僕はアンプの音質評価は主にクラシック音楽でしている。20年位前に真空管アンプの制作を始めてから次第にクラシック音楽を聴く機会が増え、それにともないクラシック音楽自体も好きになってきた感じだ。若いころはビートルズが好きで社会人になってからは友達の影響もありジャズも聞いていた時もあったが、前述のとおり真空管アンプを作り始めてからはクラシックへと好みが変わっていった。
クラシック音楽と言ってもまたそのジャンルや作曲家などの好みもあり、どれも好きだという訳ではない。クラシック音楽のなかでも僕の好みの音楽というのはピアノ曲とか室内楽の方が好きでそのあと交響曲とかオペラとかになっていく。美しいメロディーが好きだからシューベルトが好きで<即興曲>などは大のお気に入りである。
だからアンプの音の評価をする場合どうしても自分の好きな音楽が楽しく聴けるかどうかが判断基準になってしまう。この場合ピアノ曲や室内楽の音の特長として、楽器の音そのものがかなりクリアに録音されているから、音色や表現、テクニックがダイレクトに聞こえ、演奏者の技量がすぐわかるのが面白いのと、楽器の響きや余韻など楽器の音や録音環境まで分かり、まさに目の前で演奏してくれていると錯覚するほど録音音楽の楽しさを味わえる。
こんな好みで音を評価しているから最近の僕のアンプの評価は細部の音の表現にこだわるようになってきた。力強さとか太いとかではなく、細部の演奏表現が良く分かるアンプのほうが好みとなっている。また音場の表現も重要だ。楽器の位置が良く分かるかどうかが問題で、これらはノイズレベルや過渡応答が重要な要素となる。
ここでやっと今回の表題にたどり着くが、<ABQ>とはアルバンベルグカルテットのことで、今はこれがお気に入りのCDだ、昨年バランス型CSPPドライブKT66ppアンプを製作したが、このアンプ僕の中では過去最高の傑作と思っているパワーアンプで、これでABQを聴くと彼らの音色、表現などが非常に良く分かるように再生してくれる。彼らの息の合った演奏はオーケストラに負けないほどのダイナミックさと豊富な表現が楽しくてたまらない。ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、ブラームス、もちろんシューベルトなどどの4重奏、5重奏を聴いてもすばらしい。今の僕にはABQが最高に表現してくれればほぼ満足できる再生装置と割り切っている。もちろんどんな音楽にも対応できる再生装置は夢だが、自分の財力を考えるとここらが手の打ちどころだ。
それでも室内楽を空間的にきれいに再生するというのは簡単なことではなく、今もそれに向けていろいろ考えている。まだ分かったというところまでには至っていない。
まだまだ真空管アンプの道のりは先に続いているようです。
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