手造り真空管アンプの店




減衰型プリアンプとゲイン可変型プリアンプのS/N比の比較

通常オーディオ用プリアンプ(ラインアンプ)は図1のような構成をしている。非反転アンプの前に可変抵抗器を置き、ここで入力信号を減衰してプリアンプの信号レベルを可変している。これを減衰型プリアンプとここでは呼ぶことにする。
この減衰型プリアンプはアンプの前で信号レベルを減衰しているので、S(信号)は絞られ、N(ノイズ)はアンプのノイズが重畳されるので、通常のボリュームを絞った使用レベル状態ではS/N比が悪くなる。





図2はアンプゲインを可変できるプリアンプの例で、ここではこれをゲイン可変型プリアンプと呼ぶことにする。
このアンプは反転アンプでアンプゲインそのものを可変している。S(信号)もN(ノイズ)も絞られるので、減衰型に比べ通常の使用状態でのS/Nは良くなることが期待できる。









そこで減衰型プリアンプとゲイン可変型プリアンプのS/N比の比較実験をした。実験の都合上減衰型プリアンプは図3のような反転アンプを用いた。








測定方法
被測定アンプの出力信号レベルが0dBV(1V)となるように信号を入力する。この状態からボリュームを絞り(−10dB、−20dB・・・)それぞれのボリュームの位置でノイズも測定する。ノイズはAフィルターを使用した。
また
S/N比=(信号レベル) ー (ノイズレベル)
と計算する。

減衰型プリアンプとゲイン可変型プリアンプとの実験結果が図4である。

図4

実験結果
ボリュームにより信号レベルをー10dBずつ下げても、減衰型プリアンプではノイズレベルは下がらないが、一方ゲイン可変型プリアンプでは信号と同様にノイズレベルも下がっている。このときノイズレベルはゲインMAX時に比べ、最終的にはアンプゲイン分だけ一緒に下がる。(ここではアンプゲインは20dBなので、ノイズは20dB最終的に下がる)
S/N比の比較
オレンジの太線:減衰型プリアンプのS/N比
ブルーの太線 :ゲイン可変型プリアンプのS/N比

通常の試聴レベル(−30dB〜ー40dB、ボリューム位置が10時から9時)では減衰型プリアンプに比べゲイン可変型プリアンプでは15dB以上のS/Nの改善が見られる。
すなわち同じノイズ性能のアンプを使用してもゲイン可変型プリアンプは従来の減衰型プリアンプに比べ、通常使用状態で15dB以上のノイズ改善が得られることが分かる。

注)減衰型プリアンプのノイズレベルがー10dB〜−20dBで下がっているが、これはボリュームのインピーダンスが最大の時、反転アンプではアンプゲインが下がっているためである。非反転アンプ使用時ではノイズレベルはほぼ同じレベルか、熱雑音分少し悪化すると考えられる。


試聴結果
試聴結果は一聴瞭然(一目瞭然?)だ。ボリューム位置9時から10時くらいではホワイトノイズが聴こえず、いきなり音楽が流れてくる。これまで聴き取り難かった演奏者の息継ぎなども聴こえてくるし、ホールの余韻なども良く分かる。何よりも音が柔らかくなった。S/N比をこれだけ改善すると音のイメージまで変わる。これまで真空管アンプはノイズレベルで半導体アンプに劣っていたが、このゲイン可変アンプを使用するとこのノイズレベルの問題も解決してしまう。