真空管アンプでバランスアンプを構成するやり方は半導体アンプとは少々異なる。特に出力トランスを使ったパワーアンプは簡単だ。出力トランスの2次側がすでにバランス出力すなわちホット・コールド端子を有しているのでそのまま出力すればバランス出力になる。しかしそれでも安定性や電位などを考慮すれば少しばかりの変更が必要だ。
一般にこれまでバランス伝送とはバランストランスを通して伝送するくらいだから、パワーアンプの出力トランスをそのままバランス出力として使うことは自然に考えられることだ。僕のこれまでの経験では例えばトランス出力の0Ω、8Ωをそのまま出力するとしてそれぞれの端子にから100Ω程度でグランドに落としてあげると動作が安定してくれる。負帰還方式も無しでも反転型でも非反転型でもよい。入力はもちろん差動増幅にする。2段目も差動にしたほうが全段プッシュプルになるのでなおよい。出力段はプッシュプル方式だ。こうすればりっぱなバランスアンプが完成する。これは普通のアンバランスアンプの出力だけをバランスにしただけだから、性能もこれまで述べてきたいくつかの利点が得られない部分がある。偶数歪のキャンセルとか出力インピーダンスの増加とかはない。ただ共通インピーダンスの削減効果は得られるので音質でのメリットは大きい。
一方ラインアンプやEQアンプに関して言えば、これまで2出力を持つプッシュプルバッファがみつからなかったがCSPP回路を応用すれば高性能のバッファが構成できるので、差動増幅とCSPPとの組み合わせがあれば2入力・2出力のバランスアンプが構成できる。負帰還は無しでも反転型、非反転型でも構わない。具体的な回路はこのサイトのERを参考にしていただきたい。
ざっとバランスアンプの利点・欠点を述べてきた。バランスアンプやBTL接続アンプは多くのメリットを有している。真空管アンプは別にして回路の複雑さやコストの上昇はあるものの高級アンプとして発売している割にはバランスアンプ・BTL接続アンプが少ない。しかし最近ではいくつかのメーカーがバランスアンプ、BTL接続アンプを販売しまた評価を得ているのも事実であって、バランスアンプの利点を積極的に宣伝し、他社ももっと積極的にバランスアンプを設計すればと老婆心ながら思ってしまう。
僕はもちろん個人用ではもうアンバランスアンプを作る気がしない。すでにシステムがバランスで作られているのでその中で発展していきたい。
読者の中に自作される人がいましたら、真空管バランスアンプを作ってみて下さい。これまでより繊細で定位が良くスピードのある音が得られると思います。
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