オーダーメイド手造り真空管アンプの店

 
<バランス型CSPP出力ラインアンプの設計> 
 2017年6月 




バランス型CSPP出力ラインアンプの設計報告する。これはもともとMJ無線と実験4月号・5月号に掲載された原稿となったもので、ほぼ内容は同じである。ただし設計と特性は載せるものの制作部分は省いてある。MJ誌を購入されなかった方も設計部分は参考にされたらよいかと思う。

<はじめに>

 最近のオーディオは楽しみ方が多様化している。ハイレゾ音源を主とするネットワークオーディオに人気があり、それも沢山のフォーマットの音源をコンピューターやスマホなどと組み合わせた好みのシステムで楽しむことが出来るようになっている。一方昔のアナログ音源で楽しむ方も増えてきているという。
 音源が多様化するなか、高音質になるに従い伝送方法やヘッドフォンなどにおいてもバランス伝送、増幅がしだいに好まれてきている。これらの高音質ソースに対応して、真空管アンプにおいてもバランス増幅アンプの紹介があっても良さそうなのだが、そのような記事が少ない。古き良き時代を楽しむ真空管アンプも良いが一方の最新のオーディオ技術を生かした真空管アンプがあっても良いと考えている。そこで今回はバランス増幅の真空管ラインアンプを設計したので紹介してみたい。

<バランス増幅アンプとは>
バランス増幅アンプの正確な定義は分からないが、私の考えるバランス増幅アンプとはバランス信号のホット、コールドに対応した2入力、2出力を有するアンプで、増幅方法がこのホット・コールド間で増幅する方式のアンプと考えている。ホット・コールド信号を別々に増幅して出力する方法はバランス増幅とは言いがたい。アンバランス信号ではホット・グランド間で増幅するように、バランス増幅ではバランスされたホット・コールド信号間で増幅する方法にこだわっている。
 バランス増幅方式を図式化すると図1のようになる。
アンプはホット・コールドの2入力、2出力を持つ。負帰還はあってもなくても良いが性能や安定性を考えるとと負帰還は必要だろう。
もちろん無帰還アンプにこだわり、それが実現できればそれでもよい。
今回は負帰還アンプにする。負帰還方式はバランス増幅アンプでは信号が2つあるから負帰還も2系統必要となる。

また負帰還方式もアンバランス増幅アンプと同様非反転型(図2)と反転型(図3)が考えられる。


これらの負帰還方式でのゲインは
おおよそ次のようになる。

非反転型アンプのとき

G=(2RNFRI/RI
反転型アンプのとき
GRNF/RI
オーディオアンプの場合特にノイズが問題になるEQアンプや入力にボリュームが付くラインアンプなどでは非反転型アンプの方が合っている。今回はラインアンプなので非反転型のバランスアンプを考えることとした。

<真空管でバランスアンプを考える>
(1)バランス入力回路
バランスアンプは2入力ホット・コールド信号となるからアンプ入力は必然的に差動増幅器となる。差動増幅は文字通り2つの入力信号の差分を増幅してくれる。差動増幅器は真空管アンプではそれほど使われていないが実現はそれ程難しくなく、半導体と同様に2つの真空管をカソード共通につなぐだけで実現できる。実際の真空管の差動増幅回路では2つの真空管のバラツキが大きく特性のそろった差動用真空管が得にくいので、カソード抵抗の一部に半固定抵抗を設けて2つの真空管のバラツキを少なくする方法を用いたほうが良い。半固定の中点からは定電流回路に繋がれる。

(2)バランス負帰還回路
バランスアンプに使用される差動増幅の負帰還回路はどう考えたらよいだろうか。
ラインアンプでは音量調整のボリュームがアンプ前段に挿入される。反転型ではボリューム位置によりアンプのゲインが変化してしまうため減衰特性に狂いが出てしまうが、非反転型アンプではそのようなことが起こらない理由で非反転型にした。非反転型の負帰還回路は図4のようになる。



差動増幅の共通カソード間に抵抗を挿入する。両グリッドに入力信号が入り、カソードに負帰還信号が入る。ホット入力信号の真空管カソードにはホット負帰還信号が入り、コールド入力信号の真空管カソードにはコールド負帰還信号が入る。このような構成にすることにより、ホット、コールド信号間で負帰還がかかることになる。
実際の回路ではこのカソード間の抵抗の中点から定電流回路により直流バイアスをかけるが、真空管のバラツキを改善するために半固定抵抗を使用して動作点の調整をしている。

(3)バランス出力回路
差動の2出力(ホット、コールド)を出す方法が今回のメインテーマだ。
差動出力回路の条件としては
1)2つの信号はなるべく正確にバランスされること。(もちろん位相は逆)
2)出力インピーダンスはバランス出力で500Ω以下程度を目標とする。
3)最大信号は2V以上

バランス増幅回路でバランス出力として使えそうな回路としては
1)差動増幅器のプレート出力をそのまま出す方法

2)プッシュプルトランスを使用して出力する方法

1)の場合回路は簡単だが出力インピーダンスが高く条件に合わない。2)ではトランスを使用することにより比較的簡単に回路を実現できる。実際以前この方式でバランス型ラインアンプを設計したことがある。しかし今回はトランスを使用しないでより高性能のアンプが出来ないものかと思案しこの方式をあえて使わなかった。トランスを使わないでかつプッシュプルの差動出力をどう実現出来るかが今回の設計のポイントとなる。

 CSPP回路の原理
まずCSPPCross Shunt Push Pull)とはどんな回路かを簡単に説明する。
それがある程度分かれば何故この回路を採用したかが分かるようになる。

CSPP基本回路
基本回路は図5に示す。位相が反転した2つの入力信号をそれぞれ増幅しながら一つの負荷上で合成するプッシュプル回路である。これが基本回路だがそれをバランス出力用に変形していく。図6は負荷を2分割して負荷の中点をグランドに落とし、入力信号もグランド基準に置き換える。そうするとひとつの真空管にプレートとカソードにそれぞれRLが接続された形になる。これは50%の負帰還の形をした回路となっている。しかしまだこれでも電源がフローティングになっているので、負荷の中点に電源を接続し、それぞれのカソードにカソード抵抗をつなぎ、カソードと反対側のプレートとをコンデンサで接続すると、図7のように入力信号も電源もグランド基準で加えると全体の回路がもっと簡単に実現できるようになる。図7は交流的には図6と同じ動作をしている。

図7の回路の場合一つの真空管に対してプレートとカソードにそれぞれ同じ値の抵抗(2分割された負荷抵抗)が繋がれている。(実際にはRLRKの並列された形)この回路はどこかで見覚えのある回路だろう。これは真空管アンプではよく使われるPK分割回路と同じ動作だ。2つのPK分割回路が位相反転されて繋がれている形だ。だから一つの真空管動作はPK分割と同じ動作をする。すなわち負荷がプレートとカソードに2分割されているから、50%のカソード負帰還回路となっている。
見方を変えればPK分割回路を二つ合わせ、更に片方の球のカソードと反対側の球のプレートをコンデンサで繋ぎ位相反転された入力を入れればプッシュプルで動作する回路となる。これでバランスされた2つの出力が得られたことになる。最初に設定した出力の条件を考えると信号は負荷抵抗の精度でバランス出力されるし、出力インピーダンスは50%負帰還回路なので低くなるこことが予想され、最初に想定した出力回路の条件に合うことになる。これでトランスを使わないバランス型のプッシュプル出力回路ができたことになる。
この負荷が2つに分割された出力はバランス増幅回路としてみると非常に都合がよい。2つに分割された出力負荷の両端は位相が反転されているからこれらがバランス出力のホット・コールド信号として使える。また2つの負荷抵抗の値が合っていればホット・コールド信号の値は同じになり、この抵抗の精度で信号精度が決まり真空管の性能誤差に影響されない。入力信号がグランド基準で与えられることから前段の回路も特殊な回路を必要とせず、差動増幅回路との接続も問題が生じない。
いきなりCSPP回路の説明をしたが、これでCSPP回路がバランス型出力に適した回路であるかがお分かりになっただろう。


バランス出力CSPP回路の特徴
(1)ゲイン
ホット信号、コールド信号それぞれゲインは約1。ホット・コールド間でも同じで約1である。

(2)出力インピーダンス
一般的なエミッタ―フォロアの出力インピーダンスは大体1/GmCSPP回路の一つの真空管で見れば50%負帰還となり、その時の出力インピーダンスは2倍となり2/Gmとなる。しかし2つの真空管がパラに接続されているのでプッシュプルでみると1/2になり、トータルでは1/Gmとなる。この値はアンプ全体に電圧負帰還がない時の話で、実際には負帰還がかかり更に小さな出力インピーダンスとなる。
例えば出力段を6922で想定してGmが4ms程度とすれば無帰還で250Ω程度の出力インピーダンスになることが予想される。さらに実際のアンプでは負帰還によりこの数分の一程度に下がる。
(3)歪
CSPPはプッシュプル動作なので偶数次の歪がキャンセルされるので低歪率になる。

アンプ部の回路
入力回路と出力回路の説明をした。後はこれらをどう構成するかになる。結果的には89のようになった。差動1段にCSPP出力の2段構成になった。
(1)初段回路
初段は差動増幅回路としてGmの大きい69226JD8相当管)を使用。
動作点は約4mAに設定。電流が大きいほどGmは大きくなるがノイズと安定度のバランスを考慮してこの値に設定した。カソード間抵抗は一部半固定抵抗を使用している。真空管の特性にバラツキが生じているため半固定抵抗による調整回路である。差動のカソード共通抵抗は2SC1815による定電流源を使用した。差動増幅の両カソードはバランス負帰還回路の帰還点になる。この差動増幅器にはちょっと工夫を加え、差動出力をカスコード接続にした。
カスコード接続とは入力の差動増幅回路のプレート出力にトランジスタによるベース接地回路を加えたもの。
理由は2つある。
1、  ラインアンプの入力には音量調整用のボリュームが付き、初段真空管のミラー効果とボリュームによる高域での性能劣化を避けるため。

2、  アンプのオープンループのゲインを上げるため。これは6922のプレート抵抗の影響を受けずに、カスコード用のトランジスタの高コレクタ抵抗により大きなゲインが得られる。

カスコード用トランジスタは2SC2610を使用した。手持ちの関係でこのトランジスタを使用しているが、入手が困難な時にはVceo=100V以上,Ic=50mA程度の低周波用NPNであれば他のトランジスタで良い。

初段回路には安定性を高めるために対策を施してある。入力のグリッドには220Ω(R7R8)、プレートには330Ω(R13R14)、電源にはバイパスコンデンサ0.1C18)、アンプ全体の位相補正1kΩ+100p(R12C1)など、これらは安定度対策である。

(2)出力回路
 出力段は説明したとおりCSPP出力となる。 出力管は入力と同じく6922を使用。動作も入力と同じく4A90vに設定した。これには意味があり、出力と入力の真空管と動作点を同じにするとそれぞれのカソード電位がほぼ同じになる。すると出力段のカソードから入力段のカソードに負帰還をかける時、理想的には直流電流が帰還抵抗に流れない。それにより入力、出力管の動作電流が負帰還により影響されにくくなるためだ。
回路は図8のようになるが、今回CSPP回路のカソード抵抗(図7のRK)は定電流負荷とした。理由は
1、マイナス電源を初段の差動増幅の定電流電源と共通にするため、小さなマイナス電源でもカソード抵抗値を大きくする効果を狙った。電圧は最大出力をどの程度にするかによって決まる。今回では―20V電源であるので最大出力は±⒛Vp-pになる。

2、これにより、プレート負荷、カソード負荷とも2本の抵抗(R29R30)で決まり、カソード抵抗(図7のRK)の影響が少なくなる。
定電流には初段と同じく2SC1815Q4Q5)を使用した。

(3)CSPP段のコンデンサ容量について(C10C11
CSPPの特徴であるシャント容量はどの程度必要かを考えてみる。CSPP1つの真空管の負荷は図7のようにカソードには容量と抵抗の直列の負荷、プレートには抵抗負荷のみと考えられる。低い周波数ではコンデンサの影響が表れ次第にゲインが減る方向になる。この時カットオフ周波数は 2ΠfCR=1の場合となり
例えばカットオフ周波数を1Hzに設定したとするとC=5.9μFとなる。今回は容量が47μFだからカットオフ周波数は0.13Hz程度に設定してある。

(4)出力段の安定性
今回カソードの負荷が定電流にしたためカソード電位がふらつき易くなってしまった。そのため100kΩ(R31R32)の抵抗でグランドに接続しかつ軽度の電流帰還抵抗220Ω(R25R28)を挿入してある。これにより低域での動作点が安定する。

(5)負帰還回路
負帰還回路は図2と図8から
RNFR19//C6R20//C7
RINR15R16VR2
で構成される。正確なゲインはアンプの裸ゲインをA
β=RIN/(2RNFRINとすれば
GA/(1+Aβ)となる。

(6)入力信号切替え回路
バランス信号入力は3系統用意した。その内1系統はアンバランス入力も対応できるようにした。アンバランス・バランス変換回路をOPアンプ(IC1)により構成する。バランス入力信号の切替えはリレー回路(U51U52U53U54U55U56)を採用した。切替え回路の複雑さと音質面を考慮しリレーによる信号切替えにした。リレードライブは2SC1815Q51Q52Q53Q54Q55Q56)を使い切り替える。リレーはオムロンG5V-212V)を使用した。このリレーは42A流す。2SC1815のベースに10μF/10Vが付いているが、これはOFF時にゆっくりOFFさせてショーティング動作をさせている。

(7)アンバランス・バランス変換回路
3入力のうち1入力だけアンバランス入力を設けた。将来これがバランス入力にも対応も可能なように内部にスイッチを設けアンバランス・バランス切替えができるようになっている。変換回路はオペアンプMUSES8920IC1)で行う。

(8)出力用リレー
出力はバイアンプに対応して2系統用意した。ラインアンプはこの後にパワーアンプが接続されるため、電源ON/OFF時にノイズがでないようにする必要がある。動作はON時には真空管ヒーターが温まり動作状態になってからリレーをONさせ、電源OFF時には瞬時にリレーをOFFさせる。出力ミューティングリレーは入力切換と同じくオムロンG5V-2(12V)を使用した。
論理回路はすべて2SC1815Q71Q72Q73Q74Q75)で構成した。
この論理回路動作について説明しよう。
Q74Q75はリレーON/OFFをさせる駆動トランジスタの役目を果たす、電源は真空管のヒーター電源用の整流後の電源(15V)を利用。電源が15Vに立ち上がるとこの時Q73 OFFしており、R75R76 C47で決まる時定数でQ73 のベース電圧がゆっくり立ち上がる。約40秒でQ73のベース電圧が1.2VになりQ73Q74Q74ONしてそしてリレーが立ち上がる。
電源OFF時は次のような動作をする。Q71 のベースには13Vのツエナーダイオードが15V電源に接続されている。電源電圧が13V以上の時はQ71 ONしているが、13V以下になるとOFFする動作をする。だから電源OFF時この15V電源が下がりだし13Vになった途端にQ71OFFQ72を通してQ73のベース電位を強力に0Vに引き下げリレーをOFFさせる。この動作は電源OFF時の瞬時に起こるのでリレーはすぐに動作し出力にはノイズが発生しないようになっている。これはパワーアンプが電源ON状態でラインアンプをON/OFFできるようになっている。

 電源回路
(1)メイン電源
アンプの電源は+200V-20Vが必要である。電源はMOS-FETによる定電圧電源を採用した。整流ダイオードはSCS105KG(D81,D82,D83,D84)を採用した。

(2)定電圧電源用は+200V-20Vを作る。定電圧電源は音質に大きく影響する。特性的にはやはり低出力インピーダンスであることが望ましい。制御用半導体にMOS-FETを採用しているが、その理由は中低域部分での低出力インピーダンスが得られるからであり、秋葉原でも入手可能な半導体である。2SK2866(Q81),2SJ334(Q84),2SC2610(Q82),2SA1015(Q83)を使用した。2SC2610は手持ちの半導体から採用したが入手が困難な時にはVceo=200V以上,Ic=50mA程度のNPNであれば他の半導体で良い。D86D89は定電流ダイオードCRD-E102を採用する。Q82,Q83の負荷抵抗を大きくして裸ゲインを稼ぎ低インピーダンス化に寄与している。

(3)アンバランス・バランス変換用回路の電源は定電圧電源±10Vを作る。
回路構成は+200V、-20V電源と同じで耐圧の違いにより使用半導体が異なっている。
2SK2322Q91)、2SC1815Q92)、2SJ334Q94)、2SA1015Q93)で構成される。

ヒーター用、ミューティング用電源は整流後簡単なCRローパスフィルターを通して15V電源を作りこれをミューティング用にも使っている。ミューティングはこの電源をセンサーとしても用いているのであえて簡単な電源としている。ヒーター電源は更にSI3122P(IC101)により定電圧電源にしている。ヒーターは比較的大きな電流(0.6A)を扱うのでSI3122Pにはヒートシンク(30mmH)x 40mmW)程度)を取り付けている。

電源トランスは今回のアンプに合うように特注した。
PHOENIX社製で仕様は次のとおり
1次仕様は100V入力
2次仕様  200/0.1A 25V/0.1A 16V/2.0A
Rコアトランス仕様となっている。

音量調整ボリュームは4連Aカーブ10KΩで東京光音製。
入力、出力用XLR端子はノイトリック製を使用。

 調整
 調整はVR2の調整のみだが、これは歪が最小になるようにするためである。歪率計を持たない方はこの調整を省略しても構わない。半固定抵抗の位置がほぼ真ん中になるようにしておけばよい。


測定結果
 測定結果は図2731に表す。これらの測定はバランス入力、バランス出力で行っている。 真空管アンプにしては高性能のアンプに仕上がっている。
 周波数特性は高域をもっと伸ばすことも可能だが、無意味に帯域を延ばさず100KHz程度に抑えている。
 歪率特性はバランスアンプの良さが出ていて、真空管の非直線性がホット・コールド間で打ち消されてかなり低歪な特性を示している。これは無帰還でも良い特性を示していた。
 セパレーション特性もバランスアンプの特徴を示している。10KHz以下での特性が一定なのはグランドの影響を受けないためと考えている。
 CSPPの出力インピーダンスはどの程度だったのだろうか。
 32がその測定結果である。⒛Hzで約380Ω、1kHzでは160Ωの結果が出た。
 これはバランス出力での測定結果である。この結果を詳細に読むと、低域でのインピーダンスの悪化はカップリングコンデンサー47μFによるもので、また出力にはショート保護用に51Ωx2が入れてあるのでアンプ正味の出力インピーダンスは約60Ωというかなり低い結果が出た。設計当初に狙った低出力インピーダンスは実現できたことになった。
 ゲインは両CHとも16.2dB
 入力換算ノイズは-119dBVA-Fil)程度。

これらの結果をみると、バランス型CSPP出力ラインアンプは周波数、歪、出力インピーダンス、ノイズのどれを取っても高性能のアンプに仕上がったといえるだろう。差動入力とCSPP出力段の組み合わせはバランスアンプ回路として高性能であることが分かった。

音質評価
 バランス型CSPPラインアンプだけの音質を評価するのは正しい評価ではない。やはりこのアンプはパワーアンプもバランス増幅になっていないと本当の評価ができないと思われる。それでもこのアンプの特徴は表れている。バランス増幅の良さはレベルの低い信号の表現が優れていると感じている。ただ単にノイズが少ないということでなく、演奏の余韻とか響きとかそういう信号をきちんと増幅してくれる。だから良い演奏者、音の良い録音など肌に感ずるニュアンスの表現がより伝わってくる。微小信号の再現に優れているアンプと言えそうだ。また音にスピード感があり真空管アンプであることを忘れてしまう。

今回真空管のバランスアンプを紹介した。性能的にはほとんど問題となるところがなく、面白い回路ができたと思っている。










 

 Copyright(c);2006-2017 Yasui All rights reserved