手造り真空管アンプの店




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店主コラム 2007年4月分〜6月分




2007年6月21日

<試聴会>

 友人が試聴会を開いてくれた。6BQ5シングルの「メヌエット」と他社製のシングルアンプの比較試聴の試みであった。場所もこの友人の家を提供していただけ、セッティング、CDの準備など、他もすべてこの友人達が準備してくれたお陰で、私は唯「メヌエット」を提供するだけで済んでしまった。私にとって、あるいはMYプロダクツの製品にとってもだが、このような試みは初めてであって、興味が引かれるところであると同時にまた心配な面も無くはなかった。ただこのような比較試聴というのは設計当事者が行うと、自分のアンプが有利になるようなセッティングなどもありうる訳で、他人が公平な立場で行ってくれた方が試聴する方も納得する。こんな訳で、私はアンプを提供し、試聴会当日に参加した。CDプレーヤー、スピーカー、CDの選択すべて友人達が選んで決めたものを使った。
 比較試聴に使用した他のアンプはキット製のシングルアンプで1台は出力管がKT88(これをAアンプとしよう)、他の1台は同じキットだが、私が定電圧電源回路を追加改造したもので、出力管は6CA7シングルアンプ(Bアンプ)であった。これらのアンプは出力の点で「メヌエット」より大きいが、一般家庭で気軽に音楽を楽しむ装置としては同類に属するものだろう。

 さて音はどうなのだろう。私は遅れて参加したので、すでに私以外6名の方が真剣に音を聴いていた。私が参加したときAアンプが鳴っている、この時出力管はKT88でなく6CA7のようだったが、これはアンプの音なのかシステムの音なのか良く分からない。先ずはこの音をリファレンスとしよう。次に電源改良したBアンプの番になった。幾分ノイズが取れてより繊細な音が表現出来てきた。しかし我が家で聴いている音と幾分異なる。音楽の表現がちょっと違う。さて最後はメヌエットになった。どんな音を出してくれるのだろう。心配は杞憂に終わった。音場が広がり、楽器の分離も良くなった。音楽の表現が良くなった。これは私の勝手な印象なのでその点を差し引いて読んでもらいたいが、ただうれしかったのは、メヌエットが環境の異なるところでも、アンプの特長をはっきりと主張してくれたことだ。異なるCDプレーヤー、スピーカー、部屋でも自分を主張してくれたことが嬉しかった。音が良い悪いとかいう問題ではなく、アンプの特長が素直に出てくれたことに安堵を覚えた。オーディオは嗜好品で好みの問題だ。車も同じでセダンがいい人もいれば、いやバンがいい、環境にやさしいハイブリッドがいいといろいろいる。だから私は自分の音を主張することが大切だと考えている。MYプロダクツサウンドが出ればそれでOKだ。
 試聴後、メヌエットの音の特長がどこから来るのか少し説明をし、しだいに和やかな雰囲気になってきて、楽しい比較試聴の催しを終えた。今、メヌエットはこの時に参加した方の居間で、試聴していただいている。私の音の好みと合えば良いのだが。
 今回のこの比較試聴は友人達が進めてくれて感謝している。アンプの良し悪しはともかく、オーディオ好き仲間が集まってワイワイガヤガヤするのはこの上なく楽しい時間を過ごせた。

 Nさん、Kさんどうもありがとう。


我が家のガクアジサイ。
狭い庭に大きな葉、それにたくさんの花が咲いてくれないので、見た目が少しうっとうしい。
これは広い庭に合う花のようだ。







2007年6月11日

<クアドロマニア>

 ある友人がMinuetを聴きに来られた時、クアドロマニアというクラシックのCDを持参された。4枚組のドイツ製作のCDだった。驚いたことにこのCDを500円で買ったというのだ。そして音を聴かせてもらったところ録音状態が結構良かった。4枚で500円とは如何な物かと思っていたが、想像以上の出来であった。
 しばらくして、今度は近くのスーパーでこのクアドロマニアのCDが売っていた。こんどは1000円だった。それでも4枚で1000円は安いと思い2組購入した。今度はじっくり聴くことができた。やはりまた録音が良かった。音楽が結構楽しめる。ドイツの録音技師というのは、マイスターの国家資格を取らないといけないそうだから、録音技術はしっかりしている。日本はおそらくこんな録音資格などはないだろう。ここらが音楽に対する向かい方・文化が異なる。だからかどうかは知らないが、クアドロマニアは音が良いのである。それで4枚もあり安いときている。私はこのクアドロマニアが気に入ってしまった。
 CDを買う時、どうしても好みの演奏者や作曲家に偏り、音楽の幅が広がらないことになりがちだ。何か試しに聴いてみたい気がするが、どの演奏を買ってよいか迷う。こんな時、クアドロマニアは都合がよい。4枚組になっていると知らない曲も当然ある。しかし、これだけ安いなら幾つか知らない曲があっても良いではないかと思える。そこで新しい曲を発見できることもあるし、それに音質も良いので楽しめる。演奏者が一流かどうかは分からない。しかし私には十分な演奏と思える。
 ネットで調べてみたこのシリーズかなりの組数が発売されているようだ。電気製品は中国製の安い製品が世界を席巻しているが、ドイツでもこんな安いCDが作れるとは、日本のレコード会社ももっと頑張ってもらいたい。


お客様の一人が、八ヶ岳に別荘を持っておられ、そこで新しいスピーカーを試聴してきた。その帰りに諏訪大社に寄って、撮ってきたのが諏訪大社の御柱。
 初めて見たが不思議な風習。7年に一度これを取り替えるそうだが、その時はすごい祭りになるようだ。









2007年6月1日

<小さな喜び>
 最近はIT企業を起こし、20代、30代で何億も稼ぐ若者が増えている。これは素晴らしいことで、私にこんな才能があったら今ごろはもっと楽な生活をしていたであろう。 私が若いころは何億も稼ぐ夢など考えてもみなかった。サラリーマンのエンジニアであるし、目の前の課題をどう克服するかに一生懸命で、その成果で十分満足をしていた。
 開発・設計というのは一人で出来る物でなく、何人かでチームを作り、それぞれ担当が決められ、その担当が先の見えない技術に挑戦していく。当然最初からすべてが上手くいく訳ではなく、それぞれが自分の課題を克服していく。小さな事柄だが、ここで技術が進歩すると<小さな喜び>を感じながら仕事を進めていた。この各自の小さな進歩が結果大きな成果として現れ、新しい技術・製品が生まれていく。私もいくつか思い出に残る、<小さな喜び>がある。

 例えば「4ビットマイコンにおける高速9の割り算プログラム」とか「ローノイズ20cH高速マルチプレクサ」など思い出深い。これらは担当者数人しかその出来は分からないものなのだが、これらの技術が上手くいったために全体の開発や製品の完成度が上がってくるものなのだ。この<小さな喜び>を生じた技術そのものは、それ程大発明ではないが、これらがなかったら製品の完成度はかなり落ちてしまう。製品の裏にある細かな技術というのは、普通の人には当然分からないものだが、裏では多くの技術者がこのような努力をして、製品の完成度を上げている。前者のプログラムは実際の製品に使われ、その為かどうかは分からないが、製品はアメリカでヒットし、賞をいただいた。また後者はこれが出来たお陰で、世界で始めてある開発のデモ機が完成した。技術そのものは小さいけれど、製品の売り上げや世の中の技術貢献はそれなりにあったのかも知れない。私がこれらの技術が思い出に残るのはシンプルで高性能の物が出来たからなのだが、やはり技術はシンプルで良い物が出来たときに<小さな喜び>が生まれる。
 今もこの<小さな喜び>を楽しんでいる。MinuetにしてもAdagioにしても小さな改善をしながら<小さな喜び>を楽しんでいる。お客様には見えない、小さな改善が実は製品の大きな成果として表れる。オーディオ雑誌などで、「シンプル イズ ベスト」と称して、シングルアンプを紹介していたが、これは間違った表現だ。シンプルでも進歩がない技術にはこの表現は相応しくない。

 私は今後もシンプルで性能の良い技術を目指して、<小さな喜び>を見つけていこうと思っている。


コチョウランの花です。
2度目の開花になりました。お皿の上に水コケだけの状態ですが、今年も開花してくれました。

1年かけて世話して、このように元気に花を咲かせてくれると、これも<小さな喜び>です。








2007年5月21日
 <デジタル技術>
 最近のニュースで、著作権の支払いから見たヒット音楽のランキングが発表された。主に携帯電話などの配信によるヒットらしい。一昔のようにシングルCDの売り上げとは異なり、ダウンロードによる音楽の使用がメインのようだ。多くの若者がこの配信音楽で音を聴いている。TVニュースでは、配信側の記事も放映していたが、これが私にはかなり驚いた内容であった。それは、音楽再生装置が携帯電話などの小型装置であるので、聴き易いように配信側で中高域を持ち上げ、こんな感じかと調整していたのである。当然聴く方も携帯電話であるので、それを前提として音作りをしている。この音楽モニターにモニタースピーカーでなく、携帯電話を使用していることに驚きを受けた。
 このソースを普通のオーディオ装置で再生するとどんな音になってしまうのだろうか。そこには音楽性も演奏者の思いも無い。たくさん売れてお金の為なら何でもOKの時代になってしまった。
 別の話題。最近は当然写真もデジタル化されている。デジタル写真というのは画像処理が得意だ。だから商業写真は実際の写真その物は使わず、かなりの画像処理が入っているらしい。ある有名アイドルの写真は本人以上の人物になっているそうだ。コンピューター数台で画像処理を行い、この処理で実物以上のアイドルを造っているらしい。
 私は昔、これらの両技術に係わってきたが、技術の進歩がバーチャル的な何でもありの世の中になってきたのは悲しい。もっと人間感覚なものあるいは本物を重要視しないのか。
 また別の話題。今年のスイスでの腕時計のショウでは、クオーツより機械式の時計に人気が出ているそうだ。機械式時計の複数の針の動きにまた人気が出てきたようで、そこには職人技が存在し、それがまた脚光をあびているようだ。

 私の真空管アンプはアナログで、重くて大きくて持ち運びができない代物だ。発熱もあり、電力も消費し効率が悪い。時代に逆らった製品で、まったく効率から見れば時代錯誤もはなはだしい。だが世の中効率・便利さだけがすべてではない。何か人間の感情に訴える何かがあれば、人はそれを認めてくれる。人に認めてもらえる何か人間感覚的なものがそこにあれば、機械式時計のように認めてもらえると信じている。


カルミアの花。今年は今が満開。白ピンクの花びらですが、この花びら1枚で出来ています。1枚の花びらが半球状に丸まって咲いています。


我が家では動物を飼っていないので、花木が我が家の一員なのかも知れません。





2007年5月11日

<Adagio、Minuetの音質改善>
 最近<Adagio>と<Minuet>の電源回路を少し変更した。電源回路と音質というのは結構結びついていて、電源回路が音に与える影響が大きい。今回はこの二つのアンプの電源回路の改善について述べてみたい。
 <Adagio>はアップグレードを実施した。変更したところは主に電圧増幅段の定電圧電源をL/R独立の電源にした。前にも述べたように真空管回路の抵抗負荷増幅器というのは電源からの外乱に影響され、それが音質に影響される。初段、2段目の電圧増幅器に使われる電源回路を左右独立の定電圧電源にした。またこの電源回路は<Minuet>で得られたノウハウをいれた新回路にしてある。この左右独立電源というのはセパレーション特性では低域で4dBの改善になっている。すでに90dB以上のセパレーション特性の更なる改善(94dBから98dBへの改善)で数値は小さいが効果は大きい。音を聴くと左右の広がりが増し、特にオーケストラの再生ではその能力を発揮してくれる。楽器の定位が良くなる。ここらが音質を良くするノウハウのように思う。更に、出力トランスからの巻き線を4Ω出力に固定した。最近のスピーカーに対応するためこのように変更した。これによりDFは28まで上がり、出力は10W/8Ω、20W/4Ωと負荷の変動に対しリニアーに出力が保証され、上記電源強化と相まって低音のさらなる改善ができた。
 <Minuet>についてはメイン電源を少し変更した。このアンプはチョークトランスを使用せず、半導体によるリップルフィルターを使用している。最初特性を取ったとき、低域のセパレーションは標準的な数値と思い、余り気にしてなかった。Minuetはシングルアンプなので電源の影響を受け易く、こんなものかと思っていた。しかし、最近このリップルフィルターのトランジスターのhfeを大きいのに変更して、回路定数も見直し再度セパレーションを測定したら、50Hzで20dB近い改善になった。そして音は変更前より低音は締まりながらも、柔らかい音になってくれた。リップルフィルターは電源インピーダンスを下げてくれる。チョークトランスよりリップル除去やインピーダンスの点で優れているように思う。もちろん音も良い。今まで小型アンプにだけ、このリップルフィルターを使用していたが、今後はAdagioクラスのアンプまでリップルフィルターを使用してみたいと思っている。過電流保護回路も搭載してあり、これまで実績で壊れていないので、熱設計をきちんとすればチョークトランスより音の良いアンプがつくることが出来そうだ。
 電源と音というのは密接に影響している。突き詰めれば音のエネルギーはすべて電源からのエネルギーによって再生されているから当然かもしれない。ノイズの少ない安定した電源がゆったりとした柔らかい音を再生する。


電源強化されたMinuet。前面のアクリル板に新緑の影が映りこみ、真空管アンプとは思えない風情を出しています。

Adagioもアップグレードされました。
詳しい特性はAdagioのページをご覧下さい。反転型プリアンプと組み合わせる音は真空管アンプの上質なサウンドを再生してくれます。




2007年5月1日

<反転型ラインアンプ>
 久しぶりにオーディオ雑誌の<無線と実験>誌を本屋で立ち読みした。真空管アンプ製作記事が載っている数少ない雑誌だ。最近は読者も少ないらしく、発行部数も減っているためか、近所の本屋さんには置いてなく、大型の本屋さんにしか置いてない。私自身も最近はこの本を読まなくなった。記事の内容に変わり映えがなく、興味ある内容が少なくなっていると感じられるからだ。
 ところが、今回久しぶりにこの雑誌をパラパラとページをめくっていたら面白いことを発見した。それは反転アンプを利用したラインアンプの記事が載っていたからだ。以前、このコラムで反転アンプを応用したラインアンプ(ゲインを可変するプリアンプ)を紹介したが、同じようなアンプが2つも載っていた。私はこれらの記事については知らなかったが、私の場合は、アキュフェーズのアンプがヒントになり、昨年アイデアを思いつき、今年の初めに実験した訳だが、同じような考え方をすでにしていたのかもしれない。
 一つは金田さんというアンプ設計者のアンプで、もう一つはマランツの最新インテグレーテッドアンプのプリアンプ部。どちらも反転アンプでゲイン可変をしているようだ。詳しい内容は分からないが、同じような構成をしていると思われる。その効果は私と同じ考え方かもしれない。今年はこの反転アンプのゲイン可変アンプが流行するかもしれない。

 私の造ったゲイン可変アンプは、すでにお客様お持ちのMYプロダクツ製プリアンプに応用し、アップグレードされ使っていただいている。その感想を聞いてみると

 クラシックですと、全体的に聴きやすくなったせいか、以前よりボリューム位置がついつい大きくなってしまいます。今回は、クラシックよりも、JAZZの方がだんぜん良くなったと感じています。メリハリのある音、ライブ録音も雰囲気が良く出ており、とても満足しています。>

 
また、某スピーカー開発エンジニアに我が家の音を聴いていただいた感想では、
 <音に芯があってかつ柔らかい。ノイズ感が少なく残響がきれいに聞こえる。またアンプの進歩のお陰で、逆にB&Wのツイーターのクセが以前より気になるようになった。>と、スピーカー設計エンジニアならではの感想をいただいています。

 
反転型ゲイン可変アンプは万能ではないが、オーディオ用として長所がある。ボリュームMax時より、使用レベルでのノイズは少ないし、周波数特性、歪もよくなる。欠点は入力インピーダンスが小さくなることなど、まだ検討しなければならないこともあるが、この長所をもっと積極的に使った方が良いように感じている。

 今年はゲイン可変アンプの動きに注目してみたい。



Adagio(左)とゲイン可変型ラインアンプ(右)。この組み合わせで聴いています。
Adagioも電源を改良してあるので、重心の低い、響きのある柔らかい音が再生されます。







2007年4月21日

<山椒は小粒でピリリと辛い>
 最近私は料理を多くするようになった。これは趣味というより家庭内での事情によるものだ。私が主夫で主に夕食の支度をしている。家庭での分担は家庭それぞれの事情でいろいろあってもよい。もともと料理をすることは嫌いではないので、それ程苦にはなっていない。
 さて今回の話は麻婆豆腐の話。独身時代から麻婆豆腐はどちらかと言うと得意料理の一つであった。簡単で美味しいから良く作っていた。昔は今ほど中華の調味料の種類がなかったので少し味が異なっていた。通常麻婆豆腐の調味料は豆ち(トウチ)、豆板醤、テンメン醤、山椒などを使う。昔トウチなどは手に入りにくい調味料だったので京都の大徳寺納豆を使っていた。納豆といってもこれは粘りのある関東の納豆とは異なり、黒くしょっぱく発酵した納豆でこれを入れると本場の味に近づくような気がしていた。ところで、20年以上前だが私が最初に本場で、香港だがそこで始めて食べた麻婆豆腐の味は素晴らしものだった。それまで日本で食べた麻婆豆腐とはまったく異なり、とは言っても私はそれまで本格的な中華料理など食べたことがなかったからだったが、これが本場の麻婆豆腐かと感心して帰ってきた記憶がある。それ以来家庭で美味しい麻婆豆腐が作れないかと思い、料理の本を参考にして自分で作っていた。
 麻婆豆腐は炒め物というより、どちらかと言うと煮込む料理で、ある程度じっくり火を通したほうが美味しく作れる。最近は調味料も簡単に入手できるし、作るのも慣れているので、安定した私流の麻婆豆腐が作れていた。ところが最近TVの番組で麻婆豆腐の作り方を放映していて、麻婆豆腐の特長はピリとした辛さにあると紹介されていたが、私の作る麻婆豆腐はピリっとした辛さが出ない。どうもそのコツは最後にかける粉山椒にあるようなのだった。確かに昔香港で食べた麻婆豆腐は汗をかきながら食べた。その原因はいつも使っている山椒の粉にあるようだった。そこでスーパーで中華用の山椒を探したら、日本の山椒とは違った赤いやつが見つかった。
 女房が出張でいない時に、これを使った麻婆豆腐に挑戦した。これが昔食べた麻婆豆腐の辛さになった。中国山椒は香りが強く、また舌がしびれるような辛さがある。これを使うと汗が出てくる。しかも美味い。これでまた本場の味に近づいた感じだ。
 さて今回の表題について。このことわざは聞いてはいるが実際の山椒ではことわざのようにピリリと感じたことがなかった。例えば鰻の蒲焼では山椒をかけるが辛くはならない。日本の山椒は香りを楽しむが、辛さは変わらない。
 今回初めて小粒でピリリと辛い山椒を食べた。ことわざの山椒はこのことを言っているのだろうと初めて実感した。このことわざは中国から来たのだろうか。それとも昔は日本でも山椒はもっと辛い味をしていたのだろうか。それはどうでも良いことだが、自分の中にことわざ通りの山椒があることが分かっただけでも収穫だった。
 興味のある方は中華用山椒を試してみて下さい。本当に舌がしびれます。
 MYプロダクツも山椒のように小粒でピリリとした製品を造りたいものです。


フッキソウとコケ。
今年は何故かコケが増え始めました。専門家に聞いたら悪いコケではないということなのでそのまま増やしています。
昔、京都の寺に行ったら、庭師の方がコケの庭に膝をついてピンセットで丁寧に雑草を取っていました。そこまでやらないといけないのかなあ。
これからが雑草の生える季節です。


Minuetの電源を強化してアップグレードしました。
詳しくはMinuetの技術説明をご覧下さい。


2007年4月11日

<プリアンプ考>
 このコラムでプリアンプのことを書くのは初めてのことだ。製品紹介やこのコラムではパワーアンプばかりなので、プリアンプは考えていないと勘違いされていたかもしれない。実際には何人かのお客さまにはオーダーメイドでプリアンプも設計している。さて今回このプリアンプについて、進歩が見られたのでそれについて述べてみたい。
 プリアンプの定義はいろいろあろうが、今回のテーマはラインアンプのことだ。ボリュームコントロールを持った、パワーアンプの前段に位置するアンプのこと。このアンプの重要な役割は、信号レベルが低いのでS/N良く、歪なく増幅することにある。これまでのラインアンプは通常入力部に可変抵抗器(ボリューム)があり、そこで信号が減衰され、次にアンプがきて再び増幅されている。S/Nの面からこれを見ると、ボリュームでいったん信号が減衰されてから、アンプのノイズが重畳された形になっており、通常試聴する音量レベルでは信号が下がった分だけS/Nが悪くなって聴いていることになる。真空管アンプの場合半導体アンプに比べ、素子自体で発生するノイズも大きくS/Nの点では不利なことが多い。さて真空管アンプのS/Nを稼ぐ良い方法はないものだろうか。

 この点について考えていたら良いヒントが見つかった。それはアキュフェーズのプリアンプである。音について雑誌ではかなり褒めているので資料を見たら、ボリューム可変を電流加算で行っている。これはD/Aコンバーターの変形と見ていたが、見方を変えると、これは反転アンプのゲイン可変ボリュームになっているに過ぎないのが分かる。こんな複雑なことをしなくても同じようなことがアナログ回路で簡単に実現できる。ゲイン可変アンプは信号レベルを下げると一緒にノイズレベルも下がるのでS/N比の改善が期待できそうだ。そこで自分のプリアンプを使って実験をした。プリアンプを反転アンプにし、レベル調整をゲイン可変型にする訳だ。私のプリアンプは差動入力になっているので、反転アンプに変更することは簡単にできる。ただし、NFBが100%かかるので位相補正を見直し、ボリュームの位置の違いによるS/N比を測定した。この結果予想通りすばらしい結果が得られた。素晴らしいところは、通常使用しているボリュームの位置でのS/Nが15dB以上改善されたことだ。ノイズで15dBも改善するのは普通簡単には出来ないことだ。音はどうか。これがまた素晴らしい。このS/Nの改善が知覚できる。ノイズそのものが聴こえなくなるというより、音の透明感が増し、響きが増して、より柔らかい音になった。


 MYプロダクツの特長あるプリアンプが出来上がった。私のアンプもこれでかなりグレードがアップした。まだプリアンプの製品化は考えていない。オーダーメイドでの設計は受け付けるが、既製品としてはまだ考えていない。
 プリアンプも面白い。反転アンプもまた面白い。聴感上のS/Nもすばらしく、これまで素子(真空管)の欠点であったノイズの問題を回路でカバーできた。素晴らしい方式ではないかと自画自賛しているこのごろである。 


 詳しくは減衰型プリアンプとゲイン可変型プリアンプのSN比の比較を見て下さい。実験結果が載っています。


2週間ほど前に撮ったユキヤナギ。
この季節いろいろな花が咲き、楽しい季節です。


我が家のプリアンプが改造され、更に音楽が楽しくなってきた。ザビーネ・マイヤーのモーツアルト<クラリネット協奏曲>を楽しく聴いている。







2007年 4月1日
<オルセー美術館展・レオナルド・ダ・ビンチ展>
 3月末、上野で開催されている<オルセー美術館展>と<レオナルド・ダ・ヴィンチ>の両展覧会を鑑賞してきた。前者はパリ オルセー美術館に所蔵されている19世紀印象派の画家達の展示で、後者はフィレンツエ ウフィッチ美術館所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画<受胎告知>の展示であった。私は以前これらの美術館を訪れたことはあったが、今度いつ行けるか分からないので上野での展覧会に行ってきた。この日は桜の開花はまだ十分ではなかったが、平日の為か入場に並ぶこともなく、気持ちの良い春の絵画鑑賞日和であった。
 最初にオルセーを鑑賞した。オルセー美術館は印象派の画家達の傑作が多く展示されているところだ。今回の日本での展示はそのうち100点以上が鑑賞できる。マネ、モネ、ゴッホ、セザンヌ、ゴーガンなど有名な画家達を日本で見られ大変たのしい時間を過ごすことができた。入場料は1500円だが、十分安いと感じられるほど楽しむことができる。ゴッホの<アルルのゴッホの寝室>、セザンヌの<サント=ヴィクトワール山>などが良かった。今回、自分の好みはどうも人物画よりも風景画の方が好みであることを発見した。自分の空想の世界が大きく膨らむからのようだ。
 その後レオナルド・ダ・ヴィンチの<受胎告知>を鑑賞した。これも思っていたより混んでなくゆっくり見られたのが良かったが、絵画はこれ1点のみなので、何か物足りない印象になった。私はルネサンスの時代の画家ではラファエロが好きで、ダヴィンチは絵が正確しすぎて何か面白くない。(天才に向かって失礼かもしれないが)むしろ私には印象派の絵のほうがずっと楽しく感じられた。
 こんなことを勝手に思いながらこの日は世界の貴重な絵画を楽しむことができた。こんな時間を過ごすのはたまには心の洗濯になってよい。その後自分のオーディオのことを考えていた。
 今となっては死語となっている<Hi-Fi>という言葉がある。Hi-Fidelity高忠実度という言葉だ。音楽を正確に再生するということだが、絵に例えてみると、遠近法を用いて髪の毛もドレスの質感も正確で最後は人体の筋肉の付き方まで研究したダヴィンチのような絵に例えられるかなと想像した。もしダヴィンチが生きていたら、まさに超Hi-Fiの再生をめざすのではないかと想像した。それも細部にこだわった緻密で論理的なアンプを作るのだろうと想像する。その再生音は細部も繊細で、音の質感も緻密で、奥行き感も前後の音の音色まで違うのだろう。これは彼の絵画から想像する音なのだが、凡人には分からない感性で音を再生したかもしれない。
 オーディオは芸術ではないが、その作り手によっていろいろな再生音の表現があってよい。

 世界的な芸術はやはり人に強く何かを惹きつける。楽しい一日であった。




近所の桜並木の3月31日の風景。
何故日本人はこれほど桜の花に気分が高揚するのだろう。他の花では酒を飲むことはないとは思うのだが。
私もここを散歩していると気分が良くなってきた。





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