オーダーメイド手造り真空管アンプの店
 
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 <我が家のアナログオーディオフェア>
 2018年6月21日 

僕はオーディオの仕事を一人でしているが、そうするといらなくなったオーディオ機器やレコードを差し上げるという方が現れる。これまでも何回かこういう経験をしていて古いLPレコードなどは喜んでいただいてきた。今年になっても知り合いの方が亡くなられて遺族の方からもし良かったら引き取ってもらえないかとい話が2件あった。一つはCDとカートリッジ、もう一つはLPレコードでもちろん喜んでいただいてきた。せっかく購入され大事に使われてきたものが無残に捨てられてしまうのは忍びないし勿体ない。
 今回はありがたいことにLPカートリッジをいただけることになり、その再生に時間を費やしてきてやっと何とか満足できる音がでるようになってきた。まずカートリッジの仕様から調べ始め、型名、発電方式、出力電圧、負荷インピーダンス、針圧、ヘッドシェルなどすべてネットで調べた。これで我が家のカートリッジは低出力MC2本、高出力MCが1本、MM4本となった。2回前のコラムでEQの入力インピーダンスの変更はこれらのカートリッジに合わせるために少しの調整をいれた作業で、負荷抵抗を合わせる作業のついでに負荷の接続法も変更したものだ。負荷抵抗の変更、ヘッドシェル端子の清掃、リード線端子のカシメ調整などを行い、ひとつひとつ針圧を確認しながらそれぞれの音を試聴していった。
 まだ時間をかけた聴き比べには至ってないが、僕の印象では好みの順から言って
 1、DENON DL-103 2、Shure V-15 3、ORTOFON MC-20の順になる。
 DL-103は出力電圧が高く使いやすい。SNが高く広帯域に再生してくれるのでクラシックでもジャズでも曲を選ばずきれいな音を再生してくれた。2位のV-15MMだけれどもこれも繊細な音を再生してくれた。一般的にMMはクラシックには向かないという固定概念が僕にはあったがこれは間違いだったことを示してくれた。このカートリッジも万能で音楽のジャンルを選ばない。MC-20 MC方式で再生出力がかなり低くこれが音の勢いみたいなものが弱い感じがした。僕のヘッドアンプの入力換算ノイズは-140dBV程度だが、も少しノイズを下げて実験したくなった。そうすればもっとこのカートリッジの実力、良さが出てくるのではないかと思われた。
 前回アナログオーディオフェアでの試聴が激しい音源でのテストが多いと書いたが、僕の試聴テストはむしろ反対に微小信号の再生に重きを置いている。大振幅のDレンジの拡大ではなく、微小方向へのDレンジの拡大に注目して聴いている。これは演奏のニュアンスが聴きとれると音楽が断然楽しく聴けるからだ。だからいつも音の余韻とか響きとかビブラートとか微小信号音が気になって聴いている。
 今回カートリッジの試聴をしてみると、昔のエンジニアの職人芸には感心させられる。あんな小さなビニールの溝からこんな素晴らしい音を再生させる技術にただ脱帽だ。こんな尊敬に近い気持ちで音楽を聴くと、音の批判精神は亡くなりただ楽しんで聴けるようになるのは不思議なものだ。




 
 <アナログオーディオフェア2018>
 2018年6月11日 

昨日アナログオーディオフェア2018に行ってきた。はじめての参加だった。今回4回目の開催らしい。近年アナログオーディオの人気に一過性のブームでは終わらせないようにアナログレコードの魅力を多くの人に知ってもらいたいとの理由で行われている。しかしながら、最近のオーディオ関係のイベントは僕も含めてほとんど高齢者といわれる人たちばかりで、ほとんど若い人は見かけず人気を広げようという主旨には今一つであった。
 人の話はさておき僕にとってアナログレコードだけをデモしてくれるイベントは他にないのでアナログの試聴には貴重な経験の機会となる。近年のアナログオーディオはどの位まで再生してくれるのだろか、僕の装置での再生とどの位差があるのかどうか興味があるところだ。ちいさな会場ではあったが、僕は主に2つのデモを中心に試聴してきた。
 1つはオーディオデザインのデモを聴いてみたかった。ここは小さなメーカーで、お一人で設計をこなしていて最近は雑誌などでも賞を取ったりしている。主にネットで販売していて、またお店やメーカーでも試聴する機会がないというブランドだ。だからほとんど音を聴く機会がないものだから、今回の出店にて試聴をしてきた。雑誌などの評価よろしく歯切れのあるすばらしい音を再生してくれていた。
 次の興味はテクニクスの新製品のデモだ。最近テクニクスはまたDD(ダイレクトドライブ)のターンテーブルを発表していて元気がよい。最近の他社の新製品のターンテーブルはベルトドライブが多くてDDは少ない。僕が思うに他ではできないからだと思っているのだが。テクニクスがまた新しい商品をDDで出してくれるのはうれしいことだ。ここも音を聴いたがSNが素晴らしくて、アナログオーディオの音のイメージではなかった。
 全体もざっと見てきたが、このアナログ再生のデモはほとんどジャズ・ポップス系で静かなクラシックのデモはなかったように思う。(全部は聴いていないので正確ではない)低音バンバン、歯切れのよいドラムス、中央に定位するボーカルなど力強さや歯切れを強調するものが多く、楽器の余韻、響きを聞かせてくれるようなデモはなかったようだ。音の楽しみ方はひと様々だのだが、いつも激しい音楽ばかりを聴いている訳ではなし、ゆったり静かに音楽に浸りたいときに心地よい音を出してくれる装置が良いのだが、そんなシチュエーションのデモではなかった。
 面白いデモといえば柳沢正史氏の「真空管アンプでドーナッツ盤&モノラ-ルLPSPレコードを聴く」という催しだ。ここは比較的大きな会場なのだがお客様はいっぱい。デモは昔のレコードを真空管アンプを使いアルテックスタイルのスピーカーで再生する。お世辞にも高音質とは言えないナローレンジの音なのだ。そしてデモの曲は石原裕次郎の歌謡曲をかけている。もう昔の再生音の世界に入っているのだ。ほとんどの人は新しいアナログより昔のアナログの世界に浸りたい人たちなのだろう。これはまたジャズだらけの激しい音楽のデモとは違ったアナログの楽しみ方を提案してくれていると思った。
 我が家の装置との比較で言えば、僕の装置特にターンテーブルにはまだ多くの改善が必要と感じた。


 
 <バランス伝送実験>
 2018年6月1日 

最近自分のバランス伝送、増幅アンプシステムでちょっとした実験を行った。EQアンプ、ラインアンプ、パワーアンプはすべてバランス増幅になっていることはすでに述べたことだが、細かく見てみるとグランド基準の回路になっているところが少しある。まずパワーアンプの出力段だ。ここは電源の供給や効率を考えて通常のグランド基準のABクラスの増幅になっている。ここは電源効率を考えたらしかたがないところだ。その他を眺めてみるとEQ(イコライザーアンプ)のカートリッジとのインターフェースがグランド基準にまだなっていた。どういうことかと言うと、カートリッジには決まった負荷抵抗というのがありそれをEQアンプの入力に挿入するのだが、その抵抗をホット・コールドからそれぞれ最適負荷抵抗Rの半分の値R/2をグランドに落としていた。これはカートリッジの負荷抵抗の役目と入力信号の電位をグランドレベルに保つためと両方の役目をはたしていた。この方法は入力に接続される抵抗の数を減らしてくれている。しかし先に述べたように入力信号がグランドに流れてしまうのでちょっと気になっていたところだった。そこで最近ちょっとこの部分の変更をした実験をしてみた。すなわち負荷抵抗は200Ω程度でこれはホット・コールド間に挿入し、信号電位を与える抵抗は1KΩで別にホット・コールドからそれぞれグランド間に挿入してみた。回路図でみればカートリッジの負荷抵抗の中点がグランドに落とすか落とさないかの違いの実験をしてみたことになる。
 さてどのようになったか。もちろん特性的にはまったく変わらないのだが音を変わった。不思議なことだがベールが一枚はがれたように音の純度が上がったように聞こえた。楽器の音もきれいになったし、響きや余韻が以前より増して聞こえるようになってきた。面白い現象だ。バランス増幅の長所はローレベルの再生に優れているが、ちょっとしたインターフェースの違い、すなわち送られてきた信号をグランド基準で受けるか、ホット・コールド間で受けるかによって聴感上でもかなり違って聞こえる。この実験は自作のバランスアンプシステムしか味わえない実験結果である。
 実はこの現象は以前ラインアンプの入力ボリュームでも経験済みで今はERの回路図にあるように入力ボリュームの中点はグランドに落とすのではなく、浮かして音量を調整している。この方が断然音が良いからだ。
 何故音が変わるのかはよく分かっていないが、推測するに信号電流はなるべくグランドに流さない方が賢明だということしか言えない。アンプを製作する時グランド配線で音が変わることを経験するが、これを避けるにはグランドに信号を流さなければ問題が少なくなるという理屈だ。
 バランス増幅はまた新しい世界をのぞかせてくれる。これまでの常識にとらわれないようにして、バランス増幅用の新しい考え方が必要になってくるようだ。


 <過疎化?>
 2018年5月21日 

僕が住む近隣ではお店の閉店が相次ぎ生活に支障が出ている。昨年末お気に入りのパン屋さんが閉店し、さらに今年3月にはすぐ近くの別のパン屋さんも閉店したのはすでにこのコラムで紹介したばかりだ。そうしたら4月になりガソリンスタンドが閉店することになり、5月にはコンビニも閉店してしまった。これらの4軒は僕の自宅から34分にありかなり生活に便利な店だったのだがここにきて急に店じまいしてしまった。
 パン屋さんは朝のパンやお昼にもときどき買いにいっていたし、コンビニは言うまでもなくちょっとした買い物に便利で、その他宅配の依頼にも近くだったからすぐに出せたのがもうそれも出来なくなってしまった。ガソリンスタンドは車のガソリン給油は当然だが、冬は灯油が必要なため2週間に1度程度のペースで灯油の買い出しに行っていたのが、こんどの冬からは遠くのスタンドまで行かなければならないのはちょっと面倒な気がする。
 この区域は駅から徒歩10分弱位だからそれほど遠い訳でもなく、ただ坂の上という立地だ。何故商売を止めてしまうかの理由はそれぞれだと思うが、横浜市も過疎化の波に入っているのだろうか。
 そこで横浜市の人口統計や登録自動車台数の統計を調べてみた。横浜市の人口は現在約370万人だそうだ。昨年からは+5000人ほど増えていて、ここ5年で+3万人と増えている。2020年までは増加傾向でその後は減少していく予想だ。僕の住む区だけを見ても現在約20万人で昨年より-750人の減少となっているが、それほど大幅な人口減少ということにはなっていないようだ。車の登録台数をみると現在は130万台位でこれは2005年をピークに少しずつ減少傾向にあるようだ。だがそれも少しの割合で大きな減少とはなっていない。商売は人口や車の台数だけで決まる訳ではないけれど、今の景気というのはかなり財布の紐が固く消費にお金が回っていないということなのだろうか。
 こんな全体の統計の数値だけで個々の商売の景気を判断するのは難しいのは分かっているけれども、止められてしまうとこちらもかなり困るから何故という疑念がいつもつきまわる。もっと我慢してくれればとか、そんなにお客さん少なくなかったのにとか、また誰かが再開してくれないかとか、淡い期待と込めてこれらの閉店現象を眺めている。
 パン屋さんは7年位、コンビニは10数年、ガソリンスタンドは30年の営業だったようだ。商売を長く続けるのは難しいことが良く分かるのだが、一方では100年以上営業を続けているお店、事業もたくさんあることは事実で、僕としては少々高くても近所で商売を続けてもらう方がありがたいことを最近痛切に感じている。


 
 <一噌先生>
 2018年5月10日 

先月、能笛方人間国宝「一噌仙幸」先生が亡くなられた。
 一噌先生は日本を代表する能の笛方の名手で芸術院会員であり人間国宝保持者でもある。今年はあまり体調がすぐれないことを聞いていたが、突然の悲報に大きな衝撃を受けた。なぜ僕がこんなことを書くかと言えば、少なからず先生と僕とはお付き合いがあった。でも直接お会いしたことはなく、今年のお正月にご挨拶に伺おうと思っていて、先生の体調やご都合もありなかなか実現できず、そろそろと思っていた矢先に今回の訃報を聞いた。
 先生は有名な笛方の名手であるが、素人にも笛(能管)を教えてくれる。お能の先生方は皆さん素人の生徒さんを持ちながら舞台にも出られる。最初女房が先生の素人弟子で能管を習いに行っていた。ある時女房が練習曲の楽譜の写しをしていたがきれいにいかないものだから半分諦めていたのを見て、僕がエクセルで楽譜を作ってあげた。その楽譜で練習をしていたのだが、先生がその楽譜を見て他の曲の楽譜も作って欲しいとの依頼があり、ここ3年近くは先生の依頼のある曲の楽譜作りをしていた。それまで手書きであまりにきれいとは言えない楽譜を、きれいなフォントと指付け(笛の指使いの絵)で仕上げるので見やすく、さらに変更にもすぐに対応できるので先生にも喜んでいただいていた。今年の3月にも楽譜を仕上げたばかりだった。
 僕はこれをボランティアでしていた。ボランティア活動は公園掃除や町内会だけではない。僕のちょっとしたアイデアや行動がお能の世界にお役にたてればそれがボランティアとして成立するのではと思ったからだ。先生はそれでは申し訳ないと言って下さったので、年末の忘年会だけは招待していただいて美味しいお酒を御馳走になっていた。ここでも先生にお会いする機会に恵まれなかったのも残念なことだった。
 こんなお付き合いだったが、僕としてももっと楽譜を描きたかったが残念なこととなった。ちょっと厚かましいがもし秘曲でも描けたらと勝手に想像していたが。
 通夜は先生の笛一本の曲が流れるなか、多くの能関係者が参列され厳かに執り行われた。
 僕としてもこれからもっとお手伝いしたいと考えていた矢先、まさに日本の宝が失われてしまった。非常に残念でならない。


 
 <コラム・ブログ?>
2018年5月1日  

このコラム欄をいつも読んでくれる人、ときどき読んでくれる人、たまに読んでくれる人ありがとうございます。昨年のコラムがたまってきたのでやっと整理しました。昨年のコラムは2017年にまとめました。まとめるにもすべて手作りなのでなかなか手がつかずやっと今になってアーカイブが出来た次第です。
 ところでこのようなウエブサイトに書く文章をブログと言うのかコラムと言うのかよくわかりません。調べてみたらコラムというのは新聞の縦の段・欄のことでそこに書く小さな記事をコラムと言っているそうです。(正しいかどうかは分かりませんが)このコラムを始めたころはブログという言葉はあまり聞かなかったが、今では特にウエブ上ではブログということの方が多いようです。文章の内容についてはブログだと日記的な内容も含まれるが、コラムと言うとあるテーマの意見みたいな意味合いが強くなる感じがします。僕のコラムはそれほどご意見番的な内容ではなく、むしろ日記的な内容なので今ではブログと言った方が合っているかもしれない。
 今回昨年のコラムをまとめるに当たり、今後はプロバイダーが用意してあるブログを利用しようと考えた。読んでみるとテーマはたくさんあっていろんな人がブログを書いている。また広告が付き、もし広告の効果が出るとお金ももらえるらしい。文章入力も楽だし、デザインも良いし、まとめるのも楽だし、うまくいけばお金ももらえそうだしいいことずくめでこの際ブログに乗り換えようと検討した。ところがいくつかのブログを読んでいたら急にやる気を無くしてしまった。何でもありの内容でそこには僕の考える内容の真面目さや面白さがかけているように感じた。サイトの読者数を増やす手段・やり方がちょっと違うのではないかと感じた。だからブログは止め今までどおり手作りのサイトでコラムを書くことにした。アンプは手作りだからコラムも手作りで書く、これが僕のやり方に合っている。それほど多くの読者がいるわけではないけれど、12年間ほぼ10日に一度の割合で文章を書いていて、そこには誰か読んでくださる方がいるのでこのまま続けてみようと思っている。高度な内容にはならないけれど、また日記的で評論にもなっていないけれど肩ひじはらず、ただ思いついたことを書いてみる。これを今後も続けたいと思っています。


 
 <試聴会>
 2018年4月21日 

このところ我が家で試聴会を開いている。おおげさなものでなく親しいオーディオ仲間を呼んで音を聴いてもらうだけの催しだ。今年は3組ばかり友人を呼んで聴いてもらっている。会の趣旨は新規購入したSACDプレーヤーDCD-SX11と新規設計のKT66ULppCSPPドライブバランス型パワーアンプの試聴だ。今回のセッティングで入力から出力まですべてバランス接続、バランスアンプ構成となりその効果を聴いてもらっている。と言ってもそれほど厳格な試聴をしている訳でなく、お菓子を食べお茶を飲みながらワイワイガヤガヤとオーディオ・音楽談義をしているだけだ。お客様もずっと真剣に試聴するでもなく、新しいアンプの冷やかし半分で聴いてもらっている。これがあるからアンプ作りをしても楽しい時間が過ごせることとなる。ただ新規アンプを作って一人で悦に入るのもいいが、オーディオ仲間と一緒に回路や作りや音質を一緒に議論するこの時間が楽しいのだ。僕からは音質についての評価はほとんど問いかけない。まずは楽しい時間が過ごせればよいのであって、評価などは3の次くらいになっているからどんな感じ方をしているかは正確には分からない。それでも雑談の中からのコメントを注意して聞けば何らかの音の印象は少し分かってくる。
 今回はSACDやハイレゾ音源にバランス増幅というシステムで楽しんでもらった。自慢ではないが真空管アンプでバランス増幅システムというのはかなりレアなシステムだし、パワーアンプもCSPPドライブという新しいドライブ法だからこれは面白い催しものだったと思う。

 先日の試聴会では次に設計するアンプはどのようなものがいいかなどを話していた。僕は手持ちに良いトランスがあるから300Bのシングルでもと言いったら、あまり特長あるアンプは出来ないのではないかという議論になり、現在もその議論の結果を引きずっていて300Bは止めて別のアンプにしてみるかとも思っている。こういう仲間と議論をしてアンプを設計していくのもオーディオを楽しみの一つかなと感じている。趣味はやはり仲間とシェアして続けるのが楽しくて長続きするコツのように思える。

来月も来客の予定。
 音狂老人になるにはこうした仲間が必要ですね。


 
 <ハイレゾ音源>
 2018年4月11日 

やっとハイレゾ音源を試してみることとなった。これまで再生音源はCDとアナログレコードだけだったから最近のハイレゾ音源などは眼中になかったのだが、やっとのことでDCD-SX11を購入してSACDを楽しめるようになってきて、さらにUSB DACも使ってみなければということになった。実はこの試みも友人がハイレゾ音源を持っているけどこちらで聴けるかという話から始まった。新しいSA-CDプレーヤーと新設計のバランスパワーアンプの試聴会を催すにあたって新しい音源でもテストしたいとのことから始まったのだ。ここも他力本願で人から言われないとなかなか始まらない僕の性格が出てしまった。
 そんな状況からハイレゾ音源対応に取り組んだ。まず音源は無料ソフトで試してみることにした。たまたまオーディオ誌にダウンロードファイルが付録で付いていたのでそれを使用することにした。MacにダウンロードしてさてiTunesで覗いてみたらこの音楽ファイルが認識されてなかった。調べてみたらダウンロードのファイルとiTunesが扱うファイルが異なっていることが分かり、ファイルの変換が必要となった。これも調べてみたらフリーソフトで変換プログラムがあり、それをダウンロードし音楽ファイルを変換した。そうしたら無事iTunesでファイルを認識しまずまず。
 ところでDCD-SX11にはUSBケーブルは付属してなく、USB2.0ケーブルとUSBメモリーを購入。そしてMacDCD-SA11とをつないでみたがうまく転送できない。これもまだMac側の設定が十分でなくまもなく音出しに成功。説明書に書かれたほど簡単ではなかった。
 つぎにWindowsでも挑戦。WindowsDCD-SX11用のドラバーが必要でこれもダウンロード。 こちらも音源のサンプリング周波数、ビット数、さらに出力の設定などを行い、これもちょっと時間がかかったがMediaPlayerで無事音出し成功。MacにしてもWindowsにしても終わってみれば簡単に思えるのだが、どこにどんな条件を設定するのかが分からず難儀した。
 肝心の音はどうだったかと言えば確かにクリアなのだが、演奏、録音がイマイチで面白くなく感動しない。今後の音源に期待しようと思っている。
 またUSBメモリー音源についてはダウンロードファイルをそのままUSBメモリーにコピー。そうしたらすぐに音は出た。こちらはDSDも対応しているので面白そう。MacWindowsはまだDSDには対応してなくPCM音源だけだ。
 先の友人から聞いた「ベルリンフィルのハイレゾストリーミング Prime Seat」のダウンロード、設定も完了し今週のライブを楽しみにしている。
 こんな様子で我が家も遅まきながらも少しハイレゾ音源の環境が整ってきた。そのうちに音楽用のサーバーも欲しくなるのかなあ。


 
 <プレート電流>
 2018年4月1日 

前回真空管アンプの電源トランスの仕様の決め方について書いてみたが、改めて真空管アンプのプレート電流について考えてみるきっかけが得られた。今回KT66pp(UL)の動作を確認してみると意外とプレート電流の変化が少ないことが分かった。例えば真空管マニュアルでKT66(UL)の動作を見てみると、
 AB1PP(UL)Eb450V、出力P0=32WIb0=62.5mAIbsig=72.5mA(単管あたり)とある。
 ここでEb:プレート直流電圧、Ib00信号時プレート直流電流、Ibsig;最大信号時プレート直流電流である。
 すなわち動作例としてプレート電圧、バイアス電流を与えた時の最大出力とその時の平均プレート電流値が表示されている。このIbsigは平均電流値であるから、この値からアンプに必要な電源トランスの容量が計算できることになる。今回このIbsigに注目してみると意外にIb0無信号時のプレート電流すなわちバイアス電流との差が少ないことがわかる。この例ではAB1PPといってもAクラス近い動作ではないかと疑問を持つ。ところがバイアス電流を35mA程度に下げてIbsigを計算してみてもIbsig60mA程度となり極端な電流変化はない。何故こんなことを書くかと言えば、僕のイメージではpp動作というと半導体のBクラスアンプのイメージが強く平均電流が大きく変動しているはずと思っていた。例えば半導体アンプで30W8Ωのアンプを考えてみるとIbsig0.87AとなりKT66アンプの15倍程度大きな値が出ている。50mAのバイアス電流に対して最大出力時の平均電流は17倍にも達することが分かる。
 このようにIbsigIboの比はABクラスpp真空管アンプでは半導体に比べずっと少ない。それは真空管アンプというのは出力トランスが負荷で数キロΩだが半導体アンプでは8Ω負荷なのでこの差が大きく影響している。
 電源トランスの電流は真空管のIbsigを十分供給できるようにしなければならないが(4Ibsig分)、ピーク電流に対しては平滑コンデンサの容量で賄うこととなる。電流が2倍変動すれば当然電圧は下がるので平滑コンデンサやリップルフィルターなど電源インピーダンスを下げる工夫は必要だ。
 またプレート直流電流が入力信号によって変動するということはABクラスにセルフバイアスを用いるとバイアス値が変動することを意味しており、好ましくないことを示している。さらにスピーカー負荷も周波数で変動しプレート電流が変動するのでさらに悪化する。
 これは半導体アンプでも同じ理屈が通る。
 今回ちょっとした疑問からppアンプにおけるプレート電流を考察してみたが、これだけでも考慮すべき点が出てきて面白い結果となった。ちょっと深く考えてみるとまた違った見方が出てきて面白い。


 
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