オーダーメイド手造り真空管アンプの店
 
コラム目次に戻る
 
 
<DAC調査7>
 2017年12月21日 

このシリーズも今回で最終回。書いている意味がだんだん分からなくなってきた。
 僕が調査した限りでは現在の製品としてのDACの基本構成はほぼ同じだけれど、当然ながら細部ではそれぞれのメーカーが異なるやり方で製品としてまとめている。
 だいたい3つのグループに分けられそうだ。
1、汎用DACチップを使用する。
2、オーバーサンプリング、デジタルフィルター部は自前で設計(DSPFPGA)し、ΔΣDAC部は汎用チップを使用。
3、オーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣDAC部すべて自前で設計。

 製品の価格的には並べた順に高くなっているが、1でも高い製品もある。
 1で使われている汎用チップは旭化成、ESSTIが主流。それぞれ特徴があり、オーディオメーカーも価格帯で使い分けているようだ。D.Fを選択できるのはどれも同じ。
 2はリン、DENONなど。音への影響が大きいと思われるD.Fを自前で設計している。
 3はほとんど海外メーカーで日本メーカーにはない。CHORDdCSPSオーディオなど。マランツの例があるが設計は海外のエンジニアらしい。この点デジタルオーディオの技術力は今では海外が主流か。 

長い間この<DAC調査>に付き合っていただきありがとうございました。
 DAC調査をしてみたらデジタル信号処理の面白さがたくさん出てきて、有意義な調査になった。デジタル信号処理は正確でバラツキが少なく信号処理としては理想的なのだけれど、最後にアナログにもどしたらデジタル特有の問題が残っていて、オーディオ用としてそれを改善してきた経緯になっていた。僕が最初にいだいたDACとはずいぶんかけ離れていて複雑で面白い技術の集まりでした。
 お前の結論は何なんだと言われそうですが、実際結論はありません。
 最初にお話ししたとおり、これはDACの調査で僕の備忘録です。

一つだけ言えることはDACチップの進化は激しいのでなるべく最新テクノロジーのチップを使用した方が良いということ。しかしそのチップを上手に使いこなさないと良い性能、良い音は作れないから、チップ以外での技術力も必要。当たり前の結論でした。
 僕のCDプレーヤーはもう大分古いからそろそろ変え時というのは当たっていて、ただどれを選ぶかというのは技術内容より僕の予算が優先することだけははっきりしています。

今年もこれで終わり。お付き合い下さりありがとうございました。
 来年もよろしくお願いいたします。


 
<DAC調査6>
2017年12月11日  

前回ΔΣDACについて簡単に説明した。現在新しい汎用DACチップはほとんどこのΔΣ変調して、その後簡単なアナログフィルターをとおしてオーディオ信号を得ている。ここで使われるPDM信号はSACDで扱われているDSD信号と同じだからほとんどのPCM信号の音楽音源も最後はDSDに変換され聴いていることになる。(正確には同じではないが)
 ではこのΔΣDACは現在どのようなことになっているのだろうか。ΔΣDACはより高性能の方向に進んでいる。歪、S/NDR(ダイナミックレンジ)の高性能化である。
 その手法は以下4つ。
 1、ジッター除去
 2、ノイズシェイパーの高次化
 3、マルチビットΔΣDAC
 4、DACの並列出力化 

どれも歪・ノイズを減らす対策。
 ジッターはクロック信号の揺らぎのことで、PDM信号が時間方向への変調なのでクロックの揺らぎはすぐに歪、ノイズに影響する。だからクロックのジッターを減らす回路や外部クロック入力などが採用されている。
 ノイズシェイパーの高次化はΔΣ回路の引き算器と積分器の組み合わせを何段にもつなげ、ここに出力からのローカル負帰還をかける手法だ。ローパスフィルターの特性が急峻になるにつれ、ノイズ特性もより高域側に寄り、低周波域でのノイズを下げる手法だ。今は汎用チップで4次(4段)程度のノイズシェーパーをかけているようだ。
 マルチビットΔΣDACとは量子化器の出力を2値(1ビット)ではなく32値(5ビット)にして直線性を上げ歪、ノイズ特性を改善している。2値のPDM信号では時間軸方向の精度がノイズに現れるので、量子化方向にも信号成分を持たせ性能を上げている。最初は2値だったがこれも性能に限度があり、マルチDACとの協調点を見出した感じだ。
 
DACの並列出力化は1つのDAC出力はあるS/N比をもっているが、これをN個並列に出力すると信号はN倍されるが、ノイズが√N倍になるのでS/N比が√N倍改善される。そのためDAC出力は電流出力になっていて、簡単に出力加算できるようになっている。最大32個の並列DAC出力を持つものもある。
 現在の汎用チップではS/N比で130dB 以上24ビット相当のDACが販売されているようだ。

ここでも汎用チップでは飽き足らず専用LSIを起こしているメーカーもある。前述したCHORDdcSPSオーディオ、マランツなどがある。
 CHORDではノイズシェーパーを17次まで上げ、300B以上のS/N比をかせいだり、dcSではマルチビットDAC部での抵抗ラダーのばらつきを抑えるため、量子化値と抵抗の組み合わせを一定にせず、歪をノイズ化させ、さらにノイズシェーパーで高域に追い出すことで歪、S/N比を改善している。
 もうしばらく続く。



 
<DAC調査5>
 2017年12月1日 

今回からΔΣ(デルタシグマ)DACについて書いてみたい。前にも書いたように現在のDACは主にΔΣ変調してからアナログにもどしているのがほとんどのようだ。その理由はマルチビットと呼ばれる方式より性能は出るし、最後のアナログフィルターが簡単になるし安く作れ、いいとこずくめだからだ。ところが最近はこの部分にもより高性能化が進んでいる。
 やはり最初にこのΔΣ変調について簡単に説明しなければならない。下にそのモデル図を書いてみた。入力信号は前に説明したO.SしてD.Fを通った信号だが、ここではさらに8倍のO.Sされた信号になっているようだ。だからもとの信号の64倍か128倍にO.Sされた信号と見てよい。(2.8MHz5.6MHz)量子化数は最新では32bitらしい。
 変調器は引き算器、積分器、量子化器、遅延回路(1クロックディレー)などから構成されている。この動作原理を見てみよう。まず引き算器と積分器の組合せを考えてみる。今引き算器は出力からの帰還信号が入力信号から引かれているが、ちょっと見方をかえて、出力信号の代わりに入力信号を入れてみる。するとこの引き算器は入力信号と1クロック遅れた入力信号の差分ができる。それが次のステージの積分器に入力されるとまたもとの信号に戻される。すなわち差分を送って積分すればもとの信号にもどされるのでここの信号処理は何も変化はおこらない。この2つの処理からΔΣと呼ばれる。
 引き算器と積分器はΔとΣ、微分と積分、ハイパスとローパスなどいろいろ別の言葉で言い表すことができる。次に積分器を通った信号は量子化器に送られその出力信号が入力に戻されている。量子化器というのは入力信号を大胆に1か0に判別してしまう回路のことである。正の信号だったら1、負の信号だったら0というようにである。この部分が非常に分かりにくい部分だ。僕はアンプ屋だからこの回路をアンプに置き換えてみる。2値しかとらない量子化器をもっとリニアな回路に置き換えればこの回路はフィードバックのかかった負帰還アンプになっていることが分かる。すなわち量子化器は非常に歪の多い出力段と考えればアンプとして見ることができる。このΔΣ変調は2値しか取らないからこれはD級アンプ(デジタルアンプ)になっている。このアンプ入力はサイン波を入れても出力は01しか取らないデジタル信号になっていて、これをPDM(パルス密度変調)と言っている。では入力のサイン波はどこへ消えてしまったのか。ΔΣ部では信号は変化してないし、どこかに入力信号があるはずだ。これは時間軸で信号を見ている限り01の信号しか見えないが周波数軸で覗けば信号が見えてくる。ローパスフィルターを通して低周波(20KHz以下)だけを見れば入力信号に追従した信号が表れる。この回路は入力信号(低周波)だけ負帰還がかかっているからきれいな低周波部分とあとは高周波成分(64fsとその高調波)のノイズを我々は見ていることになる。
 これがこの変調器の説明だが、ノイズに面白い特性があるようだ。量子化器で発生したノイズは負帰還アンプと同様ループゲイン分の1に抑圧される。ところが積分器の特性はローパスフィルターの特性なので低周波域ではループゲインが高く、高周波域ではループゲインが低いため、出力に現れるノイズは低周波域では少なく、高周波域では多く出るというノイズの特性と持っている。これをノイズシェーピングと言っていて、オーディオ帯域(20KHz以下)ではノイズの少ない信号が得られている。

次回続く。



 
 <DAC調査4>
 2017年11月21日 

前回の説明をまとめるとD.Fには3つの課題を解決しなければならない。
 1、エイリアスがないこと。
 2、プリリンギングはないこと。
 3、位相は直線であること。

ところでこれらはすべて自然界ではあたりまえの現象ばかりなのだが、D.Fでは時間軸、周波数軸での性能をすべて同時に解決するうまい方法はなく、3者がお互いに絡み合っている。特にサンプリング周波数fsが低いときに顕著にあらわれる。現在市販されている汎用DACチップのD.Fでは正確に信号の補間ができてなく、O.Sで信号が歪んでいるのが現状だ。
 それでは現実はどうなっているかと言えば、8fsあるいは16fsにサンプリング周波数を上げ、その周波数でいくつかの種類で性能の異なるD.F78個用意されていて、それを選ぶようになっているようだ。理想的なD.Fは作れないから、長所・欠点を持ったいくつかのD,Fを用意しますから好きなものを選んで下さいという状況だ。音がD.Fによって変わるから、選ぶ方も完璧ではないけれど音の好みで選んでいるようだ。
 僕がCDP-XA50ESで経験したD.Fによる音の変化はこの部分だ。僕のわずかな経験だと大きな音の変化が感じられた。結構音に影響している。でも現在の技術レベルではまた違うかもしれない。
 このD.Fの矛盾を解決方法はあるようだ。それはO.Sの周波数をもっと上げる方法だ。現在多く出回っている汎用DACチップはO.S8fs16fsで、これまで述べた問題があると述べてきたが、CHORDという会社は256fsO.SD.Fを構成している。上の述べた3つの特性を一挙に解決するためにとてつもなく高サンプリングに変換してなるべく理想に近づける努力をしている。彼らの資料によると通常のDACでは100タップくらいのFIRフィルターなのが、コードでは164000タップのFIRフィルターを構成している。だからより高速で動作するFPGAというプログラマブルなLSIを使用しているとのことだ。汎用チップでは満足できず、できる限りの挑戦をしてみるその姿勢は素晴らしい。僕は音を聴いたことがないのだが雑誌では非常に評判が良い。CHORDは時間軸での信号再現に重点を置いていて、雑誌の音の評価でも時間軸での音の評価(定位、空間)が良いようなコメントが多い。CD規格の信号をできる限り元の信号になるように挑戦している。
 CHORD社の解決方は時間軸での問題を優先するため周波数軸で広帯域を使う犠牲を払い、すなわち大量のデータを使用することで解決している。両領域を同時に良くする方法はここでもないようだ。
 今回はこれくらいにして次回はデルタシグマDAC部について書いてみたい。



 
 <DAC調査3>
 2017年11月11日 

今回から話を少し掘り下げてオーバーサンプリング(O.S)&デジタルフィルター(D.F)とデルタシグマ1ビットDACの問題点とその改善の推移に話をすすめる。
 せっかく安くて高性能なDACが出来たのに、何が問題だったのかが少しずつ分かってきた。まずはオーバーサンプリング(O.S)とデジタルフィルター(D.F)の話から。
 これら二つの技術O.SD.Fはふたつでひとつの効果を生む。デジタルでフィルターを組む場合、サンプリング周波数が高いほうがフィルターの性能が得やすい、だからこのフィルターを通す前に今では8倍あるいは16倍にサンプリング周波数を上げ、そしてオーディオ帯域の約20KHzのフィルター(デジタルフィルター)を通せば高いサンプリング周波数(352.8KHzあるいは705.6KHz)で帯域20KHzのオーバーサンプリングされた信号が得られる。O.Sは何故必要かと言えば、最初に戻るが最後に音楽信号を再生するときに必要なアナログフィルターが簡単にすむためである。
 この処理はなにも問題ないように思えるが実はオーディオ的には問題が潜んでいた。
 このD.Fの一番の役目はエイリアス(折り返し)信号の防止である。ちょっと耳なれないがデジタル信号ではサンプリング周波数の2分の1に帯域をきちんと制限しないとアナログに戻したときに正しく再生できない性質を持っている。だから帯域は必ず22KHz以内におさめないと雑音が出てしまい、この雑音のことをエイリアス(折り返し雑音)と言っている。D.Fで帯域を22KHz以内に収めることはできるのだが、今度は別の問題が発生してしまった。それはプリリンギングと位相という問題だ。オーディオ用のフィルターを作る場合位相リニアと言われることもあるが、低周波も高周波もこのフィルターを通したときの処理時間が同じになるように設計する。そうしないと例えば高い周波数で位相が遅れるすなわち時間が少し遅れて出てくると、おかしな現象が生ずる。同時に鳴ったバスドラとハイハットの時間がずれて聞こえてくるようなことだ。この時人間は遅れてきた信号が遠くにあったように感ずるらしい。歪を感ずることではなく音源がずれて聞こえるらしい。すなわちオーディオ言語でいえば定位がすれるということだ。現実の世界では同時になった楽器は同時に聞こえるのが普通だからD.Fは位相リニアで作る。
 ところがD.Fを位相リニアでつくると、今度はインパルス応答(瞬時的なパルス信号)ではパルス信号が来る前にプリリンギング(波打つ信号)が出てしまう。プリエコーとも言っている。言い換えると鐘が鳴る前にエコーが聞こえ、次に鐘が鳴りまたそのエコーが聞こえることになる。現実世界には鐘が鳴る前にエコーは聞こえない。
 ここに面白い世界がある。時間の世界と周波数の世界がありこれらはフーリエ変換で結ばれているのだが、周波数の世界で性能をあげると必ず時間の世界で不都合が起こる。これは逆も同じ。
 折角D.Fで周波数軸では素晴らしいフィルターを作ると今度は時間軸で問題をおこしてしまう現象が問題になってきた。
 次回もう少し説明する。


 
 <DAC調査2>
 2017年11月1日 

CDが発売されて35年経つそうだ。そういえば僕もそのころからデジタルを仕事に取り入れてきていた。まだTTLの時代で30センチ四方の大きな基板に何十というTTLを配線して、回路を組み立てていた時代だ。今の技術は隔世の感がある。
 CDは民生用として初めてのデジタルであって、その時に作られた規格サンプリング周波数44.1KHz、オーディオ帯域約20KHzは今でも続いている。しかし今回調べてみるとCD規格は残っているが、さらにハイレゾと言われる高いサンプリング、高い量子化ビットの規格もあり、SACDに代表されるDSDのような新しいフォーマットも誕生していて、今のCDの再生技術は昔と大きく違っていてそのデジタル信号処理が大変化をとげていた。今回それを調べていたので、ここでちょっと説明を試みることにした。

 最初のCDの再生は教科書通りの形から始まった。CD信号は16ビットのDACでアナログ化され、それを特性の優れた急峻なアナログフィルターで音楽信号を取り出し再生信号を得ていた。ところがこの再生回路には大きな問題があった。一つは16ビットのDAC、今の言葉で言えばマルチビットDACと言われるもので、ビットの重み付けに対応した高精度抵抗を通してアナログ信号を作るものだったが、これは民生用につくるには難易度が高く高価なものになっていた。IC内で回路を作るのだが、この高精度の抵抗を作るため一個ずつレーザートリミングという手法を用いて抵抗値を調整しなければならなった。だからコストが上がっていた。次に音楽信号を取り出すアナログフィルターも性能・コストの面で大きな問題となっていたようだ。
 そんな状況だったが、エンジニアの努力でその改善策が考えられてきた。最初にアナログフィルターの代わりにデジタルフィルターを使うようになった。ここではちょっと工夫が必要で、サンプリング周波数を上げてからフィルターを組んでいる。この効果はそれまで使用していた高価なアナログフィルターを追放し、簡単なCRフィルターに置き換えた。次に16ビットのマルチビットDACも今度はデルタシグマという高サンプリング1ビット信号に変調し、それを簡単なCRフィルターで信号を再生する安くて高性能のDACを作るようになってきた。この二つの技術がデジタルオーディオの世界を一変させた。なにせ安くて、高性能のDACチップができるようになったので携帯型デジタルオーディオや今では携帯電話までもデジタルオーディオが楽しめる様になっている。
 これですべてが解決したかと思いきや、実はそうではなかったらしい。特に高級オーディオの世界では本当にデジタルはアナログより音が良いのか、何かデジタル音楽には問題がありそうだとオーディオマニアには疑問が残り、さらにデジタル再生技術の進歩が進んでいった。
 次回はその続き。


 
 <DAC調査>
 2017年10月21日 

僕のオーディオシステムは真空管バランスアンプになっていて、これまでバランス化をテーマに自分用のアンプを設計してきた。音質効果は得られているが、まだ完全でないところがある。それはCDプレーヤー出力がまだアンバランスでここだけ何とかしたいと前から思っている。そこで最近のCDSOCDプレーヤーやDAC製品を調べてみた。もちろんXLR出力を持つ製品に限られるが、調べているうちにだんだんDACチップについて興味が湧いてきて、最近の技術動向が分かってきた。そんなことはすでに分かっているよと言われそうだが、僕はこのところすっとアナログだったから、デジタル技術まで興味が湧かなかったのだが、調べているうちにこれが結構面白く、今回このコラムに備忘録として書いてみることにした。僕なりの理解だから適切ではないところもあるかもしれないけれど、そこはフィルターをかけて読んでもらいたい。
 さて、最初に今回僕のDAC調査をするきっかけから話したい。いくつかのサイトを読んでいたら、DACの音質はデジタルフィルターが支配的だという文章に遭遇し、そうなんだと頭で理解しつつもDACの内部回路がどうなっているかを調べていくうちに、我が家で使っているソニーの古いCDプレーヤーCDP-XA50ESにもたしかデジタルフィルターの切り替えボタンがあったことを思い出し、フィルターの切り替え実験をまずしてみた。その結果驚く程の音の違いを実感することができた。これには本心驚いた。どう変化したかといえばフィルターの違いにも関わらず、音の変化は周波数的な変化ではなく、ノイズレベルが下がり、細かい音(響きや余韻)が聞こえ、定位が良くなり、アタックも良くなり音が前に出てくるようになった。むしろ時間軸での改良の方が大きいと感じた。この体験から何故なのかという疑問が当然起こり、今回のDAC調べに発展していった。恥ずかしい話、僕はこれまでDACで音が変わるのはアナログ部の違いだろう程度しか考えていなかった。ところが今回調べてみるとデジタル処理でも音質に大きく関わる要素がたくさんあり、それもかなり論理的に述べている資料などもみつかりかなり面白い調べものとなった。
 今回導入文だけで終わりになってしまった。次回続きを書きます。


 
 <パワーアンプ制作中>
 2017年10月11日 

久しぶりにパワーアンプを設計している。久しぶりと言っても1年半ぶりくらいだ。MYプロダクツの最後のお客さまのアンプ制作後、パワーアンプを作っていなかったのだが、今自分用に設計・制作している。以前にもちょっと紹介したとおり、KT66ppバランス型パワーアンプ。今回のアンプの特長を述べてみると、まず真空管バランス型パワーアンプであること。自分用だからバランスアンプになっている。すでに何作かバランスアンプは作っているから、ここは僕にとって新しい技術ということではない。今回の新技術はKT66のドライブ段をラインアンプで使用したCSPP回路のドライブ段にしたことだ。CSPP回路は出力段での制作例はいくつか紹介されており、それ用の出力トランスも発売されている。今回の僕のアンプの出力段は普通のppだが、出力段より一つ前のドライブ段にCSPP回路を採用している。ラインアンプで採用した2入力、2出力のCSPP回路は低出力インピーダンスで、大きな信号時にも低歪率の特性を示し、さらにpp動作なのでこれまで一般に使われているエミッタフォロアーより優れた特性が得られると予想されるので実験してみることにした。また電圧増幅段の定電圧回路も改良を加えた。高域特性の改善された電源回路にした。次にこれは本質的な問題ではないのだが、これまでSCRを使っていたソフトスタート回路を止め、新しい回路にこれも改善した。SCRを使用するとどうしても電源トランスの5V6.3V)端子を使うのでちょっと勿体ないと感じていて、この電源(巻き線)を使用しない新しい回路にしてみた。その他定電流回路もこれまでとちょっと違う回路で組んでみた。
 今はまだ制作中で動作確認もしていないのでこれらの回路が正しく動作するかの保証はとれてなく、今は勝手に好きなように書いている。さて動作、性能、音はどうなるのだろうか。

制作途中のアンプの写真を載せてみます。電源は一つのブロックのまとめ、シャーシー中央に配置し、アンプ部は左右にCH毎に配置している。写真ではまだ配線前になっているが、現在だいぶ配線も進みもう少しのところです。
 でもそこからの回路確認が大変なのです。

  
左:電源ブロック。電源回路を一つのブロックにまとめた。
右:全体レイアウト。電源ブロックを中央に、L/Rチャンネルは左右に配置した。


 
 <回路シミュレーター>
 2017年10月1日 

最近回路シミュレーターを勉強し始めた。以前から友達に紹介されていて無料ソフトの存在は知っていたが、これまで扱ってきた回路程度ではシミュレーターまで必要ないと考えていて使用していなかった。ところがある資料を読んでいた時電源回路のアイデアが出てきて、何か実験でも出来ないかと思案してみたが、実際電源のテストは大変だと気が付いた。例えば真空管アンプ用の電源を考えてみると電圧は400V近くあるし、電流にしても最大400Aくらいまで必要だから、テスト用負荷を考えてみても400V160Wという非常に大きな電子負荷かあるいは大きな抵抗を用意しなければならない。これでは高額で大きな実験装置が必要となってしまう。すなわち簡単にテストをしてみようということができない。それならシミュレーターでテストすればいいじゃんとなった訳だ。
 使用したシミュレーターはLTspiceというリニアーテクノロジー(LT)社が出している無料のシフト。早速ソフトをダウンロードしていじってみたが、まだ使い方が分かっていない。今止まっているところはソフトについていない部品のspiceデータの登録のところだ。なかなかよい説明も見つからず、英語文や英語ビデオを見ながら勉強中だ。アンプ制作もしているので、まだこのソフト勉強に時間がさけずなかなか進まないが、気長に対応している。このソフトの面白いところはソフト上では定格オーバーで使用しても部品が壊れず動いてくれる。実際電源トランスの整流回路からシミュレートしたが、ダイオードの逆耐圧をオーバーしていても動作している。実際にテストしたら一瞬でダイオードが壊れてしまうが、ソフト上では逆電圧が流れて動作している。これだから部品も壊さず、たとえ僕が間違った回路にしても壊れないで異常動作を示してくれるだろう。

これまであまり興味が湧かなかったが、少しづつLTspiceが面白くなってきた。どうも真空管のspiceデータもありそうなので、もしこれが使えたらいろいろお遊びができそうだ。最近回路を考えるのは楽しいが、作るのがどうもと思っていたので、ちょっとおもしろいツールが使えそうだ。


 

コラム目次に戻る

 Copyright(c);2006-2017 Yasui All rights reserved