オーダーメイド手造り真空管アンプの店


コラム目次に戻る

 
 <2016年を振り返って>
 2016年12月21日 

毎年、この日は一年をふりかえるコラムを書いている。予定通りいったのかそれともいかなかったのか毎年書いている。さて今年はどうか。
 今年の漢字を僕なりに考えてみた。世の中は<金>だったようだが、僕は<変>だったように思う。「MY PRODUCTS」から「My Audio」への変化だ。すでにお知らせしているように僕は今年新しいアンプ依頼の受付を止めた。5月位までは昨年の注文が残っていたので、その作業をしていたが、それ以降はまったく自分自身のオーディオの改善に注力をそそいだ。そして今の時点では手前味噌だがその効果がすばらしく、我が家のオーディオはこれまでにない再生音を奏でてくれている。それが「MY PRODUCTS」から「My Audio」への変化となった所以だ。
 昨年のこの時期に書かれたコラムを読むとバランス型パワーアンプを設計すると書いてあったが、それは新規ではなく改造で済ませたが音質的効果は素晴らしくバランスパワーアンプの良さは十分に確認できた。しかし今年はバランス型パワーアンプへの変更だけでなくスピーカーの配置変更、インシュレーターの改善、音響反射板の設置、スピーカーケーブルの短縮、バランス型EQCSPP化、バランス型CSPP出力ラインアンプ・EQの電源改善など様々な改善を行ってきた。それらの実験が相乗的に良い方向に向かい、すばらしい結果を生むことになった。音質的にもかなりの<変>があった。
 CDだけでなくLP再生においてもこれまでにない音を出してくれている。
 バランス型CSPP出力ラインアンプのレポートについても来年には発表できるのではないかと思っている。

さて来年は何をするかと言えば、バランス型パワーアンプをきちんと再設計してみたい。今使っている実験用パワーアンプは変更につぐ変更で回路図もない状態のもので、きれいに整っていない代物だ。だからきちんと設計してみたいと思っているがどうなるか。今の僕の頭の中は電源の見直しのことに興味がいって、より強力電源のパワーアンプにしたいし、できたらバイアンプまでいけたら最高だ。しかし2台設計するとなると大変なのだが。

今年は我が家のオーディオにとっては変換点であったように思う。スピーカーの再生音についての経験的なノウハウがかなり得られた年になった。定在波、振動、共通インピーダンスなど音響全般にかかわるいろいろな実験が出来て楽しい一年になった。

 来年も面白い一年になればいいなあ。


 
 <アンプの音>
 2016年12月11日 

このところバランスアンプが一応完成して音を聴いているが、それでもこれで終わりとはいかず、ちょっと気になるところがあるとすぐに実験してみたくなる。だからこれで完成というのがなかなかない。今回はまた電源の見直しをしている。前回にも書いたがEQのレポートを書いていて、電源回路がちょっと気になり変更してみた。何が気になったかといえば定電圧電源の高域のインピーダンスが高くなっていてちょっと直したくなった。改善は簡単だ。定電圧電源の出力のコンデンサーを大きくするだけだ。低域はFETで下がっているが、中域から上は負帰還が少ないのでインピーダンスが上昇している。これを下げるのに一番簡単なのが出力のコンデンサーを大きくすることなので、早速実験をしてみた。最初に気になったのがEQの真空管回路の定電圧電源の改善から始めたのだが、この改善効果がすごく良かった。高域の音、例えばバイオリンの音色とか金管の音などがしなやかになり響きも良くなり効果抜群に思えた。そこで他の電源回路ヘッドアンプ部の電源やバランス型ラインアンプの電源もすべて改善を入れた。音質的にはすべて同じ傾向で高域での電源のインピーダンスが下がると高域の音がしなやかになる傾向が表れた。僕は電源のインピーダンスと音質との関係はかなり相関があると感じている。電源インピーダンスが下がれば音は響きを増し、芯があって柔らかいという理想の音に近づいてくる。かなり面白い現象だ。
 アンプの音というのは電源インピーダンスだけで決まるものではないが、これまでの経験からするとこのような音の伸び、響き、しなやかさというのは配線でも変わるし、またバランスアンプにした方がアンバランスアンプより良い傾向が表れている。
 配線、バランス回路、電源インピーダンスなどが音のしなやかさに影響と与えると考えると、これらに共通するある特性が考えられる。それはアンプ回路にある共通インピーダンスという点だ。もちろんこの共通インピーダンスが低いことがアンプの音に良い影響を与えているという推論が成り立つことだ。配線にしても勝手に名前を付けたEGWという配線方法を採用しているが、これは共通インピーダンスを最小にする配線方法だし、バランス回路というのはグランドを共通に使用しない回路だし、電源インピーダンスを下げることは名前のとおりであって、これまで僕のアンプ製作に共通する音を良くする方法というのはアンプ内に存在するあらゆる共通インピーダンスを最小にすることだったといえる。
 何故この特性が重要かと言えば、次のことが想像できる。例えばパワーアンプでは10W程度のものでも電圧ゲインは9倍でも電流ゲインは56千倍、電力ゲインは50万倍という値になり共通インピーダンスを持った回路では微小信号が汚されてしまうのは一目瞭然となる。これはプリアンプでも同じでパワーアンプ程ではないにしても、もともと信号源が小さいからより影響を受けやすく、より繊細な配慮が必要となる。
 このところすべてバランスアンプで音を聴いていると、たくさんの音が柔らかく再生してくれてこれまでと違った音楽を聴かせてくれる。何故こんな音なのかを考えていたら、こんな結論が頭に浮かんできた。はたして正しい論理なのだろうか。


 
 <バランス型EQ CSPP出力化レポート
 2016年12月1日 

久しぶりにEREngineering Repot )を書いた。このページに載っているのでご興味があれば覗いてみて下さい。技術レポートだから分かりにくいかもしれません。
 今回は表題のとおりバランス型EQの出力部をCSPPに変更したことのレポート。CSPPとはCross Shunt Push Pullの略で大分前からある技術らしいのだが、僕も知ったのは10位前から。マッキントッシュのパワーアンプにこの技術が使われていて素晴らしい特性・評判を取っている技術だ。今でもこの種のパワーアンプの製作記事はときどき見受けられ、CSPP用の出力トランスも発売されている。今回のレポートはパワーアンプではなくバランス型のEQに応用したものだ。

 僕がCSPPに興味を持ったのはちょっとしたきっかけだった。バランス型EQやバランス型パワーアンプは出来たのだが、バランス型ラインアンプの良いものがなかなか思いつかなかった。トランス出力でお客様用には設計したことがあるのだが、トランス使わないもっと美しい回路が出来ないものかといつも思っていた。レポートにも書いたが、2入力、2出力のインピーダンス変換回路(バッファー)のことで、これが実現すればこれまでにない美しい回路のラインアンプができるのではといつも頭の片隅に置いていた。ある時CSPPのことが書かれているサイトを読んでいたらついにその時が来た。気が付いた瞬間これで全てが解けたという感じだった。その後ラインアンプを設計し、回路の実力も知り、音も確認し我ながら美しい回路と悦に入っていた。ラインアンプが一段落したあと、今回のバランス型EQにも応用することになった次第である。
 このブログもLPレコードを聴きながら書いている。自分ではかなり良い音と思っている。EQも少しずつ変化しており、CSPPの変更の後電源の改善にも着手した。レポートを書いていて回路図を見ていたらちょっと電源をいじりたくなってしまった。これも良い結果になって、今ではアナログでも状態が良いLPならCDに近い音で鳴っていて、クラシック特にオーケストラを聴くのが非常に楽しみになっている。SNがよく、低音、高音のバランスも良いし、弦の音が痩せずしっかりと前に音が出てきてくれる。GRADOMMカートリッジでも美しい音を出してくれている。このカートリッジも僕には癖のない音と感じられてオールマイティの音を出してくれている。

 CSPPには今後他のアンプでも応用を考えていて、できたらまたこのサイトでお披露目したいと思う。バランス型CSPP出力ラインアンプのERについては来年にでもこのサイトで発表してみたい。バランス型真空管ラインアンプだがかなりの特性を持った最新鋭(真空管で今さら?)のアンプとなっている。また今回EQの電源をいじってみて、もう少し定電圧電源回路も改善したくなった。次のパワーアンプのときには挑戦してみたい。
 なにが理想かは分からないが、真空管アンプでもまだまだやることがあるのは楽しいことである。

追記
自分でもすっかり忘れていたが、CSPPについてかつてこんなコラムを書いていた。
バランスアンプとCSPP
バランス型CSPPラインアンプ


 
 <のどぐろ>
2016年11月21日  

「のどぐろ」という言葉を初めて知ったのは数年前テニスの錦織選手が何かのインタビューの中で「のどぐろが食べたい」と言っていたのが最初だった。「今は何をしたいのですか」という問いに上記の答えがそれだった。僕には「のどぐろ」で何?という感じでどんな物かどんな味かもまったく想像できなかった。その後次第に知ったことは「のどぐろ」は高級魚で本当は「あかむつ」というもので、特に日本海側で多く獲れる魚ということが分かってきた。そうしたら次第にいつかこれを食べてみたいと思うようになってきた。
 のどぐろは刺身や塩焼きや一夜干しなどで食べるらしい。以前お土産ののどぐろの一夜干しというのを見たことがあるのだが、一匹2500円もする高いものだったので手がでず、でもちょっと買ってこなかったのが残念であったり複雑な気持ちでいた。
 そこで今年は金沢に行ってのどぐろを食べてこようと出かけてみた。金沢市には近江町市場という大きな市場がありそこにいけばきっと食べられるだろうと思ったからだ。そうしたら泊まった旅館で幸運にも食事のメニューのメインにのどぐろの塩焼きが出てきた。金沢に来る前に料理の好きな男性にのどぐろは塩焼きが一番うまいと言われていたので、これが献立に書かれていた時には小躍りして喜んだ。
 大きな切り身の塩焼きは肉も厚く脂もたっぷりでこんな魚の塩焼きが世の中にあったのかと思う程旨味十分のお魚だった。これが錦織選手が食べたいと言われる高級魚なのかとかみしめながらいただいた。料理の中盤で出てきたものだから、僕の腹にはちょっと負担になるくらいの脂であったがペロリと平らげてしまった。
 金沢から帰る日には市内の近江町市場に寄り、今度はのどぐろの一夜干しを買って帰った。干物ではあるけれど冷蔵して持ち帰ったほうが良いとのことで、発砲スチロール箱に氷とのどぐろを入れ、それを飛行機の機内持ち込みにして手提げで持ち帰ってきた。
 もちろんすぐにそれも食べた。これもうまかった。
 以前同じように金沢で蟹を食べたいと思い、これも大奮発してズワイガニの料理を食べたことがある。これはほとんど僕の生涯では蟹を食べたことがないので、人生一度はおいしい蟹というものを味わってみたいと計画したものだ。大げさかもしれないがたぶん人生一度切りの蟹尽くしになったかもしれない。今回ものどぐろを味わえて日本海側の魚介のおいしさを再び知ることができ、人生後半は自分へのご褒美としてこの程度のことはしてもいいだろうと勝手に思っている。


 
 <木工>
 2016年11月11日 

今年は木工作業が続きちょっと興味が出てきた。最初のきっかけは家の門扉の塗装からだったのだが、ひと月ちかい作業でどうにか仕上げることができた。塗装はがし、サンド掛け、漂白、ニス塗りなどいくつかの作業を経験し少し興味が湧いてきた。塗装は塗り終えた当初より今のほうが色が少し薄くなって望みの色になってきて自分ながらかなり満足している。最近はこの門扉下部にいたみが出てきたのでアルミ板で補強もした。これも我ながらうまくいったと満足している。2番目の木工作業は音響反射板の製作だった。反射板そのものは寸法を指定して加工済みの板をネットで購入し、その後板を立てるための足は僕が設計、加工という手順で仕上げた。これも効果、まあ見てくれも女房には反対されずこれも満足点を上げられる出来と思っている。
 これまで木工作業はほとんどしてこなかったのだが(板金穴あけ作業ばかりで)、この出来具合を見て女房がこんどは花台を作ってくれないかとリクエストがきた。まさに花台が課題の手造り木工である。花台とは字のとおり花瓶などを乗せる台のことで縦・横・高さも30cmから40cm程度の台のことである。4本足に四角い板を上の乗せた椅子のような形の台である。ただ玄関に置くための台だからそれなりの見てくれが必要とのこと。そこでどんな木材か、どんな構造かを調べている。今近くの店で入手できる木材でそれなりの体裁や安い値段でできそうなのが松の木が候補で(正確な名前は忘れてしまった)構造はなるべくネジを使わずホゾ構造で組み立てようと計画している。ホゾというのは大工さんが家を組み立てる時、柱や梁の接続にくぎを使わず木材に穴やでっぱり構造で強固に組む構造のことである。まったくの素人がたいした道具もなしにそんな構造のものが作れるかは分からないがまずは検討してみることにしている。どうせ自宅用だからそんな大げさに考える必要はないのでまずはトライしてみようという訳である。この構造を考えるのも面白いもので大体の構造・寸法は割り出した。あとは実際の木材にあわせて細部の寸法を決めていくだけだ。どうなることやら。
 その後いろいろ考えていたらレコードプレーヤーのキャビネットも作ってみたくなった。このプレーヤーはいただいたもので、構造はお世辞にも振動対策をしているとはいいがたい物だから、これもちょっと検討してみたくなった。ネットで見るとキャビネット構造は集成材を積層構造をしているのが多い。マスが稼げるし見た目も良いからこのデザインが好まれるのかなと思っているが、本当にこの構造が最適なのかはちょっと疑問がある。モーターの振動に対する対策がどの程度なのかが重要なところである。この夏に経験したスピーカーの振動対策の経験からスパイクとインシュレーターを使用してもっとモーターの振動対策ができないものかを考えている。一つのアイデアは出ているが効果と使い易さと加工しやすさなどが両立できるようにいろいろ考えている。
 木工も面白い。いつかこのキャビネットに挑戦してみよう。


 
 <変化>
 2016年11月1日 

タイトルをどうつけて良いかわからないが、最近の僕は昨年と違ったオーディオへの向かい方をしている。大きな原因は今年になってお客さまからのオーダーメイドのアンプを設計しなくなったことが大きいと思っている。時間的にも気分的にも余裕が生まれ、オーディオを単純に自分の趣味として気楽に楽しめるようになったことが大きい。これまでは何か新しいアンプを作って出来るだけ商売が繁盛できるようにしたいという下心があるものだから、純真にオーディオを楽しむまでの気分に至らなかったかもしれない。ところが面白いもので、商売を止めた途端に我が家のオーディオシステムは格段の進歩をとげたようで、もっと早い時期にいろいろトライしておけば良かったと今更ながら思うのだが、これも気持ちの余裕から生まれた産物なのかもしれない。
 今年は部屋の音響をいろいろいじったり、9月には雑誌で真空管アンプの設計を執筆されている柳沢さんの「真空管アンプで音楽を聴く会」というイベントにも参加したりしている。小さなホールにアルテックタイプのスピーカーを自作アンプで鳴らすイベントで、僕とは趣味が異なる内容だったが、どんな考えでオーディオと向き合っているかは想像できその意味ではおもしろい時間だった。
 10月はさらにのんびりしている。某日はあるお宅に招かれて6時間近く食べて、飲んで、おしゃべりして時間を過ごし、その翌日には別のお客さまを我が家に招きリニューアルした音を聴いてもらったりした。この試聴会は面白いテーマがあった。それはマーラーの5番がテーマだった。お客様になかにアマチュアのオケに所属されている方がいて、次回はマーラーの5番を演奏することになっているとのこと。それでは我が家でマーラー5番をリニューアルした音で聴こうということになった。そうしたらそれぞれ演奏の異なるCD3枚とLP2枚が集まり、5番の1楽章の聴き比べとなった。テンポも違うし、トランペットのパートのアクセントが異なっているものあって、面白い聴き比べであった。この曲は金管楽器が大変そうで特にトランペット、ホルンが大変らしい。演奏時間も長いから最後は唇が疲れてしまうのではないか、しかし第4楽章は弦が中心だからすこしは休憩できるなどとたわいもないことで盛り上がっていた。
 昨年まではこんな楽しみ方はしていなかったのだが、気持ちの余裕ができたのか、年齢がそうさせるのか聴き方が変化してきた。
 リニューアルした音は定位がしっかりしているとか、音の奥行が感じられるとか褒めていただいたところもあるが、それより音楽がより楽しめればそれが何よりで、リニューアル後オーケストラの音楽が楽しめるようになってもう細かなことは気にならなくなってきた。

 このところマーラーの5番を多く聴いているからときどき最初の旋律を口ずさむことがある。これまでマーラーは長くて、メロディーが覚えづらくてそれほど好きな作曲家ではなかったのだがちょっとは進歩したようである。


 
 <EQのCSPP改造>
 2016年10月21日 

僕のラインアンプはバランス増幅で出力がCSPPCross Shunt Push Pull)になっている。CSPPはバランスアンプの出力段には大変都合のよい回路で、数年前この回路を見てひらめいた時はこれで性能の良いバランス型ラインアンプができると直感したものだ。その後やっとこれを作り上げ、特性を測ってみたら予想通り良い特性のアンプが出来上がり満足している。そしてこの回路を以前作ったバランス型EQの出力段にも採用したいと思い立ち先月やっとEQの改造が出来上がった。バランス型EQについてはこのサイトにERとして詳しい説明や回路が載っているのでそれを参考にしてほしいのだが、バランス型真空管EQの出力は単なるエミッタ―フォロアーになっていてここはプッシュプル動作していない。この部分はEQ完成後も気になっていた。バランス増幅はホット・コールド間の信号を増幅するのが理想で、できるだけグランドを基準にせずに増幅したいと思っていた。CSPPのアイデアが出たのがEQ完成後だったので最初の設計ではEQの出力段はエミッタ―フォロアーになっていた。その後ラインアンプの設計時にCSPPのアイデアが出て、性能も確かめられたので今度はEQにも採用してみようと改造した次第である。
  この改造ができればEQヘッドアンプ、EQ、ラインアンプ、パワーアンプすべての回路がバランス増幅のプッシュプル動作(差動増幅も含む)をする回路になる。電位的にグランド基準にはするが、信号経路は基本的にはホット・コールド間で行うことになり理想のバランス増幅になる。それもカートリッジ出力からスピーカー入力まですべての増幅がプッシュプルバランス増幅という回路になった。
 EQCSPP回路の特性はどう変わったかといえば、EQの最大出力が約倍に伸びた。これまでの回路では10KHzの歪が10V付近から急に悪くなっているが、この急激に歪が悪化する出力電圧が、改造後では20V付近まで伸びた。100Hz、1KHzの歪においても15Vから約25V付近まで伸びた。これはやはりシングル動作よりプッシュプル動作への効果が表れている。大振幅動作になった時にプッシュプル動作の優位性が表れている。
 このCSPP回路はパワーアンプのドライバー段にも使えそうだ。これまでパワーアンプのドライバー段をエミッタ―フォロアーで作ったことがないのだが、さらにCSPP化して強力に出力真空管をドライブしてみたらどうなるかを試してみたくなった。いつかトライしてみたい。
 改造したEQはどう音が変わったかといえばそれは分からない。理由は我が家のシステムはスピーカー周りの改善が急激に進んだのでそちらの音質改善が進み、もう昔の音の記憶が分からなくなってしまったからだ。ただ今LPを聴いていても以前よりはかなりの改善がある音で、トータルで音質改善が進んでいることには間違いはない。
 今度親しい仲間を呼んでリニューアルした音を聴いてもらうことになっている。
 どんな評価が出るのだろうか。


 
 <反射板>
 2016年10月11日 

我が家のオーディオルームと言ってもただの居間なのだが、スピーカーの配置変更以来ルームアコスティックを実験していて変化を続けているのだが、今回は反射板を置く実験をしている。ことの発端は次のようなことから始まった。
 これまで試聴していてどうも左の音のほうが大きく感じられることが時々あった。電気的には左右の差は小さいのだが、スピーカーの後方や外側の壁が左右でかなり違っているからか音響的に左のほうが大きく聞こえているように感じていた。これまでスピーカーを少し動かしたり、向きを変えたりいろいろ試したみたものの満足できたとは感じていなかった。これが第一のきっかけである。第二のきっかけとして、<音と響きの基礎知識>(音楽之友社)という本を読んでいたら、演奏において演奏者はもっとも響きを重視していて、ホールでの響きへのいろいろな対策が書かれていた。
 我が家のオーディオルームはどちらかというとデッドで響きが少ない部屋で、スピーカーからの直接音が大きくスピーカーへの影響が直接聴こえているような部屋、配置だった。そこで本に書かれていた音響反射板を置いてみたらどうだろうかという発想に至った。反射板を置けば間接音が増えスピーカーからの音をもろに聴くのが減って、より音場がひろがるのではないかと思ったからだ。そこでまず実験を始めることにした。
 まず反射板となる板を探して実験をしたいのだが、直ぐに製作する訳にはいかない。まず仮実験をして効果を確かめたかった。我が家にそれに合う板が無い。ある時ふと「そうだ風呂の蓋がある」。まずは風呂の蓋(60cm90cm)をスピーカーの外側(ほぼ面一)に置いてみることにした。これが予想どおり左右の音量の差が少なくなり効果があった。しばらくこの状態で実験をし、それから反射板の設計・製作を始めた。
 今はその反射板も出来効果を楽しんでいる。板はネットで注文した。ゴムの集成材で大きさは40cm1mとなっている。厚みは⒛mmとなっている。何故ゴムの板を使ったかは値段からだ。ゴムの板は柔らかいイメージだが木そのものはかなり硬く加工はしにくい。実際にはカットした板を注文し、板を立てる足は自分で設計し加工して使えるようにしている。
 音響的効果はどうなったか。まず風呂の蓋での予備実験のとおりスピーカーの外側に反射板を置くと、我が家の場合、左右の音波の通路の差が少なくなり聴感上でも定位が安定して中央に寄るようになった。この結果スピーカーの存在が大幅に減った。スピーカーからの直接音が少ないためか、スピーカーの間に音源があるように感じられオーケストラの楽器の位置がかなり明確になった。さらに違う効果も表れた。間接音が増えたおかげでこれまでより音量が増えた。これまでよりボリュームの位置が少し小さい位置でも伸びのある音を再生してくれるようになった。これはうれしい副産物となった。
 もうこれ以上の変更は予定していない。部屋の影響はかなり大きい。高価な機械を購入するのも趣味としてはあるけれど、部屋の影響を調べてみるのも安上りで効果抜群だと思うが如何だろうか。


 
 <アンプについて>
 2016年10月1日 

これまでの2つの変更すなわちスピーカーの配置とスピーカーの設置法の違いで低音が大分変ることが分かったとき、僕としてはつまらない結論になったと思った。これまでアンプの性能、音質を良くしてきたのに、それ以のところでおおきな音質改善が得られてしまったことにちょっと失望感を覚えたからだ。しかしながらその後アンプの聴き比べをしてみてやはりアンプの性能の差が低音の音質の差に表れることが確認でき、ちょっとホッとした。

アンプの違いによる低音の音質については次のように感じた。
 力強い低音とか伸びのある低音などに差が出てくる。
 響き、余韻などの微小信号の表現はアンプにより差が出てくる。

アンプの違いによる低音再生の違いはスピーカーや部屋の違いによる差より少ないように感じられる。それは低音の再生レベルや過渡特性があまりにも部屋やスピーカーの配置などに大きく影響していて、アンプ自身の寄与が少ないからだと推測している。しかしたとえ周波数特性がフラットになり過渡特性がよくなったとしても、スピーカーに入力される信号が悪ければ音楽性を評価するレベルの再生には程遠いものになってしまう。すなわちアンプは正確にスピーカーに信号を送り込む必要があり、それが音質、どちらかと言うと正確さに影響を及ぼしている。
 ダンピングファクター、歪、ノイズ、電源特性など負荷が大きく変動するなかでも正確に信号を送り込む能力の差が音質に表れている。今回パワーアンプをバランス増幅に改良したが、このアンプは微小信号の再生能力に優れこれまでと違った音楽を再生してくれている。楽器の分離は良いし、響き、余韻なども再生してくれる。これまでも電源の違いによっても低音の出方が大分異なることを経験しているし、実際僕の設計する電源は強力だ。

アンプの差は力強さ、伸び、微小信号の再生能力など再生音の正確さに影響を与えている。

物理現象と感応試験の相関を見つけるのは難しい。今回の結論は僕が得られた、あるいは感じたものであって正しいものかどうかは分からない。オーディオは何かを変えると音が変わる。ただそれを単純に音が良くなったことで片付けると泥沼になってしまう。お金も時間もかかってしまう。

部屋が影響すること、設置法が影響すること、アンプの能力が影響することを3回に分けて考察してみた。何かの参考になればと思う。


 
コラム目次に戻る 


 Copyright(c);2006-2017 Yasui All rights reserved