オーダーメイド手造り真空管アンプの店

 
<真空管バランスアンプの設計> 
 2011年8月 

 はじめに
 MYプロダクツのサイトですでに紹介したように真空管バランスアンプ(プリメイン)を設計した。
 真空管バランスアンプは入力回路に差動アンプを使用しているMYプロダクツのアンプ回路では比較的簡単に応用することができる。しかし、性能・安定度など実際の評価は未知の部分であったが、今回の設計でその評価が得られ、シングルエンドのアンプと遜色ない性能・安定度が得られた。音質は主観的な判断だが、聴感上のSNが良くなり、オーケストラの各楽器の音が良く聴こえるようになった。

 1、バランスアンプとは

 通常オーディオアンプは入力、出力ともグランドを基準とした信号入力・出力(シングルエンド入力・出力)を持った形をしている。一方バランスアンプはお互い逆相の2つの入力信号(差動信号)を増幅し、アンプ出力は入力と同様、差動出力信号を持つ形をしている。
 差動信号を操作するための主な方法として、電子回路を使う方式とトランスを方式があるが、電子回路を使ったバランスアンプの標準的回路は図1のようになる。
 これを実際の回路では図2のように2つの負帰還を施すことにより実現できる。この回路では反転アンプが2つできることになるが、2つの帰還パスの対称性が保たれれば差動出力が得られることになる。
このときゲインAは
 A=Rf/Rg
となる。



   


 2、真空管アンプで実現する方法


 ここでの説明は出力トランスを使ったパワーアンプ(プリメインアンプ)に限定して話を進める。
 バランスアンプに必要な回路条件は

 入力が差動入力になっていること
 出力が差動出力になっていること
となり、そのためには入力に関しては差動増幅回路を使用することが条件となり、出力に関して言えば出力トランスはトランスを使用したバランス出力と同じでそのまま差動出力として使える。
 帰還回路は図2のように2つの負帰還回路を施せばバランスアンプとなる。



 3、プッシュプルアンプのバランス回路

 アンプがプッシュプルの時はさらに都合が良い。バランスアンプの入力段は差動増幅回路とし、プッシュプルアンプでは2段目も差動増幅回路とし、出力段がプッシュプルとすれば小信号部分では全段差動増幅が保たれなり美しい回路となる。

このときの回路を図3に示す。



図3 



 4、実際のプッシュプルアンプでの問題点

図3のような回路でアンプを作った場合、問題点も生ずる。増幅回路としては動作するが安定性で問題となった。それは次のようなことからくる。
 このバランスアンプをプリメインに応用して実際作ると、ゲインは27dB、入力インピーダンスを10kΩの場合(Rg=10kΩ)、帰還抵抗Rf=270kΩとなる。
 するとアンプ出力では2端子間は低インピーダンスになるが、対グランドに対してはハイインピーダンスになり、フローティング状態となっている。これは回路的には問題とはならないが、実際オーディオアンプとした場合、容量負荷時の安定性に問題が生じた。位相補正により安定状態にすることができるが、この場合補正が強めになりf特、歪などが悪くなる。最終的に取った方法は出力2端子をグランドと100Ωの抵抗で結んだ。この方法によりアンプは安定し、位相補正も通常のアンバランスアンプと同じ程度となり、バランスアンプの安定度、性能がほぼアンバランスアンプと同等の値が得られた。
 
図3参照。出力トランス2次側より100Ω(1)でグランドに接続されている。

 

5、アンプの性能

 今回設計した6BM8pp(UL)バランスアンプの特性を示す。特性はバランス入力、バランス出力で測定している。
 測定用バランス信号はアンバランス―バランス変換回路を作成した。回路を図4に示す。
 使用したICは
 AnalogDevice社のBalanced Line Driver SSM2142を使用。

 IN:アンバランス信号入力
 +OUT/-OUT:バランス信号出力

測定アンプ出力端はオーディオアナライザー VA-2230Aのバランス入力を使用して測定した。



  6、最後に

 今回、初めて真空管バランスアンプを設計した。回路的にはこれまで設計してきたMYプロダクツのプッシュプルアンプをほとんど変更することなく実現でき、また安定性については出力トランス2次側をフローティングでなく、出力コモン電圧をグランドレベルにしてあげれば問題ないことが分かった。
 音質は主観的な感想だが、聴感上のSNがすばらしく、オーケストラの各楽器が良く聴こえる。特性上のSNはRgの影響が出てそれ程良くないが聴感上は良い。この理由としてアンプ内で発生するノイズは通常コモンモードであるから、これらのノイズ(ランダムノイズ以外)は抑圧されバランス増幅の効果が表れていて出力に出ていないのではないかと考えている。ここは今後の検討項目となる。新しいアンプの登場となった。


参考文献
・完全差動アンプ(Fully-Differential Amplifiers) :Texas Instruments
・Balanced Line Driver    :Analog Devices



 
図5
 
図6
 
図7
 
図8


 

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