが、昔のLPレコードやテープなどのアナログ音源はスクラッチノイズやテープヒスノイズなどのバックグラウンドノイズが乗っていて、CDほどSNの高い音質は得られていない。そのためテープなどはドルビーシステムなどと言うノイズ圧縮システムが開発され使われてきた。今はコンピュータを使ってデジタル処理してノイズを圧縮する。ただしリアルタイム処理ではない。

 さて、このデジタルノイズ圧縮処理はどのようにやっているのだろうか。この先はちょっと専門的になってしまうかもしれない。要は音楽信号とノイズ信号を分離する訳だが次のようにやっていた。
 やり方は<Spectral Noise Gate>と呼ばれる方式のようだ。 
 まず、曲の間にある音楽のないノイズだけの部分からノイズサンプルを取る。このソフトでは<Noise Profile>と言っている。このサンプルデータをFFT(高速フーリエ変換)により周波数成分とノイズレベルの情報を得る。ノイズレベルはこれから<しきい値>と呼ばれるノイズか音楽信号かを区別する情報を得る。すなわち信号が<しきい値>より小さければノイズだけの信号とみなし、大きければ音楽信号が優勢と判断することにする。次に音楽データの2048サンプルを一つのかたまり(Segment)として同様にFFTにより周波数成分と信号レベルとに分ける。ここで先ほどの<しきい値>を使ってこのかたまりデータがノイズか音楽信号かを判断する。ノイズゲート回路ではノイズと判断したデータは<Noise Profile>で得られたノイズ周波数成分のノイズレベルを小さくする(減衰させる)。音楽信号とみなされると信号はそのまま出力される。これは大きな信号がある時ノイズはマスクされて耳には聴こえない性質を利用している。すなわちノイズゲートはノイズ信号とみなされれば信号レベルを下げ、音楽信号をみなされればそのまま出力する、開く(Open)、閉じる(Close)のゲートの役割をはたしている。これを次々繰り返していく。処理後はもちろん逆FFTで時間軸の信号にもどされ再生信号となる。

 Audacity>のプログラムではしきい値、ノイズ減衰量、ゲートが反応する周波数帯域、ゲートが開閉するエンベロープなどが調整でき、ノイズ削減の結果が音楽信号としての自然さが保たれるように調整できるようになっている。
 こんなやり方でLPレコードのノイズをデジタル処理していることが分かってきた。

どうもビートルズの復刻盤CDも同様なやり方でクリアーな音質を得ているかもしれない。“Abbey Road“の”Sun King”でのドラムのブラシ部分でのヒスノイズを取るのは難しかったらしい。復刻版CDをお持ちの方は確かめてみると面白い。


 
 <Audacity>
 2014年9月11日 

話は前回の続きとなる。表題の<Audacity>(オーダシティー)とは辞書で調べたら大胆不敵という意味だったが、今回での意味はオーディオ信号編集ソフトの名前。LPレコードのデジタル化を依頼され、それに伴い録音された音楽信号の編集ソフトが必要となった。前回にも登場してくれたこれを依頼した先輩がこのソフトを使いだしたので(QuickTimeではなく)、僕も使ってみることにした。もちろん無料ソフトである。今回の依頼では僕がLPレコードのデジタル録音まで受け持ち、そのあとは依頼者である先輩が好みの音源に編集することになっているが、僕もこんなソフトを使うと何ができるのだろうとちょっと寄り道してみたくなった。

 巷にはいろいろと有料、無料のオーディオ信号編集ソフトがあるようだ。どれが良いのか分からないが、無料で使えるソフトとなれば数種類に限られ、このAudacityは機能面で評判がよろしいようだった。まずはダウンロードし使ってみることにした。ところがこのソフト、外国で作られたソフトのようでマニュアルはすべて英語。まずはこれをクリアーしないと先に進まない。しばらくは我慢してマニュアルに没頭。目がかすんできた。PC画面での長時間の書類読みはかなり疲れる。英語の資料を読むのは久しぶりの作業で尚更疲れた。それでもまだ使い方は十分理解していないのだが。
 このソフトはっきり面白い。どんなことが出来るかというと、LPレコードに含まれるスクラッチノイズやプチノイズ(クリックノイズ)などを除去してくれる。この編集が面白そうなのだ。もちろん完全ではないが、場合によっては試行錯誤でかなり取れる場合がありそうだ。また録音レベルの正規化もしてくれる。これを使えば録音レベルのバラツキが抑えられる。そのほかにもトラックの分割というのもある。前回に書いたがLP片面をすべて録音しておき、その後曲ごとに分割するというものだ。もちろん曲名や演奏者名などを付けることができるので、ファイルとしても使いやすいものなる。これらのデータはまた好きなフォーマとにも変換できるから、WAVのままでもMP3などに変換してそれをiTuneなどで使えるようにしてくれる。こんな素晴らしい賢いソフトが無料で入手できるなんていい世の中だ。
 このちょっとした寄り道が結構面白く、依頼した先輩も長く時間をかけて全部のLPをデジタル化するつもりのようだ。僕の作業も大変だがその引き換えにLPレコードが入手できるのでまあ仕方がない。
 自分のLPもデジタル化してみたくなってきたし、車の音楽用にMP3フォーマットのUSBメモリー音源も作っておくと便利かなあとも思ってしまう。いずれにせよ時間がかかる作業だから、のんびりと作業を進めるしかない。

 それにしても世の中素晴らしいプログラムを書く人がいるものだ。それも無料で提供してくれるなんて偉いなあ。


 
 <LPレコードのデジタル録音>
 2014年9月1日 

今年の6月に酒の席で元会社の先輩達に今必要のないLPレコードがあったら分けてもらえないかという話をした。僕の場合もそうだが80年代CDが出てきて以来、音楽ソースはCDに替わり、LPレコードプレーヤーもわずかしか発売されなくなると、寂しくLPレコードは家の隅に置かれ、LPレコードは無用の長物として扱われてしまった。最悪の場合は処分されて捨てられてしまうこともあったと思う。僕の場合、昔はジャズレコードが大半であったけれど、ほとんど後輩にあげてしまっていた。今またEQアンプを設計してLPレコードを聴く機会ができて、LPを手放したのはちょっと残念であったと思う。ただ捨てたわけではないのでその点は良かったと思っている。
 だからそんなLPレコードが昔オーディオに興味があった先輩の家にもたくさんのLPレコードが死蔵されてはいないかと、酒の席で聞いたところやはり推測通りで今はほとんど聴いてなく、聴く装置もないらしかった。その中のお一人がもうLPは聴かないから提供してくれるということになった。ただし条件があった。お気に入りの演奏版はデジタルで録音して音源として残しておき、それをまた聴きたいということだった。だからもし何枚かのLPレコードをデジタル化して残してくれれば差し上げるというものだった。このお気持ちは十分分かるものだ。ほとんどの人がお気に入りのレコードには思い出があるはずだからだ。昔の思い出をそう簡単に手放したくない気持ちは良く分かる。
 録音はPCM-M10を使用した。これは女房がお稽古で使っていたのでこれを利用させてもらった。EQREC OUT治具を作り、そこから信号を取り出しデジタル化して録音する。録音モードは44.1KHz/16bitWAV形式。録音はLP片面を1ファイルとしてまとめた。このままだと曲の頭出しができないが、我先輩はコンピュータに詳しいからデータがコンピュータ取り込まれればどうにでもなるという心強いお言葉をもらったので曲ごとにファイル化する作業は後でゆっくりすることとなった。音楽編集に関係するソフト(無料)も世の中いろいろあるようなので何とかなるということだ。ちなみに先輩は手持ちのQuickTimeで出来るのではと話していたが。

この作業をしていると僕もコンピュータに音源をまとめておきたくなってくる。今回は先輩が編集した音楽データを一部もらえそうだから、それで新しい音源が楽しめるようになる。だがそうするとこんどはUSB DACが必要になってくる。ちょっと前にこのDACの回路図は描いてみたが造るとなると少し腰が重くなる。そして今はCSPP出力のバランス型ラインアンプの設計もしていてこちらも造りたいと思っていて、頭だけは進むが手がついていかない状態になっている。どちらを先に作るべきか迷うところである。


 
 <ハリオV60>
 2014年8月21日 

音楽好きな人はコーヒーも好きではないかと思い込んでいる。音楽を聴く時は何か心を落ち着かせたい時とか気分を変えたい時とかに聴くことが多い。もちろんロックなどでは心を落ち着かせる場合ではないが、一般的に好きな音楽を聴いている時には何か満ち足りた気分にさせてくれる。コーヒーというのも音楽のように気持ちを落ち着かせてくれ、コーヒーブレイクと言葉があるように気分を変えてくれる。だから僕は両者に共通点が多いから、音楽好きにはコーヒー好きではないかという論理を勝手に作っている。
 そういう僕もコーヒーが好きだ。毎日のように朝は僕がコーヒーを淹れる。幸いなことに近くにアステカというコーヒー専門店があるから美味しい豆を入手できる。僕は買うときにはたった100gしか買わない。1週間位でこの豆は無くなってしまうのでまた買いに行く必要があるが、豆は新しいうちに消費できるので香りがまだあるうちに飲むことができる。もちろん豆は挽かずに買い、飲む直前に手動のミルで必要な分だけ挽くようにして飲む。今回は最近試してみたドリッパーの話。

 以前このコラムで「コピルアック」のことを書いた。その時ハリオのV60 というドリッパーのことも書いた。ドリッパーというのはコーヒー豆にお湯を注いでコーヒーを抽出する道具のこと。いろいろな種類のドリップ方式があるが、家庭ではペーパーフィルターが多く使われていると思うが、それもカリタ式という扇状の形をしたペーパーフィルターが多い。僕も最近までそれを使っていたが、雑誌でコーヒーの世界大会で優勝した人がハリオのV60 という形のかっこいいドリッパーを使用していたので、それをアステカで入手してもらい、今は使用している。
 特長は1、形状が円錐形をしている。2、ドリッパー底面に大きなひとつの穴。3、ドリッパー内部にらせん状のリブがついている。などカリタとは形状が違う。デザインも良い。更に金属性のドリッパーもありこれが非常にかっこいい。(ただし高い。)肝心の味はどうかといえば、僕が今回使った経験からは非常に美味しくコーヒーが入れられる。また味が安定している。その理由を書くスペースがここにはないが、その理由のほとんどがハリオが謳っている特長そのままで、豆は良く膨らみ、まんべんなくお湯は回り、抽出スピードはお湯の注ぎスピードで変えられるなどいいことづくめのドリッパーなのである。コーヒーの淹れ方も以前アステカのマスターの講習会で習った方法をベースに自分なりの工夫を加えて淹れている。昨日ネットでコーヒーハンターと言われる、マスターの知人の川島さんのサイトで淹れ方を見ていたら(動画である)自分のやり方が間違っていなかったことが分かったのでちょっと安心した。コーヒーの淹れ方にこれしかないということはなく、その家庭の味が出ればどんな方法でも良いと思うが、そういうものを参考にするとコツみたいなものが参考になる。
 最近僕が飲む豆はパナマという豆を使っている。アステカで焙煎してくれるパナマは苦味・酸味・甘味のバランスが僕にはちょうど良く、ストレートで飲む時ちょうど良い。2杯目はミルクを多めに入れてカフェオレ風にして飲むが、その時でもミルクに負けない風味を出してくれて満足している。今回はちょっと紙面が足りない。



  
 <ガチカレー>
 2014年8月11日 

今横浜で<ガチカレー>というイベントを行っている。ガチカレーとはパンフレットによると「ガチでうまい横浜の商店街カレーNo1決定戦」ということらしい。ちなみに<ガチ>という言葉をgooで調べてみたら<俗語。「がちんこ」から 真剣に。真面目に。本気で。>と書いてあった。だからこれは横浜の商店街で本当に旨いカレーを選ぶ決定戦ということらしい。ところがこのガチカレーのエントリーを見るとカレーパン、カレーうどん、カレー丼、カレーバーガー、カレーラーメン、それにもちろんいろいろな種類のカレーなどがあり、ガチカレーというよりB級カレー決定戦のような雰囲気でお祭りのようなイベントになっている。エントリーしているお店(カレー)は73でこの中から一つを投票することになる。またこの企画はただ美味しいお店を選ぶだけでなく、スタンプラリーの企画もあり決まった数のお店を回ると景品がもらえ、73店舗すべて回ると先着5名には時計がもらえるようになっており、6 月からスタートですでに数人が全店食べ歩いたという。

わが街能見台商店街には2つの店がエントリーしている。このサイトのリンクで紹介している、「アステカ」と「ガネーシュ」である。アステカは喫茶店だが看板どおりカレーとコーヒーにこだわっているお店だし、ガネーシュは本格的な南インドカレーで今回のエントリー店では数少ないカレー専門店である。ともにいつも利用していて、そこのご主人(ガネーシュは女性)とは普段から懇意にしてもらっている。だから今回の投票には気を使わなくてはいけない。そこで投票は女房がガネーシュに僕がアステカにすることにした。すでにガネーシュには説明して1票入れさせてもらった。
 店のご主人の話を聞くとこの企画によってやはり新しい客が訪ねてくるようだ。このガチカレーを目当てに食べに来るらしい。それも男の一人客というのが多いそうだ。カレーというのは子供のころから好物料理であることが多いから、たぶんカレーと聞くと食べたくなる男性は多いのではないかと思う。こうやって新しいお客が横浜の商店街を訪ね歩いてくれれば今後も商店街の活性化につながるから非常に良い企画であると思う。
 僕も時々カレーを食べたくなるので、家ではお母さんカレー(市販のカレーの素で作る家のカレーをこう呼んでいる)も作るが、やはり味の異なる本格的カレーを食べたくなるのでこれらの店に時々食べに行く。

もしカレー好きの方がいらして横浜のカレーを食べてみたい人は是非食べに来て下さい。
 「ガチカレー」で検索すれば詳しい企画内容が分かります。エントリーのお店も紹介されています。期間は8月31日までだそうです。夏休みの企画にどうぞ。


 
 <バランス型CSPPラインアンプ>
 2014年8月1日 

5月11日のコラムでバランス型ラインアンプの出力はCSPP(Cross shunt push pull)が良さそうだと書いた。この時はまだ回路図は書いてなくただボンヤリと頭の中で考えていただけなのだが、最近ちょっと回路図を描いてみようという気になり描いてみた。
 バランス増幅というのはホット・コールド間で増幅するのが理想で、ホットとコールド信号をそれぞれ独立した2系統のアンプ構成で増幅することも可能だが、こうするとせっかくコモンモードノイズのキャンセルが出来ずに増幅されるので理想的ではない。やはりホット・コールドの間で増幅できるのが理想だ。性能も良くなるしアンプも1系統で済むし理想的になる。そんな理想を実現するために求められるアンプというのは全段プッシュプル構成で出来れば良いことになる。入力やその後の増幅段は差動増幅器で構成すればよいものの最終段(出力段)はどうすればよいかが問題になる。差動出力でも良いのだがこれでは出力インピーダンスが高くて理想とは言えない。そこで出力インピーダンスが低く、プッシュプル増幅回路の一つとしてCSPPを候補として考えてみた。これなら出力インピーダンスは低くなるし、もちろんプッシュプル増幅だし、ホット・コールドのゲイン差も負荷抵抗で決まるので大きくずれることはないし、理想に近いのではないかと思う。

 でも回路を描いてみないと実際はわからないから、とりあえず描いてみるかということで始まったのだが、以外と簡単に回路は描け、負帰還回路もスムーズにいった。
 サイトを見るとCSPPを使ったラインアンプの制作例はないから、性能がどの程度になるかの実例での比較ができないが、僕の予想では悪くなさそうである。その理由は3極管で構成した場合、全段プッシュプルだから3極管の入出力特性の非直線がキャンセルされるため結構歪特性は良くなると思われるからだ。バランス増幅だからセパレーション特性も良いであろう。「こんなに言い切ってだいじょうぶかなあ」と幾分心配しながらも、でも特性、音が楽しみだなあという気持ちである。
 まだすべての回路図が出来ていない。電源部などがまだ残っている。この前まではバランス出力のDACの検討をしていたのだが、今はちょっと寄り道してCSPPラインアンの検討を始めた。ちょっと気が多すぎる。
 ラインアンプとDACとどちらを先に作るかとなるとまた悩んでしまう。でも今の気持ちではラインアンプの方が回路的に珍しさもあり、こちらの方に興味が移ってしまう感じがする。たぶんまだ誰も(もちろん僕も)真空管バランス型CSPPラインアンプの音など聴いたことはないのでは。ちょっと聴いてみたい。


 
 <話し言葉>
 2014年7月21日 

2か月ほど前に夏目漱石の「道草」(新潮文庫)と「こころ」(岩波文庫)を続けて読んだ。何かのテレビ番組で夏目漱石が海外でブームであるようなことを言っていたような気がする。どうもグレングールドも夏目漱石のファンだったらしい。そんなことから女房から本を借りて読んだ。面白い。物語自体はたわいないことだが、心理状態をこんなに描けるのかと思うくらい緻密で豊富でやはり優れた作家であると感ずる。こんな評論を僕が言ってもあまり意味のないことなので、別な視点で読書後の感想を述べてみたい。

夏目漱石が生まれたのは江戸時代である。まずこれが面白い。大政奉還があった1867年の生まれで、「こころ」を書いたのが大正時代の始めだから夏目漱石が40代の作品である。だから夏目漱石は江戸時代に生まれ、明治時代に育ち、大正時代に作品を作ったことになる。何故こんなことを言うかというと、これらの本は文章が口語体で書かれていて、その時代の言葉や文化が良く分かりその時代の背景が推測でき、そこに僕の知らない発見がたくさんあったからだ。僕が読んだ文庫本は旧仮名づかいを現代仮名づかいに直してあるからまったくオリジナルのままではないが、それでも当時の話し言葉はそのまま理解できる。ということは僕が明治あるいは江戸時代に戻っても今の言葉でも十分通用するし、理解もできるということを発見してしまった。ちょうど僕がこの本を読んでいた時期、NHKが坂本龍馬の書いた手紙が発見されたという報道があった。この手紙の解説を聞くと、昔の手紙だから<候文>(そうろうぶん)で書かれていて、なかなか内容を理解することはできない。ところが同じ時代に生まれた夏目漱石の口語文ではまったく問題ない。すなわち口語文と手紙ではまったく違う文章であったということを今更ながら知った訳だ。
 昔の言葉を知るのは文章しかなく、テープレコーダーでもあれば別だがそれが無く文章しかないから、口語も「何々候」と今では理解できない言葉をしゃべっていたのではと想像していたが、江戸時代生まれの夏目漱石の口語文を読むとそうではなくまったく現代と変わらない。これは正しいのか知らないが僕の中では「こうなんだ」とうい結論になってしまった。

 また暮らしの楽しみ方も今と変わらない。「こころ」では夏は鎌倉に海水浴に行くし、“先生”は時々奥さんと音楽会だの芝居などに行き、“私”は箱根から絵葉書をもらったと書いてある。明治時代のレジャーは今とさほど変わらない。

ここに書いたことは正しいかどうかは知らない。でも僕からすれば江戸時代に戻っても、さらに戦国、鎌倉時代に戻ってもそれほど不自由なく言葉が通じることは(方言は別にして)大いにロマンを掻き立てることなのだ。


 
 <バランス出力DAC進捗>
2014年7月11日  

前にバランス出力DACの設計に入っていることをこのHPで書いた。今回はその後の進捗について。基本回路図は書き上げた。その後部品の入手やコスト、製作の作りやすさなどより具体的なことを検討している。いろいろなサイトで調べてみると、このDACの手造りというのはアマチュア向けにすでに基板(キット)が売られていてそれを利用しているのが多いようだ。僕もこの際このキットを利用できないか調査してみた。調べてみる限り2つのキットが存在していた。もっとあるかもしれないがこれらのキットはDACを設計するのに役に立つ。IC端子の設定などが参考になるし、何よりメリットがあるのはノイズの点だ。DACというのはデジアナ混載回路なのでノイズに気を付けて設計しなければならない。手配線でも動作をさせることは出来るがグランド配線が十分に確保できずノイズの点で不利になる。出来ればこのような回路では基板設計することがのぞましい。と言っても基板設計の手間や基板製作のコストなども考慮しなければならないし、アマチュアの場合このような回路を実際つくるのは少しハードルが高くなる。僕もこの基板をどうするかが一番の悩みになってしまった。回路図は出来たが、実際に作るのはどうしようか。
 まず2種類のDACキットを調べた。キットが僕の回路にどの程度改造が可能か。コストはどの位か、大きさはどの位か、基板パターンは良くできているかなど調べた。そうしたら一つは安いが改造が必要。もう一つは大きな改造は必要ないがコストが上がることが分かった。次にパターン設計して専用基板を作ったらどの位コストがかかるかを検討した。これは手間やコストであまりメリットがなく、1台だけ造るには効率が良くないことが分かった。(当たり前だ。)
 そこで今は安く出来るキットを使用してそれを変更し、自分用に改造しようと計画している。基板のカット、接続の変更が必要だがこれが現状では一番のやり方という結論になった。

 このDACキットを調べているうちに、DACの入力も変えることにした。これまでは同軸とトスリンク()を考えていたが、トスリンクはやめてこれをUSB入力に変更することにした。どのようにするかと言うとこれもUSB DACのキットでUSB入力に対応したDACが安く入手できる。PCM2704という1チップのDAC ICなのだが、このDAC部分は使わずこのICから出力されているデジタルオーディオ出力(S/PDIF)を今回設計するDACに入力してあげればもっと性能、音質のよい音が得られるはずだ。PCM2704 は自動でドライバーが認識してくれるらしいのでコンピュータ音源が使えそうだ。ただサンプリング周波数が最大48kHzなのでHi-Res.というわけにはいかない。この回路も秋月電子でキットが安く売られていたのでこれを少し改造して使うことにした。

 今回のDAC設計はすでに設計された基板を使わせてもらうことにした。デジタル回路はほとんど変わるところがないので、そこは意地を張らずに使い、電源とアナログ部は新規設計した。と言ってもOPアンプを使う予定なので、あまり独自性はないかなあ。


 
 <デュオ・リサイタル>
 2014年7月1日 

627日にイザベル・ファウスト(ヴァイオリン)、アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)のリサイタルを聴いてきた。場所は神奈川県立音楽堂。聴くきっかけは僕のお客様でもあり親しい友人がイザベル・ファウストのファンで、このコンサートへのお誘いがあり、チケットも取ってくれたのでそのお誘いに乗った形だ。これまでこの二人の演奏はCDでもほとんど聴いてなく、何か情報をインプットしておこうと思ってこの二人の演奏が含まれているCDを事前に購入した。ちなみにそれはベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ全集というもの。これを12度聴いてコンサートに出かけた。

イザベル・ファウストの演奏スタイルというのは他のヴァイオリンニストとちょっと違っている。音が全体に柔らかい。特に出だしの音、弓が弦をこする最初の音から静かで柔らかい音がする。波形的な表現で言うと立ち上がりが鋭くなく、スーと立ち上がる感じだ。ただこの演奏は曲によって当然鋭い立ち上がりを聴かせる場合もあるが、総じて柔らかな立ち上がりをしている。またビブラートが少ない。CDで聴いた時この人はビブラートをほとんどかけないのではないかと思う程だったが、実際演奏を見ているとビブラートはかけるが小さな振幅で短い。だからほんのちょっとのビブラートをかけていた。だからこの人の演奏は派手さがなくシンプルで嫌味のない演奏に聴こえる。これはこの人の演奏の好みなのか、昔の演奏スタイルを意識しての演奏なのかは分からない。前に言ったとおり、この演奏スタイルがすべてではなく、モーツアルト・シューベルト・シューマンではこのような柔らかい立ち上がりの演奏で、一方ブラームスでは強めの弓で幾分ビブラートも強めに演奏していた。

 ピアノのアレクサンドル・メルニコフは演奏がうまい。素人の僕が聴けばどのプロも演奏がうまいと感ずるのは当然だが、この人の音も柔らかくて僕の好みの音だ。これはCDを聴いた時から好きになってしまったのだが、生もやはり素晴らしかった。この人も動きや表現に派手さはないが、音が安定していて欠点が見あたらないような演奏をする。ピアノの影響かもしれないが、低音の出方も派手でなく、皮膚に響く低音ではないが芯があり柔らかく好ましい音だった。この二人のデュオの演奏は派手さがないので、どちらかが前に出るという演奏よりも、ピアノの上にバイオリンが乗っているようなアンサンブルで聴いていて疲れなく、良い音で気持ちの良い演奏が聴けた。

僕は音楽評論家ではないので演奏の評論を書くつもりではない。今回何を言いたいかと言えば、この生の演奏の印象は我が家のシステムでも7080パセント位の確立で聴こえていたということだ。CDの印象と生の印象がほぼ等しかった。再生音も余韻や響きなどが聴こえてくるとかなり生の印象に近く聴こえることが経験できた。

 今回のコンサートは今のオーディオシステムの音に少し自信が持てたようだ。


 

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