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<MOS-FET定電圧電源インピーダンスの測定> 
 2014年6月 

MYプロダクツの真空管アンプでは電圧増幅段の電源はすべて半導体による定電圧電源が使われている。理由は音質のためであることは言うまでもない。電源の違いによる音質への影響はアンプ回路と同様非常に大きいことを経験している。そしてこれまでの経験から電源インピーダンス特性が良いものの方が音質的にも優れていると確信している。

今回パワーアンプ電圧増幅段用MOS-FET定電圧電源の特性を測定し、その音質について確認したので報告する。

1、測定方法
 前にこのサイトで発表した電源インピーダンスを測定した方法と同じ。

 参照:このサイトのEngineering Report
 <電源インピーダンスの測定>

2、試験用パワーアンプ
 今回試験に使われたパワーアンプは6550ppUL)で、電圧増幅段は差動2段になっている。この2つの差動増幅段の定電圧電源をMOS-FETに変更した。
 これまでは制御用トランジスタはダーリントン接続されたバイポーラトランジスタで構成されていたが、今回この部分をMOS-FETに置き換え出力インピーダンス特性の比較を行った。電源は2種類あり、一つは初段用電源150vと2段用電源405vがある。

 3、定電圧電源回路
 新旧2つの定電圧電源回路を示す。
 前にも述べたとおり電源は2種類あり150v用と405v用とがある。
 以前の回路はバイポーラトランジスタで構成されていて、それは図1、図2で示されている。
 そのMOS-FETに変更したものが図3、図4に示されている。
 1、図2に示すバイポーラトランジスタで構成されている定電圧回路はダーリントン接続されているが、今回実験した図3、図4に示すMOS-FET電源ではダーリントン接続をしていない。これは単純にダーリントン接続しなくても特性が取れたため。ダーリントン接続した時位相補償が必要でむしろ特性が悪くなってしまったため、今回の実験ではMOS-FETはダーリントン接続なしの特性を測定した。
 真空管用定電圧電源は高電圧となるため、簡単に入手できて使用できる半導体は限られる。今回は秋葉原で簡単に入手でき、さらに耐圧保護回路も使用せずシンプルな回路で使用可能な半導体を使っている。
 




図1 150V用定電圧電源 旧回路



図2 405V用定電圧電源 旧回路



図3 150V用定電圧電源 MOS-FET新回路



図4 405V用定電圧電源 MOS-FET新回路



4、出力インピーダンス特性
 5150v電源の特性、図6405v電源の特性である。
 両方とも低域でのインピーダンス特性が大幅に改善されている。高域に関してはほとんど出力回路に接続されたコンデンサーの特性が表れている。MOS-FET電源に関しては入力容量と思われるものによる影響が表れていて、数kHzでインピーダンスが上がっている。これは別のMOS-FETを使用すれば特性も変わってくると予想される。
 低域の改善はMOS-FETではゲートの大きな入力インピーダンスのため電源回路の裸ゲインが大きく取れ、さらにMOS-FETの高Gm特性と相まって低出力インピーダンス特性が表れたと推測している。シンプルな回路で良い特性を示している。



図5 150V電源インピーダンス特性
青:旧回路での電源インピーダンス特性
赤:MOS-FET新回路でのインピーダンス特性
低域での改善が著しい。MOS-FET電源では2KHz〜10KHzで入力容量の影響と思われるゲインの低下からインピーダンスの上昇が見られるが、10KHz以上では出力に繋がれているコンデンサーC3により再度低下傾向にある。



図6 405V電源インピーダンス特性
青:旧回路での電源インピーダンス
茶:MOS-FET新回路での出力コンデンサーC3がない時のインピーダンス特性
モスグリーン:MOS-FET新回路でのインピーダンス特性
こちらでも低域での改善が著しい。旧回路では出力にコンデンサーC3が接続されていなかったため、高域でインピーダンスが悪化していた。モスグリーンはC3を付けて測定したもので、高域での改善が見られる。


5、音質について
 
音質についてはいつも述べているように設計者の主観によるものだから、公平な判断とはいかないので参考程度にしてもらいたい。ただこれがMYプロダクツの音となるのだが。
 電源回路改善による音への効果は次のような点に影響していると感じている。

 ・楽器の分離が良くなる。一つ一つの楽器の音がより分離して聴こえてくる。騒がしい感じがなくなってくる。
 ・音の余韻、響きなどが改善される。ピアノなどは顕著で音の余韻が俄然良くなる。響きも同じで録音環境の違いなども分かるときがある。

音質を表現する言葉を探すのは難しい。上記の音の表現は次のようにも言い換えることができる。
 「電源回路のインピーダンスを改善すると、より小さい音が聞こえてくる。それまでうずもれていた小さな音(余韻、響きなど)が聞こえるようになってくる。この効果は音楽の表現をより豊かにさせてくれる。」


 6、総論
 真空管アンプにおける電圧増幅段の電源回路にMOS-FET電源を使用すると低インピーダンス化が実現されることが分かった。またこの電源特性が音質に与える影響は大きく、低インピーダンス化をはかるとそれまでうずもれていた音が聞こえてくようになり音質にも良い影響を与えることが確認された。




 

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