オーダーメイド手造り真空管アンプの店





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 <男の料理教室>
 2015年9月21日 

久しぶりに男の料理教室に参加した。この教室は不定期に開催されまた参加希望が多いと抽選になるから、年に1,2度の参加となる。今回は<分け徳山>の野崎シェフの料理教室であった。この方は時々TVにも出られるほどなのだが、それ程ピリピリしたところはない。生徒が男性でみんなど素人だからほとんど遊び半分であることを知っているからか、厳しいことは言わない。ただこの人はかなり理屈っぽい。だから男性生徒には合っているかもしれない。男の料理というものは毎日の食用というより、たまに豪華な一品料理的なものだから、理屈をこねた料理を教えてくれるのも楽しい。

今回の料理は
 ・牛肉の冷しゃぶ

 ・スズキと野菜のホイル焼き
 ・焼き茄子と茗荷とトマトの味噌汁
 ・白いご飯
というもの。

これらの料理はタイトルだけ見ると簡単な料理と思われるが、さすが理屈好きのシェフに会うといろいろウンチクが付き面白く、それにためになるものが多かった。例えば牛肉のたんぱく質が凝固するのは70℃からだからぎりぎり70℃位で脂を落とし、それを氷水ではなく常温の水で冷ますというもの。冷えすぎるとまた脂がかたまり美味しくない。この方法だと肉の臭みも取れかつ適度の脂がのり美味しくいただけた。温度管理もプロはかなりうるさい。焼き茄子もひと手間かけている。茄子は焼く前に箸で突いて適度な穴をあけてから焼く。こうすると火の通りが良くなる。こんな手間もかける。さらに焼いた茄子の皮をむくとき水に入れて冷ましてから行うが、熱いのが我慢できるのなら水に入れずに皮をむくように言われた。水につけると茄子のおいしさが逃げていくとのこと。すべてなるほどというもの。ご飯の炊くのも土鍋で教えてくれた。(もちろん電気釜ではない)米を研ぐというのは間違い。研ぐとは硬いものをこする行為。これでは米のおいしさが逃げていく。米は洗うというのが正しい表現。米の周りのごみを洗い流す程度でごしごし洗ってはいけないそうだ。確かに米と研ぐのは酒造りの時に使う言葉か。

こんな風に一流シェフの男の料理教室は理屈が多くて面白い。何でそうするのというところがないと男は行動を起こさない人間が多いからだ。
 料理も科学実験と思えばそれは楽しく、また後で飲んで食べるということが待っているからさらに楽しい。


 
 <バイアンプ>
 2015年9月11日 

KT88シングルアンプの設計中にまた発見したことがあった。それはバイアンプの実験ができたことである。お客様からのご注文が同じステレオ仕様で2台のご注文だったため、アンプ試聴とエージングをバイアンプで実験できた。我が家のスピーカーはノーチラス805で普段はバイワイヤリングで使用しているが、なかなか同じ2台のアンプでバイアンプの実験をすることができなかった。バイアンプでの比較試聴実験をするときゲインだけ合わせた2台のアンプで実験すると、アンプの違いも考慮しなければならないが、内容も同じアンプで実験すれば1台と2台での音の違いをそのままバイアンプの音として聴くことができると考えた。(僕の作るアンプは同じものがないからこんな機会はなかった。)
 
試聴したかぎりバイアンプはよりすっきりした音に感じられ、濁りの少ない音になっている。確かB&Wの取説にもバイワイヤリングやバイアンプの接続法がより高音質になると書いてあった気がする。スピーカーメーカーも勧める接続方法だから音に良いのだろう。

 この効果の理由については諸説あるようで、ネットで調べてみるとスピーカーの通常の接続に比べ、バイワイヤリングやバイアンプの接続は低域スピーカーの逆起電力が高域スピーカーに悪影響を及ぼしているというものである。他にはケーブルがスピーカーネットワークの特性に悪影響を及ぼしているというものある。何が原因でバイアンプの効果が出ているのかは定かではないが、聴感上ではメリットがあると感じている。この音の向上はバランスアンプでドライブした時に似ている。

今理由はどうであれバイアンプの効果は僕の中でははっきりしている。多分多くの方も同じように感じておられるだろう。その効果が次第に高じてマルチアンプ化となっていくのだろう。

そういえばまた別の発見があった。ネットワークオーディオの体験だった。お客さまはネットワークオーディオでハイレゾを使われていた。オーディオ用に設計されたNASやネットワークプレーヤーを使えば簡便にいい音が体験できることが分かった。
 こちらも面白い体験だった。

まだやることが多いしお金も必要だなあ。


 
 <シングルアンプほぼ完成>
 2015年9月1日 

前回のコラムでも書いたシングルアンプがほぼ完成した。KT88のシングルアンプである。最終回路も決まり音も確認し、今はエージングを兼ねて最終チェックの段階となった。 シングルアンプの設計は難しいと前回書いたが、その理由はシングルアンプは素子や回路の影響がダイレクトに性能に出やすいからだ。例えばf特は出力トランス、歪は出力管、最大出力は電源電圧、セパレーションは電源インピーダンス、出力インピーダンスはNF量などに影響され、何も考えないで設計すると目的の性能が出てこない。僕の設計するアンプはさらに部品コストという大きな制約があるから、これらのバランスをどう取っていくのかが重要になってくる。
 今回の設計ではKT88は指名だし、またこのアンプはマルチシステムの高域用として使われるという条件が付きこれらのさまざまな条件を考えて設計した。
 高域用アンプとして使われるから重要視したのが高域のf特とD.F(ダンピングファクター)である。真空管アンプではDFをあまり重要視しない設計が多いが、僕はDFをかなり重要視して設計する。ただ5極管、ビーム管を使用するとDFNF(負帰還)に頼るしか方法がなく、ここらが難しいところとなる。またNFを多くするとDF値は良くなるが、f特にピークを持つことがありこれはアンプの安定性に影響し、発振しないまでも高音が誇張された音や歯切れの悪い音になったりする。今回は出力トランスの1次側のインピーダンスを3.5KΩで設計した。f特重視のためである。最大出力やDFには若干不利かもしれないが安定した周波数特性を得られることを最重要視して設計した。電源もFET電源できっちり抑えている。シングルアンプは電源の影響を受けやすく、ノイズやセパレーションなどしっかり特性を得られるようにしている。
 さてこのように設計してきて得られた特性はほぼ目標とした特性が得られた。アナログ回路は定数を一つ変えると、歪、f特、安定性などすべての特性が変わるから、最終回路に行きつくまでたくさんの確認作業を経てからたどり着いた。
 最終回路でのDFは1kHzで⒛以上、10KHzで16、⒛KHzで12の特性が得られた。f特もピークがなく⒛KHzまでフラットその後なだらかに落ちていく素直な特性を示してくれた。これは聴感上で好ましい特性であると同時にアンプが安定に動作していることを示している。

さて肝心の音はどうだったか。設計者が判断すると手前味噌になってしまうがこれまで設計したシングルアンプの中では最高の音が得られた。高域は細くなく、柔らかく、芯がある。全体のバランスも良い。
 さてお客様のところでどう鳴ってくれるか。まだ安心は出来ない。


 
 <シングルアンプ>
2015年8月21日  

今シングルアンプを設計している。久しぶりのシングルアンプの設計だ。前回このコラムで書いたように今年の夏は非常に暑いのでアンプを設計、製作するにも幾分影響する。でもアンプ設計は楽しい。どんな性能、音の製品になってくれるか僕自身が楽しみにしているからだ。アンプを何台も設計しているがいつも同じ設計とは限らない。むしろいつも何かしら変えて設計している。理由はこれでもアンプ設計には進歩があるから今度はこんなノウハウを入れようと最新の設計にするからだ。
 今回もお客様のご要求をお聞きしながらその中でも最高の性能、音を目指して僕のノウハウを注入している。性能的には出来の良いアンプが出来てきた。未完成なので詳細はここでは触れられない。久しぶりのシングルアンプがどの位音の向上が認められるか、自分でも楽しみだ。

シングルアンプはアマチュアの方は好んで作られるようだ。理由は良くは分からないが一番の理由は作りやすいからだと思う。特に人気があるのが直熱管のシングルアンプらしい。
 シングルアンプは製作は優しいが設計は難しい。いろいろ制約があるからなかなか性能を上げるのが難しい。特に歪特性はどうしてもプッシュプルアンプに適わない。その理由は出力管の歪特性からくるものがある。歪のシミュレーションは昔E.Rに書いたからそれを参照してほしい。しかし歪はこれだけではなさそうな気がしている。負帰還アンプの場合初段真空管のグリッド・カソード間の非直線も影響しているように思われる。もともと比較器の2入力が非直線になっているのでいくら負帰還をかけても限度がありそうだ。これはこれまでプッシュプルアンプを設計してきてそれがすべて差動増幅で構成されていて、差動が負帰還の比較器になっていたのでG-K間の非直線をキャンセルされていたのが今回は見えてきたのである。多分シングルアンプでも入力を差動にすればもっと歪は下がるような気がする。今後の検討課題だ。この差動入力を考えていたら、今度はこれならバランス入力のシングルアンプが出来ることに気が付いた。アンプはバランス増幅ではないけれど、バランス入力には対応できる。僕のバランス型EQで設計したように、バランス・アンバランス変換をシングルアンプで対応すればよい。これも今後の面白い検討課題だ。

アンプを設計するとそこでいくつか気が付くことがあり、そこからまた新しいアンプのアイデアが出てくる。この繰り返しでアンプが新しく生まれる。こんな作業が僕には楽しい。


 
 <夏>
 2015年8月12日 
 今年の夏は暑い。TVでも猛暑日が続いていると報じているが、ここ横浜でも暑い。東京、埼玉、群馬の各県などは神奈川県よりさらに暑いようだから皆さん大変な思いで過ごされていると思う。僕の安眠法は以前このコラムで紹介したことがあるのだが、ベッド用ゴザと冷たい枕の組み合わせで寝ている。これでエアコン無しで十分寝られるから省エネで体にも良い睡眠法になっている。

こんな暑さの中では仕事の集中力を保つのが大変なのだが、今年はさらにやるべきことが多くて忙しい。そんななか更に悪条件が重なってきた。
 最初はプリンターが壊れた。壊れたと言ってもインクの目詰まりで黒が出ない。購入して1年半程度の商品なのだがもう印刷ができなくなってしまった。ちょうど回路図を描いている時にこの故障が始まった。回路図は専用ソフトで書き、その部品表もその回路図から抽出できるようになっている。パソコンの画面上では図面が出来ていてもプリントできなければ組み立てや部品購入に支障をきたしてしまう。プリンターの購入も考えたが保障延長もしているので一度は修理を試してみたいと思うが時間がない。この件は顔料インクでは印刷できたから何とか間に合わせた。その後アンプの製作をしていたら、どうも予定の電圧が出ないという現象に付きあたった。その問題を調べていったらツエナーの部品不良だった。表示の電圧とはかけ離れた値になっている。単品で調べてみても同じ現象が表れた。昔だったら部品不良の原因を問い合わせて直してもらうのだろうが、今はそんな力もないから泣き寝入りで部品交換するしかない。そんな作業をしていたら今度は使用しているテスターの動作がおかしくなってきた。電圧測定だけができなくなってしまった。内部のヒューズは壊れていない。これもあまり時間をかけたくないので昨日新しいのに交換した。これでまた作業が再開できる。

暑いのにトラブルが発生する。だからこのコラムも今回は時間に間に合わなかった。
 気温だけでも下がってくれれば、気分も落ち着くのだが。


 
 <コーヒー>
 2015年8月1日 

前回のコラムで雑味のない音という何とも意味不明に聞こえる表現をしたが、これは本来の音だけが出て濁りや誇張がないことなどを言ったつもりだ。音を言葉で表現するのはなかなか難しい。雑誌なので評論家たちの文章を読んでいると確かに文章としていろいろな形容がでているが、それがこちら側に正確に伝わっているかどうかは疑わしい。
 今回はこの話ではなくコーヒーの淹れ方についての話題。これは僕の個人的な好みでのコーヒーの楽しみ方であるので話半分で読んでほしい。

 僕はほぼ毎日コーヒーを淹れる。その手順をお話しよう。まず電気ケトルと鉄瓶に水道水を入れてお湯を沸かす。水は水道水を使う。コーヒーは軟水の方が良いと聞いたことがあったので水道水を使っている。ただし蛇口に浄水器を付けカルキは取るようにしている。電気ケトルのお湯は陶器のコーヒーポットを温めるため、鉄瓶はコーヒー用として使っている。何故鉄瓶を使うかというとこのお湯は口当たりが柔らかく感じてコーヒーがおいしくなるからだ。お湯を沸かしている間に豆を挽く。ミルは手動で回すタイプ。安い電気ミルは豆をカットするタイプが多く、これだと挽いた豆の大きさが一定しない。時間をかけると細かくなってしまう。グラインドするタイプだとある大きさになると下に落ちてくれるので挽き豆の大きさが一定になる。僕の場合さらにこの挽いた豆をふるいにかけてさらに細かい部分は捨ててしまう。ふるいは茶こしを使っている。目はかなり細かいこし器を使っている。この作業はコーヒーの雑味を取るのに効果がある。このあと鉄瓶で沸騰させたお湯をコーヒー抽出用の金属製(ステンレス?)のコーヒーポットに移し替え冷めない程度に弱火で温める。コーヒーの最適温度は90℃程度だから再沸騰させなくてよい。コーヒーの抽出はハリオのV60ペーパーフィルターを使っている。カリタと違い抽出スピードが速い。これがまた濁りの少ない味に仕上げてくれる。挽いてふるいにかけた豆をペーパーフィルターに入れ、おおよそ平にならした後中心部をすこし掘り下げておく。これから蒸らし作業に入る。蒸らしは重要な作業でこれがうまくいくとだいたいの出来が推測できるくらいだ。まず凹ました豆の部分ここはフィルターの中心部だが、そこにわずかな量のお湯を注ぐ。このお湯の量が重要だ。最初は大さじ2杯程度だろうか。中心部に少したらしてそのままにしておくと。中心から豆が膨れ上がってくる。これが出てくると成功だ。その後もう少しの量のお湯を中心からさらに外側にそそぐ。これもわずかでよい。そして20から30秒程度待つ。この工程で淹れ方の良し悪しが決まる。
 その後コーヒーの抽出作業になるが、お湯は必ずコーヒー専用ポットを使って中心部からのの字を描くように注ぐ。僕はお湯の量が一定の高さになるように注いでいる。下に流れる量と注ぐ量をほぼ同じにしている。お湯は中心部にのの字状に注ぎ、フィルター部には注がない。常に豆が膨れている状態を保つようにする。コーヒーが予定の量に達したら途中でも止めてフィルターを外して抽出は止める。フィルターの豆を最後まで絞りきると渋みや雑味がコーヒーに入ってしまうので、お湯がまだフィルターにある状態で止めるのがコツ。
 これでやっと作業が終わる。この淹れ方で飲むとマイルドで豆の特徴が良く出て味の変化を楽しむことが出来る。
 そう言い忘れました。豆が大事です。幸運にも近くにアステカという美味しい豆をいろいろ取り揃えてくれる店があり、そこでいろいろの種類の豆を試している。僕のお気に入りはパナマという名の豆です。
 これが安井式コーヒーの淹れ方。



 
<ほぼ完成> 
 2015年7月21日 

今製作中のバランス型CSPPラインアンプがほぼ完成した。3月に製作をスタートさせたから4か月ほどかかった。まだ完成ではないが音は聴けるようになってきた。
 ようやく音が聴けるようになってどんな音を聴かせてくれるのかが楽しみと心配が半分半分の気持ちだったが、最初の印象はかなり良い。パワーアンプがまだアンバランス型のアンプなので、バランス増幅の特徴がまだ十分発揮されていない状態なのだが、それでもこれまでのアンバランス型のラインアンプに比べ印象は良くなっている。
 バランスアンプの音はこれまで僕の設計アンプでEQ、ライン、パワーと聴いてきたが、それらに共通する音の印象は、雑味が少ない音というのが僕の印象だ。雑味というのは料理ですっきりした味のことをさしているのだが、僕が一番感ずるのはコーヒーでの淹れ方の違いだ。僕はコーヒーを挽いた後茶こし器で挽いた豆をふるいにかけて細かい粉状態の豆は捨ててしまう。残った少し大き目の粉を使ってコーヒーを淹れるのだが、この味がまさしく雑味のない味で、舌に嫌味が残らないすっきりしたコーヒーの味が楽しめる。このところこのやり方でコーヒーを淹れているが、まさにバランスアンプの音というのがこのこした豆で淹れたコーヒーのような音がする。音の周りに嫌な音がまつわり付かない。どの楽器もすっきり聴こえる。各パートがすっきり聴こえるからいわゆる定位が良いとなる。楽器のポジションが良く分かるようになるということだ。バランスアンプは電源やグランドの影響が少ない回路だから、外乱に強い回路として考えるとこの雑味の少ない音というのはうなずけるように思える。
 今回のバランス型ラインアンプでも同じような現象が聴けた。まだパワーがバランス型に直してないにもかかわらず。これがパワーもバランス型になったら更にすごいことになりそうな気配を感ずる。CSPP出力段の音というのは分からないが、低インピーダンスでドライブできていて、この影響か低域が豊かになった。ラインアンプの出力インピーダンスが重要なのかもしれない。ちょっと興味があるところだ。
 パワーアンプもバランス型に変更しそれをスピーカーの近くに設置し、システムをバランス増幅、バランス伝送にして再生するのが今回の最終目的になっている。ようやく半分程度のところにきた。まだ先はあるが楽しい道のりのようだ。

真空管バランス型CSPP出力ラインアンプについてはいつかその内容を発表しようと思っている。僕の経験ではこれまで見たこのない回路であるし、性能もいいし結構面白いアンプではないかと思っている。


 
<銀座・伊東屋> 
 2015年7月11日 

先月新しくなった銀座・伊東屋に行ってきた。能管の楽譜用の印刷用紙と製本用テープを求めに行ったのだが、最初に行った時はあいにく伊東屋の新しい店舗の招待日に当たってしまい、一般の人は入れず残念な思いで帰ってきた。伊東屋は年中無休なので本当に運の無い日に当たってしまった。そんな思いのなか新しい店舗が体験できると喜びいさんで再度訪れた。
 新しい店舗は以前より天井が高くすっきりした感じになった。前はさまざまな商品が所狭しと陳列されていたのが、商品がそれほど並んでいない。まずは1階の案内で用紙と製本のあるところを聞く。以前は高い階に上がるのはエレベータしかなかったのが、今度はエスカレータが設置されていた。もちろんエレベータもある。これはいいぞと各階を眺めながら上に上がっている。ただこのエスカレータ各階で直接つながっていないから各階で少し歩かないと次のエレベータにつながらない配置になっていて、これは店舗の都合からは良いのかもしれないが、客にとっては特に僕のような年齢になってくるといちいち人混みの中をあるかなければ上に上がれない構造にはつらいものがある。そして1階の案内で聞いた階で目当ての商品を探してみる。ところが見当たらない。そこでその階の店員さんに聞くとこの階ではなく別の階だという。エスカレータは昇りしかなく、仕方がなく階段で降りる。まあ新しい店舗だから店員さんも商品陳列の場所をまだ覚えていないから仕方がないと少しは自分に納得させた。新しい階で商品をまた探す。ところが陳列されている商品が非常に少ない。また店員さんに商品の場所を聞く。やっと案内された場所で得たものはたった一種類の印刷用紙だった。僕が探していたのはA4の両面印刷用0.12mm位の用紙だ。色も厚みも選びようがないほど商品がなかった。また製本用のテープも一つしか置いてなくこれでは使えなかった。店員さんに商品が少ないとこぼしたら「以前より大分商品が少なくなりました」との返事。これではリニューアルしても商品がなければ意味がない。女房などは「これではまるでギフトショップね」と店員さんに愚痴を言う始末。この言葉はまったく的を得ていた新しい銀座・伊東屋だった。

最近、秋葉原でも東急ハンズでも今回の銀座・伊東屋でも自作用の商品・部品類がなくなってしまった。ある分野に特化した商品を置くというコンセプトが無くなってきている。女房が言うようにギフトショップとかホームセンター的になり、自作派がオリジナルを作るというものには対応しなくなっている。もの造りをしなくなったのか、それともネットで探して購入というスタイルが定着し店には商品を置かないのか。
 昔は伊東屋に行けば結構楽しめる場所だったのだが、もうちょっと寄るのもためらってしまう。僕のアンプ設計でも伊東屋に売っている方眼紙を使っている。以前に少し多めに購入してあったから良かったが、たぶんこの方眼紙も置いてないかもしれない。


 
 <進捗3>
 2015年7月1日 

今回もバランス型CSPPラインアンプのその後の進捗について。
 前回までは無帰還状態での特性を示した内容になっていたが、その後は負帰還を施し、入力・出力のリレー回路も動作させた。これで入力から出力までが一応つながる状態になった。リレー回路は思ったよりリレーを制御するトランジスタのベース電流が必要で少し抵抗の定数をかえた。出力用リレー回路は電源立ち上げ時には30秒くらいしてからONし、電源切断時には直ぐにOFFし、ライン出力にポップノイズがでないようにしてある。こちらは問題なく動作した。
 肝心のアンプ部はどうなったかと言えば、最初負帰還を施した最終回路でも問題なかったのだが、真空管を6R-HH2から6922に変えたら問題が起きてしまった。症状は低域発振である。2.5Hz程度の発振であった。この原因を探すのに時間がかかってしまった。
 一般に低域発振の起こる原因は
 1、負帰還アンプで低域の位相が回転して発振
 2、電源から回り込むモーダーボーディング
 などがある。
 最初これらの原因と思われるところをいろいろいじってみたが発振は取れない。症状がまったく変化しない。これには困ってしまった。
 もうやるべき手段がないと思われていた時に回路図を眺め気が付いたことはCSPP回路の動作点の不安定さであった。交流的には安定であったが、直流的にはちょっと電圧が不安定ではないか。動作電流は定電流で縛ってあるが、出力に当たるカソード電圧が一定していないのではないかという推察である。直流的な負荷が軽い回路なのでカソード電流のドリフトに対してカソード電圧が変化してしまう。それが入力に戻りアンプの低域時定数で決まる23Hzの帯域だけが増幅されるという論理だ。これを避けるにはCSPP回路にわずかな電流負帰還を施してカソード電圧を一定にしてあげれば良いと考えた。結果は予想通りで小さなカソード負帰還抵抗を入れてあげたら安定に動作した。真空管の種類によりなぜこの症状が発生するかは定かではないがこれはgmの差ではないかと考えている。
 お断りしておくがこれはCSPPという回路が不安定ということではなく、これは僕の設計した回路の直流動作点が不安定であったということである。

 今は安定して回路は動作している。歪はかなり少ない。ちなみにこのアンプの出力インピーダンスを測定してみたら、アンプ正味のバランス出力インピーダンスは60Ω程度であった。真空管でもかなりの低出力インピーダンスになることが分かった。
 真空管バランスアンプ、低歪、低出力インピーダンス、広帯域とまったく文句のつけようのないアンプと自画自賛している。
 作業はまだ続く。


 
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