オーダーメイド手造り真空管アンプの店
 
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 <ABQ>
 2018年9月21日 

僕はアンプの音質評価は主にクラシック音楽でしている。20年位前に真空管アンプの制作を始めてから次第にクラシック音楽を聴く機会が増え、それにともないクラシック音楽自体も好きになってきた感じだ。若いころはビートルズが好きで社会人になってからは友達の影響もありジャズも聞いていた時もあったが、前述のとおり真空管アンプを作り始めてからはクラシックへと好みが変わっていった。
 クラシック音楽と言ってもまたそのジャンルや作曲家などの好みもあり、どれも好きだという訳ではない。クラシック音楽のなかでも僕の好みの音楽というのはピアノ曲とか室内楽の方が好きでそのあと交響曲とかオペラとかになっていく。美しいメロディーが好きだからシューベルトが好きで<即興曲>などは大のお気に入りである。
 だからアンプの音の評価をする場合どうしても自分の好きな音楽が楽しく聴けるかどうかが判断基準になってしまう。この場合ピアノ曲や室内楽の音の特長として、楽器の音そのものがかなりクリアに録音されているから、音色や表現、テクニックがダイレクトに聞こえ、演奏者の技量がすぐわかるのが面白いのと、楽器の響きや余韻など楽器の音や録音環境まで分かり、まさに目の前で演奏してくれていると錯覚するほど録音音楽の楽しさを味わえる。
 こんな好みで音を評価しているから最近の僕のアンプの評価は細部の音の表現にこだわるようになってきた。力強さとか太いとかではなく、細部の演奏表現が良く分かるアンプのほうが好みとなっている。また音場の表現も重要だ。楽器の位置が良く分かるかどうかが問題で、これらはノイズレベルや過渡応答が重要な要素となる。
 ここでやっと今回の表題にたどり着くが、<ABQ>とはアルバンベルグカルテットのことで、今はこれがお気に入りのCDだ、昨年バランス型CSPPドライブKT66ppアンプを製作したが、このアンプ僕の中では過去最高の傑作と思っているパワーアンプで、これでABQを聴くと彼らの音色、表現などが非常に良く分かるように再生してくれる。彼らの息の合った演奏はオーケストラに負けないほどのダイナミックさと豊富な表現が楽しくてたまらない。ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、ブラームス、もちろんシューベルトなどどの4重奏、5重奏を聴いてもすばらしい。今の僕にはABQが最高に表現してくれればほぼ満足できる再生装置と割り切っている。もちろんどんな音楽にも対応できる再生装置は夢だが、自分の財力を考えるとここらが手の打ちどころだ。
 それでも室内楽を空間的にきれいに再生するというのは簡単なことではなく、今もそれに向けていろいろ考えている。まだ分かったというところまでには至っていない。
 まだまだ真空管アンプの道のりは先に続いているようです。


 
 <回転音>
2018年9月11日  

以前ターンテーブル修理というコラムを書き、修理が完了したと述べたがその後よくよく調べてみたらまだ修理が完全に終わっていないことが分かった。どういうことかと言えば、ACモーター用のコンデンサを交換したら無事回転し直ったと思っていた。ところが静かな環境でターンテーブルを使用してみたら、まだ幾分回転音が出ていて以前のような静かな回転をしていないことが分かった。本当にごくわずかな回転音なのだが一度聞こえてしまったらもう気になり、またオーディオ用途としてはどうかなと思い始めた。ストロボで回転速度を調べてみても回転速度的には問題がないが、わずかな回転による振動音が出ていたことが分かった。では何故良品のコンデンサに交換したのにまだ回転異音が出たかといえば、僕にも心当たりがあって正直に話すと次のような経緯があった。いつもの部品屋さんでその時にいたベテラン客に紹介してもらってACコンデンサを購入したのだが、本来1.5μFのコンデンサが必要なのが、購入した店にはその容量のコンデンサがなく、しかたなく2μFのコンデンサを購入していたのだ。僕もこの程度だったら影響はないとたかをくくっていた。しかしまだ異音が出るとなれば正規の容量のコンデンサを再び探して交換するしかないという結論になった。秋葉原でやっと4軒目に1.5μFACコンデンサをみつけ、それに交換することにした。結果は予想どおり今度は回転異音はなくなりスムーズな動きになった。僕的にはわずかな容量の違いと思っていたら意外と回転音という副作用に問題が出て一つ利口になった気がする。
 話が変わるが北海道でブラックアウトという停電が問題になっている。ひとつの発電所が止まったため負荷が重くなり、他の発電所の発電周波数が下がってきて、それがタービン軸に振動を発生し故障する恐れが出るから発電を止めたということだ。これは発電という場合の回転振動の問題なのだが、僕はターンテーブルでの回転振動の経験があったのですぐに理解できた。回転系は周波数、トルクなどある一定の値で回さないと回転振動が起こり、異音が出たり最悪破壊まで至ることだ。
 ターンテーブル位なら簡単に修理可能なのだが、大きな発電機のタービンとなると簡単に修理はできない。そこらは電源屋さんも良く理解して安全方向に発電を止めたのだが、お客さまへの影響は甚大であったし、また何故止めなければならなかったのかの説明が今一度理解しづらかったかもしれない。
 家庭用発電機のエネファームは燃料電池を使っているようだが、大きな発電はやはりタービンなのですね。


 
 <バランスアンプの配線法>
 2018年9月1日 

このところ普段あまり手をつけていなかったところを見直ししている。スピーカーケーブルの変更、ボリューム回路の変更、カートリッジの負荷回路の変更などこれまでなかなか手につけられなかったところを見直している。それだけ僕が暇になり時間ができたからなのだが。今回はバランスアンプの配線について検討することにした。
 僕のシステムはEQ、ラインアンプ、パワーアンプとすべてバランス回路になっていて、すでに完成しているのだが配線についてはこれらのアンプに統一ができていなかった。数年前からバランスアンプを作り始めた、その時の考え方で配線をしてきたので、三者三様の配線法で僕としてはちょっと気に入らないやり方とずっと思っていた。今年になってKT66ppのバランスアンプが完成し音も満足したアンプになっている。このアンプの配線はこれまでのパワーアンプと配線の考え方は変えずに、僕とすれば素直に配線した結果性能も音も満足できるアンプになっていた。そこでパワーアンプと同じ考え方でラインアンプ、EQも配線を考え直してみようということになった。
 ここで言う配線というのは主にグランド配線のことで、この配線の仕方で性能はもちろん音質まで変わってしまうからアンプ設計においてはグランド配線というのは回路設計と同じ位重要な技術だ。バランスアンプにおけるグランドというのは考え方が難しい。難しいと言うよりどう考えたらよいのかという問題だ。信号増幅回路はなるべくグランド基準でなく設計しているが、電源はグランド基準で供給されているから直流的にはグランド基準だが、交流的にはグランド基準ではないという回路だ。とは言うもの単純な低周波増幅回路のバイアス回路は交流的にも直流的にもグランドに繋がれているので、こういういろいろなグランドに接続されている回路のグランド配線の処理はどうしたらよいのだろうかと考え込んでしまったわけだ。交流的にはグランドに流さない方が良く、直流的にはしっかりとグランドを基準に回路を設定したほうがより安定する。こういった矛盾する回路の配線は今度初めてじっくり考えてみた。
 結果的にはパワーアンプで採用したグランド処理をラインアンプ、EQにも採用してそれが良い結果になった。グランド回路というのはパワーアンプが単純で考えやすい。ところがラインアンプは入力切替えやボリューム回路があり少し複雑になる。さらにEQはもっと複雑でMMEQだけなら難しくないが、MC用ヘッドアンプが繋がれたり、繋がれなかったりすると配線が面倒になる。今回もグランドの切り替えもすることになった。
 最初ラインアンプのグランド配線の変更を行った。信号用グランドの配線を明確にさせた。同じ考え方でEQもグランド配線を変更した。こちらは大きな変更で手間がかかる変更となった。
 これらのグランド配線の変更の効果はすばらしく、細部の音の表現が確実に上がった。僕の場合の音質向上はより小さい音への表現があがることを目指すことが多い。小レベルのダイナミックレンジを広げるという感じだ。迫力を出すのではなく小レベルの表現力を高める方だ。紙面が無くなってきた。今回はこれでおしまい。


 
 <ノグチトランス閉店>
 2018年8月21日 

秋葉原にあるトランス専門店ノグチトランスが9月で閉店するということになった。「MJ無線と実験」誌を読んでいたら広告欄にノグチトランスの閉店が告知してあった。たいへん残念なことだ。僕はこれまでお客さまのアンプのトランスはここから購入していたからだ。お店は秋葉原・ラジオデパートの地下にあり今ではめずらしい真空管アンプ用トランスを扱ってくれていたから調達するのに大変便利なお店だった。もちろんサイトからも購入できるが、そのサイトへのアクセス数は360万アクセスというから人気のサイトであるし、扱う商品数も3000種で便利な部品屋さんだと思っていたが、これも時代の流れなのだろうか。
 僕は最近もう人様のアンプを作っていないので商売的には大きく影響することはないが、自分用アンプを作る際にはまた新しい購入先を見つけなければならず、面倒というより寂しい気持ちのほうが先にくる。秋葉原の部品街も大分様変わりしてきて、昔の部品屋さんの縮小や閉店が目につくようになっていて、これまで購入できていた部品がそこでできなくなることがあったが、トランスの場合はその影響が大きく本当に寂しい気分になってしまう。さらに真空管販売のお店が無くなってしまったらもう真空管アンプをつくる気分は失せてしまうかもしれない。
 昔は部品屋さんも活気があって、素人のお客には怖い位の迫力があった。下手な質問でもしたら「そんなことは知らないでアンプ作ってんの」くらいの雰囲気だったからこちらも身構えて部品を購入したものだ。落ち着いてこちらのペースで部品が買えるようになったのはプロのエンジニアとして少し経験や自信ができてからだった。その時は部品屋のおやじさんよりこちらの方が詳しいぞという気持ちがあったから余裕も持てたが、若いころはそうはいかない迫力が秋葉原にあった。そんな迫力も次第に秋葉原から失っていくようだ。
 今次のアンプを計画中だがまだ詳細が決まっていないのだが、とりあえずトランスの仕様だけは先に決めてノグチトランスの閉店前に購入しなければと思っている。真空管トランスメーカーである田村製作所も真空管アンプ用トランスの販売を一部止めたという記事も見た。どうもトランスケースの型がヘタってきてこれ以上プレスが難しいのがことの真相のようだ。メーカーは採算が合わなければ投資はしないから新しい型は作らないらしい。真空管アンプ制作にとってはネガティブが話になってしまったが、それでも作る楽しみと音の良さで、これからもゆっくりしたペースで真空管アンプの制作を続けていくつもりだ。
 これ以上秋葉原の部品屋さんが閉店することがないように祈ってます。


 
 <ターンテーブル修理>
 2018年8月11日 

僕のアナログプレーヤーはDENON DP-101という古いもの。発売は1970年ころらしい。これはお客さまからいただいた物で大事に使用している。これまでもちょっと手を入れて使用してきたが、最近になって回転中に異音が出てくるようになってしまった。音楽を聴くのにオーディオ装置から変な異音が出ていると気になってやはり使用に耐えない。そこで修理を試みることにした。このターンテーブルはベルトドライブで、内部を覗いてみるとモーターもインダクションモーターと言われるありふれたACモーターであった。だから回転系の電気部品はモーター、抵抗、コンデンサという超シンプルなもので、ネットで調べてみるとACコンデンサはACモーターには広く使われているものであるようだ。容量や耐圧などはもちろんそのモーターの仕様で異なることは言うまでもないが、回路はほとんど同じで役割は位相を遅らせるためであってこれが起動用としての役割をはたしているようだった。動作原理は適当にフムフムと理解したつもりになって、それよりはやく直したいなあとまずはコンデンサの交換だということになった。
 秋葉原で普段利用している部品屋さんで別の検討で部品を買ったついでにモーター用のACコンデンサについて問い合わせしたら、ここにはないとのこと。どこに売っているかと聞けばどこどこで売っているとの返事をきいていたら、そこにベテランのお客様がいらして、そのコンデンサだったら下の入り口に近いところの何々という店に売っていると口をはさんできた。このベテラン客どうも秋葉原遍歴がそうとう長いらしい。昔のお店のことを店主といろいろ話をしていた。そこに僕が質問したら脇から答えが返ってきた次第だ。そのお客の言う通りに指定された店に行ってみると見事ACコンデンサは置いてあった。このベテラン客恐るべし。
 家にもどり原因と思われるコンデンサを交換。無事元通り静かな回転が得られ解決。あのベテラン客がいなかったら秋葉原をもっと歩き回るはめになったかもしれなかった。
 最近レコードプレーヤーはベルトドライブの製品が多い。モーターがどのように駆動しているかは定かではないが、こんな簡単なもので高価だったら失望する。でも昔の製品はまったく許せる。そこには歴史があり、今回のように修理をしながら長く使用できるのはなかなか味わいのあるものだからだ。


左上 インダクションモーター   左下 四角の部品 不良となったACコンデンサ
右下  筒状の部品 修理後の新しいACコンデンサ



 
 <スピーカーケーブル>
 2018年8月1日 

以前スピーカーボードについてこのコラムで書いたが、今回はスピーカーケーブルについて。僕はB&Wノーチラス805をバランスアンプでドライブしているが、ケーブルについてはバイワイヤリングを採用している。すなわちパワーアンプは1台ではあるけれどケーブルは2組を使って2Wayスピーカーに別々にパワーを供給するようにしている。1本で供給するより音がより明瞭に感じられたからでこれを10年位使い続けていた。ところがスピーカーケーブルについてはこれまで特に実験したことがなく、その理由は他に特にアンプ回路での実験の方に忙しく、なかなかスピーカーケーブルまで実験が進まなかった。それに実験と言ってもスピーカーケーブルを取り換えて音を聴くだけの話で、僕自身に何か技術的に得るものが少ないような気がして暇な時にでもという気持ちがあることは否めない。この暑い夏の今がその実験をやる時になったわけだ。
 使用していたスピーカーケーブルは 
 中低音用(<3KHz)はオルトフォン 6.5NSPK300
 高音用(3KHz<)はモニター SILVER STUDIO LINE 4.00 QMM
というもの。
 それぞれデンマーク製、ドイツ製のケーブルなる。オルトフォン製は純度6N5Nの銅線を混ぜたものでHybrid Multi Conductor SP Cableと謳っている。一方モニター社製は非常に細いOFC銅線に銀コーティングがされたケーブルである。以前オーディオ専門店にてバーゲン価格で売られていたのを購入した記憶がある。ともに価格と専門店の評価を聞いて入手したケーブルである。
 今回ケーブルの実験ができるようになった理由として、これまでケーブル長が6mもあったものが、バランスアンプにしてパワーアンプをスピーカー側に移動できたので、必然的にスピーカーケーブルが短くなり(3m)余ったケーブルを利用しての取り換え実験ができるようになったからだ。
 最初中低音と高音のケーブルをそれぞれ逆にしてみた。オルトフォンは高音用、モニター社が中低音用という具合である。聴いた感じでは音がもっこりしていて音に美しさが失われたように感じてしまった。僕は主にクラシックが中心に聴くから弦やピアノが美しく鳴ってくれないと楽しくない。その部分の好みからするとモニター社のケーブルを中低音用に使うのは僕のシステムでは相性が悪いようだ。そこで両帯域ともオルトフォンに替えて聴いてみるとこちらは僕好みの美しい音が再現された。何でこんなに音が変わってしまうのだろう。これがオーディオの深みにハマる悪魔の誘いなのだろう。僕はこの組み合わせでもう実験はしない。オルトフォンで十分だと自分に言い聞かせた。
 理由は分からないけれど、ケーブルを替えるだけで音が変化するからオーディオは面白く深みにはまる。それが高じると数万円のケーブルが欲しくなる。
 僕はここらでこの実験はやめるつもりだ。



左がオルトフォン製、右がモニター製

 
 <ロボット掃除機>
 2018年7月21日 

このところ暑い日が続いている。本当に暑い。暑くて何もする気になれない。ただエアコンを効かせて過ごしているだけだ。アンプを設計する気もおきない。こんな暑さはやはり地球温暖化のせいなのだろうか。昔はこんなに暑い日はなかったように思うが。特に僕のように通勤もせずに家にいると暑さがそのまま身に染みてくる。サラリーマン時代はエアコンの効いたオフィスにいられたから日中の暑さはそれほど感じられないものだが、家にいると全館エアコンとはいかないから移動するたびに暑さというのが身に染みてくる。
 こんな状況だから家の用事をするのも大変だ。体を動かす度に暑さとの闘いが必要となる。特に掃除が大変だ。エアコンをかけて部屋掃除をすることはしないから(我が家ではしていない)汗だくだくで作業を続けなくてはならない。そしてついに女房から提案というか指令というか「ロボット掃除機を買って。」という言葉が発せられた。
 この暑さだからしかたないと思いつつ、ロボット掃除機なんてただの気休めにしかならず、やはり最後は人間が掃除機で丁寧に掃除しないとゴミは取れないだろう、でもまあ女房のご機嫌をとるには仕方がないと思って購入を決めた。
 購入したのはirobot社のルンバである。僕もエンジニアだし昔はソフトも書いていたからこういうメカ・電気・ソフトが一体になった製品は非常に興味があり、どんな動作をしてくれるかというところには楽しみではあった。そして充電後すぐに掃除をさせてみた。
 まったく僕が想像している以上のかなり優秀なロボット掃除機であることが分かった。部屋掃除の移動も無駄が少ないし、ゴミの吸引力もかなりある。そして僕が掃除するより細部にわたって丁寧で、僕より上手な掃除ロボットだった。僕の掃除は気持ちが入っていないから四角い部屋を丸く掃除するが、このロボット掃除機は角まで丁寧に掃除する。さらにすごいのは初めて掃除した部屋の掃除マップまで表示してくれ、どこを掃除したかをきちんと示してくれる。もちろん彼(ロボット)が自動で部屋の間取りまで作ってしまう。これがAIの技術なのだろうか。また電池も十分で、パワーあるモーターを使用しても30分以上の掃除をしてくれるから我が家の部屋の大きさなら十分な容量を持っている。さらに掃除が終われば自動でホームにもどり勝手に充電してくれる。
 女房はご機嫌だし、僕も楽になった。これほどまでに賢い家電があったのかと思うくらい感激ものだった。最初は気休めの掃除機と思ってしまったことを大いに反省し、この製品を設計したirobot社に感謝しなければならない。
 こんな暑さでも真面目に掃除してくれるロボットがいるお陰でこれからどれだけ楽ができるかと思うとうれしくなる。
 最近の車の安全装置にしてもこの掃除ロボットにしても、AIが人間の作業をかなりアシストしてくれる。これが技術というものだと感激する。これだと対価を払うことに異論はないが、アンプに何百万円は払う気になれないなあ。


 
 <バランス伝送実験2>
 2018年7月11日 

このところバランスアンプについての小さな実験をしている。前にも書いたカートリッジの受けの回路についての実験をしたり、今度はボリューム回路についても再実験をしてみた。以前にも書いたとおり僕のバランスアンプの回路というのは増幅回路の信号線はなるべくグランドを通らないようにしている。直流的にはグランド基準にしなければならないが交流的にはグランドに流さない回路にしている。この方が細部の音の表現が素晴らしく、僕の経験からすると通常のアンバランス回路のグランド基準回路ではなかなか味わえない繊細な表現をしてくれる。今回はボリューム回路についてまた実験を試みた。
 最初バランス型ラインアンプのボリューム回路は4連ボリュームを使用し、LCHのホット・コールド、RCHのホット・コールドそれぞれにボリューム回路(4連ボリューム)を使用し、それは一般的なグランド基準で信号を4連で減衰させるボリューム回路であった(図1)。その後ボリュームのグランド基準を止めた。これは回路的にはホット・コールド用2つのボリュームのグランド端子はつなげるが、アンプグランドには接続していない。この動作はこれまではホット・コールド信号はグランドに流して減衰していたが、グランドへの回路を切ることによりホット・コールド間で信号を打ち消すような回路になっている(図2)。

 今回これをさらに発展させホット・コールドラインには固定抵抗を挿入し、その後ボリュームでこの2つのライン間の抵抗を可変させることによって減衰させている(図3)。23の方式はホット・コールドの極性が逆でレベルも合っていることを前提としている。3はまた片CH1つのボリュームで済ませることができ、4つの信号を2連ボリュームでコントロールできる長所がある。またホット・コールドの信号レベルは常に同じレベルで絞られるので、2に比べホット・コールド信号の振幅のばらつきがなくなる。さらにボリュームが2連になったお陰でボリュームの特性の誤差の影響が減り、左右の特性のばらつきも減るという利点も生まれる。欠点は常にこの回路で信号が減衰してしまうことであるが、実用状態ではボリュームをMAXにすることはなく問題ない。
 今回の実験ではオリジナルは東京光機の4連ボリュームを使用していて、図2の実験も同じボリュームを使用した。ところが図3の実験ではこのボリュームは減衰用途には適しているが、可変抵抗としての用途には向いていないのでアルプス電気の2連ボリュームに変更した。
 今回の実験(図3)で電気的特性的には大きく変わらないけれども、音は更に微細な信号まで再生してくれ、定位がさらに改善された。だから楽器の位置がより鮮明になり空間表現がよくなった。その理由はまだ分かっていないが。
 バランス回路にはバランス回路用のボリューム回路があってもよいので、今回の実験はこれまでのボリューム回路を考え直してみる面白い実験になった。

              




 
 <スピーカーボード>
2018年7月1日  

スピーカーボードを購入した。スピーカーボードとはスピーカーの下に敷くボードのこと。製品名はTAOCSBC-CS-HC45Cというもの。以前からスピーカーの振動について気になっていた。我が家の実験でもスピーカースタンドをはずしたり、スピーカースパイクを付けたりしてその時の音の変化に驚いていた。スピーカーはそのセッティングで音に大きく影響することを知った。簡単に言うと周波数特性は部屋の定在波に大きく影響を受けるし、音の歯切れ、過渡特性はスピーカーの振動が大きく影響している。スピーカーに不満が出たらまずセッティングを変えることが最初にやることだ。買い替える前にまず移動して音を確認するのが大事だと思う。雑誌でおなじみのオーディオ評論家でも部屋は横長に使うと音はぐっと良くなると述べていて、これはきちんとした理論でも解明されているらしい。今回のボードの追加は以前TAOCのデモで音の違いを知っていたし、自分のこれまでの実験、経験でもきっと良くなるという予感がしていたので購入してみた。
 ボードはきれいな黒の表面塗装で光沢があり、内部に鋳鉄紛入りのハニカムコアが入っているためか結構重い。木質ボードがハニカムコアをサンドイッチしてスピーカーの振動を受け止め共振を防いでくれる構造になっている。スピーカーは古いB&W ノーチラス805でこのボードの上にスパイク用プレートを置きスピーカーとはスパイクをとおして接地させている。
 音は予想通り以前より増して過渡応答が良くなった。単に歯切れが良くなったというだけでなく、SNがよくなり静かなバックグラウンドノイズからの楽器の音も柔らかくなったし低音の音程が良くなってきた。スピーカーの無駄な動きが無くなった感じだ。僕が求めるローレベルでの音の表現が以前より良くなってきた。新型のバランス型パワーアンプと相まってローレベルの表現がさらに上がった。最近感ずることは音は時間軸の再現性が重要と思えるようになってきた。人間の耳は過渡現象に感度が高いのでは思えることが多い。部屋の定在波、スピーカーの振動、DACの過渡特性、アンプの過渡特性など時間軸での特性が音に大きく影響することを経験している。この過渡特性がなかなか測定できないから測定値と音との相関が取れていないのではとかいろいろ考えている。
 今回の実験でまた一つ学んだ。僕のシステムはどうもLchの音が大きく聞こえるように感じていた。その原因が分からないでいたが、今回その原因が掴めた。原因はスピーカーの取り付けネジの緩みだった。わずかだがLchの取り付けねじがすこし緩んでいたのを発見した。左右ほぼ均等の力で締めなおした結果、左右の音の出方が同じになり定位が以前より明確になってきた。ネジは本来締め付けトルクを管理しなければならないが、もう古い機種なので自分の感覚で締めることにした。この作業もスピーカーの振動の動きをおさえる作業によって音が改善されたことになった。
 「音は時間軸での波形の忠実度が重要」これが僕の最近の話題だ。


スピーカーの下がオーディオボード SCB-CS-HC45C



 
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