オーダーメイド手造り真空管アンプの店
 
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 <反省>
 2017年9月21日 

ここしばらくコラムでは僕のアンプ設計・制作法について書いてみたが、今回はそれを止めて違うことを書いてみたい。お客様へのアンプ制作は止めたがアンプ作りや検討はまだ続いている。むしろ以前よりアンプへのより興味が深く湧いてきている。それは自分がより自由になったため、冒険ができるようになったためと思っている。以前にも少し紹介したが、今パワーアンプを設計している。KT66PPでバランス駆動である。ドライブ回路にCSPP回路を使用してより強力にKT66をドライブしてみようという試みだ。以前アダージョとして使われていた部品を使い、リニューアルして新しいアンプとして生まれ変わるつもりだ。だからこの新パワーアンプも新アダージョと言っていいかもしれない。シャーシーの加工も終わり、電源回路基板の配線も出来てきてこれから内部配線にとりかかるところだ。あとひと月もすれば音が出るようになるだろう。でも締め切りがないからいつになるか。

 この作業が一段落した際に棚の整理をしていたらデノンのカートリッジDL-103の取説が出てきた。購入時に付いてきた資料だ。それを何の気なしに読んでいたらこのカートリッジの推奨入力インピーダンスが書かれていた。読んでいるうちに僕のバランス型EQMC入力インピーダンスの設定が間違っていたことに気が付いた。デノンの取説によるとカートリッジの入力インピーダンスはMCトランス使用の時は40Ωだがアンプの時は100Ω以上とのことだった。EQを設計したとき入力インピーダンスはデノンのMCトランスが40Ωだからそれで良いのだと勝手に決めてしまったのが間違いの元だった。ヘッドアンプで受けるときはもっと高いインピーダンスで良いのだ。僕の早とちりと取説をよく読まなかったために間違った設定で使っていたことになる。
 もちろん訂正した。受けにインピーダンスを3倍近くに設定。こうすることにより出力レベルが上がり、実装時のS/Nも上がる。肝心の音はどうかと言えばこれも大きな改善ができた。出力レベルが上がりS/Nの良い音楽信号がエネルギッシュに前に出てくる。以前にくらべ力強い音になってきた。たかが抵抗値がちょっと変わったくらいでこうも音が変化するものだと実感した次第。
 僕のLP再生はアンプ全体がすべてバランス増幅というシステムになっている。カートリッジからスピーカーまで全てだ。これはなかなか世の中では経験できないシステムになっていて、僕も気にいっている形だ。今回の変更でまたグレードが上がってくれて、ますますLPが面白くなってきた。
 それにしてもキチンと取説を読んで正しい設定で動作させなければいけませんね。
 大反省でした。


 
 <私の設計・制作法4>
 2017年9月11日 

引き続き表記の話を続ける。前回はシャーシーの加工について話をしたが、今回は配線について。通常アンプの内部を見る機会はほとんどない。メーカー品の製品内部にせよ、自作アンプの内部を写真で見せてくれるのはMJ無線と実験誌くらいだろう。それだけ今は内部(技術・理屈)より感性が主で音の評論が全てになっている。僕の経験からすると配線は技術そのもので、アンプの場合特性や音質に大きく影響している。だから僕は内部をみるのが好きで配線をみると大体その設計の実力を推し量ることができる。メーカー製の場合には基板配線が多いから細かな配線までは分からないが、もし基板のパターンが分かればよりその実力を見ることができるだろう。
 さて話を本題にもどして僕の配線方法は2つに分けられる。僕の設計するアンプは真空管アンプではあるけれど電源やアンプ部の一部に半導体を使用していて、正確に言えば真空管と半導体のハイブリッド構成ということができる。これらの部品は大きさや接続の仕方が大きく異なるので、半導体はユニバーサル基板にマウント(配線)し、真空管部は真空管ソケットとラグ板を使った空中配線となる。空中配線は3次元で配線できるので最短距離で配線できそのメリットがある。電源部は半導体を使用していることもあり、主にここは基板に配線している。
 アンプの配線で重要なことはいろいろある。ハム、飛びつき、歪など特性に影響する原因となる項目がある上に、さらに音質上好ましくない配線もある。パワーアンプの場合電圧ゲインは20倍程度だが、電力ゲインは数万倍となるので電圧、電流とも悪影響が出ないように気をつける必要がある。汚い電流が微小電流を汚さないためには、電流の流れをきちんと整理してあげることが大事だ。僕の場合にはアンプ内のすべての配線は一つの電流しか流さないという配線方法(EGW法)をとっている。言葉を変えると共通インピーダンスの影響を最小にする方法をとっている。
 限られた紙面上で説明するのは難しいが、要は配線は回路と同じくらい重要な要素と考えている。今はバランスアンプを主体に設計を進めているが、このバランスアンプというのは配線の影響が少なくなる回路方式で、そのメリットも実感できている。お客様の言葉を借りれば、微小レベル方向へのダイナミックレンジが伸びる効果が表れている。

今回は配線について話をした。なかなか言葉で上手く表すことができなかったが、もしご自分でアンプを作ったことがあるのならば、ぜひ配線についても再度実験をしてみたら面白いと思う。きっとおおきな音の変化を実感できることだろう。


 
 <私の設計・制作法3>
 2017年9月1日 

これまで私の設計・制作法で主に図面の書き方について説明してきた。今回はシャーシーの加工法について書いてみる。僕が思うにシャーシー加工が一番大変な作業ではないかと思う。図面なら何度も書き直しがきくから気が楽だが、メカの加工は一度間違えたらもうやり直しがきかない。また新しいシャーシーを買ってきて最初からやり直せば話は別だが。今回は僕がこれまでの経験から、なるべく失敗が少ないシャーシー加工法について紹介したいと思う。
 シャーシー加工で注意する点はまず正確な寸法で加工できること、きれいに仕上がることとなるだろう。シャーシー加工の場合、寸法精度はトランスや真空管ソケット、端子類なのでまた穴もほとんど丸穴だからそこそこの加工ができれば問題はクリアーできる。
 まずシャーシーの選定から。僕は主にタカチ電機工業のアルミサッシケースを使っている。サイズはいろいろあるし、天板、側板など板状で加工ができるので作業がし易く、またアルマイト処理してありキズもつきにくくなっている。板状で穴あけをし、その後組み立てる構造になっている。僕は図面上で寸法が決まったら、実寸で厚紙の方眼紙に穴位置を写していき、それを天板などに貼り付けてから加工するようにしている。方眼紙は薄紙だと加工のとき、油やドリルのストレスなどで破れるので、少し厚い方眼紙を使用している。この方眼紙、以前は銀座伊東屋に売っていたが今は置いていないようだから、ネットで探すしかないかもしれない。次に方眼紙を貼ったアルミ板を加工していく訳だが、穴開けはボール盤を使用している。価格は1万円もしないで買えるが、普段の置き場所に困る道具だ。ボール盤があると大きな穴たとえばGT管用の穴30φやMT管用穴20φがホールソウというドリルで一度にあけることができるから、簡単にまたきれいに穴をあけることができる。ホールソウで正確な穴位置を開ける方法は、方眼紙に正確な円(例えば30φ)を描いておき、そこにきちんと歯の位置を合わせるように位置決めしていけば正確な穴位置に加工することができる。僕の場合0.20.3mm程度の誤差が出てるかもしれないが、わずかな後加工で部品を取り付けることが出来ている。もしボール盤がない時には電動ドリルかあるいはシャーシーパンチで大穴をあけるしかない。ボール盤でも板の中央付近はドリルの届かないエリアでできてしまい、この時はシャーシーパンチで穴をあけている。手が痛くなるがきれいな仕上げを考えると電動ドリルでホールソウを使用したことがない。3φ、4φの穴は普通のドリルを使用、7φ以上をホールソウにしている。
 穴開けにはバリというものが発生する。アルミは柔らかいから特に多く、バリ取りをしなくてはならない。バリ取りにはバリ取り専用の道具を使用している。今初めて仕様を読んだらこれはNoga Trio Set RB300という名称でイスラエル製だった。これは使いやすくてあると便利。

 今回はもう紙面がいっぱいなのでここらでおしまい。

今たまたまシャーシー加工をしている最中なので、サンプルとして写真を載せておきます。

  

左:アルミ天板に穴位置を記入した方眼紙を張り付けたもの。
中央:その上からボール盤で穴をあける。
右:方眼紙と保護用シート(購入時についている)をはがしバリ取りをした天板。



 
 <私の設計・制作法2>
 2017年8月21日 

今回はメカ(機構)部の設計法について。真空管アンプにおけるメカ設計は主にトランスや真空管の配置くらいだ。複雑な機構はほとんどなく、だいたいシャーシー上での2次元の部品配置が主となる。だからメカ設計自体はそれほど難しいものではない。僕はこの23年くらいはここでもCADを使って設計しているが、それ以前はずっと方眼紙上に手書きで設計していた。まずCADのほうから話をする。これもフリーソフトのjw_CADという2次元用のソフトを使用している。ただこれが使いやすいとか機能がすぐれているから使用している訳ではなく、何となくフリーで入手できるという理由のみで使用している。僕はメカの設計を正式に習ったことはなく、またもっと高度なCADを使ったこともないので利点・欠点を述べることができないが、一応僕の要求には応えてくれるもので大きな不満は感じられない。使い方もいろいろサイトに出ているので使用法で困ったときにその都度調べながら使っている。正直な感想ではメカ設計については特にCADの必要はないと思われる。方眼紙に現物の部品を置きながら配置を考えていくほうが、メカ設計になれない方には直感的に理解でき間違いが少ない。シャーシーより少し大きめの方眼紙にシャーシーの外形、トランスの穴位置、真空管の穴位置などを記入していけばいいので難しいことはない。
 この部品の配置を決めるとき、最初に電気的な信号の流れを考慮してから決める。出来るだけ配線が最短になるようにすることが重要だ。これで電気的な特性に影響がでる。次に重量バランスを考えながら、配置のバランスを考える。トランスは重いし振動する。だから低い位置で、重心に近いところに配置する。細かな点では僕は回路が決まると新しい回路の真空管部分の実体配線図を描く。その理由は配線は主にラグ板を使用しているのでこのラグ板がどの程度の大きさ、数が必要なのかを最初に決めておくためだ。これを決めないでおくと、後で配線用の端子が足らないためにシャーシーの後加工が必要になるということがおきる。こういう最初の配慮がきれいにアンプを仕上げるコツとなる。図面上で前準備をしっかりしておけばきれいに仕上がる。CADを使うかどうかより、設計そのものの完成度をできるだけ上げておくことが一番大事なことだ。
 僕がメカの設計ができた時というのは実は配線についてもほぼ出来ているという状態になっている。どこにラグ板を立て、基板を置きその配線についてはだいたいこういう回路がつながっているということがほぼ出来上がっている。これができているから配線作業はかなり楽で、また失敗が少ない。
 真空管アンプにおけるメカ設計のツボはどこまで配線を考えて設計できるかにかかっているといえる。新規設計は先を急がないのが完成度を上げるコツ。
 アンプ作業は作るときも楽しいが、回路にしてもメカにしても図面上であれこれ想像上で設計しているときもまた楽しいものだ。



 
 <私の設計・制作法1>
 2017年8月11日 

今新しいパワーアンプの設計・制作が始まっているが、この機会を利用して僕のアンプ設計・制作法を披露してみようと思う。真空管アンプの設計・制作法は人さまざまで難易度、かけるコスト、使う道具など必ずしも同じにはならないが、共通な希望として安くてきれいに仕上がることを最終目標にしていることは間違いない。僕も最初は少ない道具から始めて次第にやり方を改善し、道具をそろえながら今の形になっている。素人がアンプを設計するのにあまりコストをかけることは得策でなく、道具をそろえるより時間をかけて丁寧に作業を進めることが安く、きれいに仕上げるコツだ。
 今回は図面類から話を始める。アンプを設計するとき何から始めるかと言えば、回路を設計することから始める。これが設計のスタートとなる。雑誌の回路そのまま使用する場合はこの作業は必要ないが、真空管やトランスなど変更するときには回路を描く必要がうまれてくる。回路図作成について僕はフリーの回路図作成ソフト「水魚堂」を使用している。最初のころは手書きで描いていた時もあったが、その後このソフトのことを知り現在はこの無料ソフトを使用している。基本的にはライブラリーといわれる個々の部品をロードしてきて回路図に貼り付け、各部品を線で結べば回路図が出来上がる。よほど高度な回路を作らないかぎり、既存のライブラリーの部品で十分間に合う。もちろん自分で新しい部品図を作ることも可能だ。コンピューターで設計する道具をCADというがCADで設計した回路図はコピペなどが簡単にできるから何作も設計するときなど、いろいろな回路図から切り取って新しい回路にするときに簡単にできるというメリットがある。この手書きは常に書き直しになるから慣れてくればCAD設計のほうが早く設計できるようになる。またこのソフトの良い機能として回路図からエクセルの部品表(パーツリスト)に変換してくれる機能も持っている。電気部品はこれでほぼパーツリストができるが、ただ回路図には2チャンネル分(L/R分)の回路を描くことが少ないから、後でエクセル上で個数を調整しないといけない。またメカ部品は含まれないのでシャーシー、つまみ、ラグ板などを手書きで追加すれば完璧なパーツリストが完成する。さらに個々の部品代も記入しエクセル上でコストを計算させれば部品代もきちんと把握できる。これも一度このようなリストを作っておくとその後何作か作るときにも参考になり部品漏れなどのミスを少なくなり、より効率的に作業が進むことになる。
 CADによる回路図作成ができるようになると、作らなくとも大まかな設計だけをしとくということもできる。僕もアイデアが出た時には大まかな回路図をCADで描いて実験回路図をして貯めてある。作る訳ではなくお遊びで描いている。しかし時にこれが後で参考になることもあり、コンピューターに溜めて置く分にはスペースもいらない。
 このサイトのERに載せている回路図は水魚堂ソフトで描かれたものです。
 今回は主に回路図の作り方について話ました。今後いくつか紹介します。


 
 <犬のフン害>
 2017年8月1日 

我が家では犬のフンでちょっと悩んでいる。近くに公園があるため多くの愛犬家が犬の散歩コースとして我が家の前の道を通ってくる。そのうちの誰かが我が家の前に犬のフンをさせてそのまま放置している。僕は犬は好きだがよその犬のフンまでは好きになれない。フンやおしっこの被害はここ数年続きなかなか良い対策ができないでいた。フンは片づけ、おしっこにはにおい消しの処理を施しても、数日後にはまたされてしまう。横浜市が作っている犬のフンの注意書き看板もまったく効果が得られず困っていた。
 犬のフンなどはしても構わないが後始末だけはしてほしいと思っていて、これは飼い主の問題と思っている。調べてみたら横浜市には条例で犬のフンなどは飼い主の責任と明確に書かれているが、どれだけ拘束力があるかわからず、飼い主に注意したとしても逆ギレされるだけかもしれない。

ひと月ほどまえネットで犬のフン害を調べていたら、京都・宇治市で面白いフン害対策をしているという記事を見た。公園での犬のフンに悩んでいた宇治市は「イエローチョーク作戦」という対策をとったところ、大きな効果が得られたそうでよその市からも視察があるくらいらしい。どういう対策かというと、放置されたフンにイエローチョークで丸を囲み、発見時刻を記入するだけ。そしてフンはある時間そのままに放置し、飼い主に警告を与えるというもの。これを市職員が見回ってこの作業を繰り返したところ、犬のフン害が大幅に防止されたというもの。
 僕はこれは良いアイデアと思い、さっそく百円ショップでチョークを買い、犬のフンがされた時にこのチョーク作戦を実行してみた。フンもすぐには片づけず、3,4日はそのままに放置しておいた。(最終的には我が家で処理する。)これは飼い主本人だけでなく、他の人も目につくので、より他人の目が気になる効果があるようだ。それでも一度は効果なくフンをされてしまった。そして今は犬には申し訳ないが、犬の嫌いな匂いの薬剤を散布して2重の防御をしている。そしてその後3週間くらいははまだフン害にあっていない。
 まったく飼い主のマナーの問題なのだが、だからなおさら複雑で効果的な対策がとりにくい。最終的には個人のわがままに帰結してしまうに違いない。だから厄介な問題だ。

 今はかろうじてチョーク作戦と薬剤で我が家の前では被害にあっていないが、残念なことにお隣とその次のお隣では被害が続いている。こちらとしても我が家の前だけはきれいになったが、地域での解決には至っていない。
 何か良い方法はないものでしょうか。


 
 <蜜蜂と遠雷>
 2017年7月21日 

ふた月ほど前、表題にある「蜜蜂と遠雷」という本を読んでみた。この本は直木賞と本屋大賞のダブル受賞を取った本だ。本来、本屋大賞は直木賞など主流に属さない本を本屋の店員さんが見つけて賞を授けるものだったのが、今回は直木賞とダブって本屋大賞を授ける形となり、ちょっと本来の趣旨からはずれたものになっている。これについてもネットなどではちょっと騒がれていた。経緯はともかく賞を取った本だし、また内容がピアノコンクールというものであったから、僕は興味を持ち読んでみたくなった。
 大筋の内容は日本で開かれた架空の国際ピアノコンクールに応募した4人のコンテスタントを中心に話が進む。ピアノを持っていないが天才肌の15歳の少年がいたり、昔天才少女だったのが、お母さんの死後ピアノをひかなくなった女性や、この女性の幼馴染の外人青年など、小説だから少し荒唐無稽な話の展開があるなど、そこは現実のコンクールとは多分違う話なのだろうが、ピアノコンクールでの参加者の心情はいろいろ書かれていて面白い。
 この本の一番面白いところは各コンテスタント(コンクールに挑戦する人)の第一次予選から二次予選、三次予選、本選までの課題曲や本人たちがコンクールで弾いた曲すべてが書かれている点にある。例えば第一次予選はバッハ「平均律クラビーア曲 第一巻第六番二短調」、モーツアルト「ピアノソナタ第十三番変ロ長調K333」第一楽章、リスト「メフィスト・ワルツ第一番村の居酒屋の踊り」第二次 ラフマニノフ「絵画的練習曲の絵・・・・」
 などそれぞれのコンテスタントの演奏曲目が三つの予選から本選まで一人につき12から15曲が丁寧に紹介されている。当然各コンテスタントの弾く曲は違うわけでたくさんのピアノ曲がこのストーリのなかでは出てくる。だから物語も登場人物の描写と曲・演奏の描写が出てきて、ここに作者の描写力があらわれている。

 作者は恩田陸という人できっと音楽が好きな方なのだろう。これだけ架空ピアノコンクールにたくさんのピアノ曲を紹介できる知識はきっとかなりの知識とも思えるがどうなのだろう。僕もいくつかの曲について自分のライブラリーから数曲を聴いてみたのだが、これがだれだれの弾いた曲なんだと、あたかも実在したコンクールのような錯覚になってしまった。さらにおかしなことに、知らない曲をサイトで調べていたら、この本に書かれていたコンクール演奏曲がオムニバスとしてCDが発売されていた。多くの読者が僕のように本に出てくる曲を聴いてみたいと思うだろうから商売上手だ。

登場人物はさておき、ピアノコンクールの内容は実際に近いところがあるようだから、興味がある方は読んでみたらどうでしょうか。


 
 <訃報>
 2017年7月11日 

先月、並河 良氏が亡くなられた。この訃報を知ったのは葬儀も過ぎた数日後だったので最後のお別れもできなかった。
 並河さんは光文社の元社長・会長を歴任された方で、また僕のアンプのお客様でもあった。女性誌「JJ」「CLASSY」「VERY」の創刊時に編集長を務められた方だ。僕は女房を通して趣味がオーディオ好きであったことから知り合いになり、まだ「MYプロダクツ」を立ち上げる前にアンプを制作してあげた経緯がある。その時はまだ社長をされていた時であったが、気軽に我が家にも来ていただいていた。
 並河さんのクラシック好きは出版業界では有名だったらしい。別の出版社の元編集長に聞いた話では「並河さんの前ではクラシックの話をするな。」ということだ。何故か。それは並河さんがあまりにもクラシックが詳しいので、いい加減な話では後で恥をかくことになるからということだ。実際並河さんのお宅にお邪魔したことがある。初めてみる大きな書斎にたくさんの本・CD・スコアがあり、これが書斎というものなんだと圧倒された記憶がある。そのCDの量も半端なものでなく、当時あまりにもたくさんなのでCDケースは使わず、薄い紙製のカバーだけでCDを保管されていた。
 アンプは真空管アンプがお好みでプリアンプはマランツ7を愛用し、パワーは僕の設計した6L6ppを使用していただいた。音の好みはどちらかというとマイルド、太目な音が好みで、以前僕がアンプをアップグレードしたら、あまりお気に召さなかったらしく、もとのマイルド系にもどしたこともあった。また僕がLPレコードを女房の親戚からいただいたとき、まだLPを聴く装置がなかった時に僕のサイトを見てレコードプレーヤーを持ってきてくださった。僕はそれがきっかけでバランス型のEQを自作しその後すべてがバランス型アンプに移行していった。バランス化のきっかけは並河さんのレコードプレーヤーからだった。バランスEQ完成後もわざわざ数種類のカートリッジを携えて我が家に遊びに来てくれた。カートリッジをいろいろ変えながら音談義したのが懐かしい思い出だ。僕もその後この試聴からGRADOのカートリッジを購入するようになっていった。

並河さんの訃報は僕にはショックであった。それは並河さんのような経営者でかつ文化人である人がオーディオを楽しんでいられるのを知ると、僕の人生のなかでのオーディオが正当化できる思いがしていた。オーディオそのものを楽しむことも、また僅かな数だが人様にアンプを作って差し上げる商売もはずかしいことはないと言い聞かせてきた理由の一つに並河さんの存在があったからだ。
 当然のようにまだお元気と思っていたので、今回の訃報にはおおきな喪失感を味わっている。

合掌


 
 <自動運転>
 2017年7月1日 

今月初めに日光・鬼怒川にドライブしてきた。横浜から帰り千葉に寄り道したこともあり往復600キロのドライブだった。最近の車は自動運転や衝突防止など進化した機能などがうたわれた車も登場し運転を楽にしてくれる。そのうちに完全に自動運転も可能となるようで、僕のような年寄りにもありがたい機能だと思っている。
 今回のドライブではまだ自動運転とはいかないが、今僕の車に装備されている運転機能を使って長距離ドライブを楽しんできた。僕の車には車のスピードを一定に保つオートクルーズ機能と前の車との車間距離を保ってくれる機能が付いている。これらの機能を使って長距離ドライブをしてみた。これらの機能は車が一定の速度で走ってくれる高速道路では有用で、信号がある一般道ではあまり使えない。それはブレーキを踏むとこれらの自動機能がキャンセルされてしまうからだ。もう少し具体的な説明をしてみよう。
 横浜から日光まではほぼ首都高、湾岸、東北自動車道、日光宇都宮道路を利用する。この間を車のオートクルーズ機能で走ってみた。道路によって設定速度は異なるが違反にならない程度の速度に設定して走る。車はかならずしも一定の速度では走れないが、例え前につかえても車が自動的に車間距離をとってくれるのでブレーキを踏む必要がない。だから僕はこの高速道路ではほとんどの区間ブレーキ・アクセルを踏まないで走れた。ブレーキを踏むのは料金所程度であった。アクセルを踏んでよりスピードを上げる分にはこの機能はキャンセルされないから、もし追い越ししたければその時だけアクセルと踏む。ほとんどの走行は車まかせのスピードで走ってみた。ただハンドルだけは自分で操作しなければならない。これももし道路の白線を超えようとすると注意してくれるのでぼっとして隣のレーンに行くこともない。
 この機能での長距離運転は非常に楽だった。2日で600キロの運転だったが精神的・肉体的にそれほど疲れず、非常に楽であることが分かった。腕をちょっと動かしているだけで運転が済むのだからこんな楽なことはない。これが全自動だったらいかに楽か。スピードに関してはここまで自動で運転できるのなら、後はハンドル操作だけ自動になればいいのだから対向車のない高速道路ではあと僅かなのかなあとも思った。(すでにあるようだが)

 今回のアシスト運転には他の利点も見つかった。運転中4回も覆面パトカーに遭遇した。そして3回はスピード違反で車を捕まえていた。僕の車を追い越した車が捕まっていた。
 オートクルーズは間違っても違反スピードにはならない。アクセルは踏まない限り速度は必ず保たれるから違反にならない。車の運転というのは意識せずともスピード上げてしまうことがある。長距離運転だと道路状況、下り坂、話に夢中になっているときなどちょっとオーバーということはよくある。今回はアクセルを踏んでいないからまったくなかった。もし車に任せていなかったらそのうち一つは僕が捕まっていたかもしれない。

 最近のアンプには車が買える程の値段がするものもある。これにはどんな利益がもたらされているのだろうか。


 
 
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