オーダーメイド手造り真空管アンプの店



コラム目次に戻る
 
 
 <アンプ製作中3>
 2019年8月16日 

これまでお知らせしてきたKT88pp(UL)バランス型CSPPドライブパワーアンプの製作がいよいよ終盤にさしかかってきた。名前のとおり内容も複雑だから簡単に進まない。立体的な配線を用いながら、順序良く配線を進めていく。順序を間違うと奥の配線が出来なくなってしまい、きれいな仕上がりができないから慎重に作業を進めている。とは言うものの売り出す製品ではないのでそこはある程度雑なところもあるのだが。
 次第に電気部品が半田付けされていき、バランス良くまた電気的にも無理のない配線が出来上がってくるとこちらもうれしくなってくる。配線はシャーシのレイアウトを決めるときに同時に頭の中やメモ用紙に配線の仕方を書いたりしてこの時決めているから、配線時にそれほど迷うことはない。配線の順序ともちろん回路の接続を確認しながら進めている。今はかなり暑い時期だから作業も無理はしない。寝不足や暑さでやる気もなくゆっくり作業をすすめている。
 内部写真を公開するとこんな感じだ。電源トランス2個、出力トランス2個、電源基板6枚、アンプ回路などが組み込まれている。メカ図面を描いている時に同時に配線も考えてレイアウトを決めているが、それが実際に形になってくるとイメージしたとおりにできて、ちょっとうれしい気分になる。ここが一発勝負でアンプを設計する時の醍醐味となる。
 しかし音を出す時がまだ残っていてこれが最終的にアンプの出来具合の最終的な判断となるから、まだ喜ぶのははやい。
 内部写真を載せます。まだ配線途中なので線材整理がされていないが、これで95%位の配線が終了したところです。
 音が楽しみ。


        

白線の上側が電源回路、下側がアンプ回路。


 
 <アンプ製作中2>
 2019年8月1日 

うっとうしくて肌寒い梅雨がやっと終わったと思ったら、今度は熱中症予防が出るくらいの暑さが今度はきた。実は今年2回ほど熱中症にかかっている。一度は5月に引っ越しの手伝いをしていたら、午後になって右足がつり夕方には少しふらついてしまった。この時は車の運転もしなければならず右足がつったまま4時間近い運転をしなければならず、交通渋滞にも影響され大変な思いだった。この時夕方涼しいところで身体を冷やしながら休んだのが良かった。2度目は梅雨明け後のテニスだった。このときはテニスコーチがやはり熱中症の症状が出て休息していたが、僕もテニスの後午後になって具合が悪くなって寝てしまった。このときは軽い症状だったが、今年最初の夏の大汗だったからかまだ身体が気温に慣れてなくて症状が出たようだ。テニス仲間も同じような症状が出たようでお互いこれまでテニスで熱中症になったことがなかったので今年の暑さは例年以上に暑さになっているのだろう。
 前置きが長くなってしまったが、この暑いなかアンプの製作が少しずつ進んでいる。前回まではシャーシの穴開けまでお話したが、その後は配線が続けられている。今回のアンプはKT88ppで多分これが大型アンプとしては最後の設計になるのではと思っているから、中身はいろいろ凝った回路にしているのだがそれが仇で製作に苦労している。まず重いタムラのトランスが3個と少し小さめの電源トランスが1個載っていてこれらが非常に重い。移動はもちろん一番大変なのは上下ひっくり返すのが大変なのだ。変な体勢で行うと腰をいためそうだ。また回路も凝った造りになっているから部品点数が多く、配線も手間取っている。電源基板の配線は終わり、今はシャーシ内の配線をしている。シャーシのメカ設計時にはある程度配線も考慮して部品の位置を決めているから今のところ大きなミスはないのだが、ただ部品が3次元的に取り付けてあるので部品の配線手順を間違うと、奥になってしまった部品への配線が出来なくなるほど密集している。僕の設計したアンプのなかでも一番の密集度になっている。今日もエアコンをつけずに作業をしていたら大汗をかいてしまった。これではまた熱中症になってしまうので、スポーツドリンクと梅干のお菓子を食べながら作業を続けている。
 このペースだと配線にはかなり時間がかかりそうだ。急いで進める仕事でもないし、体調を見ながらゆっくり進めるようにしたい。アンプ製作のなかで配線は2番目に好きな工程だからゆっくり楽しんで、多分最後の大型アンプの配線を満喫してみたい。1番は何かって?それは回路を書いている時。回路設計は自由だからなにも制約がなくこれが1番だ。
 作業途中の写真を載せます。最初は5枚の電源基板。ここには9個の定電圧電源が載っています。次は配線途中のアンプ内部の様子。立体配線になっていて混雑している。
 出来上がりは楽しみ。

 
  



 
 <BTL接続>
 2019年7月16日 

今回は真空管アンプのBTL接続についてお話する。BTL接続とはバランス信号をそれぞれ別々のアンプで増幅しそれをスピーカー端子部分で合成する接続する方法のこと。
 
ことの発端は次のようなことからであった。以前お客様にマルチチャンネルの中高域・高域用のアンプ、これはKT88のシングルアンプでそれを納入したことがあった。この時これらのアンプはステレオ仕様で同じものを2台作って差し上げた。低域は大出力のアンプを使用されしばらくの間その構成で音楽を楽しまれていた。今年の3月招待されてしばらくぶりにお客様のシステムを聞かせていただき、お酒もいただいて楽しませていただいた。そんな雑談のなか中高域用アンプの出力をもっと上げておけば良かったという話が出た。装置を改善していく中でより大きな出力が欲しくなってしまったというところだ。もともとお客様のご要望で出力などの仕様を決めて設計してあるのでこちら側に落ち度があった訳ではないのだが、こういうことは起こりうることで、音質が上がってくると次第に音量が増えてくるのは当然でそれが今起きているのだ。
 さて僕としても何か良い解決方法はないかと何とはなしに考えていた。4月ころだったと思うがふとステレオアンプが2台あるからそれぞれBTL接続すれば簡単に出力を上げることができることを思いついた。お客さまのチャンネルデバイダー出力はバランス出力端子があるし、高域用は以前使っていたデジタルアンプもあるから比較的簡単にBTL接続でマルチチャンネルが再現できると考えた。しかしこの時僕はすぐにこのアイデアをお客様に伝えなかった。シングルの真空管アンプのBTL接続がうまくいくか確信がなかったからだ。BTL接続はお客様にしてもらうから、その時に発振やトラブルがないようにしなくてはならない。そこで何らかの方法で確認しようと試みた。
 実験に使ったのはメヌエットと呼んでいた6BQ5シングルアンプだ。これをBTL接続にして特性を取ってみた。BTL接続は理論ではBTLではないときに比べ4倍の最大出力が得られることになっている。ところが我がメヌエットでは2.5倍位しか最大出力が得られなかった。その理由は2つある。一つは出力管の特性からくるものだ。BTL接続した時一つのアンプから見た負荷は実際の負荷の半分に見えている。すなわち8Ωの負荷をBTLでドライブするとアンプ側から見ると4Ωの負荷に見えている。すなわちアンプ設計時より2倍の電流が出力に流れているのだ。ところが出力電流が2倍になると出力管の電圧ロスも増え、すなわち球のサチュレーション電圧も増えて出力のロスが増えているのだ。さらにステレオアンプが設計時の2倍の電流でフルパワーの動作をしているので、主電源の電圧が下がりこれも最大出力を下げる要因となっている。この二つの要因からBTL接続した時の最大出力というのは理論通り4倍にはならないことが確認された。しかし発振などの症状は出ず、ひずみ特性はppみたいに2次歪がキャンセルされて半分以下になっている。
 簡単な実験での確認後、お客様にこのBTL接続のアイデアと変更方法をお伝えした。
 しばらく経ってからBTL接続した時の音響特性(部屋の周波数特性)が送られてきた。無事BTL化が出来たようだ。


 
 <アンプ製作中>
 2019年7月1日 

今新しいパワーアンプを制作中だ。20年以上にわたり改造に改造を重ねてきた6550ppUL)アンプをここにきてついに再設計することにしたのだ。このアンプは僕のアイデアを試してみるためのアンプとして本当に長く貢献してきた。今の回路はもう正式な回路図などない。思いついた回路をメモ用紙に描き、あとは実際に組み込み特性を測り、音質を確認しながら改良を重ねてきた。このお陰でMYプロダクツのアンプの回路は時代とともに新しい回路となり、もちろん特性も上がり音質も上げてきたのだ。今はもうお客様にアンプをお造りすることもなくなったので、ここらできちんと最新回路で再設計してみようと思いたち今に至っている。
 KT88pp(UL)バランス型CSPPドライブパワーアンプとでも言ったらいいのだろうか。出力管はKT88pp(UL)接続そしてバランスアンプでドライブ段はCSPP回路となっている。電源トランスは2個使用で電源回路はSCR(サイリスタ)使用のソフトスタート回路、MOS-FETによるリップルフィルタ、定電圧電源回路はMOS-FETでカスコードの誤差増幅器、アンプ部は非反転型のバランス回路で初段はカスコード接続、全段ppなどいろいろ技を盛り込んだ豪勢な回路としている。ところが回路を豪勢にしたお陰で実際の回路配線に苦労をしている。やっとシャーシの図面を描き、穴あけ部品取り付けまできた。
 メカ図面はフリーソフトのCADで描き、それを方眼紙に写してシャーシに貼って穴あけした。穴開けはボール盤とヤスリ仕上げで行っている。何枚がそのときの写真があるからここで紹介する。
 これからまだ配線が残っているが、締め切りが決まってないのでのんびりやっている。

  

  



左上 CADでレイアウトを作成。この時配線の仕方もほぼできている。
右上 CAD図面を厚手方眼紙に書き写し、シャーシ板にテープ止め。
左中 方眼紙上の位置で穴をあけていく。
右中 方眼紙をはずしバリ取りをすればきれいな穴あきシャーシができる。
左下 シャーシを組み立てトランスなのどの部品を取り付けたところ。


 
 <修理>
 2019年6月16日 

今回は修理の話。修理といっても僕が設計した真空管アンプではなくメーカー品の真空管アンプの修理の話です。僕の知人が真空管アンプ、CDプレーヤー、スピーカーを友人からいただいた。それも立派なメーカー品で、本格的なオーディオを楽しみにしていたのだがどうもときどきボコッというノイズが聞こえ、それも大きい音なので直してくれという依頼であった。
 僕は二つ返事でいいですよと引き受けた。ノイズ音の感じから多分出力管の不良で、それを交換すれば直ぐに直るだろうと予想していた。アンプが送られてきて中をあけた。初めて見るメーカー製の真空管アンプで、さすがきれいに配線している。しかし手元に回路図はない。メーカーのサイトで簡単なブロック図の回路があるだけだった。まあ真空管の交換だけだから大丈夫と軽い気持ちで修理を始めた。
 出力管はEL34で手持ちにあるからメーカー品と交換しながらノイズが出るのをチェックした。このアンプ測定器で測ると通常時は正常で歪、f特などまったく問題なく、これではどこが悪いかはわからない。ただ通電していると突然ボコッというノイズが出るだけだから、聞きながら待つしかない。それも長いときは1時間くらいしてから発生するからチェックに時間がかかる。真空管を取り換えてはノイズを待つという作業を繰り返した。ところが最初出力管が不良と思われたのに出力管を換えても不良は直らず、さらに電圧増幅管まで取り換えてはノイズを確認するという気の長い作業を進めていった。結局9本もの真空管の不良確認したが最終的には真空管の不良ではないことが分った。ここまでくるのに10日程度の時間がすでに過ぎていた。さて困った。簡単に直ると踏んで引き受けてみたが簡単には直りそうもない。また回路図もない。もう目視でプリント基板をじっくり見て怪しい部品をチェックするしかない。そんな作業中あるところの半田付けがおかしいところを発見した。いわゆるテンプラと言われる半田付けだ。半田が衣のようになっていて部品との接触が十分でない半田付けだ。念のためそこを十分に熱っして半田をし直し実験を進めていったら、実にここが大当たりでそこの半田不良がノイズの元になっていた。この半田付け不良の部分は出力管のバイアス回路に関係しているところで、半田不良が内部の熱などのストレスで接触不良を起こし、バイアス電圧不良を起こし例の大きなノイズを発生させていた。この半田不良の箇所は電圧増幅管のところで、良く見るとそこの真空管は別のメーカーと交換してあり、以前修理をした跡があった。多分前にもこの不良が出て真空管交換で済ませていたのだが、根本的な解決にならずまた不良が発生したと考えられた。多分工場出荷時から半田付けが十分でなく、その後の使用で熱のストレスなどで基板が膨張・収縮し接触不良が起こったと考えている。

今のところ知人からは不良の再発は出ていないからこれが不良の原因であろう。
 一度はどうしようと考えたが、運よく不良個所を見つけられラッキーだった。
 人様の設計した回路を見るのは難しいものだ。
 メーカーの修理屋さんはここまで見てくれるかな?


 
 <リスニングルーム探訪>
 2019年6月1日 

前回書いた<リスニングルームの音響学>(誠文堂新光社)は実に面白い本だ。大分読み進みもう少しで1回目が読み終わる。内容が素晴らしくこんな面白いことを書いてある本があったんだと今更ながら楽しんでいる。論理の進め方も丁寧で論理の飛躍がなく丁寧な説明に説得力があり本当に素晴らしい。特に家庭用リスニングルームの音響についての解説書がほとんどないと思っていたので、なおさらこの本の素晴らしさが際立っているように思う。
 暇に任せて読んでいて「なるほど、なるほど」と初めて知る理論や現象を興味深く読んでいて非常に楽しい。何かすぐに役に立つ理論や実験がないかと思っていたら面白い章があった。「部屋の中のスピーカーの特性」でスピーカーと壁との関係を実験で説明している。これを我が家の部屋に当てはめてみようと早速実験してみた。実験は簡単でスピーカーの位置をなるべく壁に近づけるというもの。理論によれば音源が壁に近ければ低域特性が改善されるという。わずか2030㎝程度のスピーカーの移動で音は見違えるように変化した。理論どおり低域の音量が増し、聴感上低域に重心が下がってきた。これまで試行錯誤だけで理論もなく配置を変更してきたが、この本のお陰で短時間に見違えるようになってしまった。内田光子のピアノがやっとスタインウエイに近づいてきた。これまで十分な音質で聴いてなくて彼女に申し訳なく思ったりもしたくらいだ。
 筆者のあとがきを読んでいたら、そこの謝辞のところで僕が会社でオーディオの仕事をしていたころ、新人で入社してきた後輩の名前が載っていてびっくり。どんな関係でそこに名前が載ったのかは知らないけれど、こんな素晴らしい本に少しでも関わったのは素晴らしいことだ。
 皆さんにも是非お勧めしたい本だ。

さてここで話を本題に移す、実はタイトルに書かれた<リスニングルーム探訪>という雑誌が誠文堂新光社より発行された。「MJ無線と実験」でこれまで掲載された記事を再編集した雑誌だ。40室のオーディオルームが紹介されているが、以前MJ誌に載ったので再度この本にも載ることになった。部屋を紹介されるのはある程度光栄なことだが、この本を読んでみると僕のオーディオ装置は大変みすぼらしく恥ずかしくなってしまった。この雑誌に出てくる他のオーディオファイルは大変高価なアンプやスピーカーをお持ちで、また専用のリスニングルームという素晴らしい環境もある。僕には到底実現できないもので、世の中贅沢できる人がたくさんいるなあと感じてしまった。こちらの本ははずかしいからあまりお勧めしない。

先月は読書の月でした。



 
 <リスニングルームの音響学(改定増補)>
 2019年5月16日 

先月「実用オーディオ学」なる本を紹介したが、その本のなかの参考文献で面白そうなものがあったので購入してみた。それが表記の本だ。著者は石井伸一郎、高橋賢一の共著となっている。石井氏は元松下電器(現パナソニック)の技術者で、テクニクスブランドで活躍された方だ。退職後もご自分でリスニングルームの研究をされ続け、今では石井式リスニングルームという名前でも有名で、家庭用リスニングルームの音響学では大家と言っていい。以前からネットでは参考程度に内容を見ていたが、「実用オーディオ学」でも推薦されていたので読んでみようとなった。
 購入を検討していたらこの本はすでに絶版で出版元にもなく、アマゾンや楽天でのネットショップではむしろ中古本が高く売られていた。そこでこの本の名前で検索したら幸運にもビックカメラの書籍コーナーで新しいものが定価で売られていてやっと購入できた。5年前の発行でもうあまり出回っていないようだ。
 さて内容はどうかと言えば、僕にとっては大変面白い本になるようだ。まだ一部しか読んでいないので正確な評価はできないが、他にこのような内容の本がなく良くできた本だ。部屋の音響についての基本的な理論が丁寧に説明されている。これまでネットで表面的なことは知っていたが、もっと掘り下げた理解がわかり、役に立つ。著者の理論の進め方も丁寧で、一つひとつ実験データを積み重ねてその結果から理論を導き出すやり方もすばらしい。なかなかの名著だと思う。今後の読書も楽しみだ。
 これまでも部屋の影響についてはアンプ以上に重要と思っていても、いざどのような理論を考えていいのかが分からなかったが、この本のお陰で思考法がすこしは分かるような気がする。音の評価をするときただやみくもに何かを変えて音が良くなったとしても、それは裏つけもなく再現性もない。やはりそこには理論が必要でその点リスニングルームに関する参考書は少なかった。その点この本は家庭用リスニングルームの音響に関しては一番の出来であろう。僕も読み進めるのが楽しみになってきた本だ。
 最終的には自分の部屋の音が良くなることが一番の目標だが、我が家の部屋は直方体でなくかなりの変形部屋になっているので、この変形部屋のシミュレートができたらさらに面白いと思う。
 こんなことを考えながらまた面白いものが見つかったと楽しんでいる。
 ご興味がある方にはお勧めします。ただしこの本を見つけるは努力が必要です



 
 <令和元年>
 2019年5月1日 

今日51日は令和の年号が始まる日になった。おそらく今日発信されるブログの類の大半は令和の話題から始まるだろう。僕もどう話を始めるか考えていたら、やはりこの話題からスタートするのが手っ取り早いと思い文章を進めることにしよう。
 では新しい年号になったからといって僕に何か変化をもたらすものは何もない。これまでの日常生活、信条を淡々と進めていくだけだ。でも新しい年号になると以前の年号が急に古く感じられるから面白いものだ。昨日までは平成生まれと若さを主張していても今日からは平成生まれは古く感じられてしまう。その内に令和生まれの若者に平成生まれですかと年寄り扱いされるのが目に見えてくる。昭和生まれの僕などはもうその他の領域におしやられて細々と生きていくしかない。
 真空管の歴史を調べてみたら、原理がアメリカで発見されたのが日本の明治時代で、初めての三極管の生産がWEで始めたのが1906年、日本での生産が始められたのは1917年(大正6)ということらしい。僕にとっても明治はずっと昔の時代と思えるのにそのころ発明さされ、大正・昭和・平成と面々と生産され、その存在を知らしめて来たこのデバイスは素晴らしい発明品だと思う。この文章を書いている現在でも真空管アンプでポリーニの演奏するショパンを聴いているが、まったく時代遅れを感ずることなく素晴らしい音楽を再生してくれている。本当に素晴らしい。100年も続く電子デバイスが他にあるのだろうか。
 令和になってもまだこの真空管アンプの存在は続く。昨年設計したKT66PPUL)はドライブ段を新しい回路で設計したものだが予想以上に音が良く、その良さの要因を実験回路で探ってみたがまだ見つからない。音がよければどうでもいいじゃないかと思うかもしれないがそれでは進歩がない。僕だけの問題かもしれないが100年も続く真空管でも動作条件を変えてあげるとまだ音がよくなる事実は面白い。まだ分からないことがあり奥が深いデバイスなのだ。
 僕は今次のアンプの設計をしていて、ほぼ設計作業が終わった。令和になってもまだ真空管をいじっている僕だが昔を懐かしがって設計するレトロなものではない。自分の経験を生かして最新の回路で生まれる高音質のアンプをめざしている。
 年号が変わっても、世の中が高集積半導体時代・デジタル時代になってもヒーターで温めないと働かないデバイスを使っている変人がいてもいいではないか。


 
コラム目次に戻る
 

 Copyright(c);2006-2019 Yasui All rights reserved