オーダーメイド手造り真空管アンプの店

 


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 <メンテナンス>
 2016年6月21日 

人さまのアンプ製作を止めてから気持ちと時間の余裕が少し出来てきたので、最近は家のメンテナンスをときどきしている。5月に入ってからフローリング床のワックスがけ、トイレの水流調整、庭木の消毒など前からしなければと思っていたことを少しずつ処理している。今は塗装工事がメインの作業になっている。

塗装箇所は木製門扉である。車も隠せる大きさ高さ2m幅5m近くある門扉で、ここ数年おそらく78年はメンテナンスをしてない。痛みが激しく下部が少し朽ちていて塗装屋さんも塗装をしてくれない。だから自分で塗装しようと決心してから数年経ちいよいよ自分で塗装をしてみることにした。実は準備は昨年からしていた。ネットで調べて電動サンダー、紙やすり用器具などすでに昨年の秋頃には取り寄せて工事ができる準備が半分出来ていたのだが、時間の余裕と気候の言い訳から作業をさぼっていて、ひと月位前からやっと作業を始めることにした。
 門扉はただの平面の板で構成されたものではない。門扉の造りは約5センチ位幅の板が縦に並んでいるが、1枚置きに前後にオフセットして取り付けられている。門扉を正面からみると奇数番目の板は前にあるが偶数番目の板は指1本位後ろに取り付けられている。前の板と後ろの板は少しオーバーラップしているので門扉正面からは門扉の後ろ側は直接見えないが、斜めからみると前板と後板の間に少しの隙間が出来ていて風が通れるようになっている。何故こんなことを書くかといえばこの一枚おきに段差になっている構造が作業をやりにくくしているからである。
 作業はまずやすり掛けから始めた。これは古い塗装や表面についているカビなどを除去するためである。ところが前の板は電動サンダーで作業することができるが、後ろの板は前の板の4センチ程度の隙間の奥にあるものだから手作業でしかやすり掛けができない。これが大変だった。結局60番のかなり粗い紙やすりで手作業することとなった。それでもきれいに木の表面は出て来ない。その次の作業が溶剤による漂白だ。これは近くのホームセンターで手にいれた物だがこれも僕がイメージした白さになってくれない。時間が経つと白くなるという触れ込みなのでこんなものかと思っていた。これらの作業は梅雨入り前になんとか終わらせようと思っていたので、とりあえず最終ニスを塗装してみた。これが見事失敗。どう失敗したかというと木肌の色が赤黒くて汚かった。せっかく塗装をし直しているのにこの結果では満足できなかった。ここは僕のエンジニア―魂が許さない出来だった。原因は木部の漂白が十分できていないことが原因であるのは一目瞭然だった。そこでもう時間はたっぷりあるから最初からやり直すことにした。せっかく塗装した(最初のうす塗りの塗装だが)のを再度全部やすりがけして落とすことからした。なんと一番大変なやすりがけ作業を2度もすることになってしまった。このときはすでに梅雨入りし暑くなって」きてこの時期に手作業でのやすり掛けは大変だった。(このやすり掛け作業だけで4日)
 作業はまだ続く。


 
 <ハイレゾ対応>
 2016年6月11日 

MYプロダクツ最後の製品となったKT66ppの音はお客様に満足していただいている。このお客様は毎年数多くのコンサートを聴かれに行く方で、今回のアンプは音楽が楽しくなっているとのこと。奥様もピアノのタッチの差が聴こえ演奏者の違いが聴こえるらしい。全体的な印象としてより高解像度のアンプになったようだ。

さて、世の中はすでに音楽ソースではハイレゾ化が進んでいるが、アンプのハイレゾ化、高解像度化はどう対応すればよいのだろうか。デジタルオーディオでのハイレゾ化はCDに比べ周波数帯域を拡げ、量子化ビット数も大幅に上げてより細かい音を記録している。周波数帯域は数倍程度の拡大だが、量子化はかなりの拡大を図っている。すなわちハイレゾは周波数も拡大されているが、それ以上により細かな音の記録の効果が大きい。
 アンプで100KHz程度の再生帯域を確保することは難しいことではないが、レベルの下の方への拡大は難しい。細かな音の再現するアンプとはどのように設計をすれば良いかという課題になる。歪やノイズをより減らすというのは正しい方向だが、それだけでハイレゾ再生に合ったアンプとなるのか。
 僕のこれまで真空管アンプの音の良いアンプというのはこの低レベル信号の再現に優れたアンプだったということを経験的に感じている。例えば音の余韻とかホールの響きだとか空気のわずかな振動みたいな音が再現されるとかなり音に現実感がある。生に近いと感ずることである。だから今回のKT66ppアンプでピアノのタッチの差が感じられたアンプというのは僕にとってうまくいったアンプということになる。
 ではこのかなりな微小信号を再現するアンプとはどんな特性を持ったアンプとなるかだが、これが特性的に説明できない。なぜならこれはアンプの内部の動的な動作の中で如何に外乱の影響なく正確に信号を出力するかという動作だからである。以前にこのコラムで書いたが、たかが10Wのアンプといっても電流ゲインは56000倍、電力ゲインは500000にもなる。これだけの差がありかつ電流などはリップルやABクラスの高調波を多く含んだ信号がアンプ内部に流れているなかで、自家中毒を起こさずに(信号を汚さずに)5万倍も増幅し、さらにスピーカーのインピーダンスも大きく変化するので実際のアンプの動作というのはノイズだらけの動作をしている。僕の場合この自家中毒を起こす原因を徹底的に排除することを一つの設計方針としている。具体的にはそれはアンプ回路であり電源であり配線でありそれらがきちんと動作してくれるとこまかな音を再現してくれるようになる。

 ハイレゾ音源というとどちらかというと周波数帯域を拡げこれまで聴こえていない音が良い影響を与えているという記事が多いように感ずるが、僕が思うに量子化ビットの拡大の方の影響が大きいと思っている。それはアンプ製作から得られた結論だ。


 
 <3時間の待ち時間>
 2016年6月1日 

これは伊藤若冲展に行った時の待ち時間の話。
 5月18日若冲展が開かれている上野・東京都美術館に行った。天気も良く美術館日和と思っていたがとんでもない美術館日和だった。その前の週の土曜日のニュースで東京都美術館の混雑ぶりは知っていて並ぶ覚悟はしていたが、今日は水曜日だし土曜日程も混雑はないだろうと高を括っていたのだが、上野駅を出た途端若冲展の待ち時間を表示するプラカードが示されており、何と待ち時間170分と書かれていた。「3時間の待ち時間」と聴いて、呆然としてきてまずは頭が混乱してきた。「どうしようか」と迷いながら東京都美術館に向かう。そこで係員が大声を出している。170分の待ち時間プラカードを持ちながら「65歳以上の方と入場券をお持ちの方は右手の方向に行って並んで下さい」65歳?て何と係員に尋ねてみたら今日はシルバーデイで65歳以上は入場料無料ですとのこと。
 「はあー?」とそれでこんなに混んでいるのか。空いている日と思ったら混んでいる日に来てしまった。女房に聞いたら並ぶと答えたので並ぶことにした。この時時刻は午後1時ころ。上野公園に一列3,4人の並びが延々と続いている。その一番後ろに並んだ。後はただ並ぶだけ。女房との話はそれ程ないから後ろに並んでいた女性集団の話を立ち聞きしながら時間を潰した。おばちゃん達の話は面白い。ちょっとズレているところもあるがおしゃべりは暇つぶしにはちょうど良かった。この日天気も良く日差しも強くて年寄にはつらい待ち時間なのだが、美術館側からおしぼりと飲み水とところどころに用意してあって、もちろん無料で熱中症対策がしてありこれは助かった。公園だからトイレも近くににあるから良かった。途中救急車のサイレンの音も聞こえたが誰か倒れた人もいたのかも知れない。
 4時過ぎにやっと展示室に入れた。もうこの時大分疲れていて、館内もやはりすごい人混み。ゆっくり絵を鑑賞することは出来ない。それでも頑張って見るが他人の肩や腕がぶつかりあまり鑑賞する気分にはなれない。何でこんなに観にくるのと自分のことを棚に上げて非難するが仕方がない。
 昨年京都で<琳派展>を観た時も1時間以上待たされたが、どうも江戸以前の日本絵画は人気があるらしい。今回は展示期間が短いしNHKが盛んに若冲の番組を放映するから人が集まり過ぎた。
 待ち時間がこれだけ長いと何か対策もしてもらいたいものだ。整理券でも配ってくれれば他の美術館も回ることができるから上野全体での美術館、博物館の売り上げが上がると思うし、それに我々も暑い中立って並ぶ必要もなくなり病人も出ないと思うのだが。役人は新しいことをしない人々だから絶対こんなことはしないだろうと思うけど、こういうときに政治家が出てくる番なのだが。
 疲れた体で最後は上野で美味しいトンカツを食べて元気をつけようとしていたのだが<井泉>、はお休み、<ぽん多>は満席でトンカツにありつけず、その日は非常に疲れた一日でした。(後で調べたら<蓬莱屋>もお休みでした。またこの日美術館の午前の待ち時間は5時間ほどだったらしいです。ヤレヤレ)


 
 <ルームアコスティック3>
 2016年5月21日 

またまたスピーカーの配置を変えて実験してみた。今回は前回より更に効果が大きくこれまでの悩み低音不足問題がかなり改善されてきた。
 前にも書いた通り我が家のオーディオルームは変形した部屋になっている。まず部屋は四角形でなく平行な壁が少ない。それは音響的には良いのだろうが、大きな特徴は部屋が二階にあり、スピーカーの後ろが一階に続く吹き抜けすなわち一階につながる空間になっていて、スピーカー後方の壁からの反射があまり期待できないことである。その後方の壁もリスニングポジションから見ると「へ」の字をした形をしている。このへの字がつくる三角形が吹き抜けの空間となっている。への字の長辺となる二階の吹き抜けの端には奥行55cm、高さ40cm、横幅約4mの木の台が設置してあり、そこはただの飾り棚となっている。スピーカーはこの飾り棚の前に設置しており、壁からだいたい1m程度前に設置していたこととなる。これまではこれ以上奥の壁側に近づけることが出来なかった。その理由は専用スピーカー台が飾り棚に当たるからである。
 これまで左右方向の定在波について実験してきて、それなりの効果が得られたが更に奥行方向の定在波の実験をしてみたくなった。定在波は壁で腹になり1/2、1/4などで節となる。だからスピーカーもリスニングポジションも腹の位置に置いたほうが低音が出やすくなる。そこで我が家のスピーカーをもっと後ろに置けないかと思いまた実験をした。
 これまではこれ以上スピーカーは後方に移動できないと思っていたが、専用スピーカー台を使わずに直接スピーカーを吹き抜けにある飾り棚に置けば55cm奥へ移動できると考えた。スピーカーを専用台から外し、ケーブルも専用台から外して直接飾り棚に置いて実験してみた。
 この効果は非常に大きかった。これまで悩んでいた低音不足問題がかなり改善された。信じられないくらいの改善だった。ただ問題も発生したそのままでは高音の響きが失われ、また定位が左に寄り過ぎ、センターにボーカルが来なかった。2つの問題は発生したが低音の改善は有り余るものだったので、スピーカーの位置を奥へ移動する方向で改善を試みた。高音の改善はスピーカーに専用スピーカー台の上板(金属板)だけを取付、さらにスパイクをはかせて木の受け皿を通して飾り棚に置いた。これで高音の響きは改善された。定位の問題は後ろの壁がへの字の左右非対称からくる壁の反射の違いからくるところから、なるべく壁との距離が左右同じところに設置し、左右スピーカーの向きも調整しながら定位が中央にくるようにした。これで大分定位問題も改善された。

話はまだ続く。飾り棚にスピーカーを置くのは良いのだけれどこのままでは大きな地震があると、最悪スピーカーが飛び跳ね吹き抜けを通して一階まで落ちる可能性があり、地震対策を講じなければならなかった。女房に細くて丈夫で見た目もきれいな紐はないかと尋ねたら、真田紐というのがあると聞かされた。調べてみたら荷物用や鎧などに使われたものだそうだ。今これをネットで注文している。スピーカーと飾り棚とを真田紐で縛り地震の時にスピーカーが浮かないように対策するためだ。これも面白い物をみつけたと悦に入っている。


 
<出来> 
 2016年5月11日 

物を造る時誰でも最後の出来上がりが気になる。造る前にイメージした通りに物が出来ているかが問題になる。これが個人用の物だったら少しは気が楽だが、人様用の物の場合少々勝手が違ってくる。僕のようなオーダーメイドで物を造っている場合、お金も絡んでくるから更に複雑になってくる。
 今年のゴールデンウイークは二つの物を完成させ納入した。一つは前も書いたKT66ppアンプである。いつも書いているが納入するときはいつも緊張する。オーダーをいただいた時お客様は形も音も知らない状態で注文をいただく。唯一の接点はメールで行われる仕様のやり取りだけだ。お客様はこの時ご自分のイメージで注文をされ、僕は僕のイメージで内容を理解し実現しようと考える。この時お互いの意見が同じ土俵の上で話をしているかは確かなことではない。だから製品が完成しお客さまに引き渡したとき、最初の印象、音の印象がイメージと異なるともうどうにもならない。これがオーダーメイドの難しいところだ。一般の工業製品のように予め、見て、仕様を確認して、さらに音も確認すれば問題は起こりにくいのだが。
 今回もゴールデンウイーク中にじっくり音を聴いてもらおうと、何とかアンプを仕上げて納入した。連休最後の日にお客さまからいろいろ音の印象のメールをいただき、喜んでいただけホッとしている。これでやっとこの仕事はまずは終了となる。
 アンプの他には今は能管の楽譜作りも手掛けている。急に依頼が入りまた仕様が少し変わったので、楽譜のフォーマットも変更し一曲仕上げた。この楽譜、お手本とする楽譜や資料がなく僕の感性で作っているので、これも依頼してくる先生の楽譜のイメージと僕が作ることができる楽譜とのイメージが合っているかが問題となる。手本がないから尚更共通認識が取れるかを心配した。結果は二度の提出でOKが出た。ほとんどおおきな問題が出なかった。こちらも一安心である。
 このように仕上がり品を初めて手にした場合にお客様が満足できる出来というのは、お客様がイメージしていたものより良いものでなければならないと思っている。同じかそれ以下ではお客さまは満足しない。予想以上に良い出来でなければ満足してもらえない。だから作り手はかなり技術や忍耐を必要とする。

人様に物を作るのは難しい。特に出来上がりのサンプルがまったくない時にはお互いのイメージしかその接点がない。アンプ製作はもう卒業したからもうこの心配はなくなった。後は自分用にお気楽に造ることができる。
 アンプ製作をやめて暇になったかと聞かれてもそれはNoだ。やることがたくさんある。楽譜作りも新しく始めたし、今別のことをまた始めようと思っている。それはまだ公表できない。あまり緊張を強いるようなことだけはしたくないなあと思っている。


 
 <最後のアンプ?>
 2016年5月1日 

連休に入り風邪をひいてしまった。この冬は無事乗り切ったのに、この時期になって喉が腫れ、熱が出て調子がおかしくなってしまった。このところ家の用事もいろいろあり、さらに楽譜製作の依頼やMYプロダクツのお客様の最後の製作となる(?)アンプの引き渡し時期でもありちょっと体が疲れてしまったようだ。今朝アンプは無事お客様にお渡しできて、これでお客様も連休中オーディオを楽しんでいただけるのではないかと思う。
 今回の依頼は昨年にあったもので、これがMYプロダクツ最後の設計となった。このアンプはこれまでとちょっと経緯が違っていて、お客様が作られたアンプを改造する形で設計・製作が進められた。ご自分で本を見ながら作られたようだが、もっと音を良くしてほしいとの依頼があり、出来るだけそのパーツを使って設計してほしいというものだった。だからこれまでより制約が多くて少し設計に手間がかかってしまった。トランス類、出力管、シャーシーの一部など出来る限り部品は流用してその上で音を良くしなければならないという命題をいただいたことになった。アマチュアの方は出力トランスと出力管が同じでどう音を良くするのか疑問に思うかもしれないが、アンプというものは回路・配線でも大きく音が変わるのでやるべきことはたくさんあり、その点依頼に応えることはできる。
 シャーシーなどは電源スイッチ、入出力端子などのついている部分はそのまま使用し、天板だけあらたに設計・加工した。回路は複雑になったが同じ大きさのシャーシーにレイアウトし幾分以前の雰囲気を残して愛着が無くならないように設計した。

プリメイン仕様で出力管はKT66ppUL)、トランス類はタムラ製。
 性能は予定通りの値が出た。
 最大出力:25W × 2
 周波数特性:20Hz-0.1dB)、60KHz(-3dB)
 歪率:0.04%(1KHz1W)0.008%(1KHz0.1W)
 D.F10(1KHz)
 ゲイン:24.4dB
 こんな性能だ。大体狙ったところに落ち着いた。
 B&W805での音質は問題なかった。上を見ればきりがないがある程度の音質を十分確保していると感じられた。お客様のスピーカーはJBLなので我が家とは違って聴こえるかもしれないが、多分アンプの素性からすると問題ないと思われる。

これでやっとMYプロダクツ最後のアンプが完成した。やはり人様のアンプを造るのは神経を使う。これでやっと解放される。これからは自分用に制約なしに自由に設計できることになる。これで風邪も直るだろう。


 
 <MMカートリッジ>
 2016年4月21日 

先週、ほとんど衝動的にMMカートリッジを購入してしまった。製品名はGRADO(グラド)Prestige Blue1と言うもの。最近これまで使っていたMMカートリッジの調子がおかしくなったのと、EQ回路を改善する前にもう一度しっかりEQアンプの音を確認しておきたかったから新しいMMカートリッジが必要と考えていた。どこの製品にするかはなかなか確かめようもないが、昔はShureとかが有名だったのでそんなところかなとも思ったりもした。ただなかなかカートリッジの音は確かめようもなく、どこを買っても所詮リスクは同じで確信できるものでないなと思っていた。
 現在使用しているEQはこのコラムでもERとして公表しているバランス型のEQアンプなのだが、この回路が出来たときお客さまが数個のカートリッジを持参してくれた。この時僕の印象に残ったMMカートリッジがグラドだった。高域まで伸びた感じではなかったが、音の線が太くてあまりギスギスした感じがなく、主にジャズを聴くには良いのではないかという印象が残っていた。以前値段を調べてみたとき手頃な価格帯もあり僕には手が出る製品であることは確認していた。そんな状況でいつか購入してみようと思っていたのだが、先週秋葉原に行った際、ちょっとオーディオ店を覗いてみたらBlue1というモデルがありちょっとは迷ったが購入してしまった。

僕のLP再生はEQとラインアンプがフルバランス構成になっている。EQERで紹介した通りで、ラインアンプは新回路のCSPP出力バランスアンプになっている。パワーアンプはまだバランス回路にはなっていないが、カートリッジ出力からラインアンプ出力まではフルバランスになっている。今度ちょっとEQアンプの改良を行う予定なので最初に音を確認しておきたかった。
 グラドカートリッジとの相性はどうだったか。僕が以前聴いた印象とは少し異なり、以外と高域の再生が優れていた。本来ジャズ再生用に用意したものだが、高域がきれいでクラシックのバイオリンをきれいに再生してくれる。MCより高域は狭いかもしれないがきれいに再生してくれるのが良かった。低音、高音のバランスも悪くなく、フラットで偏った印象はない。ジャズ再生での音の歯切れも悪くなく十分楽しめる。長時間聴いていても疲れないし、録音の良いLPだとCDと同じ位再生能力がある。まったく僕には問題ないカートリッジだった。カートリッジも良いが僕のフルバランスアンプも良いのだろう。(ちょっと自画自賛)

それにしてもLP技術はすごい。ビニールの円盤にあんなたくさんの音を詰め込んでいるなんて今更びっくりする。LPもなかなか楽しい音源だ。ヘッドアンプの改善をして5月連休には友人を呼んで、ジャズLP試聴会を催す予定だ。


 
 <若者>
2016年4月11日  

前回のコラムでビートルズのLPを買っていると書いたら、NHKの番組で僕と同じように昭和歌謡のLPを購入する人のことを紹介していた。やはり昔を懐かしがって年配の方の購入者が多いようだが、中には平成生まれの若者もいて、更にはフランス人がカルメン・マキのLPを探していた映像が出て昔の音楽も好きな人もいるのだなあと感じてしまった。
 一方でネットのニュースでは音楽を聴かない若者が増えているとのことだ。これは無料の音楽さえも聴かないらしい。全体的にCDなのどのソフト産業の売り上げは毎年落ちていて回復していない。何故なのだろう。確かに電車の中では昔は音楽を聴く若者はいたが今はゲームをしている若者が多いように感ずる。暇つぶしは音楽よりゲームなのだろうか。
 さらに追い打ちをかけるようなデータが出てきた。若者の6割近くが車を購入する意思がないとのことだ。これも何でだろう。今の若者考えを聞いてみたい。
 僕もそれ程車にこだわってはいないが、若い時には車は欲しいと思っていた。隣に彼女を乗せてドライブできたらと妄想を抱いて仕事をしていたものだが、それもないのだろうか。今は電車があるから必要ないと言うらしいのだが、まったく味気ない。景色の良い所に行くのも、駅から離れた美味しい所に行くのも車があれば楽しいと思うのだが。
 僕は男は円形の物が好きと思っていた。車、自転車、電車、腕時計、レコード、CD、カメラなど円形のデザインに何か興味が湧くものだが、今は円形の魅力には興味がないらしい。
 こんな世相だから確かに円形製品の売り上げを見ると車以外はすべて落ちているように思う。ビジネス的には縮小傾向になっている。

今後を考えると寂しい気がする。音楽を聴かない人には素晴らしい音楽を生むことは出来ないし、車を運転しない人に素晴らしい車は設計出来ない。オーディオも同じだ。音楽を聴かない人は新しいオーディオを生み出さない。今後音楽や車に興味がない人が増えてくると新しい音楽を生み出したり、新しい車を開発できる人間が少なくなり、やがて日本はこれらの技術をリードすることができなくなるかもしれない。
 何事も最初は欲望や好奇心から始まる。手に入れたいという欲望はなくても少なくても好奇心は持ってもらって民生機器の開発に興味が持つ人間が増えることを期待したい。


 
 <ビートルズ>
 2016年4月1日 

僕が中学・高校生のころビートルズが全盛だった。だからこの時の影響はものすごく今でもビートルズは僕の中では最高のミュージシャンだ。こんな音楽が世の中にあるのかといつも思うほど刺激的で前衛的でさらに音楽的にも素晴らしい曲をいつも提供してくれていた。その印象は今でもまったく変わっていない。そんな好きならば当時のLPを持っているかと尋ねられたら「No」となってしまう。学生時代にはお小遣いが少なくてそんな余裕がなかったからだ。そのころそんな音楽に刺激されてオーディオにも目覚めたころだから、お小遣いはレコードに回すよりも部品やスピーカーなどの購入に回り、よくあるオーディオ装置は何とかできたが聴くレコードが少ない状態が続いていたのだ。当時の値段を調べてみたら初めて作ったアンプの出力トランスは山水製SW-15-4\2850LPレコード「Let it be」が\2000となっていた。こんな価格だったから少ない小遣いはレコードには回らなかったのだ。今に比べたらLPは非常に高いものだった。

最近少し余裕が出てきたのでやっとビートルズのLPを買い始めた。もちろん中古だ。これが実に楽しい。昔変えなかった物が何十年ぶりに手に入り音質を楽しむと言うより昔の雰囲気を楽しむのがたまらない。ビートルズのCDは持っている。30年ほど前に発売されたCDでそれは発売された時にすぐに購入し、ウオークマンなどでもコピーして聴いていたものだ。また今月は新しく発売された「Beatles1」というリミックス・リマスターされた高音質CDも購入した。だから同じ曲をLPCD・高音質CDで比較できこれも楽しんでいる。この高音質CDはオリジナルより音が良くなっている。歪、S/N、低域など様々な点で改善されていて楽しく聴ける。アコスティックギター、ハーモニーの声、ベースなども良く聴こえてこんな音が入っていたのかと再認識させられる。ただ僕のようなオリジナルを懐かしむ人にとっては昔の音もそれがオリジナルなんだからと音が改善されたから良いという訳ではない。

今は無料でたくさんの音楽が手に入る世の中になった。だから今の人は恵まれている。コピーも簡単に高音質に出来る。でも簡単に手に入るということはそれだけ思い入れも少ないかもしれない。僕のように昔を思い出して再購入するという行動はこれからはないのかもしれない。


 
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