前回書いた<リスニングルームの音響学>(誠文堂新光社)は実に面白い本だ。大分読み進みもう少しで1回目が読み終わる。内容が素晴らしくこんな面白いことを書いてある本があったんだと今更ながら楽しんでいる。論理の進め方も丁寧で論理の飛躍がなく丁寧な説明に説得力があり本当に素晴らしい。特に家庭用リスニングルームの音響についての解説書がほとんどないと思っていたので、なおさらこの本の素晴らしさが際立っているように思う。
暇に任せて読んでいて「なるほど、なるほど」と初めて知る理論や現象を興味深く読んでいて非常に楽しい。何かすぐに役に立つ理論や実験がないかと思っていたら面白い章があった。「部屋の中のスピーカーの特性」でスピーカーと壁との関係を実験で説明している。これを我が家の部屋に当てはめてみようと早速実験してみた。実験は簡単でスピーカーの位置をなるべく壁に近づけるというもの。理論によれば音源が壁に近ければ低域特性が改善されるという。わずか20~30㎝程度のスピーカーの移動で音は見違えるように変化した。理論どおり低域の音量が増し、聴感上低域に重心が下がってきた。これまで試行錯誤だけで理論もなく配置を変更してきたが、この本のお陰で短時間に見違えるようになってしまった。内田光子のピアノがやっとスタインウエイに近づいてきた。これまで十分な音質で聴いてなくて彼女に申し訳なく思ったりもしたくらいだ。
筆者のあとがきを読んでいたら、そこの謝辞のところで僕が会社でオーディオの仕事をしていたころ、新人で入社してきた後輩の名前が載っていてびっくり。どんな関係でそこに名前が載ったのかは知らないけれど、こんな素晴らしい本に少しでも関わったのは素晴らしいことだ。
皆さんにも是非お勧めしたい本だ。
さてここで話を本題に移す、実はタイトルに書かれた<リスニングルーム探訪>という雑誌が誠文堂新光社より発行された。「MJ無線と実験」でこれまで掲載された記事を再編集した雑誌だ。40室のオーディオルームが紹介されているが、以前MJ誌に載ったので再度この本にも載ることになった。部屋を紹介されるのはある程度光栄なことだが、この本を読んでみると僕のオーディオ装置は大変みすぼらしく恥ずかしくなってしまった。この雑誌に出てくる他のオーディオファイルは大変高価なアンプやスピーカーをお持ちで、また専用のリスニングルームという素晴らしい環境もある。僕には到底実現できないもので、世の中贅沢できる人がたくさんいるなあと感じてしまった。こちらの本ははずかしいからあまりお勧めしない。
先月は読書の月でした。
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